「野生開放、ですか」
ある日職員から告げられたテストは野生開放についてだった。アニメでは一部のフレンズが野生開放と叫んで一時的に強い力を得るという能力的なもの。
今日はその野生開放を行う実験を行うらしい。
「と、言われてもどうすればいいのかさっぱり分からんぞ」
外に連れ出された俺たち北極組。しかし、誰一人として野生開放についての詳細は分からない。
「ターゲットはあそこの鉄板。力を込めることで発動するという報告がいくつか上がっている」
「そんなこと言われてもぉ、分かんないですよ~」
なお、この場にキタキツネはいない。寝床を作りたいやら何やら、理由を付けて毛布などを仕入れた結果、キタキツネは寒さを凌げたらしく上手く隠れていて未だに見つかっていない。まあ、代わりに職員が一人、突然消えたと小さな騒ぎにはなったが。今も捜索願が出されている。
いづれは、キタキツネのこともどうにかしないといけないなどと考えているとクマさんが準備出来たらしく、雄叫びを上げて走り始めた。その手にはいつの間にか大きな、熊の手を模した武器を持っている。
「おおおおおおぉぉぉぉ」
熊手を振り上げたクマさんは眼から輝く粒子を迸らせながら、分厚い鉄板に叩きつけた。刹那、ゴウと音がして豪風が巻き起こる。風に思わず目を閉じる。そして、再び開けた時には鉄板は大きく、熊の手型に凹んでいた。
「すごいな。どうやったんだ?」
「何だろうな。あれを敵だと思い込んで力を込めると、気付いたらこれを持っていたんだ。それで、叩き潰すという意志を込めて振るったらこうなったぞ」
と熊手を掲げながらクマさんは言った。職員も眼が輝くのが野生開放の合図であると、成功を告げる。そして、クマさんに続こうと、ウサギさん、ホッキョクギツネが鉄板を殴ったり蹴ったりするが、軽く凹む程度でクマさんほどの威力は出なかった。もちろん、眼からは何も出ない。いや、ただの殴る蹴るで鉄板が凹むだけの力がある地点で十分すごいのだが。
そして俺の番。アニメでは確か、タイリクオオカミが手を輝かせていたはずだ。つまり、オオカミである俺は手に力を溜めるというのが正しいはず。
鉄板をクマさんのアドバイスに従って敵だと認識しよう。オオカミの天敵、って何だろうか。いや、実在の生物でなくてもいいはずだ。例えばあれはセルリアン。石は中心にある。そこを思いっきり殴れば倒せる。
グッ、グッと手を開閉しながら真っ直ぐに睨みつける。段々と手が熱を帯びているかのような感覚になり、熱く、熱くなっていく。
そして熱さが限界に達した瞬間、俺は地面を蹴って飛び上がった。
数メートルの距離が一瞬で縮まる。
高く振り上げた右腕を、捻った身体の回転の力も利用して一気に振り下ろす!
ガッ
と音が鳴り、遅れて手に凄まじい衝撃が伝わり、後方に飛ばされる。
しかし、不思議と痛くない。
空中で身体を丸め、くるりと一回転して地面に着地した。
鉄板を見ればクマさんの時のように手の形に大きく抉れていた。成功のようだ。
「おお、すごいです」
「ですねぇ~」
ウサギさんとホッキョクギツネが近寄ってきてアドバイスを聞いてくる。クマさんと同じように鉄板を敵に見立てたと言えば何で出来ないのだろうかと二人して悩んでいた。野生開放が出来るフレンズと出来ないフレンズで何か違いがあるのだろうか。
いや、二人も練習すれば出来るようになるかもしれないし、職員も訓練して出来るようになったフレンズもいると言っていた。単純にコツを掴む早さが違うだけだろう。
「そういえば、クマはどこに行った?」
「ああ、クマでしたら先に戻ったみたいですよ~。何でもお腹が空いたとかぁ」
ん、確かに、お腹が……すごく空いた!
「俺もお腹空いたから戻る」
「あ、私も戻るです」
「わたしも~」
そうして実験は終わり、部屋に戻るとクマさんは大量のジャパリまんを持っていた。何でも同じようにお腹を空かして帰ってくるだろうと、俺たちの分も貰ってきてくれたらしい。
野生開放は有り得ないほどの力を出せる代わりに、非常にお腹が減る技であることが分かった。もしかしたら、練習すればもっと消費を抑えられるかもしれないが。
あと、ジャパリまんはやっぱり美味しかった。いくつ食べても飽きない。
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