げんだいフレンズ   作:井戸ノイア

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9話

 近頃、フレンズを扱った特番を企画しているらしい。

 そして、俺のいる施設に白羽の矢が立った。

 

「どんな人が来るんですかね」

「怖い人じゃないといいなぁ」

 

 今日は俺たち北極組の番というわけだ。施設のフレンズ達を順に回っているらしく、ジャングル、砂漠と来て、次は北極だ。

 有名人の人も来ると聞いて少しだけワクワクする。

 そうやって、皆でワイワイと話していれば、ドアがコンコンとノックされる。来たようだ。

 

「うわ、寒い! 今日はよろしくお願いしますね」

 

 入ってきたのは見たことのある顔。人気司会者の中嶋さんだった。その後ろから何人もの人が次々と入ってくる。

 

「うむ、よろしくするぞ」

「よろしくねぇ~」

「よろしくです」

「……よろしく」

 

 そして、今日の流れを説明される。何でも一人ずつにいくつかのインタビューをしたあと、誰か一人を指名して様々な動きや普段の様子を撮影するらしい。

 それじゃ、ちょっとここは人には寒すぎるからこっちにね、とスタッフに誘導されてクマさんが部屋を後にする。隣の冷房程度の部屋で話を聞くようだ。普段、テレビやパソコンを置いてある部屋で、区切りが硝子張りのため向こう側が見える。

 和やかな雰囲気で話は進んでいるように見え、クマさん、ウサギさん、ホッキョクギツネと来て俺の番になった。

 

「それでは、改めてよろしくね」

「よろしく」

「早速だけど、これは皆にしている質問だ。君は普段ここではどのように過ごしている?」

「以前は、ゴロゴロして過ごしていた。特に何をする訳でも無く、与えられる食事に満足してだらだらと。それこそ、飼い犬のように」

「以前はというと、今は違うのかい?」

「今は……少し前に与えられる食事、ジャパリまんについてちょこっとだけ懐疑的になる事があった。それから、なるべく外で食事をするようにしている。幸い、この身体はそう多くの食事は求めない」

「ふうん、その懐疑的になる事については教えてくれない?」

 

 ……

 

 まだキタキツネは匿っている最中だ。流石に話すことは出来なかった。それでも、疑問点を口に出したのは本当にこのままで良いのか疑問だったから。これがもしテレビに載るなら、誰かが調べるかもしれないという淡い期待からだ。

 もちろん、俺も可能な範囲では調べている。だが、フレンズというのは非常に目立つ。隠れて何かを探すのには向かないのだ。

 それからいくつかの質問を繰り返し、質問の時間は終わった。スタッフは冬に冷房が効いた部屋は堪えたのか、手を震わせながら出て行き、暖かい部屋へ向かったようだ。

 

 しばらくすると、スタッフの一人が冷凍室へやって来て、ホッキョクグマで撮影するということを伝えた。

 俺じゃなくてちょっとホっとしたり、密着されるクマさんが少し可愛そうだったり。

 何にせよ、クマさん以外は撮影が終わり、自由時間となる。そろそろ、お昼時だし外に行こう。そうして、外に出かけると「おーい」という声と共に中嶋さんがやってきた。

 

「撮影はしなくていいのか?」

「フレンズの撮影に司会者はいらんからなぁ。それに今回は俺の我がままで君たちと話したいと思って付いてきたからね。外に行くんだろ? ついて行ってもいいかい?」

「好きにしろ」

 

 テクテクと歩く俺の横を中嶋さんは付いてくる。視線が気になるなぁ。

 

「何か?」

「いや、尻尾ってどうなってるのかなって」

「どうも何も無い。こうなった時から手足のように自然に動かせる」

 

 尻尾を右に左に振るとなるほどなぁ、と頷いている。尻尾を揺らす度に顔も動きに合わせて揺れるのが少し面白い。

 それからフレンズのことを質問されたり、逆に俺から質問したりしながら歩いた。普段使っている人があまり通らない道を使ったため、ほとんど人とすれ違うことも無く目的地にたどり着く。

 

「なるほどな。建物には入れないから屋台か」

「そう。ここはいつもやってる」

 

 数件の屋台が並んだ広場。俺の施設外での食事は大抵ここだ。常に何かしらの屋台は出ているし、何度も来たおかげで今では皆顔見知り。フレンズであることを驚かれたりもしない。

 

「焼き鳥二つ、一つはネギ抜き」

「あいよ、いつもありがとな」

 

 と、今日は焼き鳥を買った。いちおう、イヌ科なのでネギは抜き。二つ貰ったうちの一つを中嶋さんに手渡し、もう一つは俺が食べる。肉の焼ける香ばしさと、甘辛いタレのツヤが食欲を誘う。

 

「おう、わざわざありがとな」

「お昼食べたかったら、後は自分でよろしく。俺はこれで十分だから」

「ん? これだけで十分なのか?」

 

 そう、フレンズの胃が小さいのか、普通の食事を三食するならこれだけの量で足りてしまう。ジャパリまんだって、一日一つ食べればもう十分なくらいだ。

 そのことを話すと中嶋さんは考え込むように呻る。

 

「うーん、確かにそれだけの身体をたったそれだけの量で維持出来るっていうのはおかしいな……」

「気にするな。フレンズになったことだって十分おかしなことだ」

 

 

「うん、まあ、そろそろ俺は行くか。流石に戻らねぇと怒られちまう」

「俺も戻る」

 

 それから、撮影を終えてぐったりしたクマさんを発見したり、一日中隅っこで隠れていて動けなかったキタキツネの文句を聞いたりして、一日が終わる。

 翌日には別のフレンズ達の元に撮影班が移動して、そのまた翌日には撮影が終わったが、施設では一つだけ変化したことがあった。

 ちょくちょく中嶋さんが来るようになったことだ。

 

 そんな、ちょっぴりの変化もありながら、日々は続いていく。

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