Fate/Apocrypha ―赤の軌跡―   作:穏乃
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アキレウスが好きすぎてアキレウスに報われてもらいます。
ちなみに主人公とアキレウスがくっついちゃうとかそんなのはないですので、読む人は注意して下さい。あと岸波白野も女主人公の方ですけど、色々設定いじくってます。
ほぼほぼオリジナル展開で話を進めていこうと思ってます(思ってるだけ)。


1話 聖杯大戦

 物語とはたった1つのイレギュラーで結末が変わることがある。例えば一人の少女が戦いに身を投じるだけで皆の知っている物語とは全く違う展開に進んでしまい、それが全く別の物語となってしまったり。

 彼女はこの戦いの結末を見届けた。数多の英雄が自らの信念を胸に秘め戦い抜いた戦争を。しかし本来の物語であれば彼女はこの物語に関わることことすら許されなかった。一つの奇跡が、彼女をこの戦いへと赴かせ、物語の結末を変えたのだ。

 これは本来語られることのなかった、幻のような物語である。

 

 

 イギリス。いや、まさか自分がこうしてイギリスに来るなんて思ってもみなかった。当然だ。魔術協会の総本山であるここ『時計塔』は自分のような薄汚い魔術師とは圧倒的に無縁な場所であるからだ。

  岸波(きしなみ)白野(はくの)、彼女は少なくとも真っ当な魔術師ではない。そんな彼女がここ、時計塔にやってきたのには大きな目的があったからである。大きな目的、といえば大層に聞こえるかもしれないがそこまで大きな目的ではない。岸波白野はフリーランスの魔術師である。仕事があればどこにでも属し、金さえ積まれれば昨日まで味方であった魔術師さえ殺す。そんな彼女が時計塔にやってきた理由は一つ、仕事だ。

「……それにしても、平和だねぇ」

 ふと岸波は言葉を零した。常に戦場に身を置く彼女にとって時計塔は平和そのものでしかなかった。

「魔術を教えてもらう、か」

 岸波にとって魔術とは生きていくために術でしかない。なので勉学のように魔術を学ぶということが彼女には理解することができなかった。

「まぁする気もないけど」

 そうこう言っている間に目的の部屋に到着した。岸波は軽く咳払いをしてから扉を二回、ノックする。

「入れ」

 その言葉を聞けば岸波はドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開く。そこには一人の老人とサングラスをかけた大男が待ち構えていた。

「召喚科学部長のロッコ・ベルフェバンですね」

「如何にも。お主は岸波白野で間違いないか?」

 はい、と岸波は首を縦に振る。

「……で、何故獅子劫(ししごう)界離(かいり)がここにいるのですか?」

 獅子劫界離。そう呼ばれた大男はこちらに視線を傾けながらニヤッと気怠い笑みを浮かべる。

「まぁ説明するから座れ」

「……」

 岸波は無言で獅子劫の向かい側のソファーに腰を下ろす。

「さて、お主らに集まってもらったのは他でもない。『冬木の』聖杯戦争を知っているか」

 聖杯戦争。どんな願いを叶えるとされる万能の願望機、聖杯を巡って戦う魔術儀式のことだ。だが冬木の聖杯戦争は本来のこれとは異なる。冬木の聖杯戦争は魔術師の間で英霊をサーヴァントとして召喚し最後の一騎になるまで争わせる極めて特殊な戦争なのである。

「知ってるが―――冬木の聖杯は確か第三次を以て消息を絶ったんじゃなかったのか」

 獅子劫が口を開く。

「うむ、それが三ヶ月前に発見された。発見された、と言うよりは隠されていたのがわかったというべきだな」

「場所は?」

 岸波が問う。

「ルーマニア、トランシルヴァニア地方の外れにある都市トゥリファス。そこを管理している魔術一族、ユグドミレニアが所有していることを宣言してきた」

「……それで」

「こちらからは50人の討伐部隊を派遣したが、内49人は全滅。生き残った魔術師によるとサーヴァントによる攻撃を受けたとのことだ。つまり、ユグドミレニアは最低でもサーヴァントを一騎召喚している」

「つまり私達にサーヴァントを召喚してその聖杯戦争に参加しろ―――ってことですか」

「いや違う、お前たちには赤のマスターとしてユグドミレアと戦ってもらう」

「どういうことだ?」

 ロッコは話を続ける。

「今回の聖杯戦争は通常のそれではない。味方が7人、敵が7人。お前らは赤のマスターとして、ユグドミレニアは黒のマスターとして7対7で争ってもらう」

「総勢14騎って、そんなことが可能なんですか?」

「大聖杯に内蔵された予備システムの一つだ。7騎のサーヴァントが一勢力に統一された時はそれに対抗するもう7騎を呼び出すことが可能になる」

「こちらが勝った場合は?」

「無論、勝利した後再び聖杯戦争を執り行う。さて、どうするかね」

 岸波は黙り込んだままであったが、獅子劫が沈黙を破る。

「幾つか質問がある。サーヴァントを召喚する場合には触媒となる聖遺物が必要不可欠となるはず。それはどうする」

 ロッコは無言で引き出しから2つの箱を取り出す。一つ目の箱には石版のような石が。もう一つの箱には青銅の破片のようなものがそれぞれ中にあった。

「こちらはかのアーサー王伝説に名高い円卓の欠片だ。これであればランスロット、ガウェイン、トリスタン。強力な円卓の騎士が召喚できよう」

「こっちは」

「ギリシャ神話のトロイア戦争で使われたとされる武器の破片だそうだ。これならばヘラクレス、ヘクトール、ペンテシレイア。ギリシャ神話に名高い戦士のどれかを召喚できよう。好きな方をもっていけ」

「んじゃま、お先に」

 そう言って獅子劫は円卓の欠片の入った箱を手に取る。

「もう一つ、こちら側のマスターについてだ。岸波白野や俺みたいな魔術師に依頼してるんだ、他はどんな奴らだ」

「ああ、残りは既に決まっていて現地に派遣済みだ。こちらからは4人派遣した」

「もう一人は?」

「聖堂教会から派遣された監督役兼マスターだそうだ。今回は聖堂教会もこちら側につくそうだ」

「名前は」

「シロウ、とかいう神父だそうだ」

 シロウ。名前を聞く限りだと日本人の名前だ。岸波は退屈そうに話を聞きながらも、残った青銅の破片の入った箱を手に取った。

「双方依頼を受けるということで構わんな?」

「おう」

「はい」

 獅子劫と岸波は二つ返事で答える。

「ではすぐにルーマニアに向かってくれ。現地についたらサーヴァントを召喚、その後他のマスター達と合流してくれ」

 

 

 

 私、岸波白野はルーマニアまでの飛行機は退屈で仕方なかった。時間で言えば6時間ほどであったが、その間本当にやることがなくただ退屈な時間を過ごす羽目になってしまった。ルーマニアの首都、ブカレストに到着するなり右手に鋭い痛みが生じた。右手には聖杯戦争の参加権でありサーヴァントを使役するための令呪が発現していた。これで私も聖杯に選ばれたということなのだろう。いや、仮に選ばれなかったら大変なことになっていた。依頼を受けたにも関わらず聖杯大戦に参加できないのだ。まずはその参加権を奪うところから始めなくてはいけなくなる。無事、と言うのだろうか。ともかく無事聖杯大戦に参加できるのだ。まずはサーヴァントを召喚するところから始めよう。同業者である獅子劫が言うにはサーヴァントを呼び出すのはあくまで聖杯。私達マスターはサーヴァントを現界させるだけの魔力を供給さえできれば問題ないという。呼び出すのに関しても簡易的な術式で問題ないとのことだ。

「でも呼び出すなら自分の調子が最高潮の時を狙え、ですか」

 私の魔力が最高潮のタイミングは深夜2時。日本とルーマニアの時差は約7時間ほど。つまり日本時間での2時とはつまりルーマニアで言うところの夜7時のことを指す。魔力に時差ボケがないことを祈ろう。しかし、ルーマニアに来るのは実は最近では二回目である。時計塔に呼び出されるより少し前に、ルーマニアにて荷物の受け渡しで立ち寄った事があった。依頼人の名前は確かムジーク。荷物の内容までは依頼人の要望で確認していなかったけども。

「まさかあれ、実は聖遺物だったなんてことはないよね」

 だとしても驚くことはない。フリーランスの魔術師をやっているのだ、こういうことはよくある。今日依頼を受けていた相手を明日には殺さなければならないなんてことはもう日常茶飯事だ。

「さて、まずは……」

 空腹を満たそう。現時刻は17時、召喚まで少し時間がある。召喚する場所に関してはここに来るまでにある程度目星は付けてある。

 と、ここまで獅子劫界離の姿が見当たらないが、彼とは別行動をとっている。確かに同じ赤側のマスターではあるが、聖杯大戦が終われば敵になるかもしれない。そんな相手と一緒に行動はできない。とはいっても後々に合流はしなければならないが。そうこう言っている内に時間が迫ってしまった。私は急いで目星をつけていた霊園に足を運ぶ。

「さってと」

 術式は完成した。時間も18時55分と丁度いい時間である。

「……」

 右手に刻まれた令呪に魔力を集中させる。

「素に銀と鉄、礎に石と契約の大公。手向ける色は赤。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 召喚の呪文と同時に術式が令呪の補助を受けて召喚陣が赤く光る。

「汝三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」

 召喚陣からその彼が顕現した。長身の男性、金髪に槍を片手に持った彼がそこに立っていた。聖遺物からトロイア戦争で活躍したとされる英雄が召喚されるはずなのだが、流石に一目で誰かまではわからなかった。

「……えっと」

「応、赤のライダー。召喚に応じ顕現した」

 男はこちらに視線を向けながら口を開く。

「答えな、あんたが俺のマスターか?」

 これが私と、ライダーとの出会いだった。






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