Fate/Apocrypha ―赤の軌跡―   作:穏乃
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前書きは置いといて、今回は後書きを書くことにします。


10話 救世の祈り

「くっ……」

 王冠:叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)、黒のキャスターの呼び出した宝具であるそれはミレニア城塞をただ破壊するだけの兵器でしかなかった。ゴーレムの攻撃をルーラーは旗で何度か受け止める。

「このままでは持ちません!アーチャー、なんとかならないのですか……!?」

「なんとか、ですか……」

 ルーラーは屋根の上で矢を番える黒のアーチャーに叫び散らす。なんとか、と言われてもなんとも出来ないのが現状だ。こちらにはもう黒のライダーであるシャルルマーニュ十二勇士のアストルフォと彼、黒のアーチャーであるケイローンしかいない。かろうじて現状ルーラーが仲間になっているが天草四郎時貞がいる以上、彼女のルーラーとしての特権である令呪も通用しない。八方塞がりなのが現実だった。

「……っ!?」

 ゴーレムは高速で突撃してきた何かの攻撃を受けて一瞬動きが止まる。

「……赤の、ライダー」

 突撃してきた正体は、赤のライダーだった。彼が背負っていたマスターである岸波白野は彼の背中から降りるとフラフラとしながら歩く。

「もう二度とやらない……」

「マスターは下がってろ!」

 赤のライダーは何度かゴーレムに攻撃を加えるも、壊れた部分から高速再生してしまい、攻撃が意味をなしていなかった。

「はぁ、はぁ。ユグドミレニアの長、ダーニック亡き今ユグドミレニアを仕切ってるのは誰?」

 フラフラとした足取りでボロボロになったミレニア城塞まで辿り着けば、その場で戦いを見守っていた眼鏡の少年に岸波は視線を向ける。

「えっと……」

「私です」

 声の方に向けば、そこには車椅子に座った小柄な少女がこちらに向かって来ていた。

「フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアと申します。赤のライダーのマスターで、間違いありませんか?」

「初めまして、岸波白野。お察しの通り赤のライダーのマスターだよ」

 その言葉を聞き近くにいたゴルドとセレニケがふと言葉を漏らす。

「貴様が……」

「例の魔術師殺しの……」

 フィオレは大きく息を呑み、再び口を開く。

「状況はアーチャーからある程度聞いているつもりです」

「なら先に聞かせて、あれは何?」

「……あれは王冠:叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)、黒のキャスターアヴィケブロンの宝具です」

「ゴーレムなんだからそうだろうとは思ってたけど。で、当の黒のキャスターは?」

「既に私が仕留めました」

 そう言って屋根から飛び降りてきたのは黒のアーチャーだった。

「ですがあれは既に炉心を手に入れており、彼の消滅だけでは止まらないものとなっているのです」

「炉心って」

「彼の、元マスターです」

 やっぱりか。これほど巨大で強力なゴーレムだ、簡単には作れない。であるならば炉心が必ず必要になってくるだろう。

「つまりキャスターの交換条件で出したマスターに手を出すなってのは、マスターを騙して炉心に使うためなんだね」

 思っていたとおりの展開に岸波は頭を抱える。

「アーチャー、貴方が見る限りではあれの破壊は出来るの?」

「……率直に言います。あれは大地から魔力を無限に吸収しているので破壊は無理です。ただ……」

「ただ?」

「何らかの方法で魔力供給させず、その状態で頭と心臓の両方を同時に破壊すれば、或いは……」

「……」

 不可能だ。何らかの方法で魔力を供給できないようにする。これ自体は簡単だ。大地から魔力を無限に吸収しているのなら大地から離せばいいだけだ。だがそうするとそれを誰かが担当すると、頭と心臓を破壊するものがいなくなるのだ。見ている限りだと、黒のライダーもルーラーも破壊できるとは思えない。

「……あと一人」

 いた。今近くにいて、対軍宝具を所有しているサーヴァントが。

「ルーラー!貴女の力で赤のセイバーをここに召喚できない?」

 赤のライダーと共にゴーレムの足止めをするルーラーに聞こえるくらいの声で岸波は叫ぶ。

「い、今ですか!?く、赤のセイバー!どこかで見ているのでしょう、出てきなさい!」

 焦りながらも、テレパシーのようなもので赤のセイバーに連絡をする。それに応えるように赤のセイバーはすぐに現れた。

「呼んだかよ」

「話は彼女から聞いて下さい!」

 ゴーレムを相手しているので今は説明できないと言いたげにルーラーは怒鳴り散らす。

「セイバー、貴女の宝具であれの頭吹き飛ばせない?」

「んなもん簡単だ。でもな、世の中ギブアンドテイクだろ?」

「だって、ルーラー」

「だからなんで私に振るんですか、今忙しいのですが!?」

 ルーラーが若干イライラしてるように見えてきてしまう。

「じゃああれだ、お前令呪持ってんだろ?それを寄越せ、全部」

「はぁ!?駄目です全部なんて、せめて一画……」

「じゃあ一画だ、一画寄越しな!」

 やられた。ルーラーはそう感じたのか大きくため息をつく。

「わかりました、後で差し上げますから……!」

「よっしゃ、交渉成立だな。で、俺はどっちを叩けばいいんだライダー」

 話をあらかた聞いていたのか、赤のセイバーはすぐに宝具を撃てるよう剣を構える。

「じゃあ俺は心臓をやる、お前は頭を」

「オーライ、三人同時攻撃。マジで行くぜ!」

「先生、タイミングは任せるぜ!」

 赤のセイバー、赤のライダー、黒のアーチャーが一気にゴーレムに詰め寄る。

「木偶如きが、デケえ面してんじゃねぇ!」

 セイバーの放った赤雷の刃ではゴーレムはビクともしない。

「ゴーレムが完成しかけてんのか……!?」

「しゃらくせえ!」

 その横からライダーが槍撃を放つ。だがそれもあっさり受け止められてしまう。

「世界を救う、全ての魂を、僕が終わらせる!」

「キャスター!?」

 ゴーレムから確かに黒のキャスターの声がした。

「世界を蘇らせる。楽園の完成は近い。僕は人々をエデンへ回帰させる」

「くそったれが!!」

「このっ!!」

 ライダーとルーラーが交互に攻撃を仕掛けていき、ゴーレムは次々と崩壊していく。だがそれに合わせてゴーレムの再生していく。

「駄目か……」

 その時アーチャーの渾身の矢が、ゴーレムの足を貫く。

「やったか!?」

「いや」

 アーチャーの漏らした言葉通り、その再生は早く大地からゴーレムが離れることはなかった。

「キャスター、貴方の巨人は確かに受難の民を救い、人々をエデンへ導くことが出来ただろう。しかし、叡智を手に入れた貴方ですら、知らぬことが一つだけあったな。あの英雄は、神など恐れない」

 それは神速、というよりも次元跳躍に近かった。ずっと周囲を飛び回っているだけだった黒のライダーは急降下しながら、ゴーレムの足を一閃する。

触れれば転倒(トラップ・オブ・アルガリア)!」

 黒のライダーの槍に触れた瞬間、ゴーレムの足は霊体化し体制を崩す。

「後は任せたよ!」

「行くぞ、セイバー!」

 ライダーの放つ蒼い稲妻と、セイバーの放つ赤い稲妻が一帯を奔る。

「命令に従うしか出来ない木偶が、俺の前に立ちふさがるなってんだよ!」

 二つの稲妻は真っ直ぐ転倒するゴーレムに向かって閃光を奔らせる。

「セイバー、遅れんじゃねえぞ!」

「よく吠えた!」

宙駆ける(ディアトレコーン)!」

我が麗しき(クラレント)!」

 ゴーレムに直撃する直前に、二つに重なった閃光が別れそれぞれゴーレムの頭と心臓に向かって放たれる。

星の穂先(アステール・ロンケーイ)!!」

父への叛逆(ブラッドアーサー)!!」

 一瞬だった。先程まで一帯を暴れていたゴーレムは、二つの巨大な穴を中心に崩壊を始め崩れ落ちていく。

「ヘッドショットだ木偶の坊、エデンは他所で探してろ!」

 

 

 

 

「全人類の救済だとぉ……?」

 戦を終え、ミレニア城塞の一室に生き残ったサーヴァントとそのマスター、元マスター達が集まっていた。

「はい、それが私の聞いたシロウ・コトミネ。いいえ、天草四郎時貞の本当の目的です」

 それを聞いていたゴルドはその場の空気も読まずに笑いを堪えきれずにいた。

「よくもまぁそんなバカげたことを……」

「黙ってろ太っちょ!その馬鹿げた願いを簡単に叶えちまうのが聖杯なんだろうが」

「そんなバカな!?」

「……確かに大聖杯は突き詰めればただの魔力の塊です。理論は過程を省略し、結果だけをもたらすことが可能です」

 それを聞いていたフィオレが淡々と説明を加える。

「つまりあのシロウ神父が具体的な方法を知っていた場合は」

「もちろん、実行されてしまいます」

 岸波の問いに、ルーラーが答える。

「問題は天草四郎が人類救済の方法を知っている可能性があるってこと?」

 カウレスが更に問いを投げかける。だが、アーチャーがそれを否定する。

「問題なのはその具体的な方法が、人類にとって厄災である場合です」

「つまり……」

 それを隣で聞いていた獅子劫も口を開く。

「例えば世界一の魔術師になりたい男がいるとして、そいつがそいつ以外の魔術師を皆殺しにしちまうみてえなしょうもない手段だとしても、叶えちまうってことか」

「理論的にはそういうことになります」

 ルーラーの答えに全員が沈黙する。

「それを阻止するためにも、これからのことを考えましょう」

 沈黙の中、最初に言葉を切り出したのはフィオレだった。

「彼らは空中庭園で移動しています。距離だけで言うのなら追いつくのは容易です、飛行機で追いかければいい」

「だが向こうにもアーチャーがいる」

 赤のアーチャー、アタランテ。ギリシャ神話でも有数の女狩人。彼女の弓なら飛行機など造作もなく落としてしまうだろう。

「それにこちらは既に三騎失っています」

「手助けが必要になります」

 そう言ってフィオレは岸波と獅子劫に視線を向ける。

「マスター呼んでっぞ」

「ま、天草四郎を止めるってのには俺も同意だ」

「右に同じく。私らも二人だけじゃあんなのどうしようもないわけだし」

「では、お互い了承したということで宜しいでしょうか」

 アーチャーに車椅子を押してもらいながら、フィオレは獅子劫と岸波の元へと寄る。

「連中を倒すまでの一時的な共闘だがな。なんだったら自己強制証明(セルフギアス・スクロール)を結んだって構わないが」

「え」

 岸波が唖然とする。

「ふふ、そこまでやらずともいいでしょう。貴方方を信用します」

 そう言ってフィオレは握手を求めるように手を差し出す。それに応えるように獅子劫は手を握り返す。岸波もそれに続いてフィオレの手を握りしめる。

「さて、ここで問題があります。貴方達二人とルーラーを味方に加えてもこちらのサーヴァントは五騎。対してあちらは天草四郎と黒のセイバーを加えて六騎、ただでさえ聖杯を奪われて不利なのに人数でも不利なのはあまり良くありません」

 さらに言えばこちらの黒のライダーは戦力とも言えないのだから。

「だからって新しいサーヴァントなんて呼び出せないだろ」

「そうですが……」

「黒のアサシンは?」

「え」

 岸波が小さく言葉を漏らす。

「黒の陣営で失ったのはバーサーカーとランサー、そしてキャスター。セイバーが向こうに行ったとしてもアサシンはどうしたの?」

「……こちらのアサシンは現在赤にも黒にもつかずに行動をしていて足取りがつかめない状況なのです。それも魔術師を殺し回っているみたいで」

「こっち側についてもらえないのかな」

「……確かに相手は一騎。捕まえて交換条件を出してしまえば可能かもしれません」

「よし、じゃあトゥリファスの殺人事件の情報とか調べよう。獅子劫手伝って!」

「な、なんで俺が!?」

 そう言って岸波は獅子劫を連れて部屋を後にした。




アポクリファコラボでライダーとアーチャーの共闘があり、感動です。
こっちでもようやく二人を共闘させることが出来て嬉しかったりします。
この二人は敵対関係もいいかもしれませんが、共闘関係も師弟っぽさを垣間見ることが出来てとてもいいと思います。

さて次回では遂に黒のアサシンに触れることが出来ます。
既にジークがおらず、現段階でセレニケが生きていたりと原作と全然違う話の内容になってきています。ここから皆さんに話の続きを予想したりしていただければなと思います。

最後になりますがいつも感想、誤字報告等本当に感謝しております。


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