Fate/Apocrypha ―赤の軌跡―   作:穏乃
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いやまさかUA4桁いくなんて思ってませんでした。
3桁いったらなぁみたいな、自己満足で書いてる感あったので、色んな人に読んでもらえてとても嬉しい極みです。

男女の相棒関係って、書くの難しそうです。


2話 運命の始まり

 かつてこんなやり取りをした記憶がある。だが記憶は記憶であって、それまでのことだ。

 ーーー答えよ、其方(そなた)が余のマスターか。

 時々思い出す言葉。思い出すたびに自分は何かを忘れているんだということを自覚させられる。サーヴァントとマスター。聖杯と魔術師。知っているはずの何かとは少しずれたそれと向き合うことになるなんて、これから先生きていく上で必要ないと思っていたしそんな機会はないと思っていた。そう、彼と出会うまでは。

 

 

 

 

「……」

 目の前に現れた長身の男性。今岸波白野が召喚したサーヴァントでまず間違いはないだろう。現に服装が現代のものではない。軽装ではあるが、彼のそれは鎧であった。

「貴方のマスター、岸波白野。よろしくね、ライダー」

「まさか俺を召喚するマスターが女なんてなぁ」

 赤のライダーは軽口をたたきながらも辺りを見渡す。

「それでライダー、貴方の真名を教えてほしいんだけど」

「あん?んだよ、俺を狙って召喚したんじゃなかったのか」

 その言葉に岸波は苦笑交じり祭壇に置かれた聖遺物を指差す。

「トロイア戦争に登場する誰かってのはわかるんだけど、名前までは。アマゾネスの女王、ペンテシレイアじゃないことはわかるんだけど。槍を持ってるからヘクトール……」

「あんなおっさんと一緒にすんじゃねえよ」

 あ。その反応で彼が何者なのかはっきりした。

「ギリシャ神話の大英雄、アキレウスを召喚できるなんて私はついてるね」

「へぇ、今のやり取りで俺の真名を言い当てるってことは―――それなりに知識はあるみたいだな」

 青年は先程までの表情とは違い少し柔らかくなったように見えた。今ので自分がマスターであると認めてもらえたのだろうか。

「それじゃマスター、行こうか。俺が真の英雄であることを見せつけてやろう」

 ライダーはやる気に満ち溢れたかのように右拳を左手にパンッと叩きつける。

「その前に、ちょっと用事」

「用事だぁ?」

「そ。神父様に懺悔に」

 そう言って岸波たちは霊園を後にし、街の宿へと足を運んだ。

 

 

 

 

 彼は何故か冷や汗をかいていた。目の前に敷かれた4つの召喚陣を前にゴルド・ムジーク・ユグドミレニアはただ緊張と焦りしかなかった。

「それではそれぞれ用意した聖遺物を祭壇に」

 ユグドミレア一族の長である、ダーニック・プレストーン・ユグドミレニアの言葉と共にそれぞれ4人の魔術師は祭壇に聖遺物を置く。ゴルドが祭壇に置いたものはボロボロになりながらも黄金に輝く剣の柄であった。

 これは彼が用意したものではない。正確には彼が魔術師に頼んで運ばせていたものだ。それがつい先日届いたのだ。

「では、召喚を」

「素に銀と鉄、礎に石と契約の大公。手向ける色は黒」

 4人の魔術師の告げる言葉により召喚陣が青白く光る。詠唱が終わると、激しい暴風とともに、4騎の英霊が召喚された。

「召喚に応じ参上した、我ら黒のサーヴァント。我々の運命はユグドミレアと共にあり、我々の剣はあなた方の剣である」

 ゴルドが召喚したサーヴァント、黒い甲冑を身に着けた金髪の少女はこちらに鋭い視線を向けながら口を開く。

「問おう、貴様が私のマスターか」

 その右手に持つ大剣から彼女のクラスがセイバーであること明白だ。ゴルドは望みどおりのサーヴァントを引き当てることができたため、喜びを隠せずにいた。

「召喚したからには勝利を約束しよう、私のこの黄金に輝く魔剣に懸けて」

 

 

 

 

「待ってライダー」

 翌日教会に到着するなり岸波はライダーの歩みを制止する。

「なんだよマスター」

 嫌なものが見えた。たまに見えるアレだ。未来視とも言えるのだろうか。それにしては今見えたものの中には自分がいなかった。だが従えば自分もそうなるのであるというのはなんとなくだが理解できた。

「……これは毒?それから、洗脳」

 見えるものを断片的に言葉にして紡いでいく。

「……神父」

 見えたものが何を意味しているのかは分からないが、今から会う神父は少し警戒した方がいいのかもしれない。

「ライダーは私が呼ぶまで姿を現さないで」

「……わかった」

 岸波の言葉に素直にライダーは聞き受け霊体化する。それを確認すれば岸波は教会の扉を開く。

「……獅子劫界離」

 教会には既に獅子劫界離が到着していた。獅子劫もこちらの姿を確認するなり手を振る。

「お呼びして申し訳ありません、私今回の聖杯大戦の監督役を務めますシロウ・コトミネと申します」

 褐色の肌に白髪の少年。とてもじゃないが、監督役が務まるような年齢には見えない。

「……岸波白野、自己紹介は省いても?」

「構いません、存じています」

 獅子劫は座っていた椅子から立ち上がり、岸波に並ぶように立つ。

「……そちらのサーヴァントは?」

 シロウの言葉とともに白の甲冑で身を覆った騎士のような出で立ちのそれが現れる。恐らく獅子劫のサーヴァントだろう。

「そちらは……?」

「……ライダー」

 こうも簡單にサーヴァントを晒すことになるとは思っていなかった。岸波の言葉を受けてライダーは実体化し、その姿を現す。

「ではこちらも」

 黒に包まれた女性が姿を現した。

「赤のアサシン、真名はセミラミス。よろしく頼むぞ、二人共」

 赤のアサシン、と言うよりは黒のアサシンと呼んだほうが適切ではないかと言いたくなるくらいにその零す笑みまで真っ黒である彼女の実体化とともに獅子劫のサーヴァントは剣を手にする。が、それはすぐ獅子劫によって制止された。

「では、情報交換から始めましょうか」

 赤のマスターである三人は教会に並ぶ椅子に腰を下ろす。

「黒の側もほぼ出揃ったようです。中でもヴラド三世と予測されるランサーが頭抜けて危険でしょう」

「やっぱりあいつを召喚したか」

 ヴラド三世。名前だけ聞けば恐らく吸血鬼ドラキュラの方を思い浮かべる人のほうが多いだろう。しかしサーヴァントは知名度に大きく影響される。ここルーマニアであるならば彼は吸血鬼ではなく英雄として召喚される。であるなら彼のサーヴァントとしてのステータスはある程度上方補正がかかっていてもおかしくはない。

「こちらのサーヴァントは」

「優秀ですよ。少なくとも、質の面においては」

「だろうな」

 アッシリアの女帝、最古の毒殺者。そんなキーワードを持つ赤のアサシンセミラミス。そして岸波の召喚した俊足を異名に持つ大英雄アキレウス。獅子劫の持つサーヴァントはセイバーであること以外何かの宝具かスキルで隠されていてステータスが見えないが、ただならぬ雰囲気を感じる。現状この3騎しか確認できていないが、これだけでも優秀なサーヴァントが出揃っているのは明白だ。

「それから、ルーラークラスの召喚も確認されています」

「15体目のサーヴァント……」

 ルーラー。聖杯戦争を成立させるためにクラス。本来の聖杯戦争であればルーラーが召喚されることはまずないのだが、今回は普通の聖杯戦争のそれとは違う。聖杯大戦というイレギュラーなのだから、召喚されるのも道理である。

「では、他のマスター達と合流しましょう」

 急に頭痛がひどくなった。まるでこのシロウという神父を否定するかのように。

「いや、私はいいです」

「おや」

 驚いたのはシロウだけでなく獅子劫もだった。

「私のライダーは単独でも十分戦える力を持ってる、群れたほうがやりにくい」

 なんていうのはただの言い訳だ。この男から離れたい、それが本心だった。

「団体行動は苦手ですか?」

「まぁ、そんなところ」

「二番煎じだが、俺も」

 そういったのは獅子劫だった。

「こっちのセイバーも単騎で十分戦える」

 それを見ていた赤のアサシンは不満そうな表情を浮かべる。

「敵は完全に軍勢をして成立している。お前たちが勝手に動けば、こちらが迷惑を被るというもの。それでも手は組まぬと?」

「そうだ、悪いな神父」

 そう告げれば獅子劫は言い出しっぺの岸波よりも早く教会を出る。岸波もあとに続くように一礼をしてから扉まで足を運ぶ。

「なにかあれば協力はします、その時は使い魔で知らせてもらえれば」

 

 

 

 

「岸波はなんであいつらと一緒に行かなかったんだ」

 街中を共に歩く獅子劫が唐突に質問を投げつけてくる。

「獅子劫こそ」

「獅子劫さんだ」

 歳下から呼び捨てで呼ばれるのが気に食わないのだろうか。

「俺はまぁ、セイバーの直感を信じただけだ」

「なるほどね」

 つまりは直感をスキルとして所有しているサーヴァントなのだろうか。

「で」

「……私は視えたから」

「視えた?」

「未来視、というわけではないんだけど。危険予知っていうのかな。なんか変な光景が視えたから」

「白昼夢、聞いたことがあるな。白昼夢で未来が視える体質の人間が存在するって」

 そうなのか、初めて知ったという顔をしていた。彼女自身そのことを詳しく調べようなんて思ったこともなかった為、そんな話を聞いたのは実際のところ初めてだった。

「まぁいいか。それじゃ行くか、トゥリファスに」

 トゥリファス、ユグドミレアが管理に置く街で今回の聖杯大戦の舞台となる場所だろう。

「こっからは別行動だが、何か情報があったらくれ」

「お互いにね。死んだらだめだよ、獅子劫」

 岸波と獅子劫はお互いに拳をぶつけ合い再会の約束を交わした後に、それぞれ別行動を始めた。

「さてマスター、ようやく戦場か」

「だね」

「の前にマスター、ちぃーっと頼み事があるんだが」

 サーヴァントであるライダーが頼み事。英雄である彼に頼まれるようなことなんてあるのだろうかと、そんなふうに思いながら岸波はシギショアラを後にした。

 トゥリファスには夜には到着していた。静かな街を歩きながらライダーは自分の新たな服装に満足そうにしながら道を歩いていた。

「いやほんとマスター悪いな、これなかなかにいい感じだぜ」

 ライダー、アキレウスの頼み事というのは現代の格好をしてみたいというものだった。であるなら服屋に言って彼の服を見立ててやるだけでいい。と、言うのは簡單だが女性である岸波が男性の服を買うというのは些か違和感があった。これが獅子劫ならもっと違和感があったのだろうが。

「まぁまぁ、この方が色々便利だしね」

 実体化してもらっていたほうが都合がいいこともある。魔術師だけでなく一般人に目をつけられたくはない。例えば警官だの不良だの。だが彼がいれば童顔であり年齢がはっきりしない私の保護者に見えるので変に声をかけられることは少なくなるだろう。

「……誰だ」

 一瞬だがライダーは気配を見逃さなかった。その言葉とともに緑衣の少女が姿を現す。

「待て、私は赤のアーチャー。神父からお前たちに協力要請が来ている」

 早すぎる。協力するとはいったけども、さっき言ったばかりだ。いくらなんでも協力要請早すぎると思うんです。

「……何」

「こちら側のバーサーカーが暴走して、黒の陣営に殴り込みに行った」

 私もライダーもそれを聞いてポカーンとするしか出来なかった。当然だ、バーサーカーといえど、赤の陣営は自分のサーヴァントを制御できていないのだから。

「それで、どうする気なの」

「もちろん止めれたらそうしたい、だが無理なら―――」

「処分、か」

 アーチャーが口にするよりも早く、ライダーがそれを口にする。それに答えるかのようにアーチャーは首を縦に振る。

「どうするマスター」

「……私はそのバーサーカーがどんなものかわからないし、なんとも言えないけどでも早々にサーヴァントを一騎失うのはまずい。ライダー、行ってきてくれる」

「了解した」

 そう言うとライダーは現代の服からいつもの軽装の鎧の姿へと変わる。

「場所は案内してくれるんだろ、(あね)さん」

「ああ、ついてこいライダー」

 ライダーとアーチャーはこの世とは思えないスピードでその場から飛び去る。岸波もライダーの様子を窺うために使い魔を飛ばした後宿へと戻り、監視用の水晶玉を用意していた。






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