Fate/Apocrypha ―赤の軌跡―   作:穏乃
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言い忘れてました、すまないさん出ません!
すまないさんの代わりに別の黒のセイバーが登場しますけど、完全にオリジナルのサーヴァントになります。ステータス、スキル等はまた後程紹介させていただこうと思います。
また黒のセイバーの真名が何なのか、予想していただければなと思います。

独自解釈も多いので、設定との食い違いがあれば本当にすいません。


3話 生きる代償

「あいっ!」

 狂気に染まった戦士が背中にいつくかの岩が刺さりながらもゴレムに向かって立ち向かう。その姿はまさに、狂戦士(バーサーカー)と呼ぶにふさわしいものであった。

「あれは見捨てるしかないと思うか、ライダー」

 その様子を木の上から見ていた赤のアーチャーはその横で退屈そうにしていた赤のライダーに視線を向ける。

「説得できると思ってるあんたのほうが変わりもんだぜ、姐さん」

「我が名はアタランテだ、姐と呼ぶのはよせアキレウス」

「ははは、親愛を込めての呼び名だ。気にしないでくれ」

 不機嫌そうな表情を浮かべるアーチャーを傍らにライダーは不敵にも笑みをこぼす。

「ま、折角だ。黒の連中の顔でも拝んでこうぜ」

「よかろう。だがあやつがっ宝具を発動させたらすぐさま撤退するぞ、マスターもそこまで強いることはあるまい」

「とは言ってるが、ありゃあいつの宝具が発動すんのも時間の問題だな」

「……っ!?」

 急にアーチャーの様子が変わる。まるで何かを警戒するような仕草を見せる。

「どうした」

「……来るぞ」

 それから赤のバーサーカー、スパルタクスが身動きを封じられるまでは一瞬だった。黒のライダーなる存在とゴーレムに動きを封じられ、そのまま黒のランサーによってとどめを刺された。あれはもうダメだ、連れて行かれるな。

「あーあ、どうすんだアレ」

「……私に言うな。ともかく私が後ろから援護する、ライダーは前を任せた」

「仕方ねえか、頼むぜ姐さん」

 

 

 

 

 ライダーは少し離れたところで木の幹まで降りれば、黒のサーヴァントがこちらまで来るのを待つ。と言ってもそれほど待つ必要はなく、二人のサーヴァントが目の前に現れた。片方は白い衣装に身を包みながらも大きな柄モノを持っている。もう片方は黒い鎧を身に着けながらも大きな剣を片手で持つ女性の剣士だった。

「よう、お二人さん。あー、セイバーとバーサーカー辺りか?」

 軽口が気に障ったのか、黒のバーサーカーは唸り声をあげ始める。

「俺も舐められたもんだねぇ。たった二騎で俺を仕留めようとか、屈辱にも程があるぜ!」

 その迫力に圧倒され木に止まっていた鳥たちが一斉に飛びだつ。それに合わせて黒のセイバーと黒のバーサーカーが構える。

「俺のクラスはライダーだが、安心しろ。戦車は使わねぇ、というか使うことを禁止されている」

 今回の偵察に同行する際に、ライダーはマスターである岸波に幾つかの制限を申し渡されている。そのうちの一つが真名開放をしないこと、そして戦車を使わないこと。戦車を使わない理由は簡単だ、魔力の消費量が半端ないからだ。ライダーの戦車であり宝具でもある、疾風怒濤の不死戦車(トロイアス・トラゴーイディア)はとてつもない破壊力を秘めている。だがその分魔力の燃費が激しい。それに今回は初戦である、早々に宝具を見せるような真似はできない。

「来い。真の英雄、真の戦士というものをその身に刻んでやろう」

 黒のバーサーカーが飛び出す、それに合わせて黒のセイバーが動く。

「は、しゃらくせえ!」

 ライダーは飛び出してきた黒のバーサーカーを蹴り飛ばし、そのまま突っ込んできた黒のセイバーに槍を大きく振るう。

「くっ」

「へぇ」

 ライダーの振るった槍の一撃を大剣で受け止める。

「うぅ……!」

 体勢と立て直した黒のバーサーカーが再度ライダーに向かって突っ込む。

「バカにしてんのか」

 ライダーはそのまま体を回転させて黒のセイバーに蹴りの一撃を与え、黒のバーサーカー向けて蹴り飛ばす。

「ちっ」

 だが流石に最優のサーヴァントを誇るだけのことはあるのか、これくらいのことでは怯まなかった。

「はあっ!」

 そのまま大剣を振るう。だがその一閃がライダーの届くことはなかった。その一閃が届く前にライダーは黒のセイバーの腕を掴み、そのまま制止させる。

「お前に俺と戦う資格はねぇ!」

 ライダーの持つ槍が黒のセイバーの体を貫く。だが、それが黒のセイバーを貫くことはなかった。

「ち、そっちも硬いのが自慢かよ」

「貴様も相当な耐久力を持っているようだな」

 ライダーは槍を構え直す。

「まぁ気楽に行こうや、戦場で笑わぬ者は楽園(エリュシオン)でも笑いを忘れてしまうぞ」

「……」

 黒のセイバーはそれ以上何かを口にすることはなかった。

「……散り様は陽気がいい、と言ったぜ?」

「……っ!?」

 一瞬だった。音速、と言うよりは音よりも矢の方が先に黒のセイバーに突き刺さる。それに驚いたのは黒のセイバーだけではなく、黒のバーサーカーもであった。

「……ウゥ……っ!?」

 これほどまでに精密かつ音速で矢を放てる英雄はそうはいないだろう。それを可能にするのが彼女、赤のアーチャー『アタランテ』なのである。

「こっちもバーサーカーを失ったんだ、そっちもバーサーカーを失えば公平だろ」

 そう言ってライダーは黒のバーサーカーに視線を向ける。

「そっちのセイバーが姐さんの矢から抜け出すのにどれだけ時間がかかるのかは知らねえけど、俺の俊足より早く抜け出せれるわけねえよな…!」

 そう言い放ち黒のバーサーカーに向かって突撃する。だが、唐突に大きくなった黒のセイバーの魔力にライダーはその足を止める。

「なんだ、その宝具……」

 黒のセイバーの纏っていた黒い鎧が黒い炎となり、黒のセイバーを拘束していた矢を焼き尽くす。

憎しみよ炎となれ(アルングリム)

「その宝具の真名だけじゃてめえの真名はわからねぇが……おもしれぇぞーー」

 戦いを楽しんでいたライダーに、神の力を帯びた攻撃でないと傷つくことのない赤のライダーに右肩に突き刺さった矢と傷口から血が流れる。

「何……?」

 続いて幾つかの矢がこちらに向かって飛来する。

「何者だ?」

 矢を躱すように、ライダーは身軽に体を動かす。しかし狙撃手に目を取られている内に黒のバーサーカーがライダーを避けて森の奥へと突っ込む。赤の狙撃手に目掛けて。黒のバーサーカーは赤のアーチャーの潜んでいた大樹をなぎ倒すような勢いで突進する。その衝撃で、思惑通り赤のアーチャーの潜んでいた大樹が転倒する。

「姐さんっ!?ーーちぃ……」

 赤のアーチャーに気を取られている間にも黒の狙撃手の攻撃は続く。

「ーー……っ。動きを読まれた!?」

 攻撃を躱していたはずなのに、膝に一撃をもらってしまった。

「姐さんは撤退したか、なら俺ももう用はねえ」

 ライダーの口笛とともに空が割れ、そこから三頭立ての戦車が現れる。ライダーの元へと現れたそれは、ライダーを乗せ(そら)へと駆け上がる。

「素晴らしい、素晴らしいぞ黒のアーチャー!!俺を傷つけることのできるお前との戦いは宿命だっ!!オリンポスの神々よ、この戦いに栄光と名誉を与えたまえ!」

 姿の見えぬ黒のアーチャーに向けて、ライダーは高らかに叫ぶ。

「黒のアーチャーよ、勝負はまたの機会だ!次こそは貴様の顔を拝むとしよう!」

 その姿は撤退というよりは、本当に勝負を先延ばしにするような、そのような風格を滲み出していた。

 

 

 

 

 宿の一室で岸波とライダーは向かい合いながら、深刻な雰囲気を漂わせていた。

「ライダー、私戦車は使うなって言ったよね」

 まぁ、当然こうなる。ライダーの戦車は魔力の消費量がかなり多いと何度も説明している。それにこんな早期の段階であんな宝具を見せてしまったのだ。あれでは真名がバレてしまったも当然である。

「いやまぁ、それは悪いとは思ってるんだけどよ。でも俺は戦士であり英雄だ、それ相応の礼儀ってのがある」

「礼儀……」

 岸波白野にとって、その言葉はくだらない以外の何物でもなかった。

「そんなもの、勝利でどうとでもなる。誇りだの名誉だのそんなものね、ライダー……」

 岸波は言葉を溜め込んでから、放つ。

「敗北の前ではなんの意味もなさないの。相手を騙してでも勝たないといけないの。それが戦いなの」

「……そうかあんたとは根本的に相性合わないようだな」

 ライダーは岸波の言葉を聞くなり大きくため息をつきながら床に座り込む。

「言っとくが俺は何をしてでも勝つなんてそんなくっだらねぇ戦い方はしねぇし従わねぇからな」

「……」

 仕方ない。

「令呪を以って命じる」

「ーーなっ!?」

「私のやり方には従いなさい、ライダー」

 令呪に宿った強力な魔力が、ライダーを包み込む。

「ふ、ふざけんなよ……!」

 それだけ告げると、岸波は無言で部屋を後にした。






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