Fate/Apocrypha ―赤の軌跡―   作:穏乃
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お久しぶりです!
約二週間ぶりの投稿となります。活動報告の方でも報告させてもらったとおり、しばらく療養しておりましたが、ある程度時間もできたのでようやくの投稿となります。
執筆はしていなかったものの、話の構成は色々練っていたので、これから一気に書いていこうと思います。


6話 呪われた魔剣

()け」

 黒のセイバーが掲げる大剣から放たれる黒い炎が竜牙兵を薙ぎ払う。

「全く、赤の陣営はこの程度の戦力で我々を止めれるとでも思っているのか……」

 次々と現れては攻撃を仕掛けてくる竜牙兵を黒のセイバーは退屈そうに薙ぎ倒していく。

「……ッ」

 と、その時炎の一撃が黒のセイバーに向かって一直線に放たれた。しかし黒のセイバーの鎧はその一撃をまるで何もなかったかのように受け止めた。

「不意討ちか、にしては派手だな」

「失敬、不意討ちのつもりで放ったわけではなかったのだがな」

 黄金の鎧を纏った槍兵。黒のセイバーは一目で彼が赤のランサーであることを理解し、剣を構える。

「黒のセイバーとお見受けする」

「貴様は赤のランサーで違いないな」

 お互いがお互いを確認し合ったところで、二人の闘気が一気に膨れ上がる。

 刹那、赤のランサーが黒のセイバーの懐へと一気に詰め寄る。振り払われた槍の一撃を大剣で流すように弾けばそのまま何度も金属音が混じり合う。

「なるほど、貴様かなりの腕前を持ったサーヴァントであるな」

「そういう貴様もな」

 お互いの一撃一撃を感じ取り、赤のランサーと黒のセイバーは笑みを零す。

「しかしだな黒のセイバー、一つ貴様にいいことを教えてやろう」

 黒のセイバーの攻撃も赤のランサーの攻撃も、殆どダメージになっていないのは傍目で見ていてもわかった。お互いに鎧の宝具があり、それがある一定ランク以上の攻撃でないと受け付けないことも。それを理解した赤のランサーは黒のセイバーの大剣を弾きながら距離を取れば、魔力を収束させる。

「俺は英雄だ。そして真の英雄は、目で殺す」

 梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)。赤のランサーのその視線がまるで魔力を帯びて具現したかのように細いビームのような一撃が黒のセイバー向かって一閃する。

憎しみよ炎となれ(アルングリム)ッ!」

 反射的に黒のセイバーは真名を開放し、その一撃を黒い炎を纏った大剣で受け止める。黒のセイバーの周りの草原が一瞬で荒野と成り果てるほどの魔力が爆発となって辺りを焼き払う。

「ほう、今の一撃を受け止めるか」

「くっ……」

 黒のセイバーはその手に持つ大剣を地面に突き刺し、膝をつく。受け止めることはできたがあくまで受け止めることができたのは宝具である鎧を攻撃へと転じたからである。そしてこの鎧を攻撃へと転ずるということは、鎧としての宝具は機能しなくなるということである。黒のセイバーの宝具、憎しみよ鎧となれ(アルングリム)憎しみよ炎となれ(アルングリム)はどちらかしか発動することができない。宝具を攻撃へと転ずることで黒のセイバーは赤のランサーの宝具の余波をある程度受けていたのだ。

「……」

 マスター、第二宝具の使用の許可を。

 黒のセイバーはマスターであるゴルドに向かって念波を送る。赤のランサーはまだ槍を使った宝具を使用していない。何か隠している。一気に決めなくてはこちらに勝機はないと悟ったのか黒のセイバーは大剣に魔力を込める。

「……ふ」

 必ず決めろ。それを許可と受け取った黒のセイバーは小さく深呼吸をする。

「貴様は危険だ、赤のランサー。故に、決めさせてもらう」

 今まで黒のセイバーの剣が纏っていた黒い炎ではなく、黄金の輝きがその手に持つ大剣を輝かせる。

「宝具……。先程の宝具では対抗できなさそうだな」

 そう告げると赤のランサーの持つ槍が赤く染まる。

「貴様が何者かは知らんが、こちらも決め手を撃たせてもらう」

 黄金の輝きと、紅蓮の輝きが相対する。

「灼き尽くせ、梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)!!」

 赤のランサーは後退するように飛びながらそのまま紅く燃える炎の槍を投擲する。

呪われし黄金の魔剣(ティルヴィング)!!」

 黄金の大剣から放たれた斬撃と赤のランサーから放たれる紅蓮の投擲が、一帯を大きな爆発で包み込んだ。

 

 

 

 

「ーーどうして貴方が」

「愚問ですよ。此度の聖杯大戦において私は黒のアーチャー、貴方は赤のライダーとして顕現した。互いに懸ける望みがあり、未練があった。貴方も、私も」

 森の中で只々、沈黙するしか無いライダーがアーチャーに視線を向ける。

「全く甘いに程があるも。生前からそこだけはは直りませんでしたか。貴方は一度味方だと認識したものには、とことん甘い。これは聖杯大戦、情けなど掛けている余裕はないのですよ」

 わかりましたか、アキレウス。

 アーチャーはそう、当然のようにライダーの真名を口にした。それに対してライダーは黙って首を縦に振る。

「ケイローン、貴方は私の兄であり友だった。だから行きます、先生」

「そんな言葉は不要ですよ、赤のライダー」

 黒のアーチャー、ケイローンの言葉を受け赤のライダー、アキレウスはその俊足の踏み込みを以って黒のアーチャーの懐に入り槍を一刺しする。だがまるでそれが来るのがわかっていたかのように黒のアーチャーは最低限の動きだけでその攻撃を躱す。

「な……ッ!?」

「忘れましたか。貴方にこの槍を与え、基礎を教えたのが誰だったか」

 ライダーの戦い方は我流ではない。アーチャーという師がいて、その師から基礎を教わっている。そしてライダーの持つ槍はもともと両親の結婚祝いにケイローンが贈ったもので、その間合いも完全に把握されている。

 アーチャーはそのまま一歩踏み込み、弓を番える。ライダーの頭蓋を狙った零距離射程からのからの一撃。

「死にますよ、ライダー」

 ライダーはその一撃を背を反らすことでギリギリ躱すも、その頃にはアーチャーの次の一撃が迫っていた。無理矢理躱したことで体勢の崩れているライダーに蹴りが放たれる。大きく吹き飛ぶもライダーは間一髪のところで受け身を取り体勢を立て直す。

「いかに不死の貴方とて、同じ神の力を持つ私なら傷つけることはできます」

「なるほど、手の内はお見通しってか」

 ライダーは一定ランク以上の神性の力を帯びた攻撃でないと傷つかない肉体を持っている。だがアーチャーはその一定ランク以上の神の力を所有しており、傷つけることができる。そしてライダーの基礎を教えただけたり、その動き一つ一つの癖を読まれてしまう。

「だが」

 ライダーの動きが変わる。

「これは教わったものではない!」

 ライダーは自分の持つ槍を空中へと手放し、そのまま弱点である踵でアーチャーを蹴り飛ばす。そして落下する槍を手に取ればそのままアーチャーに狙いを定めて一気に突っ込んだ。最後の一突きをアーチャーは躱すも、掠めていたのか首筋から一滴の血が流れる。

「ふむ。英霊になっただけのことはありますか」

「当然。教導するだけのアンタと違って数多の戦場を駆け抜けたからな」

「いや良かった、教え子を一方的に殺戮するのは後味が悪い」

 お互いがお互いに、不敵に笑みを浮かべる。お互いが一気に踏み込もうとした、その時だった。

 ーーライダー、その場から離れて!

 咄嗟に脳から聞こえたマスターの言葉にライダーは足を止めた。それに合わせてアーチャーも動きを止めていた。

「んだよ、マスター。今大事なところなんだがーー」

 ーーバーサーカーの、スパルタクスの宝具が来る!

「ッ!?」

 その言葉を聞き辺りに気を向けると、膨大に膨れ上がった巨大な魔力を感じる。

「ちっ……」

 目の前に黒のアーチャーがいるのに、また決着をつけることができずこのまま撤退するのが悔しいと、そう表情に出ながらもライダーは撤退せざる負えなかった。バーサーカーの宝具の火力は未知。これほど魔力を溜め込んだのだ、この戦場一帯は消し飛ぶだろう。自分もここにいればそれに巻き込まれてしまう可能性が高い。

「アーチャー……」

 アーチャーも状況をマスターから聞いたのか冷静な表情をしながらも撤退するべくライダーと距離を取る。

「ライダー、決着は次の機会に」

 そう言い残し、アーチャーは霊体化して消える。

ーーライダー!

「……くそっ」

 

 

 

 

 圧倒的だった。赤のバーサーカーの宝具によって一帯は荒野と化し、竜牙兵もホムンクルスも戦える状況ではなかった。

「なんて威力だよ……」

 と、その時ライダーの脳内に再び声が聞こえる。

ーー全ての赤のサーヴァントに告げます。

 赤のマスターの一人、シロウの声であることにすぐにライダーは気づく。

ーー我々はこれより大聖杯を奪います。一度庭園の方に戻ってきて下さい。

「……マスター、どうするよ」

 ライダーは今の声をライダーを通して聞いていたであろうマスター、岸波白野に念波を送る。

ーー……一度戻ろう、本当に大聖杯を確保できるかもしれない。

「あいよ」

 そういってライダーは空中に浮かぶ庭園の方へ視線を向ける。その刹那だった。

「……ッ!?なんだッ!?」

 それは黄色く帯びた魔力だった。電気とも言い難いそれがライダーを包み込む。しかしライダーには神の力を帯びた攻撃でないと傷つけることができない。その魔力が攻撃のものであったが、ライダーには一切外傷はなかった。それどころかライダーはその魔力を振り払う。

「……何だあれは?」

 振り払った魔力を辿ると、そこには雷で形成された大樹が聳え立っていた。

「あれは、宝具か?」

 ライダーがそれを目視してすぐに、爆発で辺りが爆音と煙で覆われた。



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