アキレウスとケイローン実装おめでとうございます。
アポクリファコラボ、皆さん頑張って下さい。
さてさて、久しぶりの更新なんですがまぁ相変わらずのぐだぐだ感が否めないですけど、先はもっとしっかりした内容で固めていきたいですね。
「その無念を、憎しみを晴らすために聖杯を求める貴女であれば、我々の提案を受け入れるのではないでしょうか。黒のセイバー……いえ、スウァフルラーメ?」
「……」
スウァフルラーメ。そう呼ばれた黒のセイバーは言葉を発することもなく シロウを睨みつける。
「スウァフルラーメ、それが貴女の真名でしたか……」
彼女の真名に最初に食いついたのは、
「……確かに現状お前たちに組すれば、聖杯は手に入ったも当然だろう。しかし、その聖杯は私の願いを叶えることが可能なのか?いや、違うな」
「お前に組みしたサーヴァントは、聖杯で願いを叶えることができるのか?」
「可能です」
即答だった。シロウは一片の迷いもなく、そう答えた。
「しかし、現状両側のバーサーカーとこちらのランサーしか消滅していない、それでも願いを叶えるだけの魔力があると?」
「はい、この大聖杯には第三次聖杯戦争に参加した私以外の全てのサーヴァントの魔力があります。貴方達全ての願いを叶えても問題ないでしょう」
「……」
セイバーは無言でシロウの元へと歩み寄る。
「セイバー、貴女何を……?」
「私は聖杯で願いを叶えることが出来さえすればなんだって構わない。ただ、それだけの話だ」
「な……」|
黒のアーチャーは絶句する。
「何を言っているのかわかっているのですか……!?」
「それはこっちのセリフだ。なぁ、キャスター」
黒のセイバーは先程から傍観していた黒のキャスターに言葉を投げかける。
「……そうだね。僕からすれば何故彼らが一斉に襲いかかって黒の側を殲滅しないのか、理解できないといったところか。ルーラーの切り札たる令呪は君には通用しないだろうし、僕なんかじゃ君たちには太刀打ち出来ないだろうね。だからーー」
そう言って黒のキャスターはシロウの方に歩み寄る。
「キャスター、貴方まで……!?」
「ただし条件がある」
黒のアーチャーの言葉を無視して黒のキャスター、アヴィケブロンは言葉を紡ぐ。
「どうぞ、出来る限り考慮しましょう」
「僕のマスターに手を出すな」
その言葉をどう受け取ったのか、シロウは笑みを零した。
「つまり?」
「彼に危害を加えるのはやめろ、ということだ」
それを隣で聞いていた赤のアサシンが、高らかに笑う。
「己の身と引き換えに主の安全を保証させるとは、なかなか天晴なサーヴァントではないか」
「キャスター、貴方まさか……」
黒のアーチャーは冷徹な視線を黒のキャスターに向ける。
「では、どうぞ手を」
「手袋越しで失礼」
黒のキャスターはシロウの差し出した手を迷うことなく握りしめ、契約の詠唱を始める。
「止めなさい、キャスター」
二人の契約を止めようと、黒のアーチャーの放った矢に対して黒のセイバーは剣を振るい、弾き飛ばした。
「あまり我の庭園を傷つけてくれるなよ、黒のアーチャー」
「セイバー、貴女まで……」
「むしろお前はこの状況でこちら側に付かないというのか、どこまでも哀れな奴だ」
この状況。そうだ、現在天草四郎時貞側に殆どのサーヴァントが付いてしまっているのが現実だ。黒のランサーと黒のバーサーカーは消失し、黒のセイバーと黒のキャスターが赤側に付いてしまった。赤のライダーがこちら側に付いていると仮定しても黒のライダーと黒のアーチャー、そしてルーラーしかいないのだ。不利な状況なのは明らかだった。黒のアサシンも現状赤側に付いていないとはいえ、味方とも言えない。つまり、現状は最悪だった。
「さて、早速ですが命令ですキャスター。包囲して下さい」
「了解した、我が主」
契約が完了した黒のキャスターはゴーレムを生み出せば、数体のゴーレムでルーラー達を包囲する。だがそれを赤の稲妻が一刀両断する。
「何!?」
突然の出来事に赤のランサー以外の赤側のサーヴァントが唖然とする。赤のランサーは現れたそれに対して疾風の如く槍を振るう。それを赤雷が受け止める。
「なるほど」
その言葉は2つの意味がこもっていたのだろうか。シロウは黒のセイバーによって弾き飛ばされた矢の行き先が天井で、勢いで天井が壊されていることに気付く。それによってこちらの位置を知らせていたのだろう。
「赤のセイバーは貴女でしたか。反逆の騎士、モードレッド」
「は、俺の名前を気安く呼んでんじゃねえよ!」
赤のセイバーは当初その顔を覆っていた仮面を既に外しており、その敵意をシロウに向ける。
「セイバー、貴様裏切る気か!?」
「馬鹿かてめえ!」
赤のランサー、カルナの槍撃を弾き飛ばせば赤のセイバーは怒りを顕にしながら大剣を構える。
「先に裏切ったのはそっちだ!俺のマスターを殺そうとしやがったじゃねえか!その時点でお前らは問答無用俺の敵なんだよ!」
そう言って赤のセイバーは残りのゴーレム達を一掃する。
「おい、撤退すんぞ」
赤のセイバーは赤のライダーに視線を向ける。赤のライダーもそれを聞けば無言で頷き、ルーラーと黒のアーチャーに決断を促す。
「シロウ、追うぞ」
「いや、ここは僕に任せてほしい」
背を向けて庭園を後にする彼らを追おうとする赤のアサシンを静止して、歩み出たのは黒のキャスターだった。
□
赤のライダーは気が付けば黒のアーチャーとルーラーの前から姿を消していた。もちろん赤のセイバーからもである。向かう先は一つ、マスターである岸波白野の下である。
「よく帰ってきたよ、ライダー」
戦場となったユグドミレニアの管理する草原から離れた場所で、岸波白野は赤のライダーから詳しい現状を聞いていた。
「あの人がまさかサーヴァント……」
シロウ・コトミネはただならぬ人間ではないと、最初に警戒していたがまさかサーヴァントだなんて誰が予想しただろうか。
「まぁ普通に考えて勝てないでしょうね、赤側に」
戦力的にも絶望的なのは確かだ。頼もしかった赤側のサーヴァントがセイバー以外全て敵になったのだから。加えて赤のランサー、彼も相当な手練であるのも確かだ。
「……」
まずは黒側の陣営と合流したほうがいいだろう。一人ではまず勝ち目がない。
「ミレニア城塞は……」
高台から惨状を眺めると、そこには異形なものがあった。あった、という表現がおかしいかと思うかもしれないが、それは確かにそこにあった。
「あれは……ゴーレム?」
「まさか、交換条件の意味って」
僕のマスターに手を出すな。彼は確かにそう言った。彼の宝具には強力な魔力回路を持った魔術師を炉心としなければ起動しない。恐らく彼は全マスターであるユグドミレニアの魔術師を炉心としたのだろう。
「……」
恐らく岸波白野が彼の立場でも同じことをしていただろう。
「ってんなこと言ってる場合じゃないか」
そう言葉を零せば、赤のライダーの背中に抱きつく。
「……は?」
「いや、このままミレニア城塞まで連れてって」
「……は?」
「だから、このまま」