【未完終了】インフィニット・ストラトス ━風穿つ者━   作:針鼠

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VSセシリア
一話


「うわー……馬鹿みたいにでか」

 

 そびえ立つ鉄門扉。

 春を象徴するといって過言ではない桜の花びら舞う季節。少年は大きな門、その先に広がる広大な敷地と門扉に比例するように巨大な建物の群を見上げていた。

 

「つか本当に馬鹿じゃねえの、この広さ」

 

 げんなりと吐き捨てる。

 彼の口から早々にこうも愚痴が続くには彼なりの理由がある。まずはその経緯(いきさつ)から物語は始まる。

 

 

 

 

 

 

 少年は紙を眺めていた。じっと。穴が空くほどという言葉が当てはまるほどに。

 少年が紙を眺めるその場所はアパート。正確には、彼が住まう二階建てアパートのポスト前。

 

 三月下旬。それは多くの人間が新たな生活を踏み出す直前であり、かくいうこの少年もまた、数日後から高校生として近くの高校へ入学する予定だった。

 生まれつきの三白眼で、初対面だと限りなく印象の宜しくない自分をどうクラスメートにアピールしていくか。そんな他愛のない不安と新たな世界への期待に胸高鳴らせる。そんな普通の一日になるはずだった。

 

 わけあって一人暮らしの彼は夕飯の買い物を終えて帰ってくると、ルーチンワークのように自分の名札のポストを開けた。

 中には夕刊と封筒が二通。

 買い物袋をさげたはそのままに、空いている右手で夕刊を取ると脇にはさみ、続いて封筒を重なったまま掴む。何気なく見ればなんと入学先の高校からではないか。

 

「?」

 

 妙ではあった。入学式まであと二日。新入生への案内含めすでに必要書類諸々は送られてきている。今更連絡があるとはよほど急な内容なのか。

 そう考えると彼はその場で封筒を開くことにした。一旦買い物袋は足元へ。夕刊ともう一通の封筒はポストへ戻す。

 そうして開けた封筒には紙が一枚だけ。そして一文だけが記されていた。

 

『合格取り消し通知』

 

「………………」

 

 人がショックのあまり言葉を失うとはこのようなことをいう。

 合格通知というのは聞いたことはある。なにせついこの間貰ったばかりだ。しかし合格取り消し通知とは何だ。聞いたことも見たこともない。

 入学前に犯罪に手を染めて警察に厄介になったというならわかるが、自分は覚えがない。目つきは悪いが本物の悪人ではない。

 

 今一度紙を見る。しかし記された文章に変わりはない。当たり前だ。

 

「ひとまず保留。保留ったら保留」

 

 目の前の現実から全力で逃げ出したい少年の逃避先はもう一通の封筒へ。

 半ば放心状態で開けた封筒の中も紙が一枚。ただしこちらは一文ではなく、そしてその内容は少年の意識を再覚醒させるほどの威力を秘めていた。

 

御堂(みどう) (かえで)殿。この度は《IS学園》入学おめでとうございます』

 

 そう、これこそが合格通知である。ただ、この学園を受けた覚えが彼には、楓には一切無いのだが。

 

 

 

 

 

 

 《IS学園》。それは世界最強の兵器、《インフィニット・ストラトス》――――通称、《IS(アイエス)》に携わる人材を育成すべく日本に設立された特殊国立高等学校である。

 その特殊性を軽く説明すると、まずこの学園は日本を含んだあらゆる国家機関に属さず、また干渉を許さずとする条約が存在する。ちなみに条約の名は《アラスカ条約》。

 たかが高等学校には相応しくない規則なのだが、それがまかり通ってしまうほどに《IS》という兵器は常識外れなのだ。なにせこれが世界に登場したその瞬間、世界が有していたあらゆる武力が紙ほどの威力しか持たなくなってしまったのだ。

 

 自由自在に空を駆け、特殊兵器を搭載するそれは、たとえ一機であっても小国程度滅ぼせる可能性を持つ。実際に出来るかどうかが問題ではない。そんな可能性を秘めている、それだけで危険性としては充分だった。

 そして同時にこう考えるのも人間の常。

 

 あの超兵器が欲しい、と。

 

 それほどの兵器が無尽蔵に量産され、世界が再び争いに溢れたとき、おそらく世界は今度こそ致命的な傷を負うことになるだろう。

 

 それを考慮したのかどうかは知らないが、時代を変えた超兵器、《IS》の開発者はそこに制限を設けた。《IS》において必要不可欠であると同時に最大のブラックボックス、コアの数を絞った。その数、四百六十七。これが現存するコアの数であると同時に、世界で稼働可能な《IS》の最大数となる。

 波乱と抑止。両方を為した開発者の名は篠ノ之(しののの) (たばね)

 彼女は、楓の母親でもあった。

 

 

 

 

 

 

「マジで広すぎだってんだよ……」

 

 入学早々疲労困憊な楓。

 これからの三年間の寮生活に必要な大荷物を背負ったまま何時間と敷地を彷徨っていればそれも仕方ない話だ。しかし、完全無欠に遅刻だった。

 偶然出会った優しい用務員さんに道を尋ねることが出来なかったならばもっと遅れていたことだろう。

 

「初日から遅刻とはいい度胸だな」

 

 ようやく辿り着いた教室の前には、何やらおっかない顔をした美人が立っていた。

 しゃんと伸びた背筋。黒のスーツを着こなす出で立ちは、女性ながら格好良いという言葉が適切だ。他人事ならそう感心も出来ただろう。

 ――――氷のような視線が自分に突き刺さってさえいなければ。

 

「すんません。道に迷っちゃっ――――でッ!?」

 

 言い訳をさせることなく下げた頭に衝撃。

 悶絶しながら顔を上げると、女性はポンポンと出席簿を手で弄んでいる。どうやらあれで殴られたらしい。

 

「早速説教でもしてやりたいところだが、入学初日で時間がない。運が良かったな」

 

「出席簿で頭殴られるのは果たして運が良いっていえない気が――――ごめんなさい黙ります」

 

 無言で出席簿を振り上げるので素直に謝って間合いをあけた。

 女性は無言で出席簿を下ろした。

 

「私の名は織斑(おりむら) 千冬(ちふゆ)だ。貴様のクラスの担任となる」

 

(織斑……千冬……)

 

 その名はとても有名だ。何を思い出すかは人それぞれであろうが、楓が真っ先に思い出したのは、

 

「あー……あんたが『ちーちゃん(・・・・・)』か」

 

「何……?」

 

「あ」

 

(やべ)

 

 思わず考えなしに口に出てしまった。おかげで千冬の眼の色が変わり、改めて楓を睨んでいた。

 

『はーい、それでは入ってきてくださーい』

 

 妙な空気を切り裂いたのは扉の向こうから聞こえてきたなんとものんびりした声だった。

 

「ういーっす」

 

「待て貴様――――」

 

 これ幸いと逃げるように教室へ。千冬の声は聞こえないものとして無視した。

 

 

 

 

 

 

 扉をくぐるとまず目に入ったのは眼鏡の少女だった。否、少女ではない。

 教壇に着き、制服姿ではない彼女は千冬と同じく教育者の立場なのだろう。あまりの童顔ぷりに勘違いするところだった。外の千冬は自身を担任と言っていたので、彼女は副担任なのだろうか。

 

「は、初めまして! 山田(やまだ) 真耶(まや)です。この度はどど、どうぞよろしくお願いしまふ!」

 

「……あ、いえいえご丁寧にどうも」

 

 何故いきなり副担任から恐縮気味な自己紹介をされなくてはならないのかわからないが、とりあえずこちらも会釈して返す。きっとあがっているのだろう。故に最後噛んだのは指摘しないのが優しさだと思う。

 

「そ、それでですね」深々と下げた頭をもたげて「たった今クラスの皆さんの自己紹介が終わったところなので、その、自己紹介を……お願いします…………」

 

「なんで最後泣きそうになるんすか! 大丈夫ですよしますから!」

 

 これではこちらが悪者だ。何もしていないのに。

 

 クルリと体の向きを入れ替えて、楓は名乗る。

 

「ども、御堂 楓です。よろしく」

 

 沈黙は数秒。

 

「「よろしくー!!」」

 

 黄色一色の声が返ってきた。

 それもそのはず。見渡せば女子。女の子。少女。淑女。

 見渡す限りの花の園。

 

 楓に驚きはない。これはクラスの偏りや嬉しい偶然などでもないのだ。どちらかといえば、楓の方がこの場の異端。

 何故なら――――、

 

 最強の兵器、《IS》は女性にしか操れないのだから(・・・・・・・・・・・・・)




初めましての人もそうでない人もこんにちわー。

>この作品は以前友人リクエストで書いたもので、すでに二度完結させているものです。
どうやらアニメの二期がやるらしく、それを見て以前の続きを書いて欲しいとせがまれたのでとりあえず前回の完結部分まで書いて、アニメ二期見て書けそうだったら書こうかなと思ってます。

>作者は小説の方は読んでないので知識はアニメとウィキになります。ですので色々誤差が生じるかも? そのときは是非とも教えて下さい。

ではでは、とりあえずアニメ一期の完結までお付き合いくだされー。
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