【未完終了】インフィニット・ストラトス ━風穿つ者━   作:針鼠

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四話

 あがった土煙。下方にある屋内演習場。戦闘で穴の開いた屋根から中を見やれば、八脚型の見慣れないISがいた。情報通りならばあれが直接一夏を狙っていたという相手だ。

 

 

『畜……生っ!!』

 

 

 聞こえてきた苛立った女性の声。ダメージを受けているらしい第二世代、アラクネは緩慢な動きながら立ち上がろうとしている。そこへ、

 

 

『待て!』

 

 

 アラクネが吹き飛んできた方向から白色のISが現れる。純白の装甲に、手には零落白夜。一夏だ。

 

 そのとき、ゼフィルスの操縦者が、弱っているアラクネに追い打ちをかけようとする一夏に向けてライフルを構える。

 

 

「させるか!」

 

『邪魔だ』

 

 

 させまいと動く楓より先に、複数のビットがこちらに向けてビームを放つ。躱さないわけにはいかず、当然敵の攻撃を阻止出来ない。

 

 

「一夏躱せ!」

 

『ッ!?』

 

 

 一瞬早く届いた声に気付き、一夏は急停止。その目の前に高出力のエネルギーが叩きつけられる。頭上を見上げる一夏とゼフィルスの視線が交錯する。

 そのとき、ゼフィルスの操縦者の気が僅かに揺らぐのを楓は感じ取った。それが何なのか。理解する前に状況はさらに転がる。ただし楓達にとって好い方向に。

 

 

『――――これまでだな』

 

 

 ゼフィルスの背に突きつけられた刀剣。緋色の機体、箒だった。さらに、一夏の動きが止まった隙に逃げ出そうとしていたアラクネをラウラがAICで止め、シャルロットが銃を突きつけている。

 

 

「終わりだ。降参しろ」

 

 

 そう口にしながら、楓は体中から汗が噴き出るのを止められなかった。完全に取り囲んだ。仲間のひとりを拘束まで追い込んだ。それでも尚、勝ったという確信が持てなかった。

 

 ゼフィルスの操縦者はただ笑った。その意味を真に理解出来ていたのはやはり楓だけだった。

 

 

『なっ!?』

 

 

 まず狙われたのはアラクネを拘束するラウラとシャルロット。箒に背を取られたまま、彼女に感知されないほどの早撃ちで下方の2人を狙う。距離があったこともあり回避は容易かった。しかし動かざるを得ない以上、AICは解除せざるを得なかった。

 

 

『貴様!』

 

『遅い』

 

 

 箒としてはまさかこの状況で動くまいと思っていたところの攻撃。呆然としていたところから回復し攻撃に動くも、すでにゼフィルスはその場にいなかった。急速ターン。ふたりの立ち位置が入れ替わる。箒からしてみれば消えたかのように思える動きだろう。

 刀を振り上げたまま硬直している背中に蹴撃が叩きつけられる。

 

 

『よくも箒をッ!!』

 

 

 地上から上空のゼフィルスに突貫してくる一夏を、しかしゼフィルスは容易く迎え撃つ。ビットで一夏の動きを制限、先読みの如く放たれたライフルの一射が一夏を捉える。咄嗟に零落白夜を盾にして防ぐも勢いまでは殺せず吹き飛ばされてしまう。

 

 

『……何故飛び込んでこない?』

 

 

 ゼフィルスの操縦者が楓に向けて問いかける。

 

 そう、楓だけは勝利が確定したと思われた瞬間も気を抜かなかった。それなのに最初の攻撃も、今の攻防でも手を出してこなかった。何故だと、彼女は疑問を抱く。

 それに対して楓は正直に答えた。

 

 

「無闇に戦って勝てるレベルじゃないからな」

 

 

 無闇に飛び込んでもまとめて撃ち落とされる。ならば今以上にこちらの増援が集まるまで時間を稼ぐ必要がある。ここには学園の教員のみならず、上級生達だっている。いくら相手が強くとも、多勢に無勢という言葉は当てはまるものだ。

 

 その返答に、彼女は感心したように口端を歪めたあと、

 

 

『――――――――』

 

 

 下方のアラクネに向かって何事かを呟く。この状況ならおそらく撤退。

 

 

「逃すと思うか?」

 

『止められると思っているのか?』

 

 

 見下したように言われるも、言い返すことは出来なかった。

 

 

『それなりに楽しませてもらった礼だ。受け取れ』

 

「なにを――――」

 

 

 再びビットによる波状攻撃。それをビットを蹴ることで体勢を変え回避。目まぐるしく視界が揺れる中で、下方にいるアラクネの動きが変わったのに気付いた。全身スーツの人物、おそらくは操縦者が機体を降りて駆け出す。それと同時に機体はラウラ達の方目掛けて走りだした。攻撃の意図など無い。当然ながら知性も感じないただの直進。

 

 

「逃げろ! そいつは自爆――――」

 

 

 その意図に気付いて叫んだ一瞬。仲間を案じたほんの一瞬、決して外してはいけない楓の意識からゼフィルスが消えた。

 

 ヌッ、と目の前に現れたゼフィルスのビット。視界の端でゼフィルスの操縦者の口元が歪むのを見た。

 

 瞬間、目の前のビットが発光し、爆散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビットによる防御は間に合わなかった。回避も。

 しかし楓は無事だった。

 

 目の前に広がる水のヴェール。これが何かなど、今更考えるまでもない。

 

 

『大丈夫?』

 

 

 悪戯を成功させた子供のような、くすぐるような少女の声が飛んできた。見れば下方のアラクネの爆発から皆を守っているのも同じ水のヴェールだった。

 

 

「敵は?」

 

『逃げられたわ』

 

 

 楯無の返答は予想されたものであり、実際楓も、索敵するも反応は無い。楯無の声には逃したことに対する僅かな悔しさのようなものを感じたが、はたして、逃げたことで助かったのはどちらかと思うと楓はほっとした気持ちがあるのも否めなかった。それほどまでにあのゼフィルスは強かった。少なくとも、こちらに犠牲を出さず勝つことは不可能だっただろうと。

 

 

「ところで」楓は安堵と呆れを含めた息を吐き「そろそろ放してやれよ」

 

 

 水のヴェールの中で一夏を守るように抱き抱えている楯無。おそらくわざとだろう、胸を一夏に押し付けるように倒れ込んでいる。

 

 指摘すると、下方の少女はこちらを見上げた。その表情は意味深な笑みを浮かべている。

 

 

『あらあらー? もしかして、おねえさんが織斑君と仲良くて妬いてるのかなぁ?』

 

 

 殴りたい笑顔というのはこういうものかと、初めて知った思いだ。

 

 

『それに君のことも守ってあげたんだし、なにかお礼があってもいいわよね』

 

「ぐっ……」

 

 

 それにはさすがに言葉が出ない。実際、先ほどの状況では少なくないダメージは被っていただろう。大事にはならずとも、助けられた事実は変わらない。

 

 

「お、脅す気か? まさかメイド服を着て接客しろとか無茶ぶりを……」

 

『それも面白そうだけど、それはまた今度。――――今度から楯無って呼んで?』

 

 

 片目を瞑って可愛らしく微笑む美少女に対する言葉も立場も、今の楓は持ち合わせていなかった。




閲覧ありがとうございましたー。

>なんと3週間の間をあけて、これっぽっちの文章しか書けなかったという体たらくッ!!

>どうもこんにちわー。お盆からずっと夏風邪?的なものに悩まされている今日このごろ。皆さんは体調を崩さないよう気をつけてください。特に冷房は計画的に!

>ではあとがきを。
本当ならもっとまどかちゃんの強者絶望加減をもっと強調したかったのですが、イマイチ上手くいきませんでした。やはりオータムさんと絡ませるべきだったか、と今更後悔してたりしてなかったり。

>実はこれでVS?章は終わりです。締まらなさ半端ないっすが。
次章にアニメのサイドストーリー的なのと簪ちゃんのに絡ませて、その次に修学旅行ってな感じですかねえ。まあ予定は未定とよく言ったもんですが。

ではではまた次回にー
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