World High school 〜CROSS〜 作:火神零次
あ、FGOにて夏イベントのジャンヌ(アーチャー)が出てきてくれました。BBに関してはろくでもないことをやると思ってますね。
活動報告にて次回の話などの方針などが書かれていますので、気になる方は活動報告を確認ください。
「ねみぃ……」
そんなことを呟きつつ、学園の廊下を歩くムラクモ。理事長からの呼び出しがかかり、理事長室に向かっている最中だ。
「失礼するぞ~」
ガチャリとドアを開けると、理事長室に理事長である凛と爛、翔、そして怜が居た。
「あり? 俺だけだと思ってた」
素直な感想をいうと、苦笑を浮かべた爛。凛が溜め息をついた。
「んで、何で怜がいるんだ」
ムラクモが気になっていたのは、怜がいること。このメンバーで考えられることはあるのだが、できればそれがないようにしてもらいたいと思いながらも、話を聞くことにした。
「今回は、依頼を受けてもらうわ」
「はぁ、それは聞いたが」
「紫からの依頼よ」
聞いていたことを切り出されたムラクモは、眠たそうな顔をしながら聞き流しているなか、ピタリとムラクモの動きが止まった。
「紫? 何で紫からだ」
「理由があるのよ。ムラクモ、『幻想郷』に行ったことあるわよね」
「あぁ、そりゃまぁ、見て回ったぞ」
幻想郷、妖怪と人が共存して暮らしている世界。幻想郷はそう易々とは行けない。だが、行ける方法を持っている者はいる。
幻想郷の話題を出されたとなると、考えられるものは一つ。それが思い当たったムラクモは、凛に尋ねる。
「まさか、幻想郷での異変か?」
「その通りよ。幻想郷で異変が起きたの」
幻想郷での異変。妖怪が興味程度からなったりするものだ。
だが、疑問に思うところがある。
「でもさ、博麗の巫女さんがいるじゃないか。あいつでも無理ってことなのか?」
幻想郷には博麗の巫女という、異変解決の専門がいるのだ。なのに、自分達の方に来るというのは彼女が解決できないものなのか。
「えぇ、彼女は協力を求めているわ。紫曰く、ムラクモとかを連れていけば警戒はしないとのことよ」
「……ま、俺たちは依頼を専門に受けているからな……」
凛の説明を受けて、爛は煙草に火をつけ、口に加える。
それを見た凛が爛にジト目を向ける。
「ここは禁煙よ、爛」
「……以前にもここで吸った記憶があるんだが? 大体、六花たちの前では吸えないからな。気長に吸えるのはここだけなんだ。勘弁してくれ」
壁に背を預けながら、煙草を吸う爛に悪気というものはないらしい。
まぁ、六花たちが煙草にうるさいのは凛も知っているため、禁煙だのと注意はするものの、多少は受け入れている。
「はぁ……分かったわよ」
諦めたのか、目線を逸らした。
「……続きを伝えるわ。暫くは博麗の巫女と共に、異変解決に力を注いでちょうだい」
「寝床はどうしたらいいんだ? 飯とかも必要だろ」
凛の提示したことに、翔は別にある疑問を持った。
翔の言う通り、当日に解決することはないはずだ。そうなってくると、宿が必要になってくる。
「その点に関しては、紫の方で手を打ってあるわ」
「何処だ?」
紫の方で手を打ってあると言っても、決まった場所とは限らない。様々な手段を持つ彼女がどの場所にするかは分からないのだ。
「冥界よ」
「幽々子のところかぁ……」
場所を尋ねたムラクモに返ってきた答えは、冥界という場所の名前だった。
それを聞いたムラクモは項垂れながら、溜め息をついた。
「あら、知っているのね」
「当然だ、宿にそこを使わせてもらったんだよ。幽々子に気に入られちまってな」
意外だったのだろう。ムラクモは冥界にまで顔を出していたことに。ムラクモは幽々子という人物の名前を出し、気に入られたということを言った。
ここであれば、宿に困ることはないだろう。だが、ムラクモが次に言ったのは、意外なものだった。
「でもな、冥界は遠いんだぜ? 調査できる時間は短くなるぞ」
ムラクモ曰く、冥界は遠く、異変が発生している場所からは遠くなるのではないかと言ってきた。
ムラクモの言う通り、異変の場所から遠ければ遠いほど、調査ができる時間は必然的に少なくなる。
「そこも手を打ってあるそうよ」
「何でもかんでもお見通しって訳なんだな、紫さんは」
準備が終わっているといっても過言ではないというほどに準備をしていた紫に、翔は流石だなと思った。
「……こっから行く方法は、扉か? 紫のスキマか?」
ムラクモはこの学園から、幻想郷への行き方を凛に尋ねた。
「扉よ、案内の方はムラクモがよろしくね」
「はいはい。分かりましたよー」
棒読みのように言ったムラクモは、怜の方へと視線を向ける。
「怜も来るのか……?」
「あぁ、私も行く」
異変に付き合うのかとムラクモが怜に尋ねると、彼女は頷いた。
「………………………」
ムラクモは顔をしかめた。しかし、彼女は決めると、止めることは難しい。ムラクモが知っている限りでは、自分で止めることはできなかった記憶がある。
「……俺から離れるなよ。多分、今までの依頼とは違うと思うからな」
ムラクモは納得のいかない様子を見せつつも、彼から離れないという条件でついていくことができる。
「分かった。ムラクモは、依頼のことになると私をいかせようとはしないからな。ムラクモの言う通りに動くさ」
怜は笑みを浮かべた。怜は以前、ムラクモが受けた依頼についていき、大怪我を負ったことがある。それ以降、ムラクモは責任感を持ってしまったのか、怜を自分の依頼には連れてかないようにしていたのだ。
自分のせいで、怜が傷ついた。ムラクモはそう感じているのだ。
「……ならいい。もう、傷つけることはしたくないからな」
安堵した表情を浮かべることもなく、顔をしかめたままのムラクモは溜め息をついた。
「怜のことになると、過保護になるよな」
「否定はしねーよ。寧ろ、肯定しなきゃいけねーよ。俺が言わなかったら、怜だって大怪我を負わなくてよかった。何しろ、俺が怜を気絶させてでも来させないようにすりゃいい。んなことをしなかったのは、俺の責任だ」
自虐的な言葉が、ムラクモの口から出てくる。酷く、自分を責めている。怜は胸に痛みを感じた。
腕に痛みが走った。一度失ったことがある腕だった。怜は、右腕を失ったことがある。ムラクモはそれを、怜に義手などをつけるのではなく、自分の腕を引きちぎり、怜に移植した。ムラクモの右腕は怜の肉体に同化。以前の右腕の肉付き、感覚に戻したのだ。今では、怜の思い通りに動いてくれる。
ムラクモは右腕を自分で再生。再生したての右腕は思うように動かなかったことを覚えている。初めて触るもののようにぎこちない動きをしていた。今では、その欠片はない。ムラクモの右腕として、再生した右腕は動いている。それは、怜の右腕もそうだ。
彼なりの責任の取り方なのだろう。義手なんかよりも、感触などがしっかりと伝わるように、ムラクモは移植をしてくれた。怜は失ったものを、別の方法で取り戻したが、それでも失った痛みを覚え続けている。ムラクモも同じだ。自分で引きちぎった右腕を再生したとしても、未だに前の腕の感覚があるはずだ。それで痛みを感じている。
「幻肢痛をまだ感じるか?」
爛から声をかけられた。痛みを感じた様子を見ていた爛は怜の肩に手を乗せ、心配した声音で尋ねてきた。
怜は素直に頷いた。爛には嘘は通用しないのを知っている。
幻肢痛と呼ばれるものは、失われた四肢の痛みを感じるもので、その原因ははっきりと判明していないらしい。爛曰く、脳内にある身体のマップが更新されていないことによって起きるというのが説明でよく用いられるらしい。これに関しては個人の脳で解決できるものだと言っていた。
それを解決することはできていない。新しい右腕が思い通りに動いてくれるにも関わらず、まだ脳は旧い右腕を覚えている。まだ、自分の身体の一部にあるように。
「何とかするためには、先ずはこの腕が過去と関係なく自分の腕だと思わなければな。ムラクモに対しての罪の意識も消えないだろう。例え、幻肢痛が消えたとしても、罪の意識が消えなければ、また幻肢痛を感じる可能性がある」
爛の言う通りだ。元はムラクモの右腕とはいえ、今は自分の腕だと思わなければならない。脳内の更新を済まさなければ、要らないときに限って痛みを感じるかもしれない。そうなれば、またムラクモの足を引っ張り、彼に罪の意識を積むような形になってしまう。
怜は頷いた。ムラクモに心配をかけさせたくない思いがある。であれば、爛の言葉を受け止め、その様にできなくてはならない。
だが、怜の心から罪の意識を消すためには、相当な時間がかかってしまうであろう可能性は、爛の方も重々承知だろう。どうにもできない話ではないことを分かっているからこそ、爛は幻肢痛を感じる度に言ってくる。それを鬱陶しいとは思ったことはない。何しろ、ムラクモのためなのだ。
「分かっているさ。でも、それが難しくてな」
「言いたいことは俺でもわかる。徐々に馴れればいいさ」
爛は優しい。どんな状況でも、落ち着かせるように話してきてくれる。
友に恵まれていると感じた怜は、笑みを浮かべた。幻肢痛は次第に引いていき、痛みは感じなくなった。だが、これでなくなったわけではない。また起きるかもしれないのだ。その事は気を付けなければならない。
「昼過ぎにまた呼ぶわ。それよりも前に準備は済ませてね」
ムラクモは了解という返事を残して理事長室を出ていってしまう。重い雰囲気を残したままムラクモは出ていき、話しづらい空気が流れる。
「ま、ムラクモが怜のことになると過保護になるのは仕方ない。トラウマ並みだからな」
爛が出ていくムラクモの姿を見ながら言った。確かにその通りだ。ムラクモは怜が傷つくことを極度に恐れている。爛からすると、あのムラクモが、だ。それほど、ムラクモは怜に許している部分が多いと感じている。それは、ムラクモはまだよく見えていない翔を除いた全員が知っていることだ。
「……なぁ、爛。準備って、どうすりゃいんだ?」
申し訳なさそうに、翔が空気を割って爛に尋ねてきた。入学早々に依頼というのも異例だ。説明もなしに依頼もキツいだろう。その質問を待っていたかのように、爛が翔に視線を向ける。
「準備っていってもねぇ……ほら、暫くはあっちにいるだろ?」
その言葉から始まった爛の説明は長かった。と言っても、どれも必要なもののため、聞き逃せないものばかりだった。必要最低限で分かりやすいように説明しても、準備の話だけに十分もかかることはないだろう。
「私も準備をしないとな」
怜は爛が翔に説明をしている間に、理事長室から退室していた。
凛はその様子を見て笑みを溢した。
「こういうのを見るのは、理事長室じゃ少ないから、楽しいと感じるわね♪」
暫くすると、理事長室には凛だけが残った。
誰一人としていないこの部屋に、凛だけが残り、書類に目を通し始める。
いつもの通りの執務が始め、凛はある書類で手が止まった。
「…………………?」
見たことがない。という表情を浮かべ、何がかかれているのか、丁寧に確認する。
書類に記載されていたのは、この学園にいる男子生徒のことについてだった。名前が誰かは書かれていない。ただ、この学園にいる男としか記載されていない中で、最後の一文に、凛は驚愕する。
『学園に神の子が紛れ込んでいる』