World High school 〜CROSS〜 作:火神零次
活動報告にて次回の話などの方針などが書かれていますので、気になる方は活動報告を確認ください。
朝に凛が言った通りに昼過ぎに呼び出しを食らったムラクモたちは、理事長室に集まっていた。
荷物を背負ってきたムラクモの右腰につけられているホルダーを見ると、そこには銃が籠められていた。
爛は誰よりも多くの荷物を背負ってきていた。念のためと、医療道具を持ってきているのだ。
怜は荷物を少しだけ余分に持ってきていた。何かあっても良いようにと、何を持っていくのかを真剣に考えて持ってきたそうだ。
翔に関しては爛の説明通りに、必要な荷物をもってきていた。後は個人の自由となっており、翔は他にも持ってきているものがあった。
全員が来たことを確認した凛は、もう一度依頼の確認をする。
「先ずは、冥界に行って、幽々子という人物に会うこと。それから、博麗神社に赴き、博麗の巫女とともに、異変の解決をすること。後は貴方たちに任せるわ」
凛の話に全員が頷き、確認が終わった。その後は、ムラクモが扉へと案内する。
大きな部屋へと入った四人は、ムラクモの案内で幻想郷にいく扉へと向かう。その道中で多くの扉が並んでいるのを見つける。
どこかの部屋に繋がっているとは思えないほど、必要以上に扉が並んでいる。
「なぁ、これってどこに繋がってるんだ?」
疑問に思うのは無理もない。この部屋には翔は来ているが、ムラクモは詳しく説明しきっていない。エリシアもどのようになっているかは分からないだろう。これがどこに繋がっているのか、全て知っているのは爛とムラクモだけになる。
どのようになっているのか分からない翔はムラクモに尋ねた。
「様々な世界に繋がってる。時間軸も含めて、どのような世界に行くかも決められる」
世界は木のように枝分かれを繰り返し、様々な世界ができていると爛は補足するように翔に伝えた。
世界は様々な可能性を1から取っていき、その結果、どのようになっていくのかが決められている。枝分かれをしているとなると日本という国でさえ、数百、或いは数千、数億と可能性がある。過去、現在、未来を含めて、それらがどのように広がっていくかは分からないが、根底となるものが存在しているのは明らかだ。
それこそ、日本が生まれなかったらという可能性もある。日本が生まれていたから、日本の軸が存在し、そのなかに可能性が多くあるのだ。
そこで気になるのは、ここはどのような軸に沿っているのか。説明の通りなれば、自分達のいるこの世界も軸のなかに入っていることになる。
その事を尋ねた翔は、ムラクモから意外な答えが返ってくる。
「この世界か? どの軸にも存在しない『上の空』のような世界だぜ。まぁ、こんな世界になっちまったのには理由があるけどよ」
でなければ、魔法みたいなことはできないだろう? ムラクモが言いたいことはただひとつ、こんな世界だからこそ、好き勝手に可能性をとることができる。決められているルールから外れたようなものだと。
翔には理解しがたいものだった。考えられないようなものばかりが飛び出してきて、信じられない話を聞いていたりすることがあった翔でさえ、こればかりは到底信じがたいものであると感じた。
「ま、馴れてくると、ここの方が過ごしやすいと思うけどな」
ムラクモの取り付けて言ったことに疑問を浮かべ、どういうことか全く分からない様子を見せた翔。爛は何も言わず、怜も同じように分からない様子を見せていたため、答えてくれるのはムラクモぐらいだろう。最悪、爛もわかり得ないものかもしれない。
「よし、この扉が幻想郷に通じる扉だぜ」
ムラクモが部屋の入り口からそれなりに進んだところに幻想郷に通じる扉があった。
その扉を開けると、自然豊かな景色が目の前に映る。
「この扉を抜ければ、そこは幻想郷だ」
ムラクモの言う通り、この扉は幻想郷にいくための扉だ。それ以下でも、それ以上でもなく、その
「んじゃ、行こうぜ」
扉を抜けたムラクモに続いていくように、三人も扉を抜ける。
抜けた先は抜ける前に見た自然の景色だ。振り返れば、扉はまだそこに存在していた。
最後に入ってきた爛が扉を閉めると、そこにはなかったかのように扉は消えてなくなった。
「よし、先ずは冥界だな。幽々子のところに行くぞ」
爛が促すように言うと、ムラクモが先に歩き出し、続くように怜が歩き出す。爛は一番後ろを歩くつもりなのか、翔が歩き出すまで待つ様子を見せた。
それを見た翔は、怜の後ろに続き、爛が歩き出す。
「こっからだと、そんな歩かないだろ」
ムラクモが周りを見ながら呟くように言った。冥界への行き方を知らない三人は、ムラクモの言葉には聞いていることしかできない。
少しだけ先に進むと、開けた場所に出る。
「─────────────────」
ムラクモが何かを呟いた。
すると、視界が渦のように巻き込まれ、暗闇のなかに放り込まれる感覚に陥った。
落ち着きを感じると、瞳を開けた翔は、周りが全く違う景色に驚愕する。ムラクモたちは既に、立ち上がって翔を待っていた。
「ほら、来い! 幽々子がいるところはもうすぐだぜ」
翔はすぐに立ち上がり、走ってムラクモたちのところに向かう。
石の階段が長く続き、とても高いところにある屋敷にムラクモの言う幽々子という人物が居る。
「あら、珍しいお客さんね」
女性の声が聞こえる。ムラクモは聞き慣れた声のようで、笑みを浮かべた。何も言わないまま、ムラクモは階段を登り続ける。
声に何も返さないのか。そう思っていた翔だったが、ここに来るよりも前に、ムラクモが幽々子に気に入られているという話をしていたのを思い出す。珍しい客というのは、ムラクモのことで、戻ってきたことから珍しいと言っていたのではないだろうか。
階段を登り切ると、翔はとてつもない何かを感じ、警戒する。それを見ていたムラクモは苦笑を溢しながら言った。
「別に警戒しなくていい。何かしてくるわけでもねぇから安心しな」
ムラクモが言ったことを信じた翔は警戒を解き、ムラクモの後ろを歩く。
異様な空気に満ちているこの場所が冥界。既に入っていたものの、下に居たときよりも、階段を上がりきり、少し進んだところの方が異様な気配に囲まれているように感じる。
「むぅ、来ているのなら、返事の一つぐらいしても良いんじゃないかしら? ムラクモ」
髪は淡い赤色、それよりも鮮やかなピンク色と例えたら良いのだろうか、青い着物を着こなし、お嬢様という雰囲気を漂わせている。
「別に返事をしなくてもお前なら誰が来たかっていうのは分かるだろう? 幽々子」
悪戯っ子のような笑みを浮かべたムラクモに困ったような表情をした幽々子という女性。
まぁ、いいわ。と諦めたような様子をした彼女は四人を屋敷に上がらせ、初めてくる怜と翔に笑みを向けた。
「
分からない二人のために幽々子の紹介をしたムラクモ。亡霊ということに驚く二人は、少し気になることをムラクモに尋ねる。
「……本当に、亡霊なんだな?」
「あぁ、亡霊だぜ」
当然のことを何故尋ねるのか? そう考え始めたムラクモは、幽々子の容姿に注目をして探し始める。
すると、今まで気にもしていなかったことだったからか、気づかなかったムラクモだが、とあること気づいた。
「あー、そういうことか」
納得をしたムラクモは頷いたものの、何のことか分からない幽々子は首を傾げる。
ムラクモは幽々子の足元に指を向けた。そこに視線を向けた幽々子は分かったのか、苦笑を浮かべた。
「霊だってのに、足があるからだろ?」
ムラクモの言葉に二人は頷いた。確かに、霊のイメージと言えば足はないだろう。しかし、幽々子には足がしっかりと存在している。無論、触ることだって出来てしまう。その事に、二人はイメージと全く違うことに驚いていたのだ。
「常識に捕らわれちゃダメよ」
再び笑みを浮かべた幽々子はムラクモの方へと視線を向け、ここに来たことの確認を取り始める。
「話は紫から聞いてるわ。異変解決に来るからここを使わせてくれってね。ムラクモが来るって言ってたから、嬉しかったわ」
畳の上に座っているムラクモに近づきながら、嬉々とした様子で話し出す幽々子に対し、ムラクモは話を聞いているものの、欠伸をして眠そうにしていた。
「ちょっと、聞いてる?」
ムラクモが聞いているように感じてない幽々子はムラクモの顔を覗き込むようにして尋ねる。
ムラクモは何も答えないまま、首だけ縦に動かして、聞いていると幽々子に返した。
「ここは使ってくれて構わないわ。ムラクモがいるなら、寧ろ使ってくれた方が良いもの」
ムラクモがいるなら……? 何故ムラクモがいるならなのだろうか。幽々子に気に入られていると言っていたムラクモだが、どれほどまで気に入られているのか。少し気になるところでもある。
「はいはい、分かりましたよ~」
適当な返事を返すムラクモにムスッとした表情をする幽々子。
二人の間を割って入るように爛が話し出す。
「凛から追加連絡だ。「異変の調査は明日からでお願い」だそうだ」
爛の手元には世界を越えて連絡をとれる電子機器があった。
爛の言葉に返事をしたムラクモは立ち上がって荷物を取り、幽々子に尋ねた。
「部屋ってどうすりゃいい?」
「案内するわ。来て」
はいよ、と返事をしたムラクモは幽々子の後ろについていくように歩き出す。
三人も、急いで荷物を取り、二人の後ろについていく。
案内をされた四人はそれぞれの部屋で過ごすのだが、ムラクモは少し、他の三人と違う部屋に入っていた。
「………………………………」
「ムラクモ?」
部屋の中をを見ているムラクモに、どうしたものかと尋ねてくる幽々子。尋ねられたムラクモは溜め息をついて、幽々子に話す。
「ここって、幽々子が使ってる部屋だよな……」
ムラクモの言葉に頷いた幽々子を見て、諦めた表情をするムラクモ。そこまで気に入られたかと思ったが、こんなことにまでなってしまうことなんて無いに等しい彼女がここまでするのは、本当に気に入ったからなのだろう。
「……嫌だったかしら」
少し悲しげな声が小さく聞こえてきた。幽々子はムラクモに嫌になってほしくなかったのだろう。ここで嫌だと言ってしまったら傷つけることになる。これから世話になるというのに、初日からこれもどうかと思ったムラクモは、首を横に振った。
「別に。嫌だったら嫌だって言ってる」
ムラクモは立ち上がり、部屋の襖を開け放つ。そして、白玉楼の庭に聳え立つようにある巨大な木を見ながら、幽々子に尋ねた。
「庭を見に行って良いか」
幽々子から庭の見物を承諾してもらったムラクモは、すぐに庭の方へと歩き出す。そして、巨大な木の根の方へと歩き、ぐるりと回るようにして、とあるものを探した。
そして、それはまだ存在していた。いや、存在していなければならないものだ。
この巨大な木の根元には、人間の死体があった。
「……まだ、居るんだな……」
慈しむように見つめた先には、とても見覚えのある人物の姿がムラクモの目に映っていた。
服装は違くとも、ムラクモにはそれが誰かは分かっている。一度ここにきたときに、それを見つけ、誰なのかも分かった。そしてこれがどのような
ムラクモの目には、巨大な木の根元で倒れている、少女の死体を見つめながら呟いた。
「よう、元気にしてたか」
少女の名前は言わずに、ただ隣に座る。死体が故に、喋ることもなく、聞くこともなく、なにもしない。
ただ、ムラクモは続けるようにその少女の名前を言った。
幽々子────と。