World High school 〜CROSS〜   作:火神零次

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このままの調子でいければもう一話ぐらい今日の内にでも投稿できるかなぁ……

活動報告にて次回の話などの方針などが書かれていますので、気になる方は活動報告を確認ください。


白玉楼での日常・初日

 白玉楼に着いた初日。爛は幽々子に案内された部屋の中で荷物を広げていた。

 荷物の中には、衣服や本、医療道具があった。爛の首にはペンダントがかけてあり、本来なら右目を隠すためにつけている眼帯は外し、眼鏡をかけている。

 この眼鏡は爛の妹、沙耶香がプレゼントにくれたものだ。目の色を錯覚させるもので、眼鏡越しに見える爛の目の色は青みがかった黒色をしている。その色は元々、爛が黒と黄金の色をする前の、本当の爛の目なのだ。何の力も持っていない目だ。

 爛は荷物を簡単に分け、明日から始まる異変調査のための準備をした。医療道具をすぐにでも出せるようにポーチへとしまい、荷物入れの隣に置いておく。

 部屋の中で異変のためにやっておくことを終わらせ、身の回りに何かないのかと、部屋の中を見ていく。押入れには敷き布団と掛け布団。部屋を出て屋敷を見て回ろうと部屋の襖を開けると、目の前に庭があり、巨大な木を見た。

 

「……変わらんな、この木は」

 

 一度、爛は白玉楼を訪ねたことがある。ムラクモはそれ以前に来たことがあり、爛は以来の都合で幻想郷へ一人で行ったときに、紫のツテを使い、白玉楼に入った。

 入ったときに感じたのは妖気。背筋をゆっくりと舐め回すような感覚が襲い、寒気がしたのは苦い思い出みたいなものになっている。

 初めてこの庭を見たときは、あの巨大な木から感じるものに、爛は狂いそうになったことがある。あれほどの強大なものを感じたことはなかった爛は、理性が壊れそうになった。

 紫曰く、元々、爛の感知能力がずば抜けて高いことから、白玉楼に充満している妖気に強く反応したことで、それよりも強いものを持つあの巨大な木に、極度に反応をしたことで、強い衝撃を受け、理性にまで響いたと言っていた。

 それ以降、馴れてしまったのか。異常を来すこともなく、平然と生活をすることができていた。以前の環境からかけ離れた環境に適応する能力は高く、ムラクモと同レベルのものだ。

 

「まぁ、ムラクモに関してはなぁ……」

 

 そんなことを思い出していた爛は、ムラクモのことについて思い出していく。

 ほぼ謎に包まれているムラクモだが、化物と言ってもいい。これだけは言えることだ。

 環境の適応能力に関しては、自分の同じようなものなので言えないかもしれないが、適応能力は高く、同レベルと言われているものの、マイナス温度の世界に半袖短パンの時点で人じゃないのは分かるだろう。このとき、ムラクモの体温は極度に高く、その体温だけで巨大な氷を溶かすことは可能だ。無論、逆もしっかりとある。熱湯レベルのところに長袖長ズボン、コートやマフラー……と、冬の服装をさせてもムラクモは平気そうにしていた。このとき、ムラクモの体温は極度に低い。

 上げようと思えばキリがないほどだ。ムラクモはとにかく化物といってもいい。正直いって、学園の最高戦力でムラクモにぶつかったって返り討ちにされるのが決まっているようなものだ。

 爛は巨大な木を見つめ、今でも疑問に思っているものを呟いた。

 

「……封印されているのは何故だ……?」

 

 確かに、強大なものを感じ取っている爛からすれば、こういうようなものは利用されているのが普通だ。だが、これは利用されることもなく、逆に封印がされているのだ。

 強大な力過ぎるが故に、封印しておかないと不味いものはいくらでもある。だがこれは、どう考えていても放置していても問題のないもののはずだ。

 そして、それを封印しているのは誰だ。ここの主である西行寺幽々子でないということは確かだ。

 庭の近くを歩きながら、何故なのかと考えている爛は、巨大な木の隣にムラクモがいることに気づく。

 

「ムラクモ……か」

 

 爛は庭の中へと入り、ムラクモのところまで歩いていく。ムラクモに気づいた爛は、座ったまま爛に視線を向けた。

 

「爛か、どうした」

 

 爛がここに来ることはないと思っていたムラクモは、来たことが意外というような目を向けていた。爛は、ムラクモの近くにある石の上に座り、ムラクモに尋ねた。様々なことを知っているムラクモならば、この事について答えてくれるのだろうと。

 

「この木を封印しているのは誰だ?」

 

 直接、質問をした。この巨大な木を封印しているのは誰なのか。爛の考えていることは他の誰かが封印しているのかと、考えていたのだが、ムラクモが返してきた答えは、爛の想像を超えるものだった。

 

「幽々子だ」

 

 ムラクモの答えは、幽々子だった。彼女が、亡霊となっている今でもこの木を封印し続けているのか。そう思った爛だが、ムラクモのとなりに少女の死体があるということに気づく。

 

「その……亡骸は」

 

 そう、爛の言っている亡骸とは少女の死体のことだ。長い年月を通し、亡骸と化しているのは当然だろう。ただ、爛にはこれが少女の死体のように見えた。これが、何を意味するのか分からない。

 

「幽々子の亡骸だ。よく分かったな」

 

 ムラクモの言ったことに、爛は目を見開いた。驚きの表情を浮かべ、隣にあった亡骸を見つめる。確かに、感じるものは亡霊の幽々子と同じようなものだ。だが、この亡骸は何故、ここにあるのか。爛がムラクモに質問をするよりも先に、ムラクモが話し出した。

 

「この巨大な木は『西行妖(さいぎょうあやかし)』って言うんだけどさ。こいつは人間(ヒト)の精気を吸いまくった妖怪桜だ。もう桜が咲くことはない」

 

 西行妖は幽々子の父である『歌聖』を始め、生前の幽々子がここで死ぬまで様々な人の精気を吸いとった妖怪桜であり、その力は幻想郷の最高クラスの力を持つ紫でさえ手出しが出来ないほどの力なのだそうだ。

 ムラクモ曰く、生前の幽々子にも能力が備わっているらしく、それを疎んだ幽々子は命を断つ際に、西行妖を自分の亡骸で封印したそうなのだ。

 幽々子は生前にも紫との交流があったものの、亡霊になっている幽々子は生前の記憶を持たない。つまり、この亡骸が自分であることに気づいていない可能性があるとのことだ。知らないということはないらしく、西行妖が誰かの亡骸で封印されていることを知った幽々子は西行妖を満開にさせることで、封印に使われているものを復活させることはできないのかという興味本心で桜を咲かそうとしたことがあるらしい。それは、博霊の巫女や魔法使いに止められたそうだ。

 それ以降、この木には絶対に桜が咲くことはないとのことだ。ムラクモが考えたことになるのだが、西行妖が桜を咲かし、満開になったとはいえ、封印に使われているものは唯一人、生前の西行寺幽々子だ。復活するとはいえ、幽々子が亡くなってから千年も経ってからの出来事なのだそうだ。つまり、成功をしても、亡骸の状態では結局、幽々子は亡霊に戻るのではないのかという考えがあったそうだ。その事を知っていたのであれば、幽々子はそんなことはしないはずだと、ムラクモは考えたのだ。

 その話を聞いていた爛は良く分かったのか、幽々子の亡骸を見ながら言った。

 

「異変は興味本心で起きたりするものだから何とも言えんが、幽々子はこれが自分だと分からなかったのか」

 

 爛の言葉にムラクモは「だろうな」と返事をする。ムラクモは爛の言葉に続けるように話す。

 

「じゃなかったら、満開させて復活させようなんて考えねぇだろ」

 

 ムラクモの言葉に爛は頷いた。これがもし、肉付きがそのままだったりしたらまだ考えるが、損傷などを考えたりすると、そういうことはしないだろうと誰でも考えるはずだ。

 でも、それができたということは、この亡骸が自分であるということに気づかなかったからなのではないのだろうか。

 

「これ以上話していると幽々子に勘づかれないからな」

 

 ムラクモは立ち上がって、屋敷へと戻っていく。爛はもう一度、亡骸と西行妖を見て、苦笑を浮かべた。

 

「これが自分だって分かんなくても、俺はやる気は出ないかな……」

 

 爛はそんなことを残しつつ、屋敷へと戻る。

 

 翔は爛と同じように部屋に案内され、何をしようかと悩んでいた。

 

「んー、エリーが居ないからつまんねぇし……」

 

 翔は自分のところに大きなものが近づいてきていることに気づく。誰なのかと考えながらも、自分のいる部屋の前で立ち止まったものに尋ねる。

 

「誰だ?」

 

 その質問は、すぐに返ってきた。

 

「ムラクモだ。開けるぞ」

 

 翔が感じた大きなものはムラクモだった。その事に翔は自然と警戒していたのを解き、ムラクモは翔のいる部屋の中へと入っていく。

 

「で、何の用だ?」

 

 ムラクモは翔と面と向かって話したいのか。胡座で畳の上に座る。

 ムラクモの目は真剣だ。どんなものを話すのか。翔はそれが気になって仕方がなかった。翔はムラクモの顔が見れるように座った。

 話せるような形になったとムラクモが感じたのか、ムラクモは口を開いた。

 

「お前のところに来たのは『忠告』をするためだ」

 

 ムラクモがいったことのなかに、忠告というものがあり、それがどういうものなのか、翔には思い当たる節など全くないため、首を傾げるしかなかった。

 

「まぁ、お前には分からないな……わかんねぇのも仕方ねぇ」

 

 ムラクモは翔に指を向けた。ムラクモの指は翔の心臓の部分を的確に指した。そして、ムラクモは口を開く。翔に言わなければならない忠告を。

 

「気を付けろよ。お前には闇がある」

 

 一体どういうつもりなのか、口には出さないものの、翔には疑問が生まれてくるばかりだ。いや、何となく分かる部分もあるものの、他にもあるのかと考え始めた。

 

「まぁ、これだけじゃわかんねぇか。俺が指しているところは、心臓……これがヒントだ」

 

 そして……とムラクモは続ける。心臓が一体なにと関係があるのか。翔は考え始める。闇とはなにか、自分が思っているものと、ムラクモが考えていることは違うかもしれない。大体、ムラクモの考えていることは分からない。何を言うのかも分からない翔は、疑問しか生まれていない。

 

「お前の闇はまだ底の方だ。でもそれは、お前を蝕んでる。底の方で何とかしねぇと俺みてーになる。お前は光がある。光をくれるヤツがいる。お前には、闇を背負っていても、光であってほしいな」

 

 ムラクモはその事だけ言うと、部屋から出ていこうと襖の前まで歩く。ふと、何かを思い出したのか、ムラクモは振り返って翔に言った。

 

「もうひとつだけヒントをやるよ。お前を思ってくれているヤツがお前に光をくれる……安らぎもくれるはずだぜ」

 

 ムラクモはもうひとつだけヒントを翔に与えると、ムラクモは出ていってしまった。

 心臓、思ってくれている人。これらが一体、何のヒントで何のために翔に言っているのか。俺みたいなるなとはどういうことなのか。闇とは何だ。翔のなかで疑問は消えていかない。

 

「あいつはまだ、自分の闇をよく知らない……俺みたく蝕まれると、後悔することになっちまう」

 

 そういうのは、自分としても■■■としても、あってほしくないものだ。

 

 怜はムラクモを探して、屋敷を回っていた。庭が綺麗だと思いながらも、ムラクモを探している怜は、急ぎ足で歩いていた。

 ふと、翔がいる部屋から出てくるムラクモを見つける。何かを呟いているように見えるが、とにかく急いでムラクモのところに向かって、怜は歩いた。

 

「ムラクモ」

 

 聞き慣れた声がしたと思ったムラクモは声が聞こえた方に視線を向ける。そこには、怜が急ぎ足でこっち歩いてきているのが見えた。

 

「どうした。そんな急ぎ足で」

 

 ムラクモの質問に答えることなく、怜はムラクモの右手を握り、そのまま引っ張っていく。

 

「えっ、あ、おい」

 

「手伝ってほしいことがあるんだ」

 

 歩きながら怜は言った。手伝ってほしいこと、何だろうか。引っ張られながらも、ムラクモは考えた。

 怜の部屋につくと、二人は中へと入り、怜はムラクモの方を向く。

 

「手伝ってほしいことって一体……って怜」

 

 もう一度、尋ねようとしたムラクモを遮るように、怜がムラクモに抱きついてきた。

 

「……少し、こうさせてくれ……」

 

 怜は消えてしまいそうな声音で呟いた。その声を聞いていたムラクモは「はいはい」と返事をして、怜を優しく包むように抱き締める。

 

「……まぁ、安らぎが欲しかったってところか」

 

 ムラクモの言葉に怜は小さく頷いた。口に出せないところは怜らしいと感じながら、ムラクモは続けていった。

 

「俺は、言ってくれればいつでもやってやる。暇してるんだから、別にお前相手なら平気だ」

 

 ムラクモは落ち着けてくれるような言葉で怜に伝えた。怜は今まで、やってほしかったという目線を向けてくることがあった。だが、自分からは言い出しにくいのか、中々言うことはなかったのだ。

 その後、怜はムラクモから離れ、手伝ってほしいことというのを尋ねると、こうするための口実だったそうだ。

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