World High school 〜CROSS〜   作:火神零次

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お久しぶりです。この作品の九月の最初の更新は異変調査とかいうタイトルからしてシリアス感しかないというものでした。番外編とかでも、上げてみたいなぁ……
活動報告でお聞きしたいことがあるので、読んでいただけるとありがたいです。

活動報告にて次回の話などの方針などが書かれていますので、気になる方は活動報告を確認ください。


異変調査・一日目:後編

「いいや、不満というより、復讐の念が強いか」

 

 ムラクモに声をかけてきたのは男。筋肉のつけられた正に男というに相応しい体をしていた。

 

「………誰、お前」

 

 何のためにここに来たのか。そして、男の言っている言葉に少し危機感を覚えたムラクモは、男が誰なのか。それをもう一度尋ねた。

 男は暫く黙りこみ、何か考えるような仕草を見せ、口を開いた。

 

「………オルフェウスだ」

 

 オルフェウス。そう答えた男は、ムラクモが阻まれた見えない壁を、容易く通っていった。

 

「……オルフェウス。お前さんは、何か目的でもあるのか?」

 

 オルフェウスが声をかけてきた際に、言っていたことにムラクモは、彼には何かがあると踏んだ。

 

「……あるさ」

 

 とても暗い声で呟いた彼を見たムラクモは、顔を伏せた。

 沈黙が流れる。異様なほどの静寂は、すぐに破られる。

 

「……………!」

 

 ムラクモが何かに気づき、振り向いた。木々の間を素早く動いている。まるで獲物を狙う獣のように。それが何なのか、その事に気づいたムラクモは、オルフェウスに向かって言った。

 

「ここを通してくれ。じゃないと、互いに危険な状態になる」

 

 この見えざる壁を悟られないように、ムラクモは壁に当たらないギリギリまでオルフェウスに近づいた。

 目の当たりにしているこの状況に、オルフェウスは警戒するものの、ムラクモが辺りを警戒していることを見ると、ムラクモが仕組んでいる罠という考えを捨て、見えざる壁の解除する。

 

「……来てくれ。こっちに逃げる」

 

 ムラクモはオルフェウスの指示に従い、見えざる壁を通過する。それを確認したオルフェウスはすぐに壁の解除を止める。

 

「はぁ……助かった」

 

 ムラクモは、感謝の言葉をオルフェウスに向けていった。だが、気になることがある。此方からオルフェウスの名を尋ねたというのに、彼方から誰だという質問が一切来ない。どういうことなのか分からない。

 

「……一応、名は教えておく。ムラクモだ」

 

 何かあって、そこで尋ねられても面倒なだけだ。そういうのは少ない方が一番良い。ムラクモは自分からオルフェウスに名前を教えた。

 何も言わないまま、ムラクモの名前を聞いていたオルフェウスは、ついてこいと言わんばかりの目線をムラクモに向け、歩いていった。その意図を汲み取ったムラクモは、オルフェウスの後ろを歩く。無論、何が起きるのか分からないため、ムラクモは警戒を解くわけにはいかない。

 

「ムラクモ、奴等は一体なんだ」

 

 オルフェウスには木々の間を素早く動くものが人間であるということに気づいていた。ムラクモはそれから逃げるようにして動いているのにも、何かしらの理由があるのだろう。

 

「助けてもらったもんだし……教えてやるよ」

 

 ムラクモは歩きながら、追いかけてくる者たちについて話した。

 簡単に話したムラクモに、オルフェウスは気になることを尋ねた。

 

「どうしてムラクモを狙う。何かあるのか?」

 

 その質問に、ムラクモは悲しむような表情をして、空を見上げた。空は快晴で、果てしなく広く、雲ひとつ無い。あの時の空が嘘のようだ。

 

「俺の力を狙って、だな。忍っていう奴等だ」

 

 社会の裏に潜み、常に姿を眩まして動く者たち。今は全くと言っていいほど、忍という概念そのものは、今を生きる者たちのなかでは、闇の中に無くなっている。

 

「忍か……今でもそういうのがあるのか?」

 

 ムラクモは首を縦にも横にも振ろうとはしない。ただ、ムラクモから感じるものは、肯定や否定をするものではなかった。

 

「何とも言えんなぁ。ただ、ここに迷い込んでくるから居るだろうけど、忍が居るって言う世界は少ないと思うぜ」

 

「世界……?」

 

「あーいや、こっちの話だ。俺がいなくなれば、忍に会うことも無いだろうよ」

 

 ムラクモは曖昧なことを言ってきた。想像もできないようなことを話しているが、オルフェウスは首を傾げることぐらいしかできない。

 

「目的ってのはなんだ。今最近、人間(ヒト)が居なくなってるやつとは関わりがあるのか?」

 

 ムラクモは真剣な表情でオルフェウスに尋ねる。しかし、彼は首を横に振った。どうやら、ムラクモたちの目的とは違うそうだ。

 

「……俺は、ある男に復讐したいだけだ。その機を待っているだけにすぎない」

 

 オルフェウスの声音には、震えが感じられる。余程の怨念があるのだろう。怒りに震えているのがよく分かる。同じように復讐に駆られていたことがあった。

 

「お前さんが誰に復讐をしようとしているのかは知らんが、努々気を付けることだな」

 

「分かってる。博麗の巫女を凌駕できる奴なんだ。冷静にしていなきゃ殺せない」

 

 オルフェウスの言っている人物に、ムラクモは思い当たる者がいた。博麗の巫女を凌駕できる……姿を晒しておいて、博麗の巫女に真正面から対決することができるのは、数えるほどしかない。

 それに、爛は敵対視していなかったが、霊夢が警戒をしていた。もしかすると、爛が以前に依頼できていたことて、オルフェウスには何らかの干渉をしていたのかもしれない。

 

「……であれば、俺はお前と居る理由はない。戻らせてもらう」

 

「見えない壁は、出るときは阻まれない。元より、来る者の対策としていただけだからな」

 

 ムラクモは元来た道へと戻り、オルフェウスは先へと進んでいく。

 ムラクモは感じていた異質な気配について考え始める。

 

(あの異質な気配は何処に消えた? 壁の中に入った時には、既に消えていた。何故だ、一体どうやって俺の感知から……いや、考えても仕方がないか。今は戻ろう)

 

 元来た道には忍に追われていた。警戒をしながら進み、戻るしかない。簡単に戻る方法はあるのだが、修正力が働く可能性がある。

 

「……はぁ、簡単に戻りてぇ……」

 

 溜め息をついたムラクモは、歩いている足を止めた。気配を感じる。此方を見ているのが分かる。

 

「……この気配は……?」

 

 似ている気配を見つける。感じたことのある気配に、ムラクモは頭を悩ました。しかし、特徴的な気配を微かに感じると、それが誰なのか。或いは誰かの血縁者の可能性があると考えた。

 

「この気配は……翔……?」

 

 しかし、翔は博麗神社の方に居る。此方への介入はしていないのに、何故このような気配を感じるのか。もしかすると、彼の血縁者か。

 

「………………ッ!!??」

 

 ムラクモは新たに感じた気配に驚愕の表情を浮かべた。居ることなどあり得ないはずの気配に加え、人が持つはずの無い力を持つ気配があると。

 

「まさか……これは……!?」

 

 驚かずにはいられないというのが正解だろうか。厄介な奴等につけられていることに、ムラクモは苦笑を浮かべた。

 出てこないというのであれば、此方から行くとしよう。それに、応じてくれるのであれば、爛たちに警戒を促すことができるかもしれない。

 

「出てこい。何処に居るかは分かっているんだ。出てこないなら、此方から行くぜ」

 

 敵対する意思を見せたムラクモは、刀を持っていた。逃げたとしても、すぐに追撃が出来るようにと、警戒をしながら、気配を感じた方へと歩いていく。近くに居るのは分かっている。それも、囲むようにして、此方が逃げられないようにしているのも分かる。だが、その包囲網はムラクモにとってみれば無いようなもの。力押しで問題ないはずだ。

 

「……………………………………」

 

 ムラクモは動きを待った。此方から動くしかないのか。そう思った瞬間、鳥たちが一斉に木々から飛び立った。森がざわめきを始めた。肌がピリピリとする。一触即発の状態に加え、此方は一人だが問題はない。

 

「チッ……出てこねぇなら……」

 

 刀の柄を握り、真っ直ぐ駆ける。木々のところまで辿り着くと、一気に刀を抜く。木々は真一文字に切れ、倒れていく。そこから、ムラクモを迎撃しようと、此方に迫る。

 

「ッ、拳か!」

 

 武器も何も持っていないということに気づくと、刀を鞘に納め、すぐに刀を腰に紐で繋ぐ。咄嗟の判断でそうしたが、拳は既に迫っている。紐で繋ぎながらも、ムラクモは脚でその拳を払う。

 しかし、休む暇は無い。拳を払ったものの、次の攻撃が待っている。他の気配が一気に此方へと来ている。

 

(やるしかないか……!)

 

 何かしらを溜めている。その事に気づいた者たちはすぐに退こうとするが、既に遅かった。

 

「オオオォォォォォォ!」

 

 ムラクモの雄叫びと共放電し、一定範囲に迸る。これを避けれた者は少ない。戦いの勘が働いているのだろう。

 

「くっ!」

 

 男が一人、女が八人。ムラクモはその中の四人から、異質なものを感じ取る。そして、驚いていたものが誰からなのか。それがよく分かった。

 

「忍……いや、抜忍と言った方がいいか?」

 

 ムラクモは情報でこの者たちが誰なのかは掴めている。しかし、今まで此方の方へと来ることはなかった。

 

「にしても、誰の差し金だ?」

 

 問題は誰の差し金で此方に来たのか。彼方にとっても此方に来るのはリスクが大きいはずだ。寧ろ、来ない方が良いのだ。

 

「抜忍のお前たちには頼まれないもののはずだが?」

 

 ムラクモの言う通り、抜忍に依頼など飛んでこない。しかも、ムラクモを追いかけていくには、抜忍では不可能。であれば、協力者がいると言ってもいい。

 

「話す必要はない……」

 

 男がそう切り捨てた。彼方は既に臨戦態勢。答えてくれないのであれば、その情報を無理矢理にでも奪い取るまで。

 

「そうか。なら───」

 

 踏み込もうとしたムラクモの動きが止まる。空を見上げ、視線を別の方へと向ける。

 

「残念……理由がなくなっちまったか。ホント、残念だよ」

 

 溜め息をつき、苦笑を浮かべた。臨戦態勢のまま、ムラクモを警戒しているが、戦う理由がなくなったムラクモが刀を手放したことに、驚愕の表情を浮かべる者がいた。

 

「まぁ……これは……」

 

 笑みを浮かべた。ただ、それはムラクモが爛たちに向けるような笑みではない。悪意のある笑みで、瞳は濁ったようになっていた。

 

「ホントのゲーム(・・・)で楽しませてもらおうか」

 

 ムラクモは一瞬にして消えた。追うこともできない。

その速さに、目で追うことすらできなかった。

 

「チッ、逃したか……」

 

「ゲームって言ってたけど……何なんだろう」

 

 ムラクモの言っていることが分からなかったのか、悩んでいるものの、次の手を打たなければならない。今ここで悩んでいても仕方がないのだ。ムラクモの言っていることに、警戒した方がいいだろう。

 

「……会えるかな……」

 

 ポツリと呟く。その声は誰にも届かず消えていくだけ。その思いが届くときが来るのも知らずに。

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