World High school 〜CROSS〜   作:火神零次

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お久しぶりです。
FGOのイベントをひたすらに周回しているのですが未だに六箱。遅くなぁい!?
少しずつ執筆を続けてはいますので、首を長くして待っていただけると、此方としてはとても助かります。

活動報告にて次回の話などの方針などが書かれていますので、気になる方は活動報告を確認ください。


白玉楼での日常・二日目

 異変調査から戻ってきたムラクモたちは、白玉楼にある温泉に入っていた。

 

「……………………………」

 

 ムラクモは何かを考えている仕草をしながらも、チラチラと翔を視界の中に入れていた。

 少し苦笑を浮かべ、ムラクモは翔に尋ねてきた。

 

「翔、お前には家族は居るのか?」

 

 翔は少し、ムラクモの質問に答えることに抵抗を感じた。まだ、ムラクモのことについては把握しきれていないことばかり。爛の時のように親同士が仲が良いからこそ、すぐに信じることができたのだが、ムラクモは違う。

 

「よし、じゃあ質問を変えよう」

 

 ムラクモが何も答えない翔に対して、質問を変えた。

 

「お前は、何を失った?」

 

 彼の質問に、翔はムラクモの方へと視線を向けた。此方のことを見透かすように見ていた。

 

「おい、ムラクモ……」

 

 爛はムラクモの質問に意図があることを察したのか、すぐに止めようとする。

 

「いや、いいんだ爛」

 

 それを翔が止めた。爛は少し驚くものの、翔の目が真剣なものになったことに気づき、立ち上がろうとしていた足を止め、何も言わぬまま座り込んだ。

 

「失ったものはある。どうなってんのか分かんないものだらけだ。取り戻せるものがあるのなら、取り戻したいっつう気持ちもある」

 

 その言葉を聞いたムラクモは、嬉しげに頷いた。何故そのように頷いたのか。分かるものではないが、ムラクモは翔の中に秘められているものを感じた。

 

「それでいい。お前の取り戻したいって気持ちは、誰よりも輝いてる。俺みたいなもんじゃない。だから───」

 

 それを忘れんな。

 そう言ったムラクモは、立ち上がって温泉からあがった。残った二人はムラクモを見ていることしかできなかった。

 

「ショウ────」

 

 翔の方へと視線を向けた。爛には、翔はまだムラクモを疑っているように見えていた。自分の頃のように誰とでもというわけにはいかないはずだ。爛の友人だから。という理由でそれなりの信頼はしていたのだろうが、今の質問で、翔はどう受け取ったのか。

 

「爛、俺はどうすればいい?」

 

 翔の声音は明らかに変わっていた。ムラクモの時とは違う。何かを濁らしたかのような声ではなく、何かと向き合ったときの、翔の声だ。

 

「どうだろうな。俺はムラクモを頼るが……」

 

 翔にそんなことはないだろうと、爛は考えてしまう。ムラクモと話しているときの翔の目は疑心暗鬼だった。今どの様に考えているのか。

 

「爛はそうするんだな……、俺は……」

 

 少し顔を俯かせた。爛は目を背けた。翔の姿が見ていられないのにも関わらず、自分には翔のその姿をすぐにでも変えることができない。ムラクモのように、何でもできるような存在ではない。親友だというのに、何もできない自分が鬱陶しい。

 

「まぁ、考えてみるぜ。お前がアイツを信用してるのは分かる。ムラクモなりの優しさってのも分かってきた」

 

 だからこそだ───

 翔の目にはありありと決意が浮かんでいた。再会したときとは違う目をしていた。あの時に見えていた迷いに近いものは消え、今では真っ直ぐ突き進んでいく翔の姿が爛には見えた。

 もう、心配する必要はないようだ。

 

「だから、爛は見ててくれ」

 

 そういうことを言われたら、返すことはただひとつじゃないか。翔の親友としての仕事だ。

 

「あぁ、お前がどういう道を選ぶのか。見守らせてもらうよ。それが、親友の俺の仕事だ」

 

 爛は、頷いた。

 

──────────────────────

 

 夜風に当たろうとムラクモが向かった先には、よく知る少女が居た。

 

「温泉からあがってきたんだろう? 外に居ては───」

 

「風邪は引かない。夜風に当たりたかったから来たってのに」

 

 ここに来るのが分かっていたかのようにムラクモに背を向けたまま、彼の名前を呼んだ。怜が居たのだ。

 石の上に座り、ムラクモは風を感じる。

 

「……怜」

 

「何だ?」

 

 普段では聞かないような声音を聞いた怜は、ムラクモの方へと視線を向ける。そして、彼が浮かべていた表情に驚いた。

 珍しく不安そうな声音で、心配をしているということがよくわかる顔をしていた。いつもは自由奔放な過ごし方をしているムラクモが、このようなことになるのは殆ど無い。

 トラウマとなっている事が起きてほしくないと思っているのだろうか。

 

「……無茶はしないでくれ」

 

 強がっている。それはすぐに分かった。怜から視線をそらし、本心を知られたくはないと思わせているが、強がっているのが分かっていることは、本心はすぐに見抜かれる。

 ムラクモにも可愛いところがあるのだと分かった怜は、微笑んだ。

 

「あぁ、分かってる」

 

 怜もそのような事は起こしたくないと思っている。ムラクモの悲痛な顔を見たくはないし、自己嫌悪に陥るところも見ていたくはない。

 

「私は戻っている。ムラクモも、遅くならない内に戻った方がいい」

 

「あぁ」

 

 怜は屋敷の方へと歩いていった。歩いている背中を見ることはなく、空を見上げた。夜は暗く、闇の中にある。星が光っているわけでもなく、ただ暗闇が広がっていた。暗闇でも違うものがあるのかと、少し考え始めるが、キリがないと思い、考えることを放棄した。

 

「ムラクモ」

 

 もう一人、ムラクモを呼ぶ声が聞こえる。確認するまでもない。

 ムラクモの好敵手(ライバル)であり親友。それでいて、ムラクモのことを誰よりも知っている。

 

「爛か。どうした」

 

 男だということがわからなければ、美少女と言ってもいい。そんな容姿の爛は、ムラクモの隣に座り、煙草を取り出した。

 

「ただ単に煙草を吸いに来たわけじゃねぇだろ? って……」

 

 爛は何も言わずに、煙草を一本、ムラクモに向けた。受け取ったムラクモは、ライターなどを使わずに、指先に魔力で火をつけ、煙草へと持っていく。

 煙草に火をつけると、指先の火を消し、吸い始める。

 

「話すことがあるんだろ? まぁ、自分のことじゃねぇだろうな。翔か」

 

 ムラクモが爛に尋ねると、頷いて肯定した。爛は翔と幼い頃から仲が良かったということは聞いている。しかし、翔以外には誰がいるのかと聞いても、それには答えなかった。深く追求することでもないと判断したものの、今では翔がこの学園に来ている。それに、関係のある爛と繋がりがあるのだ。知っていなければならないかと、ムラクモは考えている。

 

「あぁ、そうだ」

 

「……意外だな。今まで頑なに話さなかったってのに」

 

 素直に肯定したことに、ムラクモは意外だと言いつつ、少し嬉しく感じていた。

 

「翔は、妹二人、幼馴染み一人を探してる。俺もよく会っていた」

 

「……ふーん。で、探すのを手伝ってほしいと」

 

 ムラクモの言ったことに、爛は静かに頷いた。妹が二人と幼馴染み一人。言われても、三人の詳細を知らなければ手伝うどころの話ではない。

 

「あぁ、情報は提供させてもらうよ。直接知った方がいいだろう」

 

「おう。んじゃ、見させてもらうぜ」

 

 ムラクモは目を閉じて、爛の頭に触れる。爛の記憶から、翔の妹、幼馴染みのことだけを探り、抜き出していく。情報として手に入れる。人の記憶を見せることには少し抵抗があるものの、爛はムラクモを信じ、見せている。

 

「終わったぞ」

 

 ムラクモは目を開く。記憶として見たものが、今は知識としてムラクモの頭の中にある。

 

「……俺の方で会わせられるようにする」

 

「あぁ、助かる。翔の方にも伝えておく」

 

 伝えにいこうと爛が、立ち上がったその時に、ムラクモは付け足すように言った。

 

「できれば、翔にはついてくるなとだけ伝えてくれ」

 

「それは、ムラクモについていかせないようにすればいいのか?」

 

 ムラクモは頷いた。彼の言葉に、少し疑問を持つものの、爛はムラクモの指示に従うことにした。

 

「翔に来てもらうと困るからな」

 

 ふざけているというわけではないのがよく分かる。あれは、他人(ヒト)のためにと考えているムラクモの真剣な表情だ。邪魔をされては、本当に困ってしまうことなのだろう。

 ムラクモの底までは読みきれなくとも、大体のことは読むことができる。言いたいことが分かった爛は頷き、そのまま歩き出す。

 

「…………………………………」

 

 ムラクモが一人となったとき、彼はとあるものに目を通す。

 

「──────────────」

 

 ヒトには分かり得ないものを見つめながら、とても小さく呟いていた。

 

「ふぅ……いつになったら攻勢に出ることやら。やはり、優性因子を多く継いでいるからか」

 

 溜め息をついたムラクモは、吸っていた煙草を消し、屋敷に戻っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 煙草の煙は空へと上がり、暗闇の夜を微かに白くする。だがそれは、いつか消えるもの。

 去り行く者の危惧しているものは、まだまだ先のこと。しかし、備えておかなければならないことも確か。

 抑止力たる者はそれとは別に、底に沈めているものを呼び起こすときかと、ただただ平穏を装いながら待ち続ける。

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