World High school 〜CROSS〜   作:火神零次

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お久しぶりです。
ここまで遅いのは前にもありましたね。前は、一ヶ月に1話とかあった気がする……。
さて、今回は彼女たちの登場です。誰かって?読めばわかりますよ。

活動報告にて次回の話などが書かれていますので、気になる方は活動報告を確認ください。


異変調査・二日目:前編、その2

「探したぜ。できれば、身構えず話を聞いてもらいたいもんだが……そう易々とは、できないもんだねぇ……」

 

 光牙のところに来た少女たちを探していたムラクモは、話を聞いてもらいたいと言うものの、少女たちの警戒する体勢に、苦笑を浮かべた。

 

「当然のことでしょ。それに、何のためにここまで来たの?」

 

「ま、それもそうだわな。お前たちの目的は俺。俺の目的はお前たち。俺はお前たちを潰しに来たってわけじゃねぇしなぁ」

 

 目の前に目的としている者がいるのに、何を躊躇う必要があるのだろうか。

 踏み込もうとしている彼女たちの心の中には、何処かに引っ掛かっているものがあった。

 

「……どういうこと?」

 

 尋ねてみると、ムラクモは苦笑とは違い、微笑みを向ける。

 

「会わせたい奴が居るわけさ」

 

 ムラクモの意図を読むことができない四人は、警戒をすることしかできない。ただ、潰すわけではないということに、違和感を覚えた。

 

「前は───」

 

「あー、あの時はお前たちのことよく知らんかったからなぁ。気になったから調べたけど、何となくその力を持つことも頷ける」

 

 言葉を遮られ、独り言のように話し出すムラクモ。

 

「……なぁ、その力はどうやって得たんだ?」

 

 柔らかく、それでいて暖かい雰囲気を持っていたムラクモの言葉は、冷たい瞳と共に、殺気のある言葉へと変わった。

 息を呑む。

 後一歩踏み込めば、死地に入る形になる。

 柔らかく、暖かい雰囲気に惑わされ、危うく死にに行くところだった。

 ムラクモの問いには、誰も答えない。

 

「……言わねぇんなら、それでいいけどよ。素直に来てくれないかねぇ」

 

「誰も行くつもりなんか無い」

 

 信用ならないのは最もだ。それはムラクモも理解している。

 少女が言った、突き放す一言に、強い意思のようなものを感じた。

 即答で返された。このように返されるとは思っていたが、それ以上に強い意思を見せられたようなものだ。

 こうなった人間(ヒト)は、とても頑固だ。

 

「参ったなぁ、強制するつもりはねぇから別にいいんだけどさ。できれば、早めにしてほしいだろうし。それに、爛から傷をつけるなって、口酸っぱく言われてるから、さっさと終わらせないといけねぇんだよな」

 

「え……?」

 

 少女はある言葉を聞き、動揺を隠せなくなる。

 今、目の前にいる男は何と言った?

 嫌な予感が頭を過る。

 

「爛って言ったよね……」

 

 確認をとる。

 どうか間違いであってほしい。

 そう思いながらも、返されたものは彼女たちを裏切る結果となる。

 

「あぁ、言ったさ。爛ってな。宮坂爛のことを言ったさ」

 

「………ッ!!」

 

 間違いではなかった。

 確かに、ムラクモは宮坂爛の名前を口にした。

 傷をつけるなと言われたのは、爛がいたから?

 爛が言わなかったのであれば、自分たちは既に死んでいる可能性だってある。

 ここに立つことが出来ているのは、爛が傷をつけるなと釘を刺したからなのだと考えると、命を救われているのと同じだ。

 

「来てくれねぇかな? 俺だって、人間(ヒト)を傷つけることは好まねぇよ。人間(ヒト)を見守ってなきゃいけない存在が、人間(ヒト)を傷つける存在だなんて、嫌だぜ?」

 

 見守っていなければならない存在?

 ムラクモの言葉を聞く限りでは、人ではないような言い方だ。

 

「ってことでさ。会わせたい奴のためにも、爛のためにも、来てくんねぇかな」

 

 会わせたい人のためにも、傷をつけるなと釘を刺してくれている爛のためにも。傷つけるようなことをしないためにも。そこには、ムラクモの意思も含まれている。

 しかし、ムラクモの言っている会わせたい人が誰なのか。爛が関わっていることで、誰なのかは大体予想できるものの、それが本当なのか。

 

「それでも行きたくねぇって言うんだったら話は別。俺はその意思を尊重させてもらう。ま、後悔することになりそうだけどな」

 

 強制するつもりはない。その言葉は確かだった。会いに行くのも、会いに行かないのも、自由にしていいと。しかし、後悔することになるだろうとムラクモはそう言った。

 自分たちが狙っているというのに、どれだけ優しくするのか。いつどこから襲われるかも分からない。

 面倒な事はしたくないと言っているムラクモも、このようなことはしたくないだろう。

 一番好ましい状況は、目的としていた少女たちだけに会うことだろう。

 

「………………………………」

 

 少女たちは迷う。

 この言葉を信じて良いものなのか。

 

「………………………………」

 

 ムラクモは答えを待つ。

 どんな答えが返ってこようと、問題はない。

 

「……分かった。連れていって」

 

 褐色肌でクリームのような髪色の少女が口を開く。

 

「ダメだよ……! 『アイ』、相手がよく分かってない状態じゃ……!」

 

 ムラクモの方へと歩いてくるアイと呼ばれた少女に対し、ピンクの髪色をしている少女が、彼女を止める。

 しかし、彼女は止まることなく、ムラクモに近寄ると、振り向いて言った。

 

「私が確かめてくる。本当に爛さんから言われているなら、傷をつけることはないでしょ」

 

「でも……!」

 

 確かに、本当に爛から言われているのであれば、傷つけられるようなことは絶対にないだろう。

 万が一の状況でもない限り、そのようなことは許してくれないであろう。

 それは重々承知で、ムラクモはここに来ている。

 

「俺の言葉を信じてくれて助かる。『天崎愛』」

 

 ムラクモは、褐色肌の少女をフルネームで言った。愛は「勘違いしないで」とキツく言い返す。

 

「その言葉が本当かどうかを確かめるだけ。それが本当じゃなかったら」

 

「殺す。だろ?」

 

 ムラクモのことを睨みながら告げると、彼は苦笑を溢した。

 信用されていないなと痛感しながら、ムラクモはこの言葉が決定的なものへと変える言葉を放つ。

 

「会わせてやりたいのは、天崎翔だ」

 

 翔の名を言ったとき、四人は驚愕の表情を浮かべる。

 驚くことも無理はない。繋がりがないはずと思っていた者が、繋がりを持ち、それでいて翔の名を口にするということなどは絶対にないと、彼らは思っていた。

 

「どうする? 俺は三人来てくれると助かるんだ。平和にやろうぜ」

 

 愛と光牙を除き、二人はお互いに顔を見合わせる。

 

「……分かった」

 

「おう、助かる」

 

 渋々だが、此方の方に来てくれている二人に、ムラクモはある提案を持ち出してくる。

 

「要求はねぇのか」

 

「えっ……?」

 

 ムラクモが尋ねてきたことに、少女は鳩が豆鉄砲食らったかのように固まる。

 何のためにこんな危険に身を置いてまで来なければならないかと聞きたいほどだが、仕方ないと割り切りながら、ムラクモは続けて話す。

 

「交渉みてぇなもんじゃねぇか。どーせなら、そっちの要求を聞いてやるのが、ここに来た俺の仕事だ」

 

 要求を聞く。呑み込むというわけではないが、無理難題でなければ、問題はないだろう。

 

「……だったら、今後手出しは一切しないで」

 

「そいつは呑めねぇ要求だな。そっちから襲ってこられて、はい分かりましたで捕まったり殺されるわけにはいかねぇもんでね」

 

 でもまぁ、極力だが、手出しはしねぇよ。

 納得のいくようなものではないが、要求を呑んでもらうことができた。

 

「ん、じゃあな。爛と翔には言っとくぜ。お前らが居るってな。手出しはしねぇから、一度会うと良いぜ」

 

 ムラクモは光牙に向けて言い放ち、背を向けて歩いていく。

 三人はムラクモの後ろを歩き、光牙の視界から消えていく。

 

「…………………………ハァ」

 

 重いため息をついた光牙は、倒れ込むように地べたに座った。

 張り積めていた糸が一気に緩んだ。

 

「……関わっていたとはな……俺もまだまだか」

 

 爛がムラクモに関わっていたことを考えていなかった。浅はかな自分を思うと、まだまだ未熟なのだと感じる。

 

「……まぁ、再会してほしいと思う気持ちは同じだ」

 

 光牙は爛と翔を知っている。バラバラになってしまった翔たちが、再び出会うことを望んでいる。

 迷惑はかけたくはないが、いずれ知られてしまうのだ。早い内に、知らせておいた方がいいだろう。

 

──────────────────────

 

 ムラクモたちは、何も言わずに足を進める。

 沈黙が流れ、誰も口を開こうとはしない。

 それもそのはず。警戒をしている三人に対し、気軽に話しかけるわけにはいかない。

 それに、いつ不意打ちしてくるかもわからない状況で話す方が難しい。

 その空気を破りたかったムラクモは、気になることを尋ねる。

 

「……ここに来るのに、どうやって来た?」

 

 ムラクモの疑問。何故ここに、彼女たちが来たのか。技術は確立しているものの、それを容易に手にいれることはできない。無論、学園は例外であり、ムラクモと爛の伝を使って技術が使われている。

 だから、学園にいる大半の生徒たちは、他の世界に繋がっていることは知らない。

 これを知るのは、裏社会に多く関わりを持つムラクモと爛が知っていることだ。

 他の世界から舞い込んでくる依頼は、基本的に二人で交代でしているものの、協力する依頼が多数。一人でやることの方が少ない。

 

「技術は容易に手に入るものじゃない。例外じゃない限り、国が厳重にしているはずだぜ」

 

 裏社会では、他の世界へと行くことができる扉の話を聞くことはできる。それでも噂程度のものでしかなく、技術が確立されているのにも関わらず、余りにも危険すぎたことで、国が厳重に技術の保管をしているのだ。

 

「答えると思う?」

 

「ですよねー。元より、その技術は提供されるものじゃねぇ。だからこそ、何となく察しがつく」

 

 違法に技術を手にいれているか。それとも、その技術者が居たのか。可能性が高いとするならば、前者の方だろう。

 この事が公に出されたり、国に知られたりでもすれば、ただではすまない事態になりかねない。

 

「ッ………………………」

 

 ムラクモの後ろを歩く愛たちは、ムラクモの放つ威圧に踏み出せてはいなかった。

 信用をさせてから、それを打ち壊す。

 覚悟を決めるしかない。

 

「ッ!!」

 

 踏み出そうとした瞬間に、二人の少女が、無防備なムラクモの背中を狙う。

 突き出された拳には、力が宿り、人を倒すには充分すぎるほどの威力。

 距離的に防御も反撃も不可能。不意討ちに警戒をしていれば避けることは可能。だがそれは、踏み出した瞬間に避ける動作に入らなければ避けきれない。

 となると、この不意討ちは必ず当たる。

 もし、それが当たらないのであれば───

 

「ッ!?」

 

「甘いッ!」

 

 それはきっと、人ではないナニカ(化物)だろう。

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