World High school 〜CROSS〜 作:火神零次
「よし、早速やろうぜ!」
「ちょちょ!?まだこっちは来たばかりだぞ!?」
幸斗は既に準備を終えて今から始めようとワクワクしていた。それに対してムラクモは先程、着いたばかりであり、準備も何もしていない状態である。
「いいじゃんかよー。別に戦ってれば体は温まるだろ?」
「だぁかぁらぁ!お前が相手だとそんな暇は無いっての!」
幸斗は不貞腐れるが、反論をしているムラクモは嘘をつくことはしていない。
「まったく……」
ムラクモはため息をつきながらも準備を始め、体をほぐしていく。
「よし、いいぞ」
ムラクモは準備が終わると幸斗に呼びかける。
「よっしゃ!始めるぜぇ!」
幸斗は自分の武器、
朱い刀身の太刀、名前を『鬼童丸』という。
「死が、俺の前に立つ…『
刀の名前を言い、刀でありながら短刀ほどの長さをしている村正を握る。
「行くぜ!」
幸斗は足を突っかけ、一気に加速する。
空気の抵抗を物ともせず駆け抜ける。
(小手先の技が通用しない相手だ……。さぁ、どうでる?)
ムラクモは村正を構え、幸斗の行動に警戒する。
突っ込んでくるだけの幸斗だ。逆にどのような動きをするか分かったもんじゃない。
彼の持っている剣は、どういう訳か通常の『
それだけ、意志が強い
「《剣圧閃光》ぉぉぉぉぉぉ!」
「いきなりかい!?」
幸斗の代名詞の一つとも言える技《剣圧閃光》。目の前で放とうとすることに、ムラクモは目を見開くものの、対処をする。
「チッ!死が、俺の前に立ってんじゃねぇよ!」
ムラクモは《剣圧閃光》に対して、刀を振るう。
振るわれた刀よりも強いはずの幸斗の剣は、あっさりと
「んなぁ!?」
一瞬にして破られたことに驚愕の声を上げるものの、それでも戦うことをやめることが出来ないほど幸斗は、たった一刀で目の前の男に燃え上がっていた。
青く光る目に微かに見え隠れする、深紅の竜の紋章の目が、幸斗の死の線を知っているとも知らずに。
(目の前で剣圧が来れば基本的に俺の負けだ!距離を保ちつつ、幸斗の死の線をぶった斬る!)
幸斗の威力を目の前で感じたムラクモは、即座に策を張り巡らす。
幸斗の剣圧を受けず、尚且つ、自分が勝てる最善の策を。
「うおおぉぉぉぉぉぉぉ!」
「っ!」
更に加速し、ムラクモが退くのを許さずに追撃をしようとする。
「おらぁぁぁぁぁ!」
全力で放ってくる剣圧を殺していき、幸斗から離れていくムラクモ。しかし、彼がそれを許すはずもなく、彼の攻撃は激化していく。
「ッ、そらぁ!」
「ぐぁっ!」
大振りの隙を逃させずに幸斗の腹部に蹴りを入れ、距離を強制的に離す。
充分な距離は取れた。
もう、目の方も慣れている。
「唯識……!」
幸斗の死の線を完全に可視化させる。
腹部と腕部、そして首。
この三本の線をその通りに切ればいい。
「いいぜ、今の《剣圧閃光》が斬られるなのが運命だって言うんなら────その運命を覆してやる!」
幸斗の内側の力の鎖が『壊れた』。
本当の全力を、両腕に込めて放つは幸斗の全力。
迎え撃つは、死を直視できる目。
「《
「直死………!!!」
迫り来る剣圧を斬り殺す。
圧力の抵抗も斬り殺し、ただひたすらに幸斗へと突き進んでいく。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!」
腕を振るいきってもなお、また剣圧を飛ばしてくる。
体力が続く限り振るいまくるほど鍛えている幸斗の体は、常人では考えられない体だ。
そして、それを無傷で突破していくムラクモも異質な存在でもある。
「ッ!」
ムラクモは剣圧を殺し、跳び上がる。ありえないほど高く、そして急降下してくる。
「最大火力ぅぅぅぅ!」
彼の内側が、さらに壊れた。
可能性の限界を超え、攻撃力であれば神をも殺す剣圧を彼は全力で放ってくる。
「《
魂の叫びに届くその声は、ムラクモを、竜を、引き出してくれる引き金となった。
「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ムラクモが、『竜』が、叫んだ。
その咆哮だけで、剣圧を全て薙ぎ払った。
「まだだぁぁぁぁぁぁぁ!」
『鬼』が、叫んだ。
竜を殺すべく、全力で剣を振るい続ける。
竜もまた、鬼を殺すために叫び続ける。
鬼と竜の名を背負うように二人は全力で殺そうとする。
「ぜいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
竜が全力で叫んだ。
剣圧は完全に薙ぎ払われ、幸斗の体も吹っ飛んでいく。
「ぐぅがぁ!」
その隙を逃さず、ムラクモが完全に距離を詰めた。
「はぁ!」
死の線を斬り、幸斗は殺される。
いや、実際に死の線を切っただけであり、ムラクモも殺そうとはしていない。
World High school 〜CROSS〜の訓練場は実物で戦おうが、実際に腕が切り落とされたりすることはない。
そのため、幸斗は殺されることはない。
「チックしょー!もうちょっとだったんだけどなぁ……」
幸斗は余程疲れたのか、大の字になって横になる。
「はぁ……はぁ……」
ムラクモは息を荒くし、肩で息をしていた。
「今度また勝負な!って、ムラクモ…?」
幸斗はムラクモの方に向かって笑顔でまた勝負しようと言ったが、ムラクモは何も反応せず、荒く息をしているだけだった。
「ッ……」
「お、おい、ムラクモ!?」
ふらふらと体が動いて大丈夫かと思った瞬間に、ムラクモの体が倒れた。
幸斗は急いで駆け寄り、ムラクモを背負って医務室まで連れていった。