World High school 〜CROSS〜   作:火神零次

2 / 21
殲滅鬼(デストラクター)直死(ちょくし)魔眼(まがん)

「よし、早速やろうぜ!」

「ちょちょ!?まだこっちは来たばかりだぞ!?」

 

幸斗は既に準備を終えて今から始めようとワクワクしていた。それに対してムラクモは先程、着いたばかりであり、準備も何もしていない状態である。

 

「いいじゃんかよー。別に戦ってれば体は温まるだろ?」

「だぁかぁらぁ!お前が相手だとそんな暇は無いっての!」

 

幸斗は不貞腐れるが、反論をしているムラクモは嘘をつくことはしていない。

 

「まったく……」

 

ムラクモはため息をつきながらも準備を始め、体をほぐしていく。

 

「よし、いいぞ」

 

ムラクモは準備が終わると幸斗に呼びかける。

 

「よっしゃ!始めるぜぇ!」

 

幸斗は自分の武器、固有霊装(デバイス)を顕現する。

朱い刀身の太刀、名前を『鬼童丸』という。

 

「死が、俺の前に立つ…『妖刀村正(ようとうむらまさ)』」

 

刀の名前を言い、刀でありながら短刀ほどの長さをしている村正を握る。

 

「行くぜ!」

 

幸斗は足を突っかけ、一気に加速する。

空気の抵抗を物ともせず駆け抜ける。

 

(小手先の技が通用しない相手だ……。さぁ、どうでる?)

 

ムラクモは村正を構え、幸斗の行動に警戒する。

突っ込んでくるだけの幸斗だ。逆にどのような動きをするか分かったもんじゃない。

彼の持っている剣は、どういう訳か通常の『伐刀者(ブレイザー)』の霊装(デバイス)よりも脆くない。

それだけ、意志が強い霊装(デバイス)なのだろう。

 

「《剣圧閃光》ぉぉぉぉぉぉ!」

「いきなりかい!?」

 

幸斗の代名詞の一つとも言える技《剣圧閃光》。目の前で放とうとすることに、ムラクモは目を見開くものの、対処をする。

 

「チッ!死が、俺の前に立ってんじゃねぇよ!」

 

ムラクモは《剣圧閃光》に対して、刀を振るう。

振るわれた刀よりも強いはずの幸斗の剣は、あっさりと殺されてしまった。(・・・・・・・・・)

 

「んなぁ!?」

 

一瞬にして破られたことに驚愕の声を上げるものの、それでも戦うことをやめることが出来ないほど幸斗は、たった一刀で目の前の男に燃え上がっていた。

青く光る目に微かに見え隠れする、深紅の竜の紋章の目が、幸斗の死の線を知っているとも知らずに。

 

(目の前で剣圧が来れば基本的に俺の負けだ!距離を保ちつつ、幸斗の死の線をぶった斬る!)

 

幸斗の威力を目の前で感じたムラクモは、即座に策を張り巡らす。

幸斗の剣圧を受けず、尚且つ、自分が勝てる最善の策を。

 

「うおおぉぉぉぉぉぉぉ!」

「っ!」

 

更に加速し、ムラクモが退くのを許さずに追撃をしようとする。

 

「おらぁぁぁぁぁ!」

 

全力で放ってくる剣圧を殺していき、幸斗から離れていくムラクモ。しかし、彼がそれを許すはずもなく、彼の攻撃は激化していく。

 

「ッ、そらぁ!」

「ぐぁっ!」

 

大振りの隙を逃させずに幸斗の腹部に蹴りを入れ、距離を強制的に離す。

充分な距離は取れた。

もう、目の方も慣れている。

 

「唯識……!」

 

幸斗の死の線を完全に可視化させる。

腹部と腕部、そして首。

この三本の線をその通りに切ればいい。

 

「いいぜ、今の《剣圧閃光》が斬られるなのが運命だって言うんなら────その運命を覆してやる!」

 

幸斗の内側の力の鎖が『壊れた』。

本当の全力を、両腕に込めて放つは幸斗の全力。

迎え撃つは、死を直視できる目。

 

「《龍殺剣(ドラゴンスレイヤー)》ァァァァァァァァァァァ!!!」

「直死………!!!」

 

迫り来る剣圧を斬り殺す。

圧力の抵抗も斬り殺し、ただひたすらに幸斗へと突き進んでいく。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

腕を振るいきってもなお、また剣圧を飛ばしてくる。

体力が続く限り振るいまくるほど鍛えている幸斗の体は、常人では考えられない体だ。

そして、それを無傷で突破していくムラクモも異質な存在でもある。

 

「ッ!」

 

ムラクモは剣圧を殺し、跳び上がる。ありえないほど高く、そして急降下してくる。

 

「最大火力ぅぅぅぅ!」

 

彼の内側が、さらに壊れた。

可能性の限界を超え、攻撃力であれば神をも殺す剣圧を彼は全力で放ってくる。

 

「《龍殺剣(ドラゴンスレイヤー)》ァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

魂の叫びに届くその声は、ムラクモを、竜を、引き出してくれる引き金となった。

 

「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ムラクモが、『竜』が、叫んだ。

その咆哮だけで、剣圧を全て薙ぎ払った。

 

「まだだぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

『鬼』が、叫んだ。

竜を殺すべく、全力で剣を振るい続ける。

竜もまた、鬼を殺すために叫び続ける。

鬼と竜の名を背負うように二人は全力で殺そうとする。

 

「ぜいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

竜が全力で叫んだ。

剣圧は完全に薙ぎ払われ、幸斗の体も吹っ飛んでいく。

 

「ぐぅがぁ!」

 

その隙を逃さず、ムラクモが完全に距離を詰めた。

 

「はぁ!」

 

死の線を斬り、幸斗は殺される。

いや、実際に死の線を切っただけであり、ムラクモも殺そうとはしていない。

World High school 〜CROSS〜の訓練場は実物で戦おうが、実際に腕が切り落とされたりすることはない。

そのため、幸斗は殺されることはない。

 

「チックしょー!もうちょっとだったんだけどなぁ……」

 

幸斗は余程疲れたのか、大の字になって横になる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

ムラクモは息を荒くし、肩で息をしていた。

 

「今度また勝負な!って、ムラクモ…?」

 

幸斗はムラクモの方に向かって笑顔でまた勝負しようと言ったが、ムラクモは何も反応せず、荒く息をしているだけだった。

 

「ッ……」

「お、おい、ムラクモ!?」

 

ふらふらと体が動いて大丈夫かと思った瞬間に、ムラクモの体が倒れた。

幸斗は急いで駆け寄り、ムラクモを背負って医務室まで連れていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。