World High school 〜CROSS〜 作:火神零次
まぁ、特に報告をするということもなかったので、ちょっとした爛たちに起こった、日常で起きることを書いてみました。
学園に翔とエリシアが来る日の朝、爛はとある災難にあっていた。
爛の目の前には、息を荒くして、苦しそうにしている六花たちがベッドで横になっていた。基本、栄養管理をしっかりとしている爛の料理だが、怠っているわけでもないし、間食を挟んでいるわけでもなく、かといって体調を悪くするような日常を送っているわけでもなく、至って健康的な毎日なのだが、ここ最近、温度差が激しいのか。体調を崩す人が多くなってきていたらしい。もしかしたら、六花たちはその辺りに引っ掛かったのだろう。それで風邪を引いた。しかし、そう考える爛にとってみれば、何故このようになっているのか。目を疑うような光景なのだ。
「うぅ、爛……」
先ずは六花。病弱でも何でもない彼女は温度差で体調を崩しているような様子を見せていた。一気に重なったのが今日なのだろう。
「マスター……すみません……」
次にリリー。彼女は最近、外に出ることが多く、温度差に影響されやすい状態だった。しかし、特に体調を崩す様子を見せずに過ごしていたが、一気に体調を崩したか。
「お兄ちゃん……行かないで……」
額に冷えピタを貼って苦しそうにしている明。六花と同じく体調を崩している様子を見せていた。リリーとは違い、家にいることが多かったので、急な温度の違いに体がやられたか。
「大丈夫だよ明。にぃにも居るし……」
明を心配して隣に横になっている沙耶香。心配する様子を見せながらも、香、爛、明、沙耶香の中では、一番の病弱なのだが、妙に丈夫な方で、インフルエンザなどにはかからないのだ。しかし、今日は明と同じく体調を崩している。熱も出ていた。休ませてあげるのが良いだろう。沙耶香は四人の中の一番下の妹。
後で、彼女にも温かいものと冷えピタを交換しよう。
「爛がいなくても、私が何とかするから……」
そんなことを言いつつ咳き込む香。やはり彼女もやられていた。明や沙耶香と同じく部屋から出ていても、環境のいいところにいたため、温度差にやられていると考えた方がいい。香は四人の中で一番上の姉。しかし、爛に甘えているところを見ると、爛の方が上に見えてしまうが、年齢では香の方が上なのだ。
「とりあえず、これだけ風邪を引くとなると、俺のせいもあるのかな……」
五人が一気に体調を崩すとなると、やはり自分の栄養管理が甘かったのか。そう考えて顔を俯かせる爛に、六花は首を横に振って、無理矢理体を起き上がらせて爛に言う。
「そんなことないよ。爛はしっかり考えて作ってるし……」
続きを言おうとした六花は、咳き込んでしまい、爛は不安になって六花の隣に行き、背中を擦る。
「大丈夫、ありがとな。嬉しいよ、そう言ってくれるだけでも。でも、体には気を付けてな。栄養管理しているから栄養に関しては何とかなるけど、他は完全に自己管理になるからな」
「うん、次から気を付けるよ……」
爛は笑みを浮かべて六花を安心させようとする。素直に頷いた六花は、無理矢理起き上がらせた体を横にする。
「さて、どうしようか。ネロたちは平気だけどな……風邪を引かれると困るしな……」
朝起きて、六花たちは食べていない。そのことに気づいた爛はお粥でも作ろうかとキッチンに行こうとするのだが……
「ん?」
服の端を掴み、行かせないようにしている明がいた。
「やだぁ……お兄ちゃん、一緒にいてよ……」
目の端に涙をためている明を見て、これはいけないと爛はすぐに考える。
「分かった」
頷いた爛は自分がいなくなるのが不安になるのだろうと考え、明が横になっているベッドに座る。
「お兄ちゃぁぁん……」
爛にすり寄り、甘えようとしている明を見て、爛は首をかしげて尋ねる。
「何だ?」
尋ねても何も答えない明だが、両手を広げて上目遣いで、
「ギュッて、して?」
そんなことを言ってきた。
それを聞いた爛は頬を赤くして驚く。
「ダメ?」
追撃された。
妹のことを思っている爛は、頼みを断りきれるわけはなく……
「……分かったよ」
頷いた。
明は爛の太股の上に座り、爛を抱き締める。爛も同じように抱き締め返す。
「……ズルい」
ムスッとした表情で爛たちを見ている六花は、爛の背中に抱きつく。
「六花?」
「明ばっかズルい……」
ぴったりとくっついた六花は、爛の腰に手を回す。
「六花、後でしてやるから、我慢してくれるか?」
六花の頭を撫で、苦笑をしながらそう言うと、六花は渋々頷く。
「……分かったよ」
抱きつくのをやめた六花は、ベッドに横になり、毛布に頭まで入れて眠ってしまった。
「あちゃあ……怒らせたかな……」
しくじったと思った爛は苦虫を噛んだような顔になり、どうしようかと考える。
「…………………?」
服を引っ張られる感覚が来た爛は、服を掴んでいる明に視線を向ける。
すると、明は鋭い視線を爛に向けていた。
「……ごめん」
そんな視線に勝つことができなかった爛は、六花の頭を撫でていた左手を明の頭にのせて、撫でていく。
言いたいことが伝わったのか。明は嬉しそうな表情で頬擦りをする。
「……ゆっくり休んでくれよ」
少しずつ体を揺らし、眠りやすくなるようにして、明の頭を撫で続ける。
「……うん」
明は瞼を閉じて、爛の服を掴んで眠りにつく。
「…………………」
優しい笑みを浮かべた爛は、明を暖かく見守る。自分の腕の中で眠っているか弱い子供を守るように。
「………ところで、香姉たちは眠ったのかな?」
爛は笑みを浮かべたまま、香たちがいるはずのベッドの方に視線を向ける。そこには、横になっている香たちがいた。
「暑くて眠れないのは分かるけど、寝ないと治らないぞ。じゃないと、構ってやらないからな~」
しっかりと休んでもらいたい爛は香たちに告げると、ビクッと震わせる動きを見せてきた。
起きているんじゃないか。そう思った爛は口には出さずに、香たちを視線から外す。
「眠ったみたいだな」
深い眠りにしっかりとついた明を見て、爛はベッドに横にさせようと動くのだが……
「ん?」
不意に、服が引っ張られる感覚がした。よくよく見れば、明の右手が爛の服をつかんでいたのだ。
そういえば、眠るときに掴んでたっけ。そんなことを思いつつ、先程の形へと戻り、爛は明の額にキスをする。
「愛しいな、お前は」
正直な感想が口から溢れた。妹に抱いていた思いは、微かなところで響いていた。その言葉は誰にも聞こえず、また、爛にしか分からないほど、とても小さな声だった。
「マスター……シスコンですかね」
部屋のドアから覗くように見ている玉藻の前が呟いた。
玉藻の前(以降タマモ)、爛のサーヴァントであり、自称正妻。好きな服で着飾っており、コーディネートのセンスがある。
「そうですね。私たちなんか書いてくれる描写すら無いわけですし……」
その下で同じように覗いている清姫が同じように呟く。
清姫、タマモと同じく爛のサーヴァントである。嘘については凄く敏感で、爛でさえ嘘は許されていない。嘘をついた場合は焼き殺されるか、爛の場合だと別の意味で搾り取られることになる。
「いいなぁ……明さん」
羨ましそうな目で見つめているのが、桜。
敷波桜。爛の一歳年下の後輩。養子として招かれた桜は爛のことを先輩と呼んでいる。
桜たちはドアの僅かな隙間から覗き、羨ましそうに明を見つめていた。
(はぁ……結局は、みんなにしてあげないとかな……)
爛はそんな視線を感じ取っていたのか、溜め息をついた。