World High school 〜CROSS〜   作:火神零次

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二人の疑問

 凛の説明が終わったのを見たムラクモは、飲み終わったティーカップを置き、二人に話しかける。

 

「ん、じゃあ、学園の案内をしよう。とりあえず、凛の説明で何となくは分かったか?」

 

 二人に確かめるように顔を向け、尋ねる。

 二人は頷き、肯定をする。

 

「おう、何となくだけどな」

 

「はい、ショウさんと同じく」

 

 それを聞いたムラクモは笑みを浮かべた。純粋に、ここに住むようなものだから、知ってもらえるのはありがたいのだ。ムラクモにとって、この学園が自分の家のようなものだからだ。

 

「よし、それじゃ、行こうか。凛、後は任せた」

 

 ムラクモは立ち上がり、理事長室から出ていく。

 

「ムラクモについていくといいわ。私からは、これで終わり」

 

 凛は言い切って、まだ残っている紅茶に手をつける。

 

「………おいし」

 

 素直に紅茶の味に感想を口から溢した凛は、書類を取りだし、確認を始める。

 

「ムラクモさんについていきましょう。ショウさん」

 

「おう」

 

 翔とエリシアは理事長室を出ようと立ち上がり、凛に一礼してから、理事長室を出る。

 

「ん、行くことが多くなるところから回って説明していくぞ」

 

 ムラクモは一声だけかけて、すぐに歩き出す。二人は、返事すらまともにできずに、急いでムラクモの跡を追う。

 追い付いた時、翔がムラクモに尋ねてきた。

 

「なぁ、この世界はどうなってるんだ?」

 

「…………………」

 

 ムラクモは立ち止まり、二人の方を向く。その瞬間に、赤い眼光が二人の目に映った。それはまさに、ムラクモから見えたもの。表情は無機質なものとなり、翔を見つめている。

 

「この世界か……」

 

 ムラクモは呟くように小さな声で言った。

 ムラクモが答えるよりも前に、続けてエリシアが質問をぶつけてくる。

 

「この世界にある気配が、とても大きな物の上に私たちが居るような感じがするんです」

 

 それを聞いたムラクモは、エリシアに視線を向けた。その視線から感じ取ったのは『興味』だった。

 

「へぇ……俺が、それを答えられるとでも」

 

 ムラクモは自分から疑問を投げ掛けた。この世界の住人であるとはいえ、それを答えられるとでも思っているのかと。

 

「はい、貴方なら答えられる。いえ、答えられない訳がないはずです」

 

 エリシアはキッパリと断言した。翔を眼を剥いて、エリシアの方を向く。そこまで強気にいくエリシアを見たことがないのだろう。

 ムラクモは口角を上げ、笑みを作る。

 

「……二年ぐらい前か。そんなことを、言ってきた男が居たよ。しかも、中にあるものまで言い当てやがった。勘のいい男って訳じゃなかったが、ソイツとお前は違う。お前は勘のいい奴の方だな」

 

 明らかに気配が違う。今までの彼とは違うものだ。

 だが戦うという意思は見せていない。何か話すべきことがあるというような顔だ。それに気づいてもらって嬉しい。気づいてほしかったような、言葉に表しにくいものだ。

 

「けど、お前には答えられないな。アイツは、自分が傷つくことに心配なんてもんをしなかったからな。アイツとお前は違う。負荷に耐えきれない。勿論、翔、お前もな」

 

 指をさす。ムラクモの言葉からは警告のようなものを感じ取った。いや、ここから先には近づくなと言う忠告に近い。

 本能的にそう見えた。これ以上は踏み込めない。踏み込みきれない。少しでも歩みを進めようとしたら、何かを無くす。

 

「……分かりました」

 

「いい線行ってたぞ。まぁ、いつか話すときは来るんだ。その時まで待っててくれ」

 

 ムラクモは窓の外を見る。

 大きく栄えている学園の外には、建物が連立しており、どれも高い。街は賑わい、活気が溢れて、毎日が送られている。

 それを一望することができる学園だ。周りには、様々な世界があるといってもいい。いや、そう言い切らなければならない。

 

「……でもまぁ……」

 

 ムラクモは青い空の方を向き、そこから見える太陽の方へと手を伸ばす。

 

「お前たちも知りたいというのであれば、俺から言えることはヒントだけだ」

 

 手を下げ、二人の方へと顔を向ける。まだ疑問を浮かべている表情だ。それはすぐに察することができた。

 ただ、ムラクモの中では、二人に対する本能的な危機感を抱えている。それは一体なんだ。これから共にいることになる者に危機感を覚えなければならないのは。いや、それも気づいている。根本の原因も分かってくるだろう。危機感があるということは、それは多分、ムラクモの中にあるものが、あの二人に対して、何かを感じている。

 

(………どちらにも因縁を浅くとも持っているものがある。それは二人にとっての敵であり、仇みたいなもんだな)

 

 ムラクモは苦笑を浮かべた。この二人は中にあるものを考えると、付き合いづらい。

 まぁ、人間としては面白いし、問題はないだろう。

 

「さ、行くぞ。突っ立ってても何も起きない。さっさと終わらせようぜ」

 

 ムラクモは歩き出す。

 あぁ、いつか、この世界にも、平穏は訪れるのか。

 

(いや、こんなこと考えてもつまんねぇな。

 ……にしても、この体もアイツらからしたら完全に異常だな。爛が言ってたから間違いねぇな。どこまで可笑しくなって、狂って、壊れて、どうでもいいようになった体をどこまで隠し通せばいい? なぁ、答えてくれよ……神だか何だか知らねぇけど、知ってんだろ。俺を創りやがったクソ共)

 

 ムラクモの中を知らない二人は、その危険を知らずについていく。自分達の仇ともいってもいい存在と同類のものが、目の前にいるとも知らずに。

 

 そして、ムラクモはまた、罪の中で生きていく。

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