World High school 〜CROSS〜 作:火神零次
「───────────」
誰もいない学園にある一室で爛は本を読んでいた。
そんな中、爛がいる部屋にノックする音が聞こえる。
「───あぁ、いいぞ」
爛の声が聞こえたのか、部屋のドアが開かれる。
そこに入ってきたのは、翔とエリシアだった。
「……久しぶりだな、二人とも」
「おう、久しぶり。あんまし、変わってねぇな」
「お久しぶりです、爛さん」
久しぶりに再会をすることができた三人は、それそれの言葉を交わす。
「あまり変わってないようで何より」
「お前も変わってないみたいで安心したぜ。それよりも、ムラクモにここに来いって言われたんだが……何だ?」
あぁ、その事か。と本を閉じながら爛は、二人に椅子に座ってもらうようにし、飲み物を二人に出す。
「まぁ、話は長くなるからゆっくりと、な」
爛も椅子に座り、二人に切り出す。
「ところで、ここはどうだった。馴染めそうか?」
「あぁ、問題はないと思うぜ」
「はい、部屋も快適でした」
二人の感想を聞いた爛は笑みを浮かべ、うんうんと頷いた。
「それは良かった。それと、ムラクモから聞いたんだが……ムラクモのことについて知りたいと?」
満足そうな笑みを浮かべていた爛は、二人に尋ねてきた。その事は、二人も真剣な表情となり頷く。
それを見た爛は、少し溜め息をつき、煙草を取り出す。
「まぁ、お前たちなら気付くだろうな。あいつのことにな」
爛が返してきた答えは当然のものだった。爛も二人と同じようにムラクモに違和感を持った一人だ。
「だがまぁ、あいつのことは知ろうとはしない方がいい。これは、お前たちの命の安全を最優先するとだ」
「……どういうことだ?」
爛が言い放ったことは、まだ二人には分からない。首を傾げながら、翔は爛に尋ねた。
灰を灰皿に落とす。煙草を口に加え、二人にある書類を見せる。
そこに書かれていたのはムラクモのことだった。
「……えっ!?」
「おいおい、冗談じゃねぇだろうな……」
二人が見たのはムラクモの情報。書類に書かれているもの全て、ムラクモに関しては『不明』だった。
「生憎、全て不明だ。書かれている通りだ。嘘でもなんでもない。それ故に、ムラクモは一人で生きてきた。ここに来るまではな」
ムラクモにこの世界での居場所は無かったんだ。そう言い放った。爛に、慈悲という感情はない。誰にも頼れない状況で生きてきたムラクモに、慈悲は存在していないと言っているかのように、爛はそれを気配で見せつけてきた。
「ただ、ムラクモの接し方はムラクモなりの優しさだ。自分のようにはなってほしくないんだろうな。だからこそ、あれだけのことを言ったりするからな……」
爛は瞳を閉じて、ムラクモとの日常を思い浮かべる。自由奔放のようなムラクモは、今まで生きてきた人生をそのまま体現しているかのように見えた。
周りに影響されることなく、自分らしさを出していき、認めさせる。それが自分なのだと。だがそれは、人を傷つけたりする可能性もある。ムラクモが人を傷つけるようなことではなかったのが、彼なりの優しさなのかもしれない。
「……だが、自分の秘密に知ろうとするものだけは、容赦しないみたいだ」
「知ろうとすれば殺すってか?」
「その通りだ。一人だけ、ムラクモについて知った。そいつは遺体かどうかすらわからないほどに、人じゃない形にまでになったそうだ」
「そんな……!」
ムラクモは自分についての秘密が敏感らしい。知る必要のない者が知ろうとしたりすれば殺される。
二人にとってみれば、あれだけ優しい雰囲気をしていたムラクモとは正反対のムラクモを、爛は知っていた。
「お前たちはムラクモには勝てない。だからこそ、知ることは諦めるんだな」
二人の命を最優先に考えた結果がこれなのだ。爛の言っていることは間違いではないだろう。
「……分かったよ」
「あぁ、ムラクモは殺すことに関しては慈悲なんてないからな……」
沈黙の雰囲気が流れている中、ドアが開く音が聞こえる。その音に反応した爛が、すぐにドアの方へと歩く。
「ちょ、ちょっと六花! 部屋で安静にしててくれって言っただろう?」
六花が入ってきたようだ。爛が焦っているような話し方をしている。どうやら、六花は部屋で安静にしてなければならない状態だと、二人はすぐに気づく。
二人の考えている通り、朝に六花は風邪を引いており、爛の部屋で安静にしていた。
「……分かったよ。ただ、無理に話さない方がいい。言いたいことは分かったから」
ドアが閉められる。戻ってきた爛は六花を抱えていた。
「……あ、久しぶり。二人とも……」
弱々しい声だ。顔が少し赤くなっている。
「お、おい! 大丈夫か?」
「風邪引いたんだよ……全く、体にはキツいから、部屋で休んでろって言ってたのに……」
「不安なんだよぉ……爛がいないと寂しいの……」
翔が心配する表情を浮かべ、爛は諦めた表情をし、六花は不安な表情になり、爛にぴったりとくっつく。
「あはは……六花さんらしいですね……」
苦笑を浮かべるしかないだろう。爛に構ってもらいたい六花は諦めきることが難しい。
「ま、まぁ、良いじゃねぇかな。六花だし、問題はねぇだろ?」
「……仕方ないか……」
「………………♡」
爛の方が諦めると、六花は嬉しそうな表情で爛を抱き締める。
「……ほら、おいで?」
一度六花を下ろし、椅子に座ると、六花に対して両手を広げ、微笑みながら誘う。
六花はそのまま爛の両手の中に行き、爛の上に座る。
「……割りと、お前も六花を甘やかしてるよな……」
「まぁ、六花が悲しいときとかにやってあげてるからなぁ……」
少しジト目をしながら爛を見つめ、チラチラと視線をエリシアに向ける。
「わ、私はしませんよ!?」
六花みたくしてほしかったのか。赤面しながら否定する。
それを聞いた翔は項垂れて溜め息をつく。
「そうかぁ……俺とエリシアは爛と六花みたくあれだけの仲じゃないのかぁ……」
爛と六花の二人を羨ましそうに見ている翔を見てしまったエリシアは、少し申し訳なさそうな表情をし、翔に提案する。
「……もし、良ければ、二人っきりの時になら……良いですよ……?」
「ホントか!?」
「飛び付くの早いな……」
エリシアの提案にすぐに飛び付いた翔を見て、爛は苦笑を浮かべるしかなかった。
「二人は、学園がどういうものかは分かったのか?」
「簡単な説明は、ムラクモさんからしてもらいましたが……」
「詳しく分からないとね……」
尋ねてきたのは学園のことについて、素直に答えると、爛は苦笑をした。
まぁ、面倒事は人に投げつけるムラクモだから、こうなることはわかっていたとはいえ、何とも言えないは確かである。
「……分かった、詳しく話そうか」
爛はこの学園を構成している図を示している資料を二人に渡す。
「この学園は資料の通りだ。祭典とかもそこに書かれてある通りだ」
資料には詳しく書かれており、とても分かりやすいものだった。
「あ~、爛。これって何すんだ?」
「ん……あぁ、それか」
翔が指した資料の先には『学園大会』と書かれたものだった。
「学園内で行われる模擬戦の大会だ。訓練場、見ただろ?」
「確かに見たぜ。すげぇ広さだったな」
「そこを使って、誰が強いのか。それを競う大会だ。それで、基本は全員参加。やりたくない人がいるなら、不参加の意思を伝えれば、不参加となる」
爛たちのいる学園は、かなりの規模であり、大会をひとつするには、十分な大きさなのだ。
学園大会は、戦闘面で誰が強いのか。爛の説明の通りだ。
「爛さんは参加しているんですか?」
「俺は基本、ムラクモが参加するようであればやるが……あいつが参加しないようであればなにもしないさ。あいつとは、本当に全力で戦える相手だからな」
「そんなにつえぇのか? ムラクモ」
爛は参加する意思については、ムラクモがどうするかのによって変わる。
爛の言っていることが正しいのであれば、ムラクモは相当の手練れということになる。その事を翔が尋ねると、爛は小さく頷いた。
「あぁ、ムラクモがどれだけ強いのか。それは、言葉には表しづらいんだ」
「そんなにですか?」
「あぁ、学園大会になったら分かる。参加すれば、ムラクモと戦える可能性はあるだろうな」
爛が人を言葉に表すことはするが、ムラクモについて、全く表すことができない。爛が唯一、全力で戦えるような相手なのだ。どれ程強いのか、想像もつかない。
「………………………」
「……ショウ、目をキラキラさせて、俺に向けるな。基本、ムラクモは気分で動いてるんだ。ムラクモに頼めば、戦えるかもしれないな」
ワクワクしているのか、翔は爛に期待するような視線を向けるものの、爛はバッサリと切り捨てる。
「───もうこんな時間か、リリーたちが気になる。すまないが、話はまた今度だ。部屋に戻った方がいい」
爛から終わりを切り出してきた。確かに長い時間話していた。
「分かった、ありがとな」
「ありがとうございました」
二人は爛に礼を言うと、部屋から出ていく。部屋を出ていったのを見ると、爛は膝の上に座っている六花に視線を向ける。
「………あれま、眠っているのか」
「……………………………………」
六花は話している最中に眠ってしまったようだ。爛の服を掴み、小さな寝息をたてて、静かに眠っている。
「……可愛い」
素直な感想を口から溢した。爛は六花の顔を上げ、額にキスをする。
六花の頭を撫で、抱えながら部屋から出ていく。
「………………………///」
六花は密かに顔を赤くして、爛の胸に顔を埋めていた。