World High school 〜CROSS〜   作:火神零次

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はい、二日空けての投稿です。

爛が主人公の作品の続きはまだ執筆中なので気長にお待ちいただけるとありがたいです。

また、活動報告にて次回の話について、どのように書いていくかの方針等が書かれていますので、確認していただくと助かります。


爛の日常 ~1~

 爛の朝は先ず、爛に抱きついている六花たちを引き剥がすことから始まる。彼女たちを起こさないように気を付けながら、するすると彼女たちの拘束から逃れる。

 今日は休日。爛たちも部屋でゆっくりすることができる時間だ。爛自身は、六花たちの相手で自分だけの時間をとることは難しいのだが。

 

「ふぅ、コーヒーで目を覚ますか」

 

 爛はいつも、朝になるとコーヒーを自分で入れる。本来ならばドリップ式など、本格的な道具を揃えているのだが、今日はインスタントのコーヒーで飲んでいる。

 朝、目を覚ますのに爛は基本、ブラックで飲んでいる。

 

「うん、朝はブラックだな」

 

 しっかりと目を覚ますことができた爛は、朝食を作る。眠っている六花たちは朝、爛に起こされるか、自分で起きるか、朝食の匂いに誘われて起きるかになる。

 今日も、彼女たちのなかで、自分で起きてきたのが居るようだ。

 

「にぃに……」

 

 起きてきたのは沙耶香。キッチンに立っている爛を、背中から抱きつく。

 

「おはよう、沙耶香。よく眠れたか?」

 

「……うん。おはよう、にぃに。今日のご飯は何?」

 

 笑顔を浮かべた爛は、沙耶香に尋ねると、頷きながらまだ眠たそうに目を擦り、今日は何が朝食なのだと尋ねてくる。

 

「サンドイッチだ。ほら、しっかりと目を覚まして、着替えてきてくれ」

 

「はぁ~い」

 

 沙耶香が尋ねてきたことに答えた爛は、抱きついている沙耶香の頭を撫でると、着替えるように言い、沙耶香は素直に返事をして、爛から離れる。

 

(沙耶香は素直だ。それは、俺としても嬉しいことだが……う~ん、なんとも言えんなぁ)

 

 妹が素直であることは兄として嬉しいことなのだが、爛の中では少し引っ掛かるところがあるようだ。

 着替えてきた沙耶香は爛に抱きつくことなく、椅子に座って待っていた。

 

「おはようございます。ますたぁ♡」

 

「おはよう、清姫。うん、着替えていたことには良しと言えるが、何かを待っているように側にいるのは何でかな?」

 

 清姫が起きてきた。ちゃんと着替えてきたことにはよろしいと言えるのだが、清姫が爛のとなりに立ち、何かを待っているように、爛に視線を向けていることに気づき、清姫に尋ねる。

 

「私は、ますたぁのお役に立ちたいのです。殿方が料理をし、妻がそれを待つことなど笑止! 本来であれば逆なのですよ?」

 

「つまり、俺が料理を待っている立場なのか?」

 

 清姫の思うことは爛にも分かっている。清姫が役に立てていないと感じているのだろう。それを、夫婦で例えられても困ると思いつつ、爛は清姫の言い分に答えると、彼女は強く頷いた。

 どうやら、彼女自身が納得いっていないように見える。だがこれは譲るつもりなど爛にはない。

 

「すまない。これは俺の日課になっているんだ。実家でも朝食は俺がやっていたしな。そこまで役に立ちたいなら、みんなを起こしてきてくれないか? もうすぐ出来上がるんだ」

 

「……分かりました。すぐに、皆さんを起こしてきますね」

 

 謝ることしかできない。訳を話せば彼女も納得するだろう。ちょっとショボンとしていた彼女に不覚にも可愛いと思ってしまった爛は、清姫から視線を逸らす。

 爛からのお願い事に少しだけ元気が湧いたのか、清姫は未だに眠っている六花たちを起こしに行った。

 

「皆さん、起きてください! ますたぁがお呼びですよ?」

 

 清姫は六花たちが眠っている部屋へと行き、声をかける。大抵は爛が呼んでいると言うと起きてくれる。

 今日も同じように彼女たちは起きる。

 

「……分かったよ~」

 

 六花が返事をした。他の皆も次々と起きた。

 まだ眠そうにして、ボーッとしている六花たちだが、そこに爛がやって来る。

 

「ほら、朝食はもうできたぞ。サンドイッチだ。皆で食べるぞ」

 

 また、寝てしまわないように六花たちを立ち上がらせようと抱き上げると、六花はそのまま、爛を抱き締めてしまう。

 

「六花? 今は我慢してくれ。後でしてあげるから……」

 

「じゃあ、あと十秒だけ……」

 

 爛の提案に対して何も答えずに、六花はあと十秒と言い、抱きついたままだった。

 このままじゃ言っても伝わらない。そう感じた爛はこのまま十秒待った。

 

「十秒経ったぞ……」 

 

「やぁだぁ~、もうちょっとだけ~……」

 

「ダメです! リッカ。マスターが困ってます……」

 

 下ろそうとする爛に対して、それを拒む六花。我儘すぎると思ったリリーは六花に怒った表情で近づく。

 

「……リリーだって、爛に抱き締められたいでしょ?」

 

「……………ッ///」

 

 図星だったのか、リリーは六花の言ったことに、反応して顔を赤くした。

 

「だから、後でしてあげるから、な?」

 

「……分かったよ……」

 

 爛の言ったことに渋々頷いた六花は、爛に下ろされて、着替えを始める。

 

「それじゃ、待ってるから」

 

 部屋のドアの前まで行き、待ってるとだけ言うと、ドアを開けて出ていく。

 六花たちは着替え終わった後から、爛のいる部屋に入っていく。

 

「……ん、食べようか」

 

 爛たちはサンドイッチに手を伸ばし、食べ始める。

 すると、六花は爛を突っつく。

 

「…………………?」

 

「あ~……………」

 

 口を開けて、何かを待つ仕草を見せる六花を見て、首を傾げる。

 何も分かっていない爛を見て、頬を膨らませる六花。

 

「も~、分からないの?」

 

「……はぁ~、何、サンドイッチを食べさせればいいの?」

 

 六花に言われて、やっと気づいたのか。ため息をつきながら尋ねると、六花は嬉しそうに頷いた。

 

「分かった分かった。ほら」

 

 サンドイッチを、六花に口元に持ってくる。六花は口を開けて、サンドイッチが来ると、パクリと食べた。

 

「ん~♡ 美味しい」

 

「それは、良かった……」

 

 満足した表情で感想を言う六花と、苦笑を浮かべてサンドイッチを食べている爛。

 すると、他の方から視線を感じ、そちらの方に目を向けると、リリーたちが物欲しそうに見ていた。

 

「……分かったよ」

 

 六花が羨ましいのか。自分もしてもらいたい思いがあるのだろう。それを察した爛は頷き、サンドイッチを手にし、一口サイズに手で分けていく。

 

「マスター……」

 

「はいはい……」

 

 リリーが爛を呼び、口を開けているので、苦笑を浮かべながらも、サンドイッチをリリーの口の中に入れる。一口サイズに分けたので全部入った。

 

「あ、リ、リリー……///」

 

 顔を赤くした爛が、視線を逸らしながらも、リリーに声をかける。

 

「ふぁい? どうしました?」

 

 中にサンドイッチがあるため、少し発音に難があるものの、聞き取ることができた。

 分かってるくせに。そう思いながらも、爛は口を開き、言った。

 

「………指………」

 

「ふぁい?」

 

 リリーの口に爛の指先が入ってしまっていた。分かっていながらもやったのだろう。一口サイズに分けたらダメだった。こうなることは爛は考えていなかった。

 分かっていながらも、爛の指先が入っているのを知らないふりをしていたのだ。

 

「リ、リリー……な、舐めないで……///」

 

「嫌ですぅ」

 

 指を抜こうとすると、リリーがガッチリと爛の腕をつかみ、離そうとしてくれない。

 指先を舐められ、すごく恥ずかしいと思いながら、爛は指を抜こうと必死になった。

 

「痛ッ!?」

 

 痛みが走った。どうやら、余りにも指を抜くことに意識していて、リリーが指を噛んだことに全く意識していなかった。

 軽い痛みが痺れるほどの痛みに感じた爛は、顔をしかめた。

 すると、リリーが驚き、爛の指を口から離す。

 

「だ、大丈夫ですか!? マスター!?」

 

「大丈夫、大丈夫」

 

 心配して、爛の指を確認するが、血も出ておらず、歯の痕がついていた程度だった。

 

「抜くことに必死になってたから、噛まれたことに全然気づかなかっただけだから……」

 

 リリーを安心させるために、平気なことを示すと、リリーは安堵した表情になった。

 

「良かったです。私がマスターに怪我をさせたりするとなると私、自分からい死ににいっちゃいます……」

 

「いや、それだけは勘弁してくれ……」

 

 さらっと恐ろしいことを言い出すリリーに、爛は少し冷や汗を流した。

 

「むぅ~……」

 

「あからさまに嫉妬しているな、総司」

 

「あ、いえ! そういうわけでは……」

 

 不機嫌な顔をしている少女は『沖田総司(おきたそうじ)』、清姫たちと同じく爛のサーヴァントである。

 心を許した相手には犬のようになつく彼女。爛に対しては特に心を許した存在だ。

 

「まぁ、俺ができる範囲でなら、何かしてやれるが?」

 

 機嫌を良くしてもらいたいために、爛は総司の望むことをしてあげようと声をかける。

 

「えっ、いいんですか……?」

 

 あれ、思ってたのと違う反応……。

 いつもなら飛び付くように反応を示すのだが、今回は少し引き気味だ。

 

「俺ができる範囲でなら、だぞ?」

 

 そのまま頷いたら、何か仕出かされると思った爛は、釘をさしながら頷いた。

 

「じゃ、じゃあ、このあと、お出掛けでもしませんか?」

 

「………あぁ、良いぞ」

 

 あれぇ? 思ってたのと違うぞ。

 内心で、疑問が消えていかない爛は少しだけ間を置いて頷いた。

 ツンツンと、横からつつかれ、そちらの方を向くと、口を開けた少女がいた。

 

「ほら、マスター」

 

 爛がマスターと呼び、一口サイズに分けられたサンドイッチを食べさせる。

 マスターと呼んだ少女は『曙聡美(あけぼのさとみ)』。爛がサーヴァントとしていたときに、マスターだった少女だ。今では、契約は切れているものの、二人とも覚えていたのか、爛はマスターと呼んでいる。

 聡美はサンドイッチを飲み込むと納得のいかない顔をする。

 

「あれ、もしかして、嫌いだった?」

 

「そうじゃないわよ、爛、いつまでマスターって呼ぶの?」

 

 納得のいかない顔をする理由は、爛がマスターと呼んでいるから。今は、契約もなにもしていないのに、未だにマスターと呼んでいる爛に納得がいかないのだろう。

 

「何度も言うけど、もうマスターって呼び慣れてるからだよ」

 

「マスター呼びは止めてほしいのよ。今じゃ、恋人同士だって言ってもいいほどじゃない」

 

 苦笑を浮かべた爛に対し、聡美は少し笑みを浮かべて、爛にすり寄る。

 

「ちょっと、マスター? そう言うとな……」

 

 爛が諦めた表情をしながら、六花たちに視線を向ける。彼女たちは、聡美の発言に納得のいかない顔をする。

 

「抗議するのはいいが、早くサンドイッチ食べ終えるぞ~」

 

 爛がパンパンと手を叩くと、六花たちは少し腑に落ちない顔をしながらも、サンドイッチを食べる。

 

「奏者、余にも奏者から欲しいのだ……」

 

「分かったよ、ネロ」

 

 爛がネロと呼んだ彼女は、『ネロ・クラウディウス』。

 ネロは爛に対して素直で、六花たちに構っていると、一番寂しそうにするほどだ。

 

「うむ、余はとても嬉しいぞ」

 

 笑みを浮かべたネロを見て、爛も釣られるように笑みを浮かべた。

 それは良かったと思いながら、それを言葉にはしない。ちょっとだけでもいいから、言葉の幸せを自分だけ感じても罰は当たらないだろう。

 

「六花さんたちばっかズルいです……」

 

 呟くように嫉妬するのは、宮坂家の養子の『敷波桜(しきなみさくら)』。爛のことを先輩と呼び、慕っている。無論、彼に恋をしており、一度スイッチが入ると、誰も止められない。

 

「先輩、私にも構ってください……寂しいです」

 

「はいはい、でも、サンドイッチで食べさせるっていうのはちょっと無理かなぁ」

 

 爛の背中に抱きつき、左肩に顔を出す。爛は桜の頭を撫でながらも、サンドイッチで満足させることはできないと告げた。

 どういうことかとサンドイッチがある皿を見ると、一つも残っていなかったからだ。

 これでは、確かに満足させることはできない。だが、続けて爛はこう言った。

 

「まぁ、別の方法でなら、満足させられるかもな」

 

 爛の言ったことがどういう方法なのか、思い付かなかった桜は、分からない表情をした。

 

「答えを言うとな。今日、二人っきりでどこかに行くか?」

 

 爛の提案に胸を高鳴らせた桜は、嬉しそうに頷いた。

何処にいこうかと爛が考えている最中に、桜から提案が来た。

 

「遊園地……何て言うのはどうですか?」

 

「あぁ、良いよ」

 

 桜の提案に頷いた爛は、桜の頭を撫でていた手を下ろす。

 

「片付けするから、後は自由にな~」

 

 爛は座っていた椅子から立ち上がり、皿を台所へと持っていく。

 すると、爛を後ろから抱き締めてくる女性がいた。

 

「ちょっと、香姉。今から皿を洗うのに、この状態じゃ……」

 

「何? 恥ずかしいの?」

 

「恥ずかしいに決まってるだろ……」

 

 爛を後ろから抱き締めたのは『宮坂香』。爛の姉でブラコンな彼女は、少し過保護な部分を持つ。爛を甘やかそうとしている。

 

「六花ちゃんとかばっかりズルいの……」

 

「ズルいって言われてもねぇ……香姉からは何も来てないからなにもしないよ。言ってくれなきゃ分からない」

 

 爛のいっていることは確かだ。香は自分の思いをしてほしいことを口に出さずにしていたのだ。

 爛は六花たちの相手をしながらも家事もしている人の気持ちに気づく余裕がない。

 

「うぅ……今度から言うね?」

 

「はいはい、分かりましたよ」

 

 できれば、相手は少ない方が楽なため、溜めててくれるとこちらも助かるのだが、それが引き金で香からファーストキスを奪われかけたことがあるため、そんなことは口が裂けても言えない。

 

「今度は、私と一緒に二人っきりで出掛けようね? 約束だから、破ったらダメだからね?」

 

「……分かったよ」

 

 強制に近いが、約束を取り付けた香は上機嫌で爛から離れる。

 姉とのデートはどうしようかと考えて始めてしまう爛だが、先ずは桜と出掛けるんだったと思い出した爛は、急いで片付けをした。

 

「桜が楽しめるようにしないとなぁ……」

 

 そんなことを呟く爛だった。

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