とある戦争のお話   作:Redeyesers

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続・とあるハイエナのおはなし

 化石資源の枯渇しつつある昨今では、あらゆる資源が再利用され、発生する熱は尽く回収され電力に変えられる。刑務所では格安な動力として人力発電が採用され、重犯罪者でなければ発電した電力量により刑期が軽減されることもある。慣れると随分楽なようで、出所すると発電で鍛え上げられた筋肉とスタミナを活かして行政の斡旋する肉体労働に従事するか、出所後1時間以内に適当な犯罪を起こしブチ込まれるかのだいたい二択だという。

 再利用できるものはする、使えるものは使う、燃やせるものは燃やす、なりふり構わぬその姿勢は、大きなゆがみをさらにひずませながら多くの人をそれなりに幸せにすることに成功していた。こういった時代でも、戦場の掃除屋たるハイエナを人間のクズのように言う「識者」もいて、多くの人はそれを鵜呑みにして蔑むが、世の仕組みを理解している人は敢えて何も言わない。俺は理解してないが、声をあげれば面倒なのに噛みつかれることは理解している。

「毎度毎度よくもまぁこれだけ集めるもんだ。次からはダブルストレーラで行ったらどうだ?」

 トラック一杯の資源。金属、樹脂、可燃物、人間の材料、ナノマシン他。ハイエナ1回で儲けるには、無駄なく金に変えるしかない。やる人間が少なく格安とはいえ、回収用トラックのレンタル料も出さねばならない。このまま業者に返せば、政治屋がクソみたいに長い時間をかけてやっと決めた額しか貰えない。ケチな政府が出すとなれば雀の涙ほど、トラックのレンタル料さえ出るかわからない。赤字など間違っても出したくない。

「それだけの規模の戦闘があればな」

 廃品回収業者と自らを誇らしく騙るこの男は元傭兵であり、俺の同期だ。つまり最初期の傭兵であるが、ちょっとした思いつきとぶっ壊れた人倫のおかげで、多くの人間に「最初のハイエナ」と蔑まれるくらいに成り上がった実業家だ。俺達の回収量を褒めるが、こいつの全盛期は山陽本線の貨物列車を丸々1編成チャーターするほどのものだ、こんなものは小遣い程度に過ぎない。規模が違うのだ。

「なかなか有望なガキを見つけたらしいな、広告塔の英雄さんよ」

「うるさい」

 外で相棒と業者に説明を受けている新兵を面白そうな顔で見ていた。こういうのは行政から押し付けられるものと知っているくせに、だ。

「山口の戦線も拡大する一途だ。俺としちゃぁ、将来有望なハイエナはいくらいてもいい」

「あんまりデカイと困るんだがな」

「うちの専属になるか?クソみたいな傭兵より社会保障は万全だ」

「広告塔が勝手にどっかに転職してはならんのだと。職業選択の自由なんてないのさ」

「やれやれ、最初期の成功例ってのはつくづく貧乏くじだな」

 これを成功と呼んでいいのだろうかはやはり疑問が残る。模範的傭兵、英雄としてちやほやされて、有頂天になって、余計な事まですることになって、ろくでもないことを知って。当時はどこまでも脳タリンなガキだった。

「で、どうだ。あのガキ、俺にくれんのか?」

「新兵にきけ。俺があいつの進路をどうこうするつもりはない」

「んの割には、結構入れ込んでるんじゃねーか? ハイエナは『義務教育』じゃあねぇんだし」

 傭兵は戦うのが仕事だ。死体あさりは業務に含まれていない。余計なことを教えるほど世の傭兵は暇ではないし、そもそもドンパチしか知らない連中も多い。そういう連中は常にギリギリな家計に火をつけたり消したりしていた。燃え上がれば灰になるしかない。

「教えるからにはしっかり自立してもらわないと、後々に余計な面倒を抱える羽目になる」

「そうか。ああ、なるほど、確かにな……」

 思い当たるフシがあるのか、それとも。傭兵界隈でなくとも、問題はどこにだってある。

「じゃ、遠慮なく勧誘させてもらうぜ」

 鎖がないとわかると、意気揚々と外に出る。常々言ってはいるが、傭兵はそうそう長続きする仕事じゃない。

 無駄に熱いコーヒーを舐めるように飲みながら、窓越しにヘッドハンティングの様子を眺める。

 

 

 

 コーヒーが飲み頃になったころ、奴が戻ってきた。

「やれやれ」

「振られたか」

 儲かるとはいえ、この世の最底辺。地雷の植えられた道路で、腐った血肉を運ぶだけの簡単なお仕事、そんなものを誰が好き好んでやろうというのか。こいつの部下にはそういうのが好きな連中が集まっているが。

「お前の思ってるような理由じゃあないぜ」

「ふぅん」

「なんだ、興味ないのか」

「両者が納得してのお断りなら文句も言わん。口も挟まん。お前なら騙すようなことはしない。それだけで充分だ」

 それよりも、訊くべきことがある。

「査定はまだか」

 

 

 

 相棒と新兵とを連れて、晩餐へと赴く。

 新兵が味をしめても困るので、少しだけ豪華、それくらいに抑えておく。いい飯を食う日に、あまり汚いものは見たくはない。

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