なお、書いている年数が飛び飛びなので変な点が合ってもご了承下さいな。
~さやか視点~
魔女の結界の中へ入ると、そこは異空間だった。
「このごちゃ混ぜな空間が魔女の結界……」
まどかがそう呟いているが本当にごちゃ混ぜとしか言い様のない世界があった。そこかしこに棘が生えていたり、階段や通り道はさっきの廃ビルの時と配置が変わっていたりと、まるで現実と虚構が混ざりあった世界だ。
そこでは、ある手下は薔薇の花だけを運び、またある手下は意味もなくそこら辺を走り回り、ある手下は私達をじっと観察していた。
「へぇ……」
それらを睨み返していたまどかを見ると、恍惚な表情を浮かべて今か今かと待ち構えている。それはまるで、新しい玩具を見つけた童のようだった。
「いきましょう、美樹さん、鹿目さん」
「了解っす、マミさん!」
「はーい」
そういって駆け出したマミさんに続いて私、まどかの順に走り出した。
♢♢♢♢♢
走っていると綿菓子の頭の手下だけではなく、新しい魔女の手下も現れる。それは、ソフトクリームに羽根が生えた姿で、頭には沢山の目玉がついていた。その手下達は、空を不規則に飛びながらも段々と私達を包囲してきた。
今にも襲いかかってきそうな所を、マミさんがリボンを手に持ち、それを鞭のように振るって手下達を引き裂いた。
まどかはそれを見て嬉しそうな顔をしながら、手の指の間にボールペンを複数挟み、それを手下に投げつけている。
ボールペンは手下を貫通し二、三匹ほど巻き込んでいった。
そして、討ち漏らした敵をマミさんはマスケット銃で、まどかは傘で
「……まどかは楽しい?」
「うん? ……うん、とても楽しいかな」
「そう……」
まどかは私が何を言いたいのか察したのか、獣のような笑みから好きなものを慈しむ顔へと変わった。
……まどかが楽しめることがあるというのは、確かに良い事だと思う。
でも、それに没頭して大事なものを忘れてほしくないとも思っている。
信頼していると言ったにも関わらず、こんな様だ。
これでは、
そう考えていると、急に手に温もりを感じた。
見ると、まどかが私の手を握っていた。
「さやかちゃん。心配してくれてありがとう。私は大丈夫だよ」
「そ、そう? なら、良いんだけど」
私は内心を言い当てられているようで恥ずかしくなり、心配してくれたまどかにたいして、つい顔を背けてしまう。
ちらりとまどかを見ると、そんな私を見て笑っている。
「……むぅ」
「ふふっ。……えい!」
そういって拗ねてるように膨らませた私の頬を、まどかはつついてきた。私の口から息が漏れていく。
……一方的にやられてなんか変な気分がする。
「……むぅ!」
「ふみゅ!」
まどかにやり返すとまどかは変な声を出した。
「……ぷっ」
私はその顔が可笑しくて、ついつい笑ってしまった。
それを見てまどかも笑う。
「……美樹さん、鹿目さん。そういうのは、せめて帰ってからにしてもらえないかしら」
その声で振り向くとマミさんが疲れた顔をしながら私達を見ている。
「ごめんなさい、マミさん」
「すみません、巴先輩」
マミさんは私達の謝罪を聞いてため息をつくと、苦笑した。
♢♢♢♢♢
あのあと手下達を倒しながら結界の奥へと進むと、今まではビルの面影があったが、それが全くない通路を見つけた。
「この先に魔女の反応があるわね」
「と言うことはいよいよですか」
「そうよ、心の準備はいいかしら?」
マミさんは改めて聞いてくる。
「大丈夫っす!」
「何時でも行けます」
そう答えると片手に持ったマスケット銃を使って、床に一本の線を引いた。するとそこから、黄色の透明なリボンが生えてきてそれが天井まで延びていく。全て延びきって、私達とマミさんで別れた状態になってしまう。
「使い魔程度なら良いけれど、魔女との戦いは流石に危険だからここから見学ね」
なるほど、確かに私達は見学に来たのであって戦いに来たのではない。隣をチラッと見ると、このまま戦えるのかと思ってワクワクした様子のまどかが一瞬無表情になったが、すぐさま笑顔で聞き分けのよい子供のように返事をした。
……私だからわかるけどその理解と思考の早さが時々怖くなるよ。
と、まどかが急に手に持った傘を調べ始めた。そういや、私の持つバットも敵に攻撃されそうになると自動でバリアをはる不思議道具にされてたな。まどかは傘を使って、敵を押し潰してただけだから何の能力も付与されてないのかと思ってたけど…。何か付いているのだろうか?
「では、行ってくるわね」
「あっ、はい。頑張ってください」
「ここで見てますね! マミさん!」
彼女が颯爽と飛び上がって魔女のいる広い空間へと降り立つ。魔女は頭が棘の塊で胴体に羽が生えており、それでいて人間よりも遥かに巨大だった。魔女は手下達が再深部を庭園のように彩る様を体をゆらしながら楽しんでいるようで、マミさんが降り立っても気付かない。
マミさんが何かに気付いたようで足下を見ると手のひらサイズの手下がうようよと作業をしており、まるで虫が蠢いているようだった。マミさんはニヤリと笑ってその内の一匹を踏み潰した。
「……?」
手下が死んだ事に気付いたのか辺りを見渡した魔女。マミさんの姿を見るやいなや、頭の棘を蠢かせ威嚇するような素振りを見せる。
マミさんは魔女に対して帽子を取り優雅にお辞儀した。それを挑発と受け取ったのか、スライムのような胴体で立ち上がり座っていた椅子を彼女へ向けて蹴り飛ばした。
マミさんは帽子を頭に戻しながら帽子からマスケット銃を取り出して、流れるような動作で椅子を撃ち落とす。
そして、弾を撃ち終えた銃を無造作に捨てて魔力で銃を大量に作り自分の周りに浮かべ、それを手にとっては撃ち、結界の中を大きく飛んで逃げる魔女を狙う。
「……!!!」
甲高い黒板を爪で引っ掻いたようなのような悲鳴をあげる魔女。時々、蔦を伸ばしたり、巨大な羽で強風を起こしてマミさんを吹き飛ばそうとするが軽やかにジャンプして避けて、淡々と撃ち続ける。
マミさんが魔女を倒しに来たはずなのに、傍目から見ると銃で獣を追い立ててる狩人にしか見えない。
ずっと飛び続ける魔女を見て、何時まで逃げるんだろ、と思っていたら羽に穴が空いてとうとう地に落ちた。
顔から落ちた魔女は痛そうに頭を振りながら羽を手のように使って立ち上がり目が無い筈なのにマミさんを睨んでいるのか怨めしそうな雰囲気だ。
それを見て、気付いてはいけないことに気付きそうで頭が痛くなる。何か……。魔女を見てると気付いてはいけない何かが頭に浮かびそうになる。私は自然と持っているバットを握りしめていた。
「…!? ……!!」
魔女はその巨体から信じられない速度で、羽をマミさんに振るう。が、マミさんは銃をバットのように構えて振り上げた。羽はバットと少しの間、拮抗したが狙った方向から反らされ空を切る。
そして、銃を振り上げた勢いで投げ捨て、一回転しながら自分を軸に均等にマスケット銃を作り、魔女を見据えて自分の周りで回転させて連射した。弾丸は吸い込まれるように魔女の頭部へと当たり、当たった瞬間爆発して大量の細かな破片が魔女の頭を傷付ける。
「……!」
痛みのあまり悶えて、傷付いた頭をを羽で押さえつける。マミさんは頭からリボンを取り出したかと思うと、黄色い光を帯びて巨大な大砲のような形をした銃へと変形した。
その照準を魔女へと向けて気分が乗っているのか決め台詞を言う。
「ティロ・フィナーレっ!」
その銃からは巨大な鉄球が射出され、魔女の胴体を撃ち抜いた。そしてその傷から黄色のリボンが生えて内側から魔女を包み込んだ。このまま上手く行くかと思ったが、ここで魔女は抵抗しだす。完全に包まれかけた時に、隙間から棘を生やしてリボンと拮抗したのだ。
マミさんもこのまま決まると思っていたのか訝しげな表情をしながらリボンへ込める魔力を増やす。黄色のリボンが発光しだし、棘を無理矢理押し込めようとするがそれに対抗するかのように棘の力が強くなる。
だが、ギチギチと大きな音を立てて拮抗しているがそれでも足りないのかマミさんのリボンに包まれた。そして、圧縮されてリボンの隙間から黄色い光が漏れだし、目を開けられないほどに輝き終えると、そこには黒い卵のような物体が転がり落ちていた。
「ふぅ、これにて一件落着ね」
そう言って冷や汗を流しながら黒い卵を拾うマミさん。
それと同時に音もなく、魔女の結界が割れていく。割れた隙間から現実の世界が見えたかと思うと結界が全て消え、廃ビルに入った時の様子と変わらないが外の景色が高く、遠くまで見えることから階層を上に移動してるのだと解った。
「巴先輩。それは一体……?」
「ああ、これはグリーフシード。魔女を倒すと手に入る景品みたいなものね」
グリーフシード……。何か使い道でもあるのかな。
マミさんは変身を解除してソウルジェムを取り出す。そしてグリーフシードに軽く当てると中から黒いモヤみたいな物がグリーフシードへと吸い込まれていき、ソウルジェムの色が鈍い黄色から明るく発光した黄色へと変化した。
「はい! これでまた魔法が使えるようになったわ」
「使えるようにって事は魔法少女になれなくなるんですか?」
まどかがそう聞くとキュウベェが回りの建物の影から出てきて、猫のような姿勢でさっと飛びマミさんの肩に飛び乗った。
「これについてはキュウベェが説明してあげて」
「分かったよ。ソウルジェムが黒く濁ってしまうと魔法少女は魔法が使えなくなるんだ。だから定期的にグリーフシードを使って元に戻さないといけない」
「ふーん。つまりただの人間に戻っちゃうの?」
「ソウルジェムが割れて魔法少女では居られなくなるね」
「へぇ、そうなんだ」
その返答に目を細めてキュウベェを見るまどか。何か今の返答におかしな所でもあったのかと思い返すけど、分からない。まぁ、後で聞けばいいかな。
そう思いながら魔女の結界が壊れていくのを眺めていた。