~昼休み、まどか視点~
「……ん。ここは?」
目が覚めるとベッドの上にいた。ベッドはカーテンで遮られて周りの様子が分からず、ここが何処だか分からなかった。私はベッドの上に座り直してから、寝る前に何をしていたか考える。
「私は何を……」
……そうだ。私はたしかカールさんに会って話をしたんだ。そして
「破壊をもってして愛を示す……か……」
カールさんの前だから拒否したものの、私の心は既に欲に負けそうだった。
「あーあ。もしも私がそういう舞台を作れたらなぁ……」
現実的に考えると、私は何処にでもいる中学二年生。そんな私に舞台を作る為の資金、土地、そして私の相手足りうる敵を作れる筈が無いのは明白だった。
それにそんなことをしてしまったら、知人や家族に迷惑がかかってしまう。
愛情を示す、示さない、以前の問題だった。
「……でも、私は諦める事が出来るのかなぁ?」
今の私は目の前にお菓子を置かれた幼子と変わらない。もし、目の前に私を下すことが可能な相手がいたら、その相手が例え家族だとしても正直我慢する自信がない。
「本当に儘ならないなぁ」
自分の手を開いたり閉じたりしながらじっと見つめていると、カーテンが開いて、さやかちゃんがいきなり抱き付いてきた。
そして、私の肩を両手で掴みながら私の顔を見る。
さやかちゃんの顔は涙目になりながら必死な顔をしてた。
「ちょっとさやかちゃん?いきなりどうしたの?」
そう言うとさやかちゃんは唖然とした後、すぐに怒った顔をしながら言う。
「どうしたの、じゃないでしょ!話していたらあんなに頭を痛そうにして、その後いきなり気絶しちゃったから死んじゃうかと心配してたんだよ!それなのに……なのに……!!」
そう言いながら私の膝に泣きついたさやかちゃんに少し驚いたが、さやかちゃんのことを放ってはおけないので直ぐにさやかちゃんを撫でながら言った。
「ゴメンね、さやかちゃん」
「……悪かったと思っているならお願いだから無理だけはしないで」
「無理なんてしてないよ?」
「まどかが、最近自然と笑わなくなった事に気付いてないと思ってるの?」
「……えっ?」
予想もしていなかった言葉のせいで、思考が止まった。
「何年友達やってると思ってるの?ずっと一緒にいて普段と違う雰囲気が続いたら誰だって気付くに決まってるでしょ」
「……そっかぁ」
さやかちゃんに気付かれてたんだ……。もしかして、さやかちゃんよりも一緒にいる時間が長いママとパパにも気付かれてるのかなぁ?
「ねぇまどか。私に相談出来ないほど、私って信用出来ない?」
「そんなことないっ!さやかちゃんは私の大切な友達だもん」
「そっか……。でも、やっぱり話せない?」
「……ゴメン」
「……そっか。なら私待ってる。まどかが自分から話してくれるのを待ってる」
「……ごめんなさい」
「ごめんなさいじゃなくて、こういうときはありがとうって言ってくれると嬉しいな」
「……そうだね。さやかちゃん、ありがとう」
「どういたしまして」
そう言って笑うさやかちゃんの笑顔を見て、もう少し欲に負けないように頑張ろうと思う私なのでした。
~放課後、さやか視点~
「本当に大丈夫ですの?」
「もう大丈夫だよ仁美ちゃん。それと昼休みはありがとう、さやかちゃん」
「どういたしまして。それと話せる時がきたら何時でも私の胸の中で話してくれたまえ!」
「うん!絶対にそうする!」
まどかのまだぎこちないが自然な笑顔を出せるようになっているのを見ると、あの時保健室で私達が気付いている事を話せて良かったと思う。
ちなみに私達と言っても、今の所気付いているのは私、仁美、まどかのパパとママの四人だけ。
まあ、今回まどかにその事を言えたのは、まどかのママから話してくれないかと相談を受けたからだった。
まどかのママに相談される前からまどかの様子がおかしい事には気付いていたが、それを話すことによって今の関係が壊れてしまうかもしれない事が怖かった。その為、まどかのママから相談を受けても話す勇気が欠片も湧かなかった。
だが、今回まどかが倒れた事は本人には悪いが話せる為の良い切っ掛けになったと思う。
これで言いたい事は全て言ったつもりだ。
後は本人から話してくれるのを待つつもり。
「あら。もうこんな時間ですの」
仁美が時計を見ながらそう言った。
「ごめんなさい。そろそろお茶の稽古があるので失礼しますわ」
「そっかぁ。仁美ちゃん。また明日」
「ええ。それではまた」
そう言って仁美は行ってしまった。
ふむ。そういえば、恭介の為にCD を選ばないといけないし、一緒にまどかを誘おうかな。
「ねぇまどか。今から一緒にCD 屋さんに行かない?」
「いいよ。また上条君の?」
「へへ。まあね」
そうして私達は、CD 屋さんに向かった。
なお、まどかさんの現在の獣殿の因子の侵食率。
約40パーセント程です。
これが100パーセントになったとき、周りを気にせずに愛を示そうとします。