「フェリンリル本部情報管理局局長アイザック・フィルドマンだ」
如何にも厳つい容姿と高圧的態度と驚異の目力のあるその男は極東支部にやってきた
「本部のお偉いさんがどんなご用件で?」
支部長室に居合わせたキワムが質問する
「今回来たのは赤い雨の被害に遭った黒蛛病患者についてだ。つい二日前、サテライト拠点にて看病されていた患者が全員姿を消した」
「は?」
彼の言葉は一瞬理解をすることができなかったが、我に戻ったサカキ博士が青ざめた表情で聞き返す
「それはどういうことだい?」
「言った通りだ。黒蛛病患者が消えた」
「……いつから?」
キワムは鋭い眼差しでフィルドマンを睨む
「昨日の出来事だ」
本部の人間がこちらに来た時点でおかしいとは思ったが、なぜ
サカキとキワムは沈黙を続け、彼の言葉を待つ
「今回、私が来たのはこの騒動の件で極東支部に内通者がいると判断した。その結果、本支部長である。ペイラー榊支部長に査問会に来てもらう」
「ちょっ!待て!!」
キワムは壁を殴り罵倒する
「なんで博士が疑われなきゃいけねぇんだ!こっちはたった今その情報を知ったんだぞ!?」
キワムの叫びにフィルドマンは動じることなく表情を変えない
「なんの根拠も無しに勝手に決めやがって……!まずは入念な調査をしてから話をしやがれ!」
その言葉にフィルドマンはため息をつき、キワムを見上げ、目を細める
「…良い飼い犬を持ったものだ」
「あ?」
微かに漏れたその言葉は二人には聴き取れなかった
「なんでもない。とにかく、少し猶予を与える。飼い主を失いたくなけれれば、原因を突き止めろ」
そう言い残し、フィルドマンは部屋を出て行った
「あのやろう………!」
キワムは紅に染まった瞳でドアを見つめている
「…キワム君」
サカキは静かにキワムは呼んだ
「………はい」
キワムは少し深呼吸をして落ち着いてから返事をした
「…今回の件は予想外のことだ。もちろん私は一切関わっていないと約束する。だから…」
「言われなくても手伝うに決まってるでしょ」
「…助かるよ」
弱々しい言葉にキワムは目を合わせることができなかった
「さぁ…王の贄たち……」
その女性は冷たいオーラを放ちカプセルのようなものに入れられた人々に語りかける
「この世界の絶対のルールを破る人間とこの世界の法則に則り再生しようとする神々。人間だけが、この世界の秩序を崩し、腐っていく世界で生き延びようとしています。しかし、それでも終末の時はやってくる。全てがリセットされ、新たな生命が再分配され、そしてまた再生する。そのルールは秩序は歴史は継続されてきたこのシステムには抗えない。私にはジュリウスがいた。ロミオがいた…でも、彼らは私から離れていき、私の中のアラガミさえも私を見放した…ならば、私が終末の時を訪れさせたら良いのです。怠惰かつ傲慢な人類と神のこの世界の終焉の時を…」
ラウンジ
「—————ということで皆にはサカキ博士の疑いを晴らすのと、今回の黒幕が誰なのかを突き止めてほしい」
キワムはラウンジに皆を呼び会議をしていた
「すみません…私がもっとしっかりしていればこんなことには」
「アリサのせいじゃないさ。俺の推測じゃあ意図的にこちらに情報を流さなかった確率の方が大きいと思う」
「でも…どうしてそう言えるんですか?」
「単純にクレイドルのアリサとソーマと臨時隊員のコウタに情報がきてないこと。それに仮に情報が遅れても、もう二日経っている。流石にユウとリンドウさんのところにも情報が伝わっているはずが、彼らから連絡がこないということは情報が流れていないということでしか思えない。それに、サテライト拠点は極東支部も深く関わっている。何か起こればここに連絡がくるのは当然のこと。それでもなにもないということはサテライト拠点の人間が今回の件に関わっている可能性は低い。つまり…」
「極東支部の誰かが内通していると…」
アリサの言葉に皆はキワムを見る
キワムはこくりと頷く
「でもなんのためにやってるのさ?」
コウタが問う
「それをこれから調べるのさ」
誰が何の目的があって今回の件に関わっているのか、黒蛛病患者を全員誘拐したのか、まだ誰もわからない
「だが、俺が今回ここに呼んだ人はその可能性が低いと思う人たちだ」
キワムがここに呼んだ人はアナグラの神機使い全員とスタッフ。つまり極東の全員だ
「それなら、極東に内通者はいないんじゃ…」
カノンはキワムに問う
「ああ、ずっとここにいる皆はまずその可能性は無いだろうさ。でも、ここの
そう、ここにはブラッドやその関係者、極地化技術開発局の人間は呼ばれていない
キワムの考えを察した皆は怪しいと思う人物を考える。しかし、誰もそれに当てはまる人物がいない。キワムもそうだった
「…すぐにわかればこんなクソっタレなことにはなってないさ」
ソーマの一言で皆は一息つく
「あんまり時間はありませんけど焦ってもだめですよね」
カノンはキワムの横に立つ
「そうだな。まずはブラッドにいろいろ聞いてみないとだな」
キワムとカノンだけが残り、ほかの人はそれぞれの持ち場に戻った。幸い今、ブラッドはフライアにいるためここでの会議のことは知らない
「さりげなく聞いてみるしかないな」
「そうですね。頑張りましょうね」
初めての初陣でも似たようなことを言われた気がしたキワムは懐かしく思いつつ、これからもカノンと共に過ごしたい。そのためにも目の前の問題を解決しなければならないと強く思った
二人はまずフライアに入るための申請をすることにした。ヒバリに申請をしてもらい明日フライアへの乗船許可が下りた
何故キワムが技術開発局を疑うか、それには理由があった。それは二週間前、ソーマと会話をしながら支部長室に行っている時のこと——————
(なぁソーマ。ラケル博士とはもう会ったりした?)
(いや、まだないな)
(一度会ったらいろいろ話を聞いてみたらいいんじゃないか?だいぶ研究者色に染まってきたんだしさ)
(まぁ、そうだな)
すると支部長室区間に着いたと同時に支部長室のドアが開いた
(お?)
中から出てきた若い女性が車椅子に乗ってこちらに向かってくる。ラケル博士だ
(あら?あなたたちは?)
(これは噂をすればなんとやら…紹介が遅れましたね。俺は神羅キワム。サカキ博士の直轄部隊に所属しています。こっちは…)
(ソーマ・シックザールだ)
ソーマが自己紹介をするとラケルは目を見開いた
(シックザール…ということはあなたがヨハネス前支部長の?)
(ん?ああ、そうだ)
(前支部長にはお世話になりました。是非とも一度お会いしたいものですね)
(いずれ会えるさ、あの世でな……)
その場に緊張が走る
キワムとソーマは一目見た瞬間に気づいた
彼女も
(———すまない、冗談だ)
ソーマは一息ついてから沈黙を破った
(ふふっ随分ときつい冗談を言うのですね…だから、お友達に
キワムとソーマは凍りついた
二人は何も言えない
(——冗談です)
不敵に笑う彼女は軽く頭を下げて横を通り過ぎていった
ラケルがエレベーターに乗ったのを確認して二人は大きく息を吐いた
(あいつ…どこまで知って………)
しかし、彼女の反応からしておそらく月に行ったのがキワムであるというのは知らないのであろう。彼女がどこまで知っているのかはわからないが極秘情報を知っている時点でかなり深いところまで極東に関わっているのだとあの一言だけで十分に理解できた
「————そういうことがあったんでな。ちょっとばかり向かうの人間を疑っているわけさ」
「そうだったんですね…」
二人は明日の一日が長くなりそうだと腰を据えた
オリジナル展開に持っていきたいですね