灰域の発生時期を2079年に変更します。
(アインやアルス達の年齢が合わないため)
そのため第二部の一話からの内容にある年代も変更しています。
感想、評価等をいただけたら嬉しいです。
(モチベーション上がる)
ペニーウォート
一人の少年は不安で胸がいっぱいだった。もしかしたら自分は死ぬかもしれない。そう考えると足が震えて思うように歩けない。
「おい、さっさと歩け」
看守が強引に腕を引っ張る。子供が大の大人の力に敵うはずもなくその体はバランスを崩し転びそうになる。
前を見上げると前方から黒髪の少年が看守に連れてこられていた。よく知っている彼の腕は手錠のようなもので縛られており
「大丈夫だ。俺たちは死なねぇ、絶対だ」
黒髪の少年、『ユウゴ』は力強い目で自分に頷いた。彼の表情に少しだけ勇気をもらい頷き返す。
前を向き直りその先にある物騒な装置が設置されている椅子を見る。何が何でも生き延びてやると少年は拳に力を入れた。
『これより対抗適応型ゴッドイーター『AGE』の適合試験を開始します』
女性の機械音が響く
『第一段階、喰灰による侵食を実行』
「ぐぅっ!!」
全身が何かに侵食される感覚が伝わり痛みが走る。その苦痛はわずかな時間であったが体感的には長時間拷問を受けたようだ。
『侵食開始を確認。第二段階、神機を実装』
目の前にアラガミに対抗するための武器、神機が運ばれる。右腕で神機を掴むと赤い腕輪が右手にはめられた。
「ぐっ!わぁぁぁあ!」
『最終段階、対抗適応型オラクル細胞を移植』
左腕にもう一つの腕輪がはめられさらなる苦痛を与える。
「ぐわぁぁあ!!……はぁっ!はぁっはぁ……はぁ…」
しかし徐々にその痛みは和らぎ消えていく。
『喰灰による侵食の中和を確認、バイタル正常域に復帰。判定………適正あり。おめでとうございます。あなたは対抗適応型ゴッドイーターに認定されました』
「…生き残ったか…甲判定…このあたりじゃ見なかったレア物だな。どうだ?人間をやめた気分は?」
適合試験に失敗した者はもちろん死ぬ。しかし、成功したとしてもその先に待っているのは奴隷のように働かされる毎日だ。それでも、ユウゴが言っていたように諦めるわけにはいかない。いつか必ず自由を手に入れる。その時まで……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「———い、おい!起きろ!」
「……んん…」
「ったく寝坊助だな…任務が追加されたぞ。準備しろよ?」
ユウゴに起こされ目を擦る。そこは変わらず牢屋の中で鉄格子の外には看守が見張っている。
薄汚れた天井、もはや意味もない換気扇の音がやけにうるさく感じた。ろくに手入れされていないベッドは錆が目立つ。
『リヒト・ペニーウォート』それが彼の名前だ。ユウゴとは小さい頃からの付き合いであり今まで共に過酷な日々を過ごしきたなくてはならない存在だ。
「リヒト、準備出来たか?」
「うん、オーケー」
頬につけた黒い補強テープが印象的で、白い髪に前髪で片目が隠れている。本人曰くちゃんと見えているから問題ないそうだ。
モニターで任務の内容を確認し、アイテムの補充、整理を済まし出口にいる看守に出撃準備ができたことを伝える。
「お前らの代わりになんていくらでもいるからな。遺書なんて書くなよ?処理がめんどくさいからな」
「…さっさと開けろよ」
「はっ!どの口が言ってやがる」
看守は鼻で笑うと出口を開けエレベータまで連れて行く。エレベータから出ると輸送車が並んでおり、その中の一台に乗り込む。
「二人出る。ゲートを開けてくれ」
灰域が広がる地上へと繋がる坂道を上がった先で看守が無線で伝えると前方に固く閉ざされていたゲートがゆっくりと上がり、太陽の光が入り込んできた。
外は酷く荒れた状態であり、喰い荒らされた跡があちらこちらに残っている。
灰域の侵攻により人類の活動はかなり制限されてしまった。普通の人間が灰域内に入れば10分も経たずに死んでしまう。その対抗手段として作られたのがAGEだ。灰域に対抗できる偏食因子の投与によって活動範囲と活動時間の延長に成功した。
しかし、AGEは従来のゴッドイーターの扱いはされず、奴隷的身分を強要され無理矢理戦わされている人が大半である。
「…さて、仕事を始めようぜ」
輸送車を降り高台から周囲を見回す。廃墟となったビルに大きな穴が空き、地面は脆く亀裂が走り、空は灰域によって濁った色になっている。
『ハウンド1、ハウンド2の腕輪の拘束解除を実行する』
ガシィという金属音と共に手錠になっていた腕輪が解かれ両腕が自由になる。神機を手にし、ユウゴとリヒトは戦闘態勢に入る。
『行け、狂犬ども』
無線越しの声に苛立ちを覚えながらも高台の下にアラガミに狙いを定め飛び降りる。
「はぁっ!」
「せやぁ!」
下にいたマインスパイダーとアックスレイダーを切り刻み先制攻撃をする。物音に気づいた周囲のアラガミがこちらに向かってくる。
しかし、敵は小型の雑魚だ。表情一つ変えず二人は突撃し斬る、また斬る、ひたすらに斬り刻む。ガードなどこの程度のアラガミには必要ない。機敏な動きで相手を翻弄し疾く重い一撃で確実に仕留める。
ほんの数秒で周囲にいた6体のアラガミを全て倒しコアの回収をする。倒したアラガミのコアの回収はゴッドイーターでは常識である。集めたコアやアラガミ素材は神機の強化に必要だ。
「準備運動にもならねぇな」
ユウゴは神機を肩に担ぎ周囲の確認をする。
ユウゴが使用している神機はロングブレード。リヒトの神機はバイティングエッジ、二刀流だ。今まで二刀流神機は本人の負担が大きすぎるため懸念されていたが、よりアラガミに近いAGEが生まれたことでバイティングエッジが新たなに開発されたのだ。
「よし、次行こう」
リヒトが回収を済ませそう言った時だった。
『—む、頼む!応答してくれ!』
「これは…!どうした!?何があった?」
無線が入りユウゴが確認をとる。無線越しでも相手の様子がわかるほど焦っている声だ。おそらくアラガミとの戦闘で負傷したか、予期せぬ事態に巻き込まれてた、あるいはまたミナトの連中が何かしたのか。
「つ、繋がった!頼む!助けてくれ!まだ死にたくない!」
「落ち着いて!座標は?」
リヒトは相手を宥め、なんとか情報を聞き出そうとする。相手もそれを感じ取ったのか一度深呼吸をして落ち着きを取り戻した。
「Bエリアの北側だ!アラガミに不意を突かれて負傷した!」
「了解だ。すぐに向かう、持ちこたえろよ!」
ユウゴは神機を構え直し現在いるC地点から全速力で走り出した。リヒトもそれに続き無線の相手に隠れておくように伝えユウゴを追う。
『おい、勝手な行動をするな!そこから先は行動範囲外だ、違反行動をすればどうなるかわかっているな…?』
相変わらずうるさい野郎だとリヒトは無視する。ユウゴも呆れ顔で無線越しの看守に鋭い口調で言ってやった。
「だったら通信切っちまえばいいだろ。俺らの方から切られたとでも言っときゃあんたの立場は守られるだろーがよ」
「……どうなっても知らんぞ…」
それを最後にプツリと無線が切られた。自分のことしか考えていない連中のいつものことだ。
邪魔が消えたところでユウゴは再度無線の相手と連絡を取りより正確な場所を特定する。途中出てくるアラガミを薙ぎ払いながら救援を急ぐ。
「ここか!」
目的地に着くと岩陰に無線の相手と思われるAGEが座り込んでいた。
「おい!無事か!?」
「…っ!た、助かった……!」
男は安堵した表情を浮かべたがすぐにその表情を消す。そう、まだ彼を襲ったアラガミは近くにいるのだ。
「敵はどんなやつだ?」
「地面に潜って死角から攻撃を仕掛けてくるアラガミだ。まだ近くにいると思う」
「地面に潜るアラガミ…バルバルスじゃないか?」
リヒトは思い当たるアラガミを男性に伝えると思い出したように頷いた。
バルバルスは最近現れた新種のアラガミ。これまでのアラガミとは異なる攻撃手段で早急に対策会議が行われたやつだ。バルバルスは地面から出てくる際に地面の振動が伝わるため、振動を感じたら瞬時にステップまたガードで凌ぐことが無難である。
「バルバルスか…よし、それなら俺とお前だけでなんとかなるな。あんたは物陰に隠れて回復しててくれ」
ユウゴはそう言って男性に回復錠を渡した。
「すまない…本当に助かった」
「気にすんなよ。ミナトの奴らにどんな扱いを受けたって命だけはあいつらにくれてやるつもりはない」
ユウゴには大きな夢がある。それを叶えるためのチャンスがいつか来るとこの長い年月の間ずっと耐えてきている。
「いこう、ユウゴ。さっさと終わらせよう」
「ああ、そうだな」
ユウゴとリヒトは所持品の残りを確認して男性がアラガミに不意を突かれたというB地点の北側に向かった。
目的地に着くとそこにはアラガミの姿はなかった。何個か大きな穴が開いているため、バルバルスのものだろう。
既に別の場所に移動した可能性が高く近くに気配も感じないため少し緊張が和らぎ神機を肩に担ごうとしたその時だった。
「っ!下!」
「くっ!」
一瞬の振動を感じすぐさま二人はバックステップ、同時に盾を展開し防御態勢に入る。
「グォォォォオ!!」
ズボっと地面をえぐる音と共に中型のアラガミが二人が元いた場所から飛び出してきた。一瞬判断が遅ければもろにくらっていただろう。
「ふっ…流石だな、リヒト」
ユウゴはリヒトにナイスとサムズアップして薄い笑みを浮かべた。それに返すようにリヒトも笑みを浮かべ頷いた。そして睨めつけるようにバルバルスに向き直る。
ドリルになっている片腕で穴をこじ開けているのだろう。バルバルスは奇襲に失敗したものの目の前の獲物を逃す気はないのかドリルを回転させこちらに威嚇している。
「俺たちの力、見せてやろうぜ」
「絆の力を見せてやろう!ユウゴ!」
「ああ!」
ユウゴとリヒトは同時に地を蹴る。ユウゴは右に、リヒトは左に飛び左右から攻撃を仕掛ける。それに対しバルバルスはバックステップを取り一旦距離を取ろうとする。
「そうだろうと思ったよ!」
リヒトは最初から銃形態に移行させておりレイガンによるレーザーをバルバルスに当てる。レイガンは照射弾を使用する銃身であり、アラガミに当て続けることで威力が上昇していくという今までとは異なる性質のバレットである。
動き回るアラガミに当て続けることは経験が必要であるが、何年も使い込んでいるリヒトにとってある程度の行動パターンがわかっているアラガミには容易に照射弾の性能を最大限に引き出すことができる。とはいえ、流石に照射弾だけでは心許ないため自作のバレットを持ち込んでいる。
「グゥゥウ……!」
威力が上昇していく照射弾を顔面に受け、その場で踏ん張ることで精一杯なバルバルスにユウゴが横から追撃を仕掛ける。
「もらったぁ!」
ユウゴの鋭い一閃がバルバルスの体を斬り裂き吹き飛ばす。すかさず距離を詰めて
「リヒト!」
すかさず
「まだまだぁ!」
リヒトの叫びに応えるように神機は目の前の獲物に武者震いし活性化する。
バイティングエッジの真価、それは二刀流から薙刀形態に移行させることで肉体的疲労の増加、捕食の制限と引き換えに一撃の威力の上昇、怒涛の乱撃を繰り出すことができる。
「はぁぁぁぁあっ!!」
突き飛ばされ空中で身動きができないバルバルスに容赦なく薙刀形態での追撃を繰り出す。縦に、横に、斜めに、乱暴に振り回しているようで、アラガミの傷をさらに抉る正確な攻撃はもはや悲鳴すら出せないバルバルスを仕留める。
「これで終わりだっ!」
フニッシュは渾身の力を込めた一撃をバルバルスの顔面に叩き込む。頭は割れ、大量の血が吹き出し、重力を加えた一撃はバルバルスを垂直に落下させ地面に叩きつける。
「ガッ………」
声すら出さずバルバルスは二人を前に為すすべなく蹂躙された。
「やっぱ、お前がいると負ける気がしないな」
「そりゃどーも」
コアを摘出するリヒトの肩を軽く叩いて労いの言葉をかける。その言葉に返し、リヒトのいつも通りの返事にユウゴはもう一度肩を叩いて笑みを浮かべた。
ミナト 『ペニーウォート』
ミナトに帰還したリヒトとユウゴを待っていたのはもちろん命令違反による罰だった。殴られ、蹴られ、罵声を浴びさせられる。しかし、所詮は一般人。ゴッドイーターの二人にとっては大したことはない。ただ、アラガミとの戦闘で傷付いたところを殴られると流石に痛い。それがバレないように二人は相手を嘲笑うように鼻で笑うのだった。
「さっき助けた奴ら、全員無事だった。やったな」
「良かった」
救援に駆けつけた部隊の人たちの安全を確認してホッと一息つく。
「体張って稼いでも上前はミナトの奴らにはねられる……だが、命だけはそう簡単に操らさせない」
先ほどもユウゴが言っていた言葉だ。ユウゴの人柄は長年の付き合いで分かりきっている。だからこそ最も信頼できる兄貴的な存在でもある。
「いつか、俺たちAGEが誰の指図も受けずに大手を振って命を燃やす場所、そんな所作ろう…な?」
ユウゴの言葉にリヒトはゆっくりと頷いた
「イイこといってんじゃーん」
薄い黄色の髪の少年がユウゴに軽く肩パンをする。しかし、そこは看守にやられたところでありユウゴは顔をしかめる。
「いってぇえ!!てめぇ!ジーク!何しやがる!」
「あ、ジーク帰ってたんだ」
「いや、お前らが帰って来る前からいたけどな!?」
リヒトの素っ気ない対応にジークの心にダメージを与えた。
「ったく、お前ってやつはよー……それより、また命令違反?看守にひどくやられたらしいじゃん。お前も大変だなぁ。なあ、今度俺と一緒に組まないか?」
「うーん……」
「おいぃ!そこは即オッケーだろうがよ!このジーク・ペニーウォート様と一緒に任務に行けることに有り難く思うとこだろ!ユウゴは真面目だからなぁ。退屈だろ?今度俺がマジすげぇ技見せてやるからよ」
「すげぇ技かぁ…ちょっと見てみたいな」
「だろぉ?よーし、今度一緒に行こうぜ!」
牢獄と同じような部屋ではあるが、ジークがよく喋るためそこまで退屈ではない。むしろジーク一人でも喋り続けるためある意味ここは賑やかだ。
「おい、遊びじゃないんだぞ」
調子に乗り出したジークにユウゴは一つ牽制しておく。
「ほーら、またそれだ。わかってるっつの」
ジークはつまらなそうに縛られた両腕を頭の後ろに持っていきそっぽを向いた。だが、何か思い出したような表情をするとこちらに向き直り、声のトーンを少し落として話し出した。
「そういや、他のチームの奴が言ってたんだけどさ、ココから近いミナトが灰域に呑まれたって…聞いた?」
ユウゴとリヒトは互いを見合って首をかしげる。
「いや、初耳だ。だがミナトが灰域に呑まれるなんてニュースでもないだろ?」
そう、灰域によってミナトが壊滅することはよくあることなのだ。日常茶飯事のことなどそんな大したニュースでもない。
「ひとつならね…けど、それがだんだんこっちに近づいてきているとしたら、どうする?」
ユウゴは表情が硬くなり確かめるようにジークに問う。
「灰嵐が起きてるってことか?」
「さぁ?そこから先知ったとこで俺らにできることなんて、ないっしょ?せいぜい腹くくってようかなってね」
ジークはひねくれたように話す。確かにリヒトたちに何の権力もない。ましては灰嵐の猛威に対抗する手段もない。
「確かにな…だが灰嵐となるとちょいとハードだな…」
忍び寄る脅威にユウゴは先の不安を隠せない。リヒトも灰嵐の恐ろしさは知っている。あらゆる対象を呑み込み、捕食し、灰へと変えていく。昔でいうハリケーンだ。いや、ハリケーンよりももっと灰嵐は恐ろしい。
これから先に襲いかかる猛威にただここにこないことを祈るしかなかった。神が世界を蹂躙するこの時代に何に対して祈るのかもわからずに……
ユウゴ達の話し方がイマイチ掴めない…
もし違っていたら教えていただけたら助かります。
ただ意図的にキャラ崩壊させる場合がありますのでその時は生暖かい目で読んでください。