神と人と愉快な仲間達   作:パルモン

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また本編に戻ります。

更新不定期で申し訳ないです


灰嵐

 ユウゴ、リヒト、ジークは三人で神機回収任務に向かっていた。日々過酷な日々の中で死というのは日常茶飯事になっていた。

 昨日も別の部屋のAGEが任務中に死んだそうだ。対象アラガミはハバキリ。腕が鋭い刃物のようになっており、下半身は戦車のようなローラー式のタイヤで高速移動からの攻撃をしてくる。

 その攻撃をかわしきれず首を跳ね飛ばされ絶命。先程三人は殺されたAGEと思われる胴体の一部と腕輪がついた腕、握られたままの神機を発見し回収した。

 

「…くそっ!なんで重傷だったやつを無理矢理任務に…!」

 

「……」

 

 ジークは壁に八つ当たりで殴りつける。だが、失われた命が返ってくるわけもなく虚しくゴツンと衝撃の音が鈍く響くだけだ。

 

 奴隷のように扱われるAGE、かつてフェンリル統治体制が整っていた時代ではゴッドイーターは皆人類の最後の砦として今まで戦ってきた。

 今でもゴッドイーターは灰域という過酷な環境の中で戦っている。しかし、『時代』という怪物の前にはどんな権力を持っていようが、どんな功績を残そうが、時にはそれら全てが無になることもある。

 

「…神機を回収した。これより帰投する」

 

『ああそうだ、遺体なんて持って帰るんじゃないぞ。邪魔なだけだ』

 

「…っ!てめぇ…!」

 

 リヒトは我慢の限界が来て無線越しの看守に言い返そうとしたがユウゴに肩を掴まれ制止される。

 

「ユウゴはこのままでいいのかよ!」

 

「俺だってお前と同じだ!」

 

「くっ……」

 

 ユウゴは珍しく声を荒げた。リヒト自身もわかっていたのだ。ここにいる三人全員がそうなのだと。ただ、どこまでも非道なミナトの連中に腹の虫がおさまらないのだ。

 

「悪い、リヒト。お前が悪いわけじゃないのにな…」

 

「いや、わかってるよ。もう帰ろう」

 

「…ああ」

 

「……」

 

 ジークは無言のままだったが、その表情からだいたいのことはわかった。ジークももう子供ではない。お調子者ではあるものの彼の仲間に対する思いは誰よりも強いだろう。

 リトルとユウゴはここは何も言わない方がいいと互いに頷き迎えに来た輸送車に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 しばらく車に揺らされながら仮眠を取っていると車は当然急停止し、その勢いでリヒトは顔面を強打し悶絶した。

 

「ぐおぉっ!?は、鼻がぁ…」

 

 なんとか鼻は無事であるが、急ブレーキを運転手に怒りをぶつけなければ気が済まない。車から降り運転席に向かおうとして()()を見た。

 

「あ、あれは……!」

 

「……灰嵐だな」

 

 後から出てきたユウゴが静かにそう言った。彼の顔を見るとおでこにたんこぶができており先程の急ブレーキでリヒトと同じく顔面を強打したのだろう。

 

「お、おい!あの方向って俺たちのミナトがあるじゃねぇか!」

 

 ジークが言うように灰嵐の侵攻先にはミナト『ペニーウォート』がある。このままではミナトは灰嵐に呑み込まれミナトにいる人は全滅する。

 

「くそっ!ガキ共がいるってのに!おい!早くミナトに向かえよ!」

 

「な、何を言ってるんだ!?灰域が迫る所に行くだと?ふざけるな!貴様らが勝手に行けばいいだろ!」

 

 運転手は震えており役に立ちそうにない。

 

『—ら、キャラ…周……の…… AGEに…達!』

 

「?なんだ?」

 

 無線が入るがノイズが激しいため何を言っているのかわからない。

 

『…灰嵐……生!ペニー……に…接近……!』

 

「オープン回線?どこのどいつだぁ?何言ってんのか聴こえねえよ!」

 

「なんでこんな時に……!ここからじゃ先回りはできない」

 

 今じゃ無線は雑音でしかない。すぐそこまで迫ってきている灰嵐がミナトを、仲間たちを呑み込もうとしているのだ。

 

「何か…何か手があるはずだ!絶対に仲間は死なさせなねえ!」

 

 ユウゴは必死に策を考える。しかし、運転手も使えないこの状況でミナトの仲間達、子供たち全員を助ける方法はない。

 

『—!繰り返す!周囲の AGEに通達!灰嵐が発生!ペニーウォートに向かっている!』

 

 ノイズが発生していた無線が徐々にクリアになっていきハッキリと聞こえるようになってきた。内容からおそらく灰嵐の発生をリヒト達に伝えようとしている。ユウゴは最後の望みをかけて無線を繋げた。

 

「こちらAGE、灰嵐の状況を教えろ!」

 

「繋がった!話は後よ。この船の通路上にアラガミがいる。排除して!」

 

 突然の申し出に三人は戸惑う。

 

「何をする気だ!?」

 

「話は後と言ったでしょ!報酬なら後でいくらでも出す。今は手を貸してちょうだい!」

 

 報酬をいくらでも出すという宣言をするあたりそれなりに力を持った組織ということだろうか。ここで断る理由もないし向こうもミナトの仲間を助けるつもりなら尚更ここは協力するべきだ。ユウゴだってその辺りはちゃんとわかっているはず。

 

「…わかった。今の条件も含めて俺たちもあんた達に力を貸す」

 

「助かるわ」

 

 もしかしたらこれはチャンスなのかもしれない。ユウゴは手を伸ばせば届きそうなチャンスをなんとしても掴みとるべきだと気合を入れ直す。

 

 

 指定された場所に向かうとアラガミが数匹確認できた。あのアラガミたちがキャラバンの進路を妨害しているのだ。あいつらを掃討しなければミナトの子供たち、仲間を助けることはできない。迅速な討伐が必要だ。

 

「あいつは……!」

 

 その中の一体にハバキリがいた。あのアラガミはここで葬り去らなければならない。仲間の仇をここで討つ。

 

「リヒト、ジーク、あいつはお前らに任せた。雑魚は俺が相手をする。ま、すぐに片付けて援護に行くがな」

 

「へっ!任せとけって!」

 

「ユウゴも油断しないように」

 

 互いに頷き合いそれぞれの対象に突撃する。リヒトとジークはハバキリとの距離を詰めていき、ハバキリも二人に気付いたと同時にこちらに向かって突進してきた。

 

「おぉ!?はやっ!」

 

 車輪のような下半身によって素早い行動を取れるハバキリはその機動力を見せつけるかのようにあっという間にリヒトとジークの目の前に立ち塞がった。二本の刃物はもろにくらえば致命傷は避けられない。

 

「……!」

 

 リヒトは戦闘態勢を取るとまずはサイドに飛んで銃形態(ガンフォーム)に切り替える。流石に素早い動きをするハバキリに照射弾は部が悪い。リヒトはアイテムポーチからバレットを取り出しリロードする。そして狙いを定め二発撃ち込んだ。

 

 一発は右に弧を描きながら上昇し、もう一発はその反対の挙動で上昇する。5メートルほど打ち上がった所で停止し球体のオラクルが残される。

 

「くらえ![ワルキューレ]!

 

 その球体のオラクルからレーザーが打ち出される。レーザーはハバキリを囲い込むように追尾し逃さない。二発のバレットで六発のレーザーがハバキリを四方から攻撃する。リヒト自作のこのバレットはユウゴとジークもその性能に目を丸くしたものだ。

 

『ズドドドド!』

 

「キェエェェエ!!?」

 

 逃げる場もなくひたすらにレーザーを浴びるハバキリは悲鳴をあげる。

 

「まだまだぁ!」

 

 リヒトはさらにワルキューレを撃ち込み残弾を全て使い切った。今は時間がないためとにかく早く敵を倒すことだけを考える。

 

「キィィ…ィイ……」

 

 ビシビシと機械の体が火花を散らして既に虫の息だ。リヒトはハバキリの前に立ちバイティングエッジを薙刀モードに変え振り上げる。

 

「お前らにかけてやる慈悲なんてないんでな」

 

 神機はハバキリの首に振り落とされザシュと肉を切る音が響いた。

 

「なぁ、なんかカッコよく終わってるけど俺の出番は?」

 

「あ、ごめん」

 

「おおぉい!」

 

 照れ笑いしながらリヒトは振り返った。その顔を見たジークはため息をついてハバキリからコアを引き抜いた。しかし、レア物は取れなかった。

 

「やっぱジークだね」

 

「おおぉい!」

 

 ジークの目には薄っすらと涙が見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後俺たちは無事ミナトの子供たちを救出することに成功した。しかし、その他の奴らは先に逃げ出したのかいなかった。最後の最後まで奴らは自分のことだけしか考えられない人間だったんだ。

 

 そして今はミナトが灰嵐に呑み込まれてしまったため一時的な保護という形でキャラバン『クリサンセマム』を率いる『イルダ』という女性の下でお世話になっている。

 何故彼女が俺たちのことを助けたのかはわからないがミナトの連中に縛られていない今は快適に過ごせている。自由になった両腕を動かしその解放感がどこか嬉しかった。

 

「あ!はじめまして!私はエイミー・クリサンセマムです。この船のミッションオペレーターをしています。これからよろしくお願いしますね」

 

「ジーク、顔にやけてるよ」

 

「お前もな、リヒト」

 

 純粋な少女の笑顔に二人はそれだけで癒されていた。これから通信する時はあの看守の声ではなく可愛らしい透き通った声になるのだと思うとテンションが上がる。

 

「うぉぉおっ!早くミッション行きてぇ!」

 

「天使の声を全身で聞きたい!」

 

「お前ら…」

 

 リヒトとジークに哀れな視線を送りつけながらユウゴは待ちに待ったこのチャンスをどうにか掴みたいと考えていた。何年この時を待っていただろうか。しかし、今は焦ってこのチャンスを台無しにするわけにはいかないため慎重に動く必要がある。

 

「さて、では改めて自己紹介するわ」

 

 カツンカツンとヒールの音を立てながらイルダが歩いてきた。彼女のスタイルの良さもありその歩き方もどこか気品がある。

 

「私はイルダ・エンリケス。今回貴方たちを一時的にこのキャラバンで預かることになったわ。偶然とはいえこれからよろしくお願いするわ」

 

「ああ、これからよろしく頼む」

 

 握手を求められてユウゴにそれに応じる。これからここが自分たちの拠点となるのだ。その期待と決意のこもったユウゴの目をイルダはしっかりと受け止めた。

 

「一つ聞いてもいいかな?」

 

「なにかしら?」

 

 そう、まず聞いておかなければならないことがある。リヒトはまだ慣れないキャラバンに不安そうにしている子供たちを横目に見ながら問う。

 

「どうして俺たちペニーウォートの人たち、AGEと子供たちを助けてくれたんだ?」

 

「………」

 

「………」

 

 ユウゴとジークも同じことを考えていたことはわかっている。リヒトの質問に二人は黙ってイルダの返事を待つ。

 

「…そうね。偶然と言えば偶然だけど、ペニーウォートは牢屋のような部屋でAGEを放置していたのでしょう?それにまだ幼い子どもたちも……人間はこうも醜くなるのかしらと思ったわ。だから私たちは貴方たちを助けた。これじゃ理由にならないかしら?」

 

「いや、十分だ。ありがとう」

 

 これでイルダは良い印象になった。この時代でも良い人はいるものだ。

 

「ああ、それともう一つ」

 

「報酬の件かしら?」

 

 あの時彼女は報酬はいくらでも出すと言っていた。それなりの覚悟があったはずだ。

 

「オーナー、大丈夫ですか…?流石にいくらでも出すと言っても限度が…」

 

 エイミーは心配そうだ。

 

「ふふっ、命を金に変えるような人じゃないって信頼してるから」

 

「地味に牽制してきたな」

 

 リヒトとジークは命の恩人でもあるイルダたちに何を頼めばいいのかわからなくなっていた。

 

「仲間たちを救ってくれた。それで十分だ」

 

 おお、流石ユウゴ!男前だ。やっぱりユウゴは物語の主人公に最適だな。てっきりちょっと強引なやり方をするじゃかいかと思った。

 

「…そう、でもあなたたちのおかげで私たちの仕事ができた。そのお礼はさせてもらうわ。そうね、一時的な措置とはいえ、あなたたちをミナトに返すまでの間この船を自由に使ってもらって構わないわ」

 

「一時的って…?」

 

 ジークはよく理解していないようだ。

 

「AGEの異動はミナトの権利者及びグレイプニルを通さずにはできない。あなたならわかっているでしょう?ユウゴ君」

 

「ああ、そういうことか。気にするな。生きてさえいればそれでいい。それに俺のことはユウゴでいいさ」

 

「オーナー!灰域の濃度指数が再び上昇しています!これ以上止まるのは危険かと…!」

 

 いくら灰域踏破船といえども長時間濃度の高い灰域内にいるのは危険である。

 

「代表者はあなたね?ユウゴ。灰域航行法に基づきあなたたちを保護、私たちのミナトまで移送します」

 

「わかった。道中何かあれば手伝おう。……だが、ギブ&テイクだ。タダ働きはしない」

 

「フッ…たくましいのね。いいわ、露払いをお願いすることになると思う」

 

「いいだろう。他のAGEとは一味も二味も違うことを約束する」

 

 これは過信ではない。積み重ねてきた経験から得た確かな自信だ。三人とはいえその戦力は大きく変わるはずだ。

 

 こうして俺たちはキャラバン[クリサンセマム]を新たな拠点として再び活動を開始した。

 

 

 

 

 

 ——少し船内を見学してユウゴは人の少なさを感じていた。

 

「しかし、この船はデカイ割に随分と人が少ないんだな?」

 

 周囲を見渡しても今のところこの船のクルーは見当たらない。

 

「そう人を雇うことなんてできないのよ資源も偏食因子も以前のように潤沢ではないの」

 

 灰域の影響はあらゆる面で大きかった。物資の確保も移動が困難となった今では物流もままならない。

 

「なるほど…それで俺たちにひと仕事してもらおうってわけか」

 

「もちろん報酬は用意するわ」

 

「…子供の駄賃じゃ納得しねえぞ」

 

 前のミナトではそれが普通だった。だからこそAGEの扱いの改革というものが必要なのだ。命張って死と隣り合わせの日々を送っているのは自分たちなのだから。

 

「失われた航路を開拓すれば開拓者としてのロイヤルティが入る仕組みなの。その一部をあなたたちに分配する。それでどう?」

 

 ロイヤルティというのは簡単に言えば著作権、特許権、商標権のことだ。これがあれば航路を利用する人たちからロイヤルティを持つ者に印税が入るのだ。

 航路の確保が難しい今ではロイヤルティはかなり有効な権利と言える。それをもらえるのであれば報酬としての価値は十分にあるといえる。

 

「命張って戦うのは俺たちだ。相応の対価を払ってもらう。7割だ。7割俺たちに分配してもらう」

 

「フッ…3割ね。報奨金はこの船のクルー全員がもらうに値するものよ。アンフェア過ぎる」

 

 確かにイルダたちにもクルーを雇っているために彼らにも報奨金を分けなければならない。そうなるとこの船の維持費などそれなりに金はかかる。これでは交渉は成立しない。

 

「なあ…どうする?リヒト」

 

「…それじゃ、5割でいこう」

 

「5割…それ以上はひけねえ」

 

「5割……わかったわ。これで交渉は成立ね」

 

 これでイルダとの交渉は終わり俺たちは報酬を確保することができた。今まで稼いできた額とは比べ物にならない程の報酬だ。

 

 その後俺とユウゴは受付にいるミッションオペレーターのエイミーからミッションの流れを聞いた。内容は簡単で更新される任務をエイミーから受注するだけだ。その任務の報奨金もここでもらうことになる。

 

「既に一件の任務が皆さんに発注されています。しかし、一つ問題が…」

 

「問題?」

 

 これはどうもややこしい事情になりそうな予感がした。後ろからイルダが歩いてきてこの話に入る。

 

「そう、灰域踏破船には感応レーダーを一つは搭載することを義務付けられている。感応レーダーは周囲の灰域濃度の測定、周辺のアラガミの把握、様々な機能を持っているわ。もちろんこの船にも搭載している」

 

 そう言ってイルダは受付の横にある莫大なエネルギーを感じる装置を見上げる。これが感応レーダーというわけだ。

 

「故障でもしているのか?」

 

「いいえ、この感応レーダーには高い感応能力を持ったゴッドイーターが必要になるの。その『航海士』となるゴッドイーターが先の灰嵐で負傷して今は十分に起動できない状態なのよ」

 

「そんなもんドーンって突っ切って行けばいいじゃん」

 

「その相手が噛み付いてくるからなのよ」

 

 相手はアラガミだ。いくらこの船でも何体ものアラガミに攻撃されれば長くは持たない。

 

 要はその航海士となるゴッドイーターがいれば問題解決なのだ。それなら俺たち3人の誰かに適性があるかもしれない。

 

「前の航海士は特別な訓練を受けて半径20マイルは見渡せたわ」

 

 半径20マイル…それなりに広範囲の索敵値だ。いくら俺たちAGEといえども適正がなければ厳しそうだ。

 

「ふーん、でも航海士かぁ…なんかカッケーな!ちょっと俺にやらせて!」

 

 ジークも感応能力は高い。俺とユウゴもAGEになった日から高い感応能力に目覚めたのだ。もしかしたらジークは適性があるかもしれない。

 

「…エイミー、認証システムを解除して」

 

「はい。………認証解除しました。」

 

 ジークは感応レーダーの座席に自信満々で座り力を込めた。

 

「ふおぉぉおおおお!!」

 

 ビィィィイン!

 

 おお!なんか少し感応レーダーから発せられるオーラが強まった気がする。案外ジークは適性があるのかもな。

 

 しかし、すぐにその勢いは消え去った。

 

「……ジークさんには適性がないそうですね」

 

「ガーーン」

 

「まあ、予想通りの展開だな」

 

「おぉい!リヒト!てめー!」

 

「なら、俺がやってみよう」

 

 今度はユウゴが航海士に適性があるな検証してみた。

 

「ふん……!」

 

 が、結果はジークと同じく適性はなかった。

 

「はははははっ!!ユウゴもだめじゃーん!」

 

 ジークはゲラゲラとユウゴを笑っているが本人も適性がない。

 

「…リヒト、こいつ殺っちゃっていいかな?」

 

「すいまっせぇぇぇん!!」

 

 笑顔で本気の殺意を見せたユウゴにジークは本気の土下座を披露した。思えばジークが本気で謝るのは初めて見た気がした。

 

「やっぱり、リカルドさんが復帰するまで待つしか…」

 

リカルドさんは今は負傷しているが、この船の航海士をしているゴッドイーターだ。

 

「ちょっとタンマ。俺のこと忘れてないか?」

 

 何故か俺が検証する前に話が終わりそうになっていることに寂しくなったけど、俺の存在そんなに薄いかな?

 

「ああ、そうだ」

 

 ユウゴは何か察したのかニヤリと笑みを浮かべイルダを見た。

 

「なあ、もしもこの航海士ってのも俺たちが受け持つとしたらロイヤルティの件は再交渉してもいいよな?」

 

「あなたたちの今の現状で到底その条件は無理だと思うけど?ロクでもないことに支払うお金はないわよ」」

 

「ふん…頼むぜ、リヒト」

 

 あ、それもう後戻りできない顔だねユウゴ。

 

 なんだか責任が重くなってしまったけどやるしかない。感応能力ならユウゴとジークよりも高いことは自負している。適性があるかどうかわからなけど、やるだけやってやる。

 

 リヒトは座席に座り意識を集中する。

 

 ———感じる。このレーダーから発せられる感応波が俺を包み込むような感覚だ。このままこの感覚をレーダーにシンクロさせる!

 

「シン◯ロ召喚!」

 

「こ、これは!オーナー見てください!信じられない数値です!10…いや、1000マイ…あ、間違えた、100マイル以上の範囲が……!」

 

「なっ……」

 

 いや、そこ間違えないでぇえ!ちょっと舞い上がったよ!

 

「すっげー!1000マイ…あ、間違えた100マイルかよ!ありえねー!」

 

 よーしジーク、後で覚えてろよ?

 

「あれ?なんかリヒトから殺気が…」

 

「これ…あなたの仕業なの…?」

 

「ははっ!こいつの感応能力は昔からケタが違うのさ」

 

 こうして俺たちはこのキャラバン、クリサンセマムの航海士もかけ負うことになった。ロイヤルティの再交渉は5割がイルダ側の最低ラインであり、彼らの生活まで影響を与えるわけにもいかずターミナルの権限の拡大をしてもらうことになった。

 まだ俺たちの道は始まったばかりだ。これからどんな困難があったとしても仲間と一緒ならきっと乗り越えていける。このチャンスを必ずものにしてみせる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐだな…」

 

 その男は天使の羽のように真っ白な神機を肩に担ぎ、失われた片目をさすりながら、いつもより少し大きく見える月をじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




クレアは次の話から登場予定です。
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