世経新聞なんぞ潰れてしまえ   作:スーも

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ある青年の話3

少々説得したら、途中までなら乗せてくれると言ってくれた海賊船に乗ってグランドラインの入り口である双子岬とやらまでたどり着いた。勿論乗せてもらっている間にいろいろと情報収集もした、記者としての使命である。

そのまま適当な島まで乗せてもらうつもりだったが、岬近くでまたしても嘆くような声が聞こえ、気にになってしまい結局そこで下ろしてもらった。

 

「灯台があるっていうことは誰か住んでる?すみませーん、誰かいませんか。」

 

誰の声も返って来ない。誰かが今現在も住んでいることは確実なので少し周囲を散策して待つことにした。

ここに着いてから、何か大きな物どうしがぶつかり合う音がする、まるで地響きだ。寂しさの詰まった声もそちらの音の方から聞こえてくるのでそれに向かって歩いていく。

 

──ドゴォーン、ドーン

 

「…海の中で何かが起きているのかな?凄い音だ。」

「何だ、客人か。」

 

なんの音かさっぱり分からず、ぼうっと音と声が聞こえる方を見ていたら、花を頭に咲かせた爺さんに話かけられた。

 

「うわっ、びっくりした。爺さん、あなたがこの灯台に住んでいる方ですか?」

「そうだ、私の名はクロッカス。双子岬の灯台守をやっている。」

「ご丁寧にどうも。早速ですけど質問いいですか?この音はなんでしょう、海の中で何が起きているんですか?」

「クジラがレッドラインに頭をぶつけているのだ」

「クジラ、ですか。なぜそんなことを?」

 

話も長くなるだろうと、灯台の方へと向かいながら話を聞いた。巨大なクジラがある海賊船の仲間だった話、必ず会いに戻ると約束したこと、会いに行こうとレッドラインに頭をぶつけ続けていること。そしてその海賊たちはグランドラインから逃げ出したということ。

なるほど、この嘆きはクジラの声だったのか。いったいいつから人の声だけではなく他の動物の声を聴けるようになったのだろう。童話の中のお姫様じゃあるまいし、驚きである。

大きな波の音共にクジラが海から顔を出す、その額は傷だらけであった。

 

「それでもう戻ることは無いであろう仲間を思って自傷行為を繰り返しているのですね。今も血だらけだ、全く、痛々しいったらありゃしない。」

「このままじゃラブーンは死んでしまう、しかし全く私の話を受け入れようとしない」

「頭のいい子ですね、人の言葉を理解している。…そうだなあ、その海賊の話の続きはラブーンに聞かせてもらうことにします」

 

クジラに近づいて話をしようと叫ぶ。クロッカスさんは遠くからその様子を無言で見守っていた。僕は鳥以外の動物には優しい男だ、心配しなくても取って食ったりはしない。

 

「こんにちは、少々僕と話をしてくれないかな?君と旅した海賊の話。僕は海賊の追っかけでね、是非話を聞かせてもらいたい。」

──ブォォォォン

 

やはり寂しい、恐ろしいと嘆く声の主はこのクジラだったみたいだ。頭のいい子だし、その声があまりにも悲痛にくれていたので特別に僕へと声が届いたのだろう。忌々しい鳥たちの声は聞こえないからな。

彼の旅の話を聞くことにした。海賊たちとの話をしている時、ラブーンは非常に楽しそうであった。新聞の記事にはできないようなことだが、そんなに陽気で楽しそうな海賊達がいるのだなあとついつい話に聞き入ってしまった。

 

そんなこんなで話を聞いたり、クロッカスさんからグランドラインのことや医療の知識を教えてもらったりしながら何日間か過ごした。

驚きなことにクロッカスさんは元海賊船の船医でラブーンを体内から治療しているのだそうだ、実際中に入ってみたら胃の中に浮島があり、さらにその上には小屋が作ってあった。

胃の中にそうなものがあるのは驚いた。しかし、何となく殺風景だったので、空の絵を描こうと提案し、クロッカスさんと共に塗ったりもした。

 

「ラブーンは本当にルンバ―海賊団の人達のことが好きなんですね。いつも踊って歌って楽しそうだった話を聞くと海賊にもいろいろあるもんだなと感心させられますよ。」

陽気に鼻歌を歌いながらペンキを塗る、うろ覚えでしかないがラブーンが好きな歌だ。

 

「…待て、海賊の話はしたが詳細は省いたはずだ。なぜそんなことを知っている?」

「ラブーンの声は僕に届くみたいです。こんな話、おかしなやつだと笑われても仕方ないですけどね。」

「いや、私は何も話ていない、本当にラブーンと会話していたのだな。それに似たようなことができるやつを知っている。私が海賊船に乗っていた時の船長だ。…お前さんのそれはおそらくハキという力だろう。」

「ハキ?聞いたことがありませんね。教えてもらっても?」

「私は使えないが、船の仲間が使っていた力だ。」

 

僕が無意識に使っていた力はハキというらしい、グランドラインの強い海賊達の多くはこの力を使えるという話を聞いた。

動物の声が聞こえるなんて何てファンタジーな力だと思っていたが、クロッカスさんが乗っていた船の船長は他にもいろいろな物からも聴けていたそうで、グランドラインの海賊たちはやはり凄いんだなあと感心する。

そんなのがゴロゴロいるのなら、海賊の追っかけなどできるだろうか。このままでは声がばれて瞬殺される気がしてならない。

詳しくは分からないがハキとやらの力を身に着けることが急務だ、強くなければろくに仕事もできやしない、記者って本当に大変な仕事である。

 

「すごいなあ、グランドラインの海賊たちってやはり東の海に居た連中とは全然レベルが違いますね。そんなことができる人がゴロゴロいるなら僕ももっと強くならないとなあ。」

「いや、私の元船長みたいなのがゴロゴロいるわけがないのだが…」

「その船長さん強かったんですね、どんな方だったか教えてもらっても?」

 

乗ってた海賊船についての詳細は教えてもらえなかった。前科とかいろいろばれてしまうだろうし当たり前のことではある。

船長は無茶苦茶な男だった、問題ばかり起こす男だが、仲間思いで何とも憎めないやつだった、とのことである。

 

「クロッカスさん、僕、その船長さんに似た人間を知っているかもしれません。」

「そうか、そいつは将来とんでもない人間になるだろうな」

「はい、いずれここを通ってグランドラインに入って行くと思うので見かけたらよろしくお願いします。僕の…うん、腐れ縁の同居人たちなんです。きっとラブーンのことも救ってくれると思いますよ、何せ無茶苦茶なやつらなので。」

 

僕ではラブーンを救うことはできなかった、できたのはせいぜい話を聞いてその胸の痛みを和らげるくらいだ。

ここを通ってグランドラインに足を踏み入れるだろう彼らのうちの誰かは、きっとラブーンに気付いてくれるだろう。満面の笑みでラブーンと笑いあっている未来が見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 




何だかんだ世話を焼かずにはいられない息子
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