「此処がドレスローザか。美しい国だな、人々がみな上を向いて生きている。」
「何だ、お客さん旅の人かい?ドレスローザは初めてか、ここは人のいい奴らが多い国だ。ゆっくりしていきな!それもこれもリク王様のおかげさ。」
「ああ、そんな所だ。リク王家か。長くこの国を統治し、戦争をする事なく人々の安寧を守って来たらしいな。周辺国はこの国を奇跡の国と呼ぶと聞く。民にも此処まで慕われているのなら、さぞ人徳のある方なのだろう。」
「その通りさ!リク王は素晴らしい方だ!誰よりも我々のことを考えていて下さる素晴らしい方だ!それじゃお客さん、このスペシャルコーヒーをどうぞ、ドレスローザでは砂糖をたっぷり入れて飲むのが一般的なもの飲み方だ、お試しあれ。」
「ありがとう。そうやっていただこう。」
ドレスローザに来てみたはいいが、全くもって陰謀の臭いが感じられなかった。ドンキホーテ一味の確認情報がドレスローザ周辺であったし、前回事情を聞いた海賊達が雇われ、取引が行われた場所がこの周辺海域だったと聞いたのでことを起こすなら此処だと踏んで来てみたのだが……
「ドレスローザのローカル出版社に行くとしよう。そこで情報を交換するのが一番正確だろうな。」
貧しい『平和の国』に何かが起きる胸騒ぎがする、私は自身の勘を信用している、もう少し入念に事を調べる必要がありそうだ。自らの見聞きした事をできる限り公平な立場から報ずる、世界時報社の一員としての仕事を立派に果たしてみせよう。
「最近の特ダネはないね〜。此処はいつでも平和の国、外との争いが無くとも内の問題は山積みってね。国内問題はいつも通り、日照りに格差に経済低迷。それでもリク王のおかげか政情は安定してるよ。」
「そうか。貴方から見てリク王はどんな方か?」
「素晴らしい人格者さ。国民からの支持も厚い。ただ、民意は変るもんだ。今でこそ大いに慕われているが、貧しい国への不満は溜まり続けている。何を火種に爆発するかは分からんね、平和という魔法の一言では納得いかない奴等も出て来ていると俺は見ている。」
「……なるほど。奴が手を出すには十分な隙だな……有難い、随分と参考になった。海賊関係の話はないか?」
「そりゃ、あんたの方が詳しいだろう!俺の方が言えんのはこのくらいさ、さぁ次はあんたの番だ。世界各地のネタを教えてくれよ。」
世界時報社はいつでも火の車だ。社員も少なく社員だけでネタ集めを十分できているとは言えなかった。そこで我々は世界各地の地方に根を張り情報を発信するローカルな出版者たちと協力関係を結ぶことが多くなった。互いに持てる情報を交換するのだ、我々は地方のことを良く知れるし、向こうは世界で何が起きているか知り記事にできる。
お互いの情報収集に対するコスト削減が可能となり、ウィンウィン関係を結べるらしい、そう副社長が言っていた。
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「ドンキホーテ海賊団が七武海として正式に承認された。明日の新聞で一面ニュースにするつもりだ。オレたちの記事には、世界政府を脅してその座に就いた疑念ありと書くが……書けるのは此処までだな。具体的な手段としては各国政府の天上金の輸送船を襲い、脅したというのが事の真相だ。」
「ドンキホーテ海賊団が船を襲うという事は知っておりましたが、出遅れてしまい申し訳ありません。何か事を起こす前にはドレスローザにいると踏んでいたのですが、これでは申し開き様がない。」
「歯痒い思いをしているのはオレたちも同じだ。気にする事はねぇ。思い通りにならない、辛い目にあう事もあるだろうが踏ん張れよ!オレ達の仕事はどうにかこうにか世間へと目で見た事実を伝えようとする事だ、その目としてオメェのことは信頼してる。」
「有難たきお言葉です、社長。この件でまた、世界時報社はインチキばかり書くと叩かれる事になるでしょう。しかしまた我々の記事を信じて待つ人々も多い事は確か。ならば、私は私の信じる道を行きましょう。」
社長から電伝虫に連絡が入り、ドフラミンゴについて聞いかせてもらった。
私がドレスローザを中心に、海賊関係の情報や裏の密売ルートを探っている間に奴は事を起こしたらしい。
言い訳にもならないが、ドンキホーテ海賊団は情報戦に強く、特に足取りの追いにくい犯罪者集団だ。今回は事が起きた後にしかその情報を掴めなかった。
裏取引のブローカーとしてある程度の拠点が必要となってきているところだろうし、これまでの周辺海域での奴らの行動も見ても此処ドレスローザを掌握する可能性は非常に高い。奴はきっと此処に来る。
「必ず奴の泣き所となる情報を掴み、報道してやる。生半可な物では逆に握り潰されてしまうだろうな、奴に関しては長期戦を覚悟しておかなければなるまい。」
そう考えながら、しばらく拠点にするつもりであった安宿へと向かう。しかし、安宿には何もなかった。火災事故が起きたらしい、さっぱり何も無くなっていた。
仕事道具や失くしてはならない物は持ち歩くが、長期滞在に必要なもの、泊まる場所を失ってしまった。悲観しても仕方がないので、そこを立ち去り次の宿を探すべく歩き出そうとしていた時であった。
女性の叫び声が聞こえた、見れば男が手を掴み無理に何処かへ連れて行こうとしているらしい。二人組の男だ、痴情のもつれというやつか、私は人の機微に疎いのでそこまでは分からない。
「やめろ、相手を尊重すら出来んとは、男が廃るぞ。嫌がっているだろう、この手を離してもらおうか。」
その手を掴み、握る力を強くしていく。相手の顔はだんだんと青くなっていった。その状況を見ていた後1人の男が調子に乗るなと激昂し私に殴りかかろうとしていた。その時、私が腕を掴んでいる男がこう言った。
「おい!やめとけ!この不遜な物言い、こいつの顔、覚えがある!!前入ってた海賊団がこいつに瞬殺されたんだ!!こいつは賞金首稼ぎだ、名前くらい聞いたことあるだろう。ノスリだ!」
「賞金首稼ぎのノスリ!?何でも、問答無用で海賊に斬りかかって、その首をことごとく海軍に突き出すおっそろしいやつじゃねえか!?」
私とて情報を扱う者である、自分が賞金首稼ぎとして世間に知られているかは分かっていたが、此処まで有名になっていたとは思わなかった。
───悪名高いのは知っていたが、何故だろうか。首なぞ刈ったためしはないのだが。それにノスリとは何だ、私の二つ名か?気に入った。使わせて頂こう。
気づけば男2人は目の前から脱兎の如く消え去り、私と手を掴まれていた女性だけが残されていた。
「助けていただいてありがとうございます。ノスリさん?ですか、何かお礼をしたいのですが…」
「ああ、ノスリでいい。では厚かましいかもしれないが、一泊泊めていただけないだろうか?宿があの有様でな。」
「!まぁ、それはお困りでしょう、でしたら夕飯もいかがですか?幼い娘と夫も一緒になりますが。」
「私は全く構わんが、貴女が良いのであれば是非相伴に預かりたい。そうだ、貴女の名前を聞いてもいいだろうか?」
「自己紹介がまだでしたね、私はスカーレットと申します。」
それにしても私の噂を聞いた上でこのような事を言うとは、嫋やかな見た目と違って随分と剛毅な心根をしているらしい。夕飯のくだりは断れる雰囲気ではなかった、私とて時には空気は読むのだ。
・世界時報社について
共同○○社やアメリカの某社みたいなこともしてる。基本は全国紙ならぬ全世界紙として、号外以外は週一で新聞出してる。こちらのイメージはタ○ム誌、雑誌ではないけど。
簡単に言うと、その地域の新聞社なり放送関係者に情報渡したりする、向こうからもタダで貰う。こんな感じで時報社の有用性を分かってる人が沢山居てくれるお陰で、なんとか世界政府にちょくちょく喧嘩売っても生き残ってる。