亜種特異点 架空氷丘幻想 アイスエイジに関する記録   作:天城黒猫

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申し訳ありません……! 前回から、またもやかなりの時間が経ってしまいました……! 申し訳ありません! いや、本当に……! 小説書く時間がなかなか取れなかったんです……! 週一投稿を目指しているというのに……!


対話

 私は藤丸立夏の隣に胡坐をかくと、森の向こうにある竜巻を眺めた。私がこの大陸に召喚された日、帝都のキャスターがあの竜巻は半径100メートルもある巨大な竜巻だと言っていたが、なるほど遠くから見れば、このどこまでも続く氷の大地によって距離感が失われて、小さく見えるものの、改めて観察してみれば、その竜巻は常に地面の氷礫を巻き上げながら、天高くまでその壁を伸ばしており、近くでは立つこともままならないほどの暴風が吹き荒れていることであろう。驚くべきことは、そうした巨大なエネルギーを持つ物体が、全く同じ場所にとどまり続け、衰えることもなく存在し続けているということであった。過去、君はとある事件の中で、エネルギーというものは、使う量が大きければ大きいほど、それを維持することが難しくなるということをわかりやすく解説してくれたものだ。しかし、ホームズ。あの時君が話した科学的な法則はあの竜巻には少しも当てはまっていないことだろう。というのも、私の知識や経験、そして常識的な考えからすると、あの竜巻はずっと同じように回り続けているのだ。私の知る竜巻というのは、砂埃や塵、小さな物体を天に巻き上げ、うねったり、真っすぐになったりと形を常に変化させながら、その渦巻の気分によって進む方向を変化させるものである。しかし、あの竜巻は常に同じ形や大きさ──地面から天に真っすぐに伸ばしている──で回転し続け、移動するようなそぶりはなく、ずっと同じ場所に留まり続けているのである。あれほどの巨大な物体、巨大なエネルギーしかも風や空気といった常に変化し続ける、不安定な自然現象が常に同じ形を維持し続けるのはいたって困難、ほぼ不可能だと私は考えている。では、なぜあの竜巻はその形や勢いを維持し続けているのか──私はなぜかそれが非常に気になっていた。

 しかし、私は君と違ってこうした科学に関する知識はほぼ無いに等しいので、考えるだけ時間の無駄というものだろう。だが、あの竜巻はなぜあそこにあるのか、あれは何故存在しているのだろうかといったことが気になって仕方がないのである。私は藤丸少年へと声をかけた。

 

「あの竜巻を見てどう思う? よければ、素直な感想を聞かせていただきたいものだ」

「そうですね、とても大きい竜巻ですね」

「それだけかい?」

「え?」

 

 と少年は不思議そうな顔をし、首を傾げた。

 

「もっと、何かないのかね? あの竜巻はなぜあそこにあるんだろうか、とか」

「いえ、別にありませんけど……竜巻なんて、条件さえ揃えば出現するものだと思いますけど」

「それはもっともだ。それで、他には何かないのかい?」

「ありません」

 

 と彼は首をかしげながらも答えた。

 彼は、あの巨大な竜巻がそこにあるのが至って自然なことだと認識しているのであろう。でなければ、私の問いかけに対してこのような回答を行うことはないのだから。つまり、あの巨大な竜巻の姿を認識してはいるものの、何故あそこにあるのか、なぜあそこから動かないのか、なぜ勢いが弱くなるようなことがないのかといった事を、彼は一切疑問に思っていないのだ。このことから、私は彼が正気でないと考えた。

 私はこのことについて、しばらくの間色々と考え、おそらくは魔術的な力によってこうなっているのだと予想した。そして、次にこれはどうすれば解決するのだろうかと考えたが、私は魔術というものに対する知識は無いため、私自身の能力では解決することができないので、後で帝都のキャスターに相談することにした。キャスターのクラスである彼ならば魔術には詳しいだろうし、これもおそらく解決できるだろうから後で彼のもとを訪ねることにした。

 

「ところで、君はあのランサーのことをどう思っているんだい?」

 

 と私は話題を変更するために、気になっていたことを問いかけた。それに、彼はこう答えた。

 

「僕の騎士ですよ。どんな姿になっても、それは変わりません」

「そうか、それならば彼女も報われるだろう。しかし、これからどうしたものか。セイバーは死に、ランサーは戦うことなど到底できないだろうし、キャスターやシールダーも、戦う能力がない。そして、キャスターの話が真実ならば、この特異点は魔神柱を倒さずとも、時間が経てば自然に消滅するという。ハッキリ言って、君が頑張る必要はないのではないか?」

「……そうかもしれません。けれど、ランサーのこともありますし、それに凍り付いたカルデアのこともあるから、この特異点の元凶は何とかしたいんです」

「そうか。それはもっともだ。ならば、これからどうするんだい? これまでいくつもの特異点を攻略してきた君の意見を聞かせてくれたまえ」

「そうですね……」

 

 と彼はしばらくの間、考え込む様子を見せたのち、言った。

 

「まずは待とうと思います。セイバーが倒れ、ランサーもああなってしまった今、下手に動くと危険なので。敵は、氷礫のバーサーカーをはじめ、氷礫のライダーもいます。……状況が変化するまで、待つべきだと思います」

「そうか、ならば私もそうするとしよう。何せ、私はこうした争いごとは苦手なものでね。かといって、諸葛孔明やホームズのように策に秀でているわけでもない。ホームズの友という点を除けば、私はただの凡人だ。正直、なぜ英霊……いや、英霊どころではないか。幻霊だったかな? 私は何の力も持たない幽霊のようなものらしいからね。そんな私がなぜ、この大地にいるのかが不思議でたまらないのだよ。

 だが、私がこの大地に召喚されたということには、何かしらの意味があると考えている。まあ、最もそれがどのようなものかは分からないがね。……おっと、ずいぶんと話し込んでいたようだ。そろそろ失礼させてもらうよ。どうにも、あの森を長く見ているといい気分がしないからね」

 

 と私は藤丸少年の元から立ち去った。

 キャスターに、彼の異常を何とかできないか相談するべく、彼のもとを訪ねようと食堂や工房、砦の廊下などあらゆる場所を探し回ったものの、彼の姿を見かけることはなかった。私は、それでも我々が生活している区間からはそう離れていない場所にいるのだろうと考え、砦の中を適当にうろついていると、古い、錆びだらけの扉を発見した。この砦は全体的に古ぼけていて、錆びだらけの扉といったものはたいして珍しくはなかったが、なぜだかその扉は異様な雰囲気を放っているようにみられ、私はその扉を恐る恐ると開いた。

 扉の向こうは、地下につながる階段があり、その通路は右方向に曲がっているため、入口からの光は、ほんの2、3メートルほどの位置までしか届いておらず、それ以降は薄暗い空間が伸びていた。私はその暗がりに不気味な、あるいは不安な──この下へと降りてはいけない、という警告が私の心の奥底から湧き上がっていた──印象を覚えたものの、どこかでこの下に降りるべきなのだ、という強固な意志もあった。しばらくの間、恐怖と勇気とのせめぎあいが私の中で行われ、勇気が勝利した。

 私は意を決すると、その階段を下りて行った。ほんの5、6段ほど降りると完全に暗闇となった。私は足を少しずつ前に出して、段差の位置を慎重に探りながら、壁伝いに移動していった。段差を下る度に、私の心臓は鼓動を早め、全身から冷たい、嫌な汗が沸き上がり、心の中ではこの先に行ってはいけない! という思いと、この先を目指すべきだ! という二つの思いが発生し、そのたびに二つの思いがぶつかり合った。戻るべきだという感情に引っ張られ、足を引き返すことも何度かあったがその度に、この階段の先を目指すべきだという感情が発生し、階段を下っていった。

 こうして、私は二つの感情との戦いに振り回されながら階段を下りて行った。その移動時間を正確に測ることはできないものの、階段の長さはそんなに長くなかったためほんの数分、数十分ほどだったかと思う。そうして、私は階段の終着点にたどり着き、目の前には先ほどの扉と同じような、錆びついた扉があった。私はその扉を軽く押してみると、扉はかすかに音を上げて動いた。鍵がかかっていないことを確認すると、私はその扉を一気に開いた。

 この部屋の壁には、いくつかの火のついたろうそくが設置されているため、薄暗いながらも中の様子を把握することができた。少し見回してみると、壁にはろうそく以外にも、あの氷海のシールダーが着ている軍服と同じデザインをした、いくつかのの軍服が掛けられていた。そして、小さなテーブルが部屋の隅に置かれており、その上には裁縫道具が置かれていた。最後に、部屋の真ん中には作業台のような、大きな台があった。その台の上には、いくつもの紙の束が山積みになっていた。

 この紙の束こそが、私が階段を下るときに感じた、謎の威圧感、恐怖心などの元凶なのだと私は悟った。なぜならば、この山を見た瞬間、私の感情は自分でも訳が分からないくらいに興奮し始めたからだ。私は、台へと近づき、その紙の束に腕を伸ばして一枚の紙を手に取ってみせた。

 

「……馬鹿な! なぜだ? あり得ない!」

 

 と私はこの紙に書かれている文章を読んだ瞬間、こう叫んでしまった。

 おお、君、私はこの時どう表現すればよいのかわからない、形容しがたい恐怖に駆られていた。

 

「私は、こんなものを書いた覚えはないぞ!」

 

 なぜならば、その紙には私の筆跡と全く同じ筆跡で、私のあらゆる行動や、藤丸少年について、砦の面々についてなどの記録が書かれていたからだ。しかし、私は声に出してしまったように、この紙に書かれているような内容は、書いた覚えがないのだ。私が書いた覚えのない内容が、まるで私が書いたように書かれているのだ。そして、何よりもその内容というのは、私が体験したことのない内容であった。そのくせして、妙な生々しさ(リアリティ)を感じ取ることができたのだ。

 

「どういうことなのだ? これにも! これにも! あの紙にも! 私の文字で、私の覚えのない内容が書かれている! どういうことなのだ!」

 

 私は、次々にほかの紙を手に取っては、そこに書かれていることを読んだ。所々覚えのある部分もあれば、まったく覚えのない部分もあった。──覚えのない内容のほうが多かった──私が夢中になって、その覚えのない物事を読み漁っているうちに、気が付くと山の半分ほどまで読み進めていた。ここまで、この紙の文字全てが、私自身が書いたとしか思えないほどに、私と全く同じ筆跡で書かれていた。おお、おお、ホームズ! 君がここにいたのならば、このまったく不可解な出来事について、あっという間に解明して見せるのだろう! この時、私は私の隣に君がいないことを悔やんだ。一体、誰が、なぜ、この紙の束を作り出したのだろうか? 私はそのことが気になり、しばらくの間読むのをやめて、考え込んでいた。すると、扉のほうから、階段を下る音が聞こえてきた。

 私は入口のほうを振り向いた。そこには、氷海のシールダーが立っていた。彼は、長く伸びた、白い眉毛のしたから覗く、殺意のこもった目で私を見ると、銃剣を構え、ゆっくりと私の元へと歩いてきた。私は数歩後ろに下がったが、台ぶつかり、これ以上下がることはできなかった。目の前の老人は、私の喉元に、銃剣の切っ先を軽く当てて、言った。

 

「やれやれ……いけませんな、こんなところに入るなど。どうやら、その様子だとその記録を読んでしまったようでありますな?」

「一体どういうことなのですか? これは、あなたが書いたものなのですか?」

「違いますじゃ。これらは、貴方が書いたものでありますよ。ねえ、ワトソンどの。最も、貴方は覚えてはいないでしょうが」

「どういうことなのですか? 覚えていないとは?」

「質問が多いですのう。まあ、よろしいですじゃ。意味はないでしょうが、答えて差し上げましょう。ワトソンどの、これらの記録は紛れもなく、貴方が書いたもので間違いないですじゃ。とはいっても、今の貴方ではなく、ううむ、なんと言ったらよろしいでありましょうかな? そう、過去の──これも正確な表現ではありませぬが、過去の貴方が書いたものですじゃ。今までの貴方が書いた記録は、戻っても消えないので、ここにすべて保管してあるのですじゃ。

 ……さて、もうよろしいでしょう。ワトソンどの、貴方はこれから死ぬのでありますから、これ以上話す必要はないでありますな。今回も失敗……いえ、最後までやってみせねばわからぬが、どうせ失敗するでありましょうな。まあ、それでもよろしい。またやり直せばよいだけですじゃ。100や

 200程度、どうということはありませぬ。我が人生はそれ以上に長く、無駄な時間でありましたからな。さあ、それではワトソン博士、おさらばですじゃ。またお会いいたしましょう」

 

 と目の前の老人は銃の引き金に指をかけた。その瞬間、氷海のシールダーは、妙な声を立てて、あらぬ方向へと吹き飛んだ。床に倒れ伏した彼は、体を痙攣させていた。部屋の入口に、帝都のキャスターが立っていた。彼は、遮光眼鏡(サングラス)に指をかけながら言った。

 

「無事でしたか? ワトソンさん。ふむ、どうやら自力でこの場所を見つけ出してしまったようですね。魔術的な封印が厳重にかかっていたようなんですが、なぜか解除されているようですね。一体何が原因なのやら。まあ、この中がこのようになっているというのは、かなりの収穫ですね。さあ、ワトソンさん。行きましょう」

 

 と彼は私に手を差し伸べた。しかし、シールダーは口から血を吐きながら、憎々しげな目で我々を睨みつけながら言った。

 

「待て……氷海のキャスター……! 逃しはせぬぞ……なぜ……」

「さあ、行きましょう。ああ、彼なら大丈夫ですよ。致命傷の攻撃を与えましたが、どうせ死にはしません。彼の宝具はそういう宝具ですからね」

「待て……! おのれ、体が動かない……じゃが、無駄じゃ……この儂の固有結界──『陽炎の最果てより我が栄光は来たれり(ウェイスト・マイライフ)』からは逃れることはできぬのじゃ……この儂を縛り付けた忌まわしき砦に立ち入ったのならば、誰も逃れることはできない……我が呪縛からは、この砦の呪いからは、決して逃れられん!」

「聞く必要はありません。こちらです」

 

 と帝都のキャスターは私の手を強引に引っ張り、この部屋から出て行った。我々の後ろからは、怨嗟にも似た叫び声が聞こえくるのみであった。

 

「無駄じゃ! 無駄じゃ! いくら動こうが、どのような志を持っていようが、どんなに素晴らしい英雄だろうが、この砦では何もできぬのじゃ……!」

 

 





次回予告!

【真の敵は何処(いずこ)に】

次回は再来週までには投稿できると思います。多分、おそらく、きっと、メイビー……

感想が欲しい……モチベ上がりますし……

シールダーの真名予想とか、バンバンしてくれても構わないのですよ?
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