亜種特異点 架空氷丘幻想 アイスエイジに関する記録   作:天城黒猫

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最後の投稿から、一か月ぐらいたっていますね……ホント、更新速度遅くて申し訳ありません……
エタることは決してありませんので、そこだけはどうかご安心ください。これからも、ゆっくりとお付き合いいただけるとありがたいです。


運命と幻惑の城塞

 氷海のキャスターに手を引かれるがままに、私はこの砦の中を駆けまわった。

 この砦は、氷の大陸を横断しているだけあって、本当に巨大かつ長大なであった。造りもかなり頑丈なものとなっており、仮に敵の軍隊と戦うとなったら、この砦は伝説的な強固さを見せることは間違いなかった。しかし、中身の構造は至って単純であったため、我々がこの砦の内部を移動することは簡単なことであった。それどころか、シールダーによる攻撃とか、妨害とかが行われる兆候が全く見られないのが不気味なぐらいであった。私は、そのことを氷海のキャスターに話すと、彼は走りながら答えた。

 

「それは簡単な話です。彼は、我々を妨害する必要はないのですよ。というのは、我々がこの砦の内部にいるというだけで、シールダーにとっては十分だからです。……とはいっても、シールダーの傍にいるわけにもいきませんし、そうですね。もうここまで来れば十分でしょう。少し体を休めるとしましょう」

 

 という彼の提案により、我々は走るのをやめた。我々が立ち止まった場所は、中庭とでも言うべき所であった。四方は高い壁に囲まれており、出入口は我々が入ってきたところと、その反対側との二つのみで、地面は青々とした芝生が敷かれていた。純粋なサーヴァントであるキャスターならばともかく、(キャスター曰く)サーヴァントにも満たない、亡霊にも近い存在である私は、息も切れ切れとなっていたため、この休憩はありがたいことこの上なかった。

 私が息を整え終えると、キャスターは言った。

 

「先ほどの話の続きをしましょう。私がこの砦について調べたことを話します。この砦から逃げるためには、必要なことですから。まず、この砦はあの氷海のシールダーの宝具です。それも、強力な固有結界が砦となって実体化した対界宝具、名を『陽炎の最果てより我が栄光は来たれり(ウェイスト・マイライフ)』と言いましたか。その効果は至って単純かつ、今の我々にとっては恐ろしいことこの上ありません。

 この砦には、呪いといっても良いでしょう。ある概念があるのです。その概念というのは、『敵がやってこない』というものです。つまり、この砦にこもっている限り、敵が攻めてくることはなく、戦いになるようなこともなく、永遠に、それこそ死ぬまで安全でいられるのです。攻撃、防御、あらゆる種類の宝具がありますが、こと戦いから生き残ることにかけて、この砦はまさに最強無敵の防御宝具でしょう。なんせ、人の一生をこの砦で過ごしている限り、戦うことがないのですから。まさに盾としては一つの究極と言えるでしょう。

 普通の聖杯戦争などでは、頼もしいことこの上ない宝具ですが、こと今回の状況では、とても恐ろしい宝具です。なぜならば、我々はこの砦にいる限り、なにもできないのですから。敵と戦うこともできず、かといってこちら側から敵へと攻めに行くこともできません。この特異点を消し去るには、魔神柱を見つけ出し、倒さなければなりません。ですが、この宝具に我々が閉じ込められている限り、我々はなにもできないのです。それどころか、時間が経てば経つほど、自分から動こうという感情がなくなり、何もできなくなってしまいます」

 

 氷海のキャスターは一息つき、中指で遮光眼鏡(サングラス)を持ち上げると、続けていった。

 

「……前に、私はこの特異点は放っておいても良いと言いましたね。攻略する必要はない、私はそう思っていました。この大陸は、人類が北極大陸を発見しておらず、またその過酷さゆえに踏み込むこともできなかった場所であり、時代なのです。それゆえに人理は存在しないため、元から存在しない人理をどうこうすることはできないと考えていました。ですが、そうではなかったのです。魔神にとって、そんなことは関係なかったのです。今、魔神はアーチャーや怪物との戦いで傷つき、疲れ果て、この特異点のどこかで休息を取っています。そんな状態で、この特異点を維持することは不可能ですし、ほかならない魔神自身がそう言っていたため、時間が経てば自然消滅すると考えていました。

 ですが、そうではなかったのです。……この特異点には、人理が存在しません。英霊を英霊たりえるようにする信仰も存在しません。故に、英霊を召喚することは不可能なのです。ですが、私たちはこうしてここに存在しています。初めからおかしかったのですよ。少し考えればわかる話だったのです。特に、私という存在は、人間が生み出したのですから、元となる人間がいなければ存在できないのですから。……そうした違和感を感じとることができなかったのも、この砦のせいでしょうね。彼の手引きがなければ、危ないところでした。

 と、話が少しずれましたね。なぜ、英霊を作り上げる信仰もないのに、我々は存在しているのか? それは、他ならぬあなたが原因です。ジョン・ワトソン」

「私が!」

 

 と私は思わず声を上げてしまった。なぜならば、私には心当たりが全くなかったからで、キャスターの言っていることは冤罪に思えたのであったからだ。

 

「私が? そんなことはありえません。私は魔神柱のことなんて知りませんし、協力した覚えもありません」

「落ち着いてください。私は、何もあなたが魔神柱の協力者だとはいっていません。いいですか? この特異点は、確かに時間が経てば消滅します。それは本当のことなのでしょう。ですが、この特異点はおそらく、何度も消滅し、そして何度も復活しているのです。

 ……ここから先は完全に予想、妄言に近い説になります。おそらく、魔神柱が初めにこの特異点を作り上げたときは、私たちは召喚されていなかったのです。氷海のセイバー(ダルタニャン)、氷海のアーチャー、氷海のランサー(ドン・キホーテ)、氷礫のライダー、氷海のキャスター、氷礫のアサシン、氷礫のバーサーカー、氷海のシールダー……皆、召喚されておらず、魔神柱は何度もあの鯨型の怪物と戦い、敗北、あるいは引き分け、この特異点を維持する力がなくなってしまい、やがては消滅し……そして、復活し、また同じように怪物と戦い、同じように特異点が消滅して、復活する……それを延々と繰り返しているうち、魔神柱は最初のサーヴァントを召喚したのです。その最初のサーヴァントというのが、氷海のシールダーです。そして、次に召喚されたのが、貴方です。ジョン・ワトソン。なぜあなただったのか、それはあなたが英霊たりえる力を持たず、また同時に貴方の性質が魔神柱にとって都合が良かったのでしょう」

「性質?」と私は思わず聞き返した。

 

「ええ、ジョン・ワトソン。貴方は『シャーロック・ホームズ』シリーズにて、ホームズの活躍を文章として記録し、残した人物。つまり、記録者という性質を持っているのですよ。しかし、シェイクスピアやデュマのように、英霊としての力を持たない存在です。なんせ、ホームズを書いたのはコナン・ドイルですからね。貴方は、記憶には残っていないでしょうが、その性質上、召喚されてから起こった出来事を本能的に記録したのです。そして、ここで活躍するのがシールダーの宝具です。彼の宝具は『敵が来ることもなく、自身が死ぬまで安全に生存し続ける』という性質を持っています。つまり、シールダー自身がこの砦の中に籠っている限り、特異点の消滅という危険から守られる……砦の中にあるものすべてが守られ、消滅を逃れるのです。そう、例えば貴方の残した記録も同じです。記録は消滅から守られ、復活した特異点で貴方は出来事全てを記録し、特異点が消滅すれば貴方は消滅するが、記録は残り……このようにして、ワトソン博士が残した記録が積み重なり、やがてはそれが人理となったのでしょう。

 ……私程度の考えでは、矛盾も生じるでしょうが、大まかな筋はあっているはずです。そういった辻褄合わせは、シャーロック・ホームズのような探偵の仕事であって、私の仕事ではないので勘弁してもらいましょう。

 ここからが本題です。この特異点には、貴方の残した記録という人理があります。故に、霊長の守護者が生まれ、魔神柱に対抗するための英霊が召喚され、そして、逆を言えば魔神柱も同じように、自らの手足となる英霊を召喚することが可能になったのでしょう。おそらく、抑止の英霊と、魔神柱の英霊とは今までに何度もぶつかり合い、その様子は貴方に記録され、より強固な人理を築くようになってきたのでしょう。……その証拠が、他ならぬランサーです。彼女には、モデル、元となった人物が存在します。ですが、私はそうではありません。セイバーがいい例ですね。彼は実在せず、完全に物語の存在です。恐らく、シールダーも、アーチャーも、ライダーも、アサシンも、バーサーカーも同じような存在でしょうね。

 人理があるといっても、それは貴方が書き残した記録のみで、その力は微弱なもので、その上、貴方自身が物語の記録者という性質故に、今は物語の存在でしかない人物たちが召喚されるのみでしょう。ですが、ランサーは違います。彼女には、生前にドン・キホーテのモデルとなった存在がいます。これが何を意味するのかというと、前までは脆弱故に物語の存在しか召喚することのできなかった人理が、現実に存在する人物を召喚するまでに至ったということです。あなたの記録という人理が積み重なることによって、人理は強固なものになっています。このまま、人理(きろく)が積み重なれば、もともとなかった人理があったものとなり、魔神柱は人理の改変を自在に行うまでに至るでしょうね。今回、私たちはそのことに気が付きましたが、次に気づくかどうか分かりません。今回、魔神柱が力尽き、この特異点が消滅し、再生する前に、魔神柱を倒さねば、最悪なことになるでしょう」

「そんな……」と私は、キャスターの言葉に打ちのめされた。もちろん、彼の予想が間違っているという可能性もあったが、彼の話は確かなように感じられた。そこで、私は一つの考えが浮かび上がったため、叫んだ。

 

「そうだ、待ってください、では私が書いたあの記録の紙束を燃やせば、人理はなくなるのでは?」

「それは不可能でしょうね。あの記録はシールダーの宝具の中にあります。つまり、守られているのですよ。なので、我々が廃棄、つまり攻撃することは不可能でしょう」

「そうですか……」

 

 私は項垂れた。ちょうどその時、辺りに振動が走ったかと思うと、この中庭を囲んでいた石壁が動き出し、次に突風が吹き荒れ、我々を吹き飛ばした。気が付くと、私たちは砦の外にいた。砦の石壁は元通りの状態となっており、入ることは不可能のように思えた。

 キャスターを見ると、彼の頬には一筋の汗が流れていた。彼は遮光眼鏡(サングラス)を中指で持ち上げると、言った。

 

「まずいですね。砦から排出されたようです。今までは、砦の内部にいる限り安全が保障されていたようなものでしたが、排出されたということは、私たちを始末するための存在が来たということです」

「お見事、実にお見事だ」とどこともなく、手を叩く音とともに男の声が聞こえてきた。

 

 その男は、いつの間にか、私たちの目の前に立っていた。体は常人よりも巨大であり、顔を見るには首を上に動かさなければならなかった。上半身は服を着ておらず、筋骨隆々の皮膚の上には、まるで虎のような、複雑な文様が描かれた入れ墨が彫られていた。その男は言った。

 

「そこのキャスターの言葉は聞こえていた。お前の言うことはすべて正解だよ」

「いつの間に!」とキャスターは言った。「高速移動、いや、サーヴァントが接近する様子はありませんでしたね。まさか、転移?」

「そうだ、ジョウントした」とその男は答えた。「おれには難しいことは分からない。だが、魔神柱はお前たちを殺せといった。だから、ひとまず、今回はここで死んでおけ。そして、次回からはいつも通り、人理を積み重ねる人形として過ごせ」

「させませんよ、ワトソンさん、下がってください!」

 

 とキャスターは言うと、恐らく魔術によるものであろうか。炎を出現させ、それをその男にぶつけた。しかし、攻撃を受けた男はダメージを受けた様子はなかった。彼は言った。

 

「終わりか? なら死ね。『虎よ、虎よ!我が赴くは星の群れ(タイガー・タイガー・アステリズム)』」

 

 と彼が言った瞬間、彼の姿は消え、気が付いたらキャスターの上半身は完全に吹き飛んでいた。私は何が起こったのか、全く理解できなかった。

 

「ふん、雑魚が。ああ、こんなことをしてもただ空しいだけだ。おれは物語の存在、相手も架空の存在。だが、おれは現実にいる。それ故に復讐するべき相手は、この世界に存在しない。ああ、空しい。だが、魔神柱とやらは、()()が済めばヴォーガのやつらをブチのめすことができるようにしてくれるらしい。ならば、おれは魔神柱に協力しなければならない。分かったら、死ね」

 

 とその男は私のほうを向くと、手を伸ばした。その手が私に届いたときが、私が死ぬときなのだろう。私は恐怖のあまり、動くことができなかった。あと数センチで、その手が私の頭を掴むであろうといったところで、その手の動きが止まった。なぜならば、先ほどやられたはずのキャスターが生きていたからだ。彼の吹き飛んだ上半身は、元通りの様子になっていた。彼は言った。

 

「あなたは一体、何者ですか?」

「何者、か。そうだな、お前たち風に言うのならば、おれはアヴェンジャーだ。氷礫のアヴェンジャーとでも名乗っておこう。で、お前はなぜ生きている?」

「私はそういう風にできているのですよ。決して尽きることはありません。ですが、さて、どうしたものでしょうかね?」

 

 と彼は遮光眼鏡(サングラス)を指で持ち上げながら言った。彼曰く、戦う能力はあまりないとのことだし、私もサーヴァントのような、超人と戦うような力は持ち合わせてはいなかった。そのため、我々はまさに絶体絶命といった状況であった。

 実際、氷礫のアヴェンジャーも、冷たい目で我々を見下しながら言った。

 

「諦めろ、どんな小細工を使ったのかは知らないが、お前たちがおれに勝つようなことはない。だから、無駄な抵抗はやめて死ね。何度も再生するというのならば、何度でも殺してやる」

「さて、どうしましょうかね……」

 

 と氷海のキャスターは、冷や汗を流しながら呟いた。






更新が遅れたお詫びといってはなんですが、シールダーのステータス及び、セイバーとシールダーの挿絵を置いておきます。読者の皆様のイメージと違ったら申し訳ありません。
絵は線を綺麗に描こうとするよりも、雑に書いたほうがちょっとうまく見えるらしいですね……下書きのときあるあるです。


【氷海のシールダー】

真名:不明
出典:不明
身長:163㎝
体重:54㎏

筋力:D 耐久:C
俊敏:E 魔力:E
幸運:E 宝具:EX

宝具:陽炎の最果てより我が栄光は来たれり(ウェイスト・マイライフ)

砦型の固有結界。しかし、固有結界とはいっても世界を上書きするのではなく、世界に新たな空間を設置するような形状となっている。通常の聖杯戦争では、今回のように大陸を二分するほどの巨大さは持たないが、繰り返される特異点内で、少しずつ拡張を行った結果、このように巨大な砦となった。
その効果は、砦内部にいる限り敵がやってくることがない、というもの。まさに無敵という言葉が相応しい宝具である。通常の聖杯戦争においては、他のサーヴァントが消滅するまで、砦は存在し続け、全てのサーヴァントが消滅したとき、砦も自動的に消滅する。そして、その砦が消滅したとき、シールダーもまた消滅する。そう、何もできずに消滅するのだ──

氷海のシールダーイラスト


【挿絵表示】


日に焼けて、布地が痛んだ赤い軍服を着、これまた日焼けによってヒビだらけの皮膚をした老人というコンセプトです。全体的に、しわくちゃになるというか、くたびれた感じになるようにしてみました。


氷海のセイバーイラスト


【挿絵表示】


なるべく銃士らしくなるようにしてみました。軽装かつ、必要最低限の防御ができるようにし、自分の中の中世のイメージをそのままに描いてみました。最初は、デオンとシルエットが被るので、非常に難儀しました。いや、ホント。デオンが銃士のイメージそのまま&ポーズも銃士のそれなんですもの……

イラストが見れない方がいましたら、ご報告お願いいたします。
次回の更新はいつになるかは分からないので、予告はしません。ですが、そんなに感覚は開かないと思います。
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