亜種特異点 架空氷丘幻想 アイスエイジに関する記録   作:天城黒猫

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ピックアップ結果
・アビゲイル
・ゴルゴーン
・サリエリ×4
・ワルキューレ×2
・スカサハ=スカディ
・ニトクリス×2(宝具レベル3)

黒猫さん、大☆勝☆利!

おかげでテンション上がって、早めに投稿できました。


彼方への復讐者と最果てへの船乗り

 突然現れた、氷礫のアヴェンジャーを名乗る男は、まさに見た目通り強大な力を持っていた。わずか数分にも満たない間に、氷海のキャスターの肉体は何度も粉々に破壊され、キャスターが抵抗するために魔術による攻撃をものともせず、私もせめてとばかりに駄目元で銃を何発か放ったが、やはりダメージを受けたような姿は一切なかった。

 

「終わりか? もう諦めろ。そして死ぬがいい」

 

 と彼は再びあの『虎よ、虎よ!我が赴くは星の群れ(タイガー・タイガー・アステリズム)』という宝具の真名と思わしき言葉を口にしようとしていた。その宝具がどのような宝具なのか、この時点で私は分からなかったが、それでもその宝具が解き放たれれば、我々は全滅するということは確かなことであった。砦の中に逃げ込もうにも、近くには扉といったものもなく、外壁もかなり高いためよじ登ることも不可能であった。かといって、ほかの場所に逃げようとしても、この広大な氷の大地には、あの砦以外には視界を遮り、身を隠すことのできるような場所は一切なく、ただただ無慈悲な氷の平原が地平線の向こうまで広がっているだけであった。つまるところ、我々はどうしようもなく絶望的な状況に置かれていたのであった。

 ああ、わが友よ! もしも、君がこの場にいたのならばきっとその輝かしい叡智と、研ぎ澄まされた格闘技(バリツ)とで一筋の光明を生み出すことも不可能ではないのだろう。だが、この場に君はいない。私はこの時ばかりは、モリアーティのような悪党でも良いから、誰か我々を助けてくれるような人物が現れることを祈っていた。もちろん、そのような都合の良いことなどそうそう起こるわけでもないし、君ならば、祈る前に頭を働かせ、体を動かしたまえ、とでも言って私を叱るのだろう。

 我々の死神は、途中から数えるのも億劫になるほどに、何度も再生するキャスターの肉体を何度も粉々に砕いていた。氷礫のアヴェンジャーは、頭部がはじけ飛んで消滅したキャスターの肉体を、私の元へと蹴り飛ばすと、言った。

 

「何度も何度もきりがない。奇妙なやつだ、何度頭を吹き飛ばしても、何度も再生する。どうなっている? いや、どうでもいいことだ。どうせ、殺すのだからな。そろそろ死ね」

 

 と彼は、暗い炎が燃え盛るかのような、黒い、無機質な瞳で我々を見下ろしながら言った。そして、彼はついにあの宝具の真名を口にしようとした。私が目を閉じて、己の死を覚悟したその時、

 

「逃げてください、ワトソンさん……!」

 

 といった、今にも消えてなくなりそうな、か弱い声が私の耳に届いた。私は眼を開いた。その声の主はもちろん、氷海のキャスターのものであった。彼は、再生しかけの頭、口を必死に動かし、遮光眼鏡(サングラス)の下にある目で、私を見つめながら「逃げてください」といった言葉を何度も繰り返していた。

 私は頷くと、その場から立ち上がり、きびすを返して走り出した。もちろん、そのようなことをしても、あの氷礫のアヴェンジャーから逃げるようなことなど、不可能だとはわかっていたが、私はそれでもなお走り続けた。だが、やはり現実というのは残酷なもので、私の目の前には、いつの間にか氷礫のアヴェンジャーが立っていた。私は思わず足を止め、驚いた表情をしながら言った。

 

「馬鹿な、早すぎる!」

「おれは、ジョウントできると言っただろう。本当なら、こんな風に自在にはできないが、魔神柱のおかげでな、この大陸中ならどこでも移動できる。だから、逃げても無駄だ」

 

 このアヴェンジャーの言葉を聞いた私は、今度こそ絶望した。なぜならば、彼の言うことが本当ならば、この広大な大陸のどこに逃げても、彼は一瞬で私のもとへと移動し、獲物をしとめることができるのだから。つまり、逃亡などという行為は全くの無駄なのであった。

 

「喰らえ、この野蛮人め!」

 

 私はせめてもの抵抗と言わんばかりに、銃を取り出して中に入っていた弾丸(弾は氷海のキャスターから提供されたものだ)を全て放った。それらの全ては、アヴェンジャーの頭や心臓、みぞおちといったおよそ人間の弱点となるべき場所へと命中した。しかし、やはりダメージを受けた様子はなく、アヴェンジャーは平然とした様子で、こちらに歩いてきた。

 私は数歩ばかり後退したが、何の意味もなく、突然腹に激しい痛みが走ったかとおもうと、私は地面に倒れ伏していた。何ということはない、アヴェンジャーが、私の腹を蹴飛ばし、私の体は宙を舞い、氷の床に衝突したのだ。アヴェンジャーは、うめき声をあげて、もんどりを打つ私を見下ろしながら言った。

 

「さっきのは、少しだけ不愉快だったな。だが、これで終わりだ」

 

 とアヴェンジャーは、私の体をその足で踏み砕こうとした。私は、火事場の馬鹿力というべきか、とっさに体を捻らせたものの、彼の足は私の右腕に命中し、腕を粉々に砕いたのだった。私はたまらず、大声で叫び、額には一瞬で大量の汗が浮かび上がり、苦悶の表情を浮かび上がらせた。

 アヴェンジャーは、足についた私の血液を、足を一振りして取り払うと、独り言のように言った。

 

「しぶといやつだ。なぜ、そこまで抵抗する? 理解できないな、どうあがこうが、お前はここでおれに殺されるというのに」

「ああ、そうなのだろう」と私は砕かれた腕を、無事な方の手で押さえながら言った。

 

「確かに、私はお前という怪物から逃げ切ることは不可能なのだろう。けれど、私がここで諦めてしまったら、世界が終わるのかもしれないのだろう? 何より、私が諦めたことをホームズが聞けば、きっと呆れるに違ないない。だから、私は諦めることはしないのだよ」

「理解できないな」

「クハハハ! そうか? そうでもないだろう、アヴェンジャー! 『理解できないな』? いいや、お前は誰よりも、ソイツの言葉を理解しているだろう!」

 

 と、ふとどこともなく、このような声が聞こえてきた。この声は、氷海のキャスター、私、そして氷礫のアヴェンジャーともまた違った、新たなる人物のものであった。「誰だ?」とアヴェンジャーが言うと同時に、地面が揺れたかと思うと、我々のすぐ近くの氷がひび割れ、水しぶきや氷礫、衝撃とともに、巨大な船が現れた。その船こそは、あの氷礫のライダーの船であった。

 そして、船の先端には、氷礫のライダーが立っており、彼は笑い声をあげながら言った。

 

「アヴェンジャー、復讐者よ! お前を突き動かすのは、復讐心だろう? それと同じだ。ただ、ソイツの場合は尊敬、あるいは友愛か? そういった感情に置き換わるだけだ」

「なるほど」と氷礫のアヴェンジャーは言った。「それならば理解できる。そうか、どうりでしぶといわけだ。それで、お前は何だ? 見たところ、おれと同じ、いや、何だ? どこか似ているようで違う──いいや、どうでもいいか。お前もまた、魔神柱に召喚され、あの竜巻の中から出てきたんだろう? 見ればわかる。ならば、なぜおれに敵意を向ける?」

「フン、敵意か、確かにオレは魔神柱に召喚されたライダーだ。だが、あの魔神のしもべでもないし、味方でもない。ただそれだけだ。故に、オレは今まで機会を見計らっていただけだ。そう、魔神と戦うべき機会をな! そして、その時が来たというだけだ」

「そうか、つまり、お前はおれの敵ということでいいんだな?」

「そう言っているだろう?」

「そうか、ならば死ね──『虎よ、虎よ!我が赴くは星の群れ(タイガー・タイガー・アステリズム)』!」

 

 と氷礫のアヴェンジャーが、その宝具の真名を口にした瞬間、彼の姿は私の目の前から消えた。そして、私が瞬きをし、その瞼を開くよりも早く、船の方で激しい物音がした。アヴェンジャーは、文字通りの一瞬で、私のそばから、ライダーの元へと移動したのだった。

 ここから先は、常人なる私の目では、到底追いかけることのできない戦いであった。私が理解できるのは、アヴェンジャーが、残像が残るほどの速度で高速移動しつつ、攻撃を行い、ライダーはそうした攻撃の全てに何らかの方法、例えば拳や蹴りで攻撃をそらしたり、あるいは体を動かして回避したりとして、対応していることぐらいであった。君のバリツでも、果たしてこうしたことができるかどうか、分からないだろう。

 両者は、こうした激しい攻防を行い、その衝撃であたりの空気は激しく振動し、辺りの氷は粉々に砕け散り、凄まじい防風が吹き荒れた。果たしてその攻防を制したのは、氷礫のライダーであった。

 氷礫のアヴェンジャーは、船の上から激しく叩き落され、氷の大地の上にその体を横たわらせていた。彼は言った。

 

「なぜだ? なぜおれが負ける?」

「簡単なことだ」と氷礫のライダーは言った。「アヴェンジャーよ、復讐者よ、哀れな復讐鬼よ、お前には復讐心が足りない。どこか希薄だ。ああ、それも当然だろうな。お前は完全なる物語の存在だからだ。だからこそ、己の結末を知っている。だからこそ、その身も、心も、完全に復讐鬼と化すことができないのだろう? なあ、《ヴォーガ》に見捨てられ、復讐の憤怒に身を包んだ男──ガリヴァー・フォイルよ! ああ、哀れな男だ。お前は、召喚時に与えられたその知識から、己のことを理解してしまった。《ヴォーガ》はこの世のどこにもなく、己の最後を知っている。それでもなおその体を、魂を、復讐の炎で燃やしても、その復讐の手は届かないことを知っている。ああ、哀れな男だ!」

「黙れ、黙れ!」と氷礫のアヴェンジャーは叫んだ。「そんなことは分かっている、ああ、そうだ。おれは召喚されたとき、絶望したさ。《ヴォーガ》もないし、《ノーマッド》もない! おれは架空の存在だと知り、復讐する相手もまた、おれと同じように架空の存在だと知ったとき、確かに絶望した! だが、やつは、あの気持ちの悪い魔物は、魔神柱は確かに言った! おれが協力すれば、おれが《ヴォーガ》のやつらへの復讐を完遂できるようにすると! ああ、ならば、おれはこの身を復讐で焦がすとしよう!」

 

 と氷礫のアヴェンジャーは立ち上がると、体に彫られた入れ墨は漆黒の輝きを放ち、体からは漆黒の炎が噴き出した。その光と炎とは、彼の怒りを表しているかのようであった。彼は、再び『虎よ、虎よ!我が赴くは星の群れ(タイガー・タイガー・アステリズム)』の真名を叫び、氷礫のライダーへと向かっていった。今までよりも、ひときわ大きな衝撃と轟音が走った。

 ライダーは、アヴェンジャーの拳を手のひらで受け止めていた。彼は、アヴェンジャーの体を持ち上げ、空中へと放り投げると言った。

 

「クハハハハ! そうだ、それでいい! 憤怒に身を任せろ! 憎悪で体を、魂を燃やせ! それができてこそ、アヴェンジャーなのだ! だが、今回はひとまずここで終わらせよう。オレも少々急いでいるものでな! 我が船は、すべての海を乗り越えた! その記憶はここにある! さあ、碇を上げろ! 帆を広げろ! 風を受けて進め! この荒波、乗り越えてみせろ!『我が旅路の始まり(ファリア・トレゾール)』!」

 

 と氷礫のライダーはその宝具の真名を名乗った。すると、前に氷海のランサーや藤丸少年、そして私を丸ごと流した時と比べると、到底比べ物にならないほどの、たくさんの水が、激しさを伴って現れ、アヴェンジャーへと押し寄せていった。水は、しばらくの間、轟音と水しぶきをあげながら流れ続けた。その宝具による攻撃が終わると、アヴェンジャーははるか遠くに流されたのか、その姿は全く見えなかった。

 氷礫のライダーは、船から大地へと降り、地面に倒れ伏す私を見下ろしながら言った。

 

「フン、ようやくここまで至ったか。思ったよりも時間が掛ったな。だが、まあいい。この特異点は少々特殊だ。この特異点をどうにかするには、お前の力が必要不可欠だ。ジョン・ワトソン──」

 

 彼の言葉が終わると同時に、私は意識を失った。しかし、それでも微睡みに近い感覚の中、私は誰かに抱きかかえられ、運ばれているような感覚を覚えた。そして、目が覚めて初めに感じたのは、あの氷礫のアヴェンジャーに砕かれた右腕の感覚であった。粉々になったはずの右腕は、完全に元通りになっていた。それだけではなく、蹴り飛ばされた腹の痛みもなかった。体中の傷は、すべて直されていた。

 私は木でできた、簡易的なベッドに寝かされていた。周りは、木の壁、床、天井と、木でできた部屋に、私はいた。その部屋の壁には、素人目の私でもわかるほどに、価値の高いであろう絵が複数枚掛けられており、さらに、中国製の陶器の置物がいくつか並べられていた。(中国製の陶器製品に関しては、あの出来事である程度は鑑定できるようになっていた)それらすべてが、それなりに効果かつ希少性を持つものであった。

 扉が開く音がしたので、私はその音がした方を向いた。そこには、氷礫のライダーが立っており、彼は私を見ながら言った。

 

「目が覚めたか。なら、オレについて来い。体は治療したから、動くだろう?」

 

 というと、彼はその場から移動した。私は慌てて、ベッドから降りると、彼のあとを付いていった。

 





今回はアヴェンジャーのステータスをば。次回は説明回になりそうです。


【氷礫のアヴェンジャー】

真名:ガリヴァー・フォイル
出典:虎よ、虎よ!
身長:184㎝
体重:87㎏

筋力:B 耐久:B
俊敏:A 魔力:E
幸運:D 宝具:C

宝具:虎よ、虎よ!我が赴くは星の群れ(タイガー・タイガー・アステリズム)

奥歯にあるスイッチを押すことによって起動する加速装置。高速で移動しつつ、敵を攻撃する宝具。超高速で移動しつつ行われる攻撃は、改造された肉体による威力も伴うため、かなりの破壊力を生む。


次回の投稿時期は不明です。今月中には投稿しますので、お待ちください。
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