亜種特異点 架空氷丘幻想 アイスエイジに関する記録   作:天城黒猫

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投稿時間がまた随分と空いてしまいました……ホント、申し訳ありません。
投稿する感覚が開くと、自分でも前回何を書いたか忘れてしまったり。読み返したり、プロット見直したりしてますから、まあ、ある程度は何とかなるんですが……


七海を乗り越えた男

 私は氷礫のライダーの跡を付いていった。移動しているとき、私はいくつか質問を彼に投げかけたものの、答えが帰ってくることはないか、あるいは「黙ってついて来い」の一言のみであった。そのため、私は黙って彼のあとを追うことしかできなかった。しかし、移動している時間はほんの数分にも満たず、目的地にはすぐについた。

 その部屋はそこそこ広く、真ん中に四角形のテーブルと椅子が設置されており、所々に金や宝石で飾られた立派な品が並べられていた。私はその部屋に入るなり思わず、「キャスター!」と声を上げた。なぜならば、その椅子にキャスターが座っていたからだ。彼が氷礫のアヴェンジャーとの戦闘で傷ついた肉体は、跡形もなく治っていた。彼は私の姿を見ると、笑顔で言った。

 

「おはようございます、ワトソン博士。気分はどうですか? ああ、私はこの通り無事ですよ。あのアヴェンジャーとの戦いから、一日が経っています。その間、私はそこにいるライダーから、色々と衝撃的なことを教えられましたよ。まずは事情を色々と話さなければなりませんね。なぜ我々がここにいるのか、なぜライダーが我々を助けたのか、そうした疑問があることでしょう。その点については、私が話させてもらいますよ。さ、そこに椅子に座ってください」

 

 私は氷海のキャスターに促されるままに、椅子に座った。ライダーは部屋の端で、壁に背を預けた状態で立っており、腕を組みながら目を閉じていた。私はキャスターに問いかけた。

 

「それで、一体どういうことなのですか?」

「落ち着いてください。ゆっくり、一つ一つ説明していきますから。まず、ここはライダーの宝具である船の内部です。ですが、彼は我々に危害を加えるつもりはないようなので、その点は安心してください。そして、氷礫のライダーがなぜ我々を氷礫のアヴェンジャーから助けたのか。これは簡単なことです。あの巨大な竜巻から現れるサーヴァントは、魔神柱によって召喚され、使役されているものがほとんどです。我々は自然と、竜巻の内部から現れたサーヴァントを、氷礫のサーヴァントと名付け、そして抑止によって召喚されたサーヴァントを氷海のサーヴァントと呼んでいます。

 以前、ここにいるライダーのことを我々は、氷礫のライダーと呼んでいました。なぜならば、初め私と彼が出会ったとき、彼は問答無用で私に攻撃を仕掛けてきたためです。私は自然と彼のことを敵だと思っていました。実際、ランサーが戦ったときも、攻撃してきたため、ランサーも、そのマスターもライダーのことを敵だと思っていました。ですが、実際には違ったのです。彼は、我々の味方なのです。今まで私やランサーに敵対するような様子を見せていたのは、全て必要なことだったのです。そう、あのライダーは氷礫のサーヴァントではなく、氷海のサーヴァントだったのです。そして、彼は必要なことを全て終えると、我々と敵対するのをやめ、氷礫のアヴェンジャーによって危機に陥っていた所を助けだしたのです。そして、私たちを船の内部に匿っているのです。

 そうそう、信頼の証として彼は私に真名を教えてくれましたよ。彼は、困難を乗り越えた冒険王。七海の覇王。その名をシンドバッド。千一夜物語(アラビアンナイト)という物語のうちの一つ、『船乗りシンドバッドの物語』の主人公です。好奇心と挑戦心によって、冒険へと出かけ、その先で何度も危機に陥るものの、それら全てを乗り越え、財宝を手にし、また冒険へと出かけ──その果てに途方もないほどの宝と栄光を手にした男です。と言っても、彼曰く少し違うようですが」

 

 とキャスターはそのライダー、シンドバッドのほうを見た。彼は今まで閉じていた目を少しだけ開き、静かに言った。

 

「そうだ。オレは確かにシンドバッドとして召喚されているが、実際はシンドバッドそのものではない。とある男に、シンドバットという幻霊が混ざったような状態だ。でなければ、オレはここに来ることができなかった。……だが、こうしたことを気にする必要はない。ともかく、オレの霊基はシンドバッドとして存在している。魔神柱も、中々に面倒な特異点を創ってくれたものだ。いいか。ジョン・ワトソン! この特異点で重要なのはは貴様だ。この特異点では誰もが何かしらの役割(ロール)を担っている。故に、貴様は貴様のするべきことをしろ」

「シンドバッドさん」と私は問いかけた。「それはどういうことなのですか?」

「フン、知れたこと。この特異点は、人理というモノが存在しない。それはすでに知っているか? なぜならば、ここは、人が立ち入ることのなかった氷の大地だからだ。故に、過去に大地を駆け、その武勇を知らしめた英霊は召喚されることはまず無い。ここに立つ資格のあるものは、人理に存在しないモノ──座に存在せず、大地を駆けたこともなく、世界に降り立ったことのない英霊のみだ。例外があるとすれば、この特異点を創り出した魔神柱と、その魔神柱によって誘われた藤丸立香のみ。『シンドバッド』という男は、とある女によって語られた物語のみに存在し、実在はしないためオレはここに立っている。貴様もまた同じだ。コナン・ドイルという男が作り上げた架空の存在故に、貴様もここにいる。そこのキャスターも同じだ。真名こそは何度繰り返しても最後まで明かさなかったものの、オレたちと同じようなモノだろう」

 

「ええ、そうですね」とキャスターは言った。「私もまた、ヒトによって造られたものです。真名を名乗る気はありませんが、それだけは確かですよ。少し話がズレましたね。このことは、今までにも何度か話していたのですが、まあ良い復習にはなったでしょう。では、続きを話しましょう。

 彼、シンドバッドは私たちを助けてくれた味方です。さて、ここで気になるのは残りの我々の味方。すなわち藤丸立香と氷海のランサー、ドン・キホーテのことですね。結論から言いますと、彼らは無事です。現在はあのシールダーの宝具である砦の中で過ごしているようです。シールダーの宝具、『陽炎の最果てより我が栄光は来たれり(ウェイスト・マイライフ)』は概念的な盾となり、砦の内部にいる限り、敵が攻撃してくることなく、安全に過ごせるため、安全に関しては問題ないでしょうね」

「そうなのですか?」と私は気になっていたことを投げかけた。「氷海のシールダーは我々の敵ではなかったのですか? であるのならば、彼の宝具の中にいる限り安全ということは考えられませんが」

「いえ、問題ありませんよ。言ったでしょう、あの砦は概念的な盾であると。つまり、あの砦はとにかく『敵がやってくることなく、永遠の安全を確保する』という性質を持つ宝具です。砦の内部に敵がいようが、安全は確保されるでしょう。それに、彼らがあの砦から脱出することは難しい、いえ、できないと考えても良いでしょうね。これはシンドバッドさんの説明によって明らかになったことなのですが、あの砦には軽い、それこそ一流の魔術師でも気が付くかどうかといったレベルの暗示が常に発生しています。その暗示の内容は単純に、砦から出ようと考えなくなるというものです。私や貴方はなぜかその暗示の効力が弱かったのか、あるいは別の要因によって暗示が効かなかったのか、それは分かりませんが、私たちはその暗示から逃げ出し、砦から脱出しようと試みることができたのです。ですが、いまだに砦にいる彼らは、すでに暗示に浸かっていると考えても良いでしょう。ランサーも、『道化行進曲・騎士道物語(パリアッチョ・ドン・キホーテ)』を発動し、道化となってからは対魔力スキルが失われたようですから、抵抗はできずに暗示に浸かっているでしょうね。

 つまり、今の彼らは砦の中から出ようとすることはなく、何かしらの異常なことがあっても気にすることはなく、ただ砦の中で過ごし続けるようになっていると考えてよいでしょう。もちろん、安全に過ごしていることは間違いありません。

 そして、次に氷海のセイバー、ダルタニャンのことです。彼は、あなたの記憶ではどのようになっていますか?」

 

 私はこの質問に首を傾げた。というのも、彼がどうなったのかはキャスターも知っていたからだ。私は答えた。

 

「不思議なことを聞くのですね。彼は、あの森から現れたバーサーカーと戦い、消滅したではありませんか」

「いいえ、実は違うのですよ」

 

 と氷海のキャスターは答えた。彼の手元には、一枚の紙が握られていた。彼はそれを机の上に置き、私はその紙の内容を見て目を見開いて見せた。なぜならば、その紙は私が記録のために書いた内容が書かれていたからだ。

 

「これは、この部屋のテーブルの真ん中に置かれていたものです。これによると、セイバーは貴方と散歩に出かけると、貴方と一緒に氷の割れ目に落ち、その中で発見した洞窟で氷礫のバーサーカーと、謎の女性──彼女はライダー曰くアサシンで召喚された人物です。その真名をミレディーと言います。彼女は『三銃士』の登場人物で、その美貌と狡猾さとでダルタニャンを死に追いやろうとした人物です。彼女の宝具『戒めと蠱惑の黒百合(ミレディー・プワゾン)』という名なのですが、これは使用した対象に毒と、幻惑を与えるというものです。彼女のことは、シンドバッドさんが知っていたようで、これも彼から受けた説明なのですが、少なくともダルタニャンのことは心配しなくとも良いとのことです。その理由までは、彼は語ってくれませんでしたが……ミレディーの元にいることは間違いないとのことです。このことから、氷海のセイバー、ダルタニャンのことは無事かどうかは分かりませんが、少なくとも生きていることは間違いありません。

 ミレディーの宝具によって、ダルタニャンと貴方は催眠状態に陥り、恐らく、私たちも彼女の催眠に掛かってしまったのでしょうか、アサシンの能力を使えば、砦の中に忍び込んで宝具を使うことは簡単でしょうからね。私も、砦の能力のせいか、油断して魔術的な警戒はかなり緩く設置してしまいましたから。そのせいで、我々は『ワトソン博士が散歩に出かけている間、森から現れたバーサーカーと、セイバーが戦い、セイバーは敗北して消滅した』と認識していたのです。ですが、実際は先ほど話した通りです。

 彼に関しては、現在の我々にできることはない……というよりは、シンドバッドさんが手出しはしなくてもよいというので、放置といたしましょう。そして、次です。氷礫のバーサーカーについてなのですが、彼女に関しては何もわかっていないのですよ」

 

 とキャスターはシンドバッドのほうを見ながら言った。彼は静かに言った。

 

「その通りだ。オレも、奴に関しては何も知らん。これまで何度も接触したことはあるが、正体はいまだ不明だ。だが、奴はいつも森の中に潜んでいるだけで、出てくるときは本当に少ない。故に、少し気に留めておくだけでいい。さて、残るはカルデアのマスターに関してだ。ランサーと同じ状況に置かれているが、気にする必要はない。何かがあっても、オレが何とかしよう。この特異点では、それぞれに何かしらの役割(ロール)が与えられている。オレたちは物語の住人なのだからな。物語において、意味のない登場人物などいないだろう。それと同じだ。

 では、最後に氷礫のアヴェンジャーだが、これも気にする必要はない。アレは、全くのイレギュラーのようなものだ。大方、オレがいるため、それを下敷きに魔神柱が最近になって、召喚したのだろう。アレも、オレが対処するとしよう。クハハハ! ランサーに加えて、アレまでもが現れたということは、順調に人理が積み重なっているという証拠だ。時間がない。今まで、幾度もやり直されているが、あと僅かでこの世界は完成するだろう。今までは、同じようなことばかりを繰り返していたが、この頃は少しずつ変化が訪れている。故に、時間がない」

「どういうことなのですか?」と私は首を傾げた。「シンドバッドさん、そのような言い方だと、貴方は何度もこの世界の繰り返しを体感しているように思われるのですが」

「その通りだ」とシンドバッドは答えた。それに、私は衝撃を受けた。彼は続けて言った。

 

「オレはこの世界に対して、耐性を持っている。故に、オレがこの特異点に来てから、現時点までの出来事は全て記憶している。フン! あの探偵に言われて来てみたはいいものの、なるほど。奴がオレを頼るわけだ。この特異点は、これまでの特異点はカルデアのマスター……藤丸立香が中心となり、サーヴァントを結びつけることによって、敵を打ち倒し、攻略してきた。だが、今回はそう上手くはいかない。この特異点で鍵となるのは、貴様だ。ジョン・ワトソン。

 さて、ここまで随分長々と話してきたが、結局オレ達が何をすれば良いのか。まだそれを伝えていなかったな。まずはアーチャーを探せ。氷海のアーチャーをな」

「待ってください」とキャスターは言った。「アーチャー……彼は、私の記憶によれば、巨大な怪物と、魔神柱と戦い、傷つき、消滅した筈です」

「ああ、そうだな。だが、実際には違う。奴は、少々形態が特殊でな。上手くすれば、まだ一部は残っているかもしれん。今までにも、そういうことは何度かあった。居場所にも心当たりがある。今も船をそこに勧めているところだ」

「いいでしょう。分かりました」とキャスターは頷いて見せた。それから、遮光眼鏡(サングラス)を指で上げながら、言った。その時の彼の気配は、私の背中に冷や汗が流れるほどに冷たかった。

 

「現在の我々としては、貴方の言う通りに行動するほか無いのでしょう。もっとも、それは貴方が我々の敵でないという前提がつきますが。ワトソン博士がいないときにも聞きましたが、今一度改めて聞かせていただきます。貴方は、本当に我々の味方なのですか? そして、今までその姿を潜めていたというのに、なぜ今になって動き出したのですか?」

「クハハハハハハハ!」シンドバッドは突然大笑いをした。「クハハハハハハハ! オレを疑っているのか! よろしい、貴様の問いかけに改めて答えるとしよう。オレは、貴様らの味方ではないが、敵でもない。ただ、この特異点を修復するという目的は同じだろう? 故に、協力を持ち掛けているだけだ。

 そして、実のところオレがこうして本格的に動き始めたのは、()()が初めてだ。事態は、貴様らが思っている以上に切迫している。今までは、なるべく隠密行動をとって情報収集に徹していたが、そろそろ余裕がなくなってきた。この特異点は力を増し、あと僅かでオレが考慮する最悪の結果へとつながりかねん」

 

 おお、我が友ホームズよ。私はこの時以上に、冷たい汗を流したことは無かった。それぐらい、シンドバッドの言葉は真剣なものだったからだ。私が何かしらの犯罪や事件に巻き込まれたりしたとき、私の隣にはいつも君が立っており、君はその素晴らしい叡智であらゆる事件を解決へと導いてみせた。ここに君がいないというだけで、私の心は臆病者へと成り果てかけているのだ。ああ、ホームズ。我が友よ。シンドバッドやキャスター、ランサー、セイバー、カルデアのマスター……私たちの味方である彼らは、確かに頼もしい存在ではあるのだ。けれども、やはり君と比べるといささか不安を覚えてしまう。どうか、祈ってくれないだろうか。これから私に降りかかるであろうあらゆる困難を前にして、私の心が折れたり、倒れてしまわないように。

 





【氷礫のアサシン】

真名:ミレディー
出典:三銃士
身長:159㎝
体重:45kg

筋力:E 耐久:E
俊敏:D 魔力:C
幸運:C 宝具:D

宝具:戒めと蠱惑の黒百合(ミレディー・プワゾン)

普段は、美しい宝石が付いた指輪。真名を開放すると、指輪から黒い花びらをした百合が開き、毒や暗示効果のある魔術をあたりに振りまく。抵抗に失敗すると、彼女の思うがままに操られ、最終的には徐々に毒に蝕まれる。そうして、彼女の操り人形となった人物は、最後まで彼女に魅了され、自分が操られているとも気づかずに静かに倒れる──
彼女は魅了スキルも持っているため、それと並行して使用すれば、男性はこの宝具に抵抗するには余程の精神力か、対魔力が無ければ不可能といっても良いかもしれない。


【氷礫のライダー】

真名:シンドバッド
出典:アラビアンナイト『船乗りシンドバッドの冒険』
身長:185㎝
体重:75㎏

 真名シンドバッド。好奇心のままに航海や冒険にでては、あらゆる困難にぶつかる。しかし、そのどれもを彼は乗り越え、その果てに大量の財宝を手にした男。しかし、彼はシンドバッド張本人というわけではなく、エドモン・ダンテスという男が核となっている。
 シンドバッドとは、とある女によって語られた物語に登場する人物であり、実在はしない。しかし、巌窟王エドモン・ダンテスは生前にシンドバッドと名乗ったことがあり、その上腕利きの船乗りであった。その上、彼自身も実在したかどうかは非常にあやふやであり、霊基をシンドバッドへと変化させるのは容易なことであった。彼は、シャーロック・ホームズの依頼によって、この特異点にシンドバッドとして降り立った。
 彼は霊基が変質しているため、性格などにも多少の変化がある。冒険らしき気配を見つけると、そこに突っ込んだりする。最も具体的に分かりやすい変化は、あまりクハハハしなくなったことであろうか。


 小説書くの久々なので、どこか違和感とかありましてもスルーで……地の文がすくないい……
 次回更新は未定です。多分、今月中にやるかもしれません。

 氷海のアーチャーヒント:フィンランド
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