亜種特異点 架空氷丘幻想 アイスエイジに関する記録   作:天城黒猫

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久しぶりに投稿します。
作者の書きたいように書いて、プロットをその場の勢いで変えたりしているので、当初との予定が大きくずれていたり……(白目)
ホント何故こうなるんだ。もういっそロンドン行きますかね!




遺言。訪れしは新たなる謎と敵と孤独

「まずは何から話したものか。そうですな、(ボク)がこの大地に召喚されたときの状況から話すとしましょう。(ボク)がこの大地に召喚されたのは、太陽が沈み、強風の中に氷の礫がいくつも混ざって飛んでくるような、吹雪の夜でした。

 

 (ボク)の故郷でも、これほどの過酷な環境は味わったことはありませんでしたの。ですが、それでも(ボク)は風に吹き飛ばされないように、必死に体を踏ん張り、目に氷の粒が入らないように、腕で目を守りながらも、前を見て注意深く、進んでいきました。とはいっても、暗闇と吹雪とで何も見えないに等しかったのですが、目を閉じて歩くよりはマシであろうと思ったのです。そして、それは正解でした。

 

 歩き始めてから、数分、あるいは何十分、何時間が経ったのかは分かりませんでしたが、(ボク)はとにかく前へと歩いていきました。そうすると、二つの光が暗闇と吹雪との中で輝いたのです。

 一つは、白くて力強い光でしたの。もう一つは、赤くて禍々しい光でしたの。(ボク)はその光を目指してみることにしましたの。光に近づくにつれ、吹雪は力強さを増し、また大地が揺れ、何かが泣き叫ぶかのような、悲鳴を上げているかのような、おぞましい音が聞こえてきました。それは意思の弱いものが聞けば、正気を失い、のたうち回るほどにおぞましいものでした。けれども、(ボク)とて英雄の一端。誇りがありましたの。ですから、(ボク)はそのおぞましい音にも、恐怖することなく前へと歩いていきました。

 

 そうしているうちに、ふと吹雪は止み、空は青色になっていました。そして、(ボク)の目の前には、白く、山のごとき巨体を持つ怪物と、黒く、いくつもの赤い瞳を持つ怪物とが争っていました。あの暗闇と吹雪は、彼らの争いの余波によって発生しており、その中心地であるこの場所の天候、すなわち全くの無風、雲一つない晴れ空こそが本来のものだったのですの。それは、まさしく神話の戦いでした。白い怪物が咆哮を上げると、世界が震え、惑星のごとき巨大な雷雲が呼び寄せられ、辺りは夜のように暗くなったと思ったら、巨人のごとき稲妻がいくつも迸り大地を蹂躙していきました。対する黒い怪物もまた同じように、得体のしれない声を発すると、世界が悲鳴を上げ、巨大な竜巻が現れ、天空を破壊していきました。

 この両者はまさしく神のごとき力を持っており、(ボク)は彼らの戦いを何とかして鎮めなければ、この世界は完全に破壊されると確信しました。そのため、(ボク)は彼らの戦いに介入することを決定しましたの。(ボク)はそのための力がありました。もちろん恐ろしくもありましたが、何よりも(ボク)はあらゆる物語、伝承が集った英霊だとしても、その根本にあるのは正義と英雄としての矜持でしたの。そのため、(ボク)が武器を取り、足を前に進めるのは一瞬でしたの。

 

 (ボク)が介入したことによって、戦いは激しさを増して行きました。一瞬、ほんの刹那たりとも気を抜けばそれが大きな油断となって、すぐさま死んでしまいそうなほどに、油断のできない過酷な戦いでしたの。一つ選択を間違えれば、死へとつながり、生へとつながる選択は針の穴よりも小さな可能性にかけるしかありませんでした。こうした生死を賭けたギャンブルは、一秒のうちに何度も繰り返されましたの。そして、(ボク)はそのギャンブルに挑み、連続して勝利し続け、生を獲得し続けましたの。

 

 こうした戦いは長い間続きました、いえ、もしかしたらもっと短い……それこそ数時間、あるいは数日、あるいは数か月……世界そのものが戦いの様子によって夜にもなり、昼にもなっていたため、正確な日にちを測ることはできませんね。少なくとも、(ボク)にとっては永遠とも思われるほどの、緊張に満ち溢れた長い時間を過ごしていましたの。ですが、何事にも終わりはありますの。また、この戦いもそれは例外ではありませんでしたの。(ボク)は宝具を使うタイミングを常に狙っていましたの。それも、ただ使うだけではなく、一度の発動で両者に致命的となる一撃を与えることのできる、非常に少ない確率のタイミングを狙っておりました。そして、ついにそのタイミングは訪れ、(ボク)は宝具の真名を解放しましたの。『煉虚御霊よ、皎々冽々たれ(イタルマル・アームンコイット)』。

 

 この言葉が放たれるとともに、二体は深い痛手を負い、それぞれどこかへと消えてきました。そして、(ボク)もまた限界がきており、消滅寸前でしたの。怪物は倒れたのではなく、一時的に争うのをやめただけであり、再び争いを始めると(ボク)は確信しておりました。そのため、あの怪物を鎮めることができる人物がほかにいないか、あるいは戦う以外の手段がないのかを探るため、(ボク)を構成していたいくつかの人物のうち一つを切り離し、この大地に残すようにしたのですの。それが今ここにいる(ボク)ですの。

 

 ……そして、(ボク)は姿を潜ませ、あの怪物たちを倒すことのできる勇者の出現を待っておりましたの。その勇者の力となるがために。ああ……ですが……もう時間がありませんの……」

 

 と氷海のアーチャーが目を閉じると、彼の体は金色の光を放ち始めた。彼は悲し気な声で言った。

 

「ついぞ……(ボク)の求める勇者は現れず……限界が訪れましたかの……消滅するだけですの……ああ、こうなっては仕方がありませんの。この氷の大地には2体の怪物がおり、それを倒すべき勇者がおりますの。ここにいる者たちは、どれもあの怪物を倒そうとするべく動いているのでしょうが──誰も勇者にはふさわしくありませんの……ですから……どこかに、この氷の大地のどこかにいる勇者に……あの怪物を倒すように伝えてくださいの……今から、(ボク)が言うことを伝えてくださいの。

 

 二つの怪物のうち、黒き怪物……あれは、この世にはあらざる怪物。どの世界にも属せず、どの生物にも属しない……人々の記憶に残ることもない、名もなき怪物ですの。対する白き怪物はむしろその逆ですの。

 アレはこの世界そのもの。この氷の大地そのもの。海……風……嵐……そうした自然が形を成したような存在ですの。そして、(ボク)は彼らと戦って、あることが分かりましたの……この大地を形作っているのは、白い怪物ですの。そして、黒い怪物はその白い怪物を取り込もうとしていますの。

 真に倒すべきはどちらか……(ボク)には分かりませんでしたの。ですから、勇者にはそれを見極めるように伝えて欲しいですの……」

 

 氷海のアーチャーが目を閉じると、彼の体から金色の粒子が放たれ始めた。

 私は、彼が今から消滅しようとしているということを、本能的に理解した。先ほどの戦いでは、力強く楽器を奏でていたその腕には、力は全く感じ取られず、目から光を失っていった。

 私は医者として、こうした人間の様子をいくつも見てきた。つまり、彼は今から死に向かっているのだ。私には、一つだけ疑問が残っていたため、思わず彼に問いかけた。

 

「勇者とは一体何者なのですか? 辛いでしょうが、答えていただけませんか?」

 

 すると、彼は僅かしか動かないであろう口を、開きながら、呼吸するにも等しいような、弱弱しい声で言った。

 

「ああ……そのことを言っておりませんでしたの……(ボク)の真名は……ワイナミョイネン。そして……あらゆる村……街……遺跡……口伝……記録……ある土地の、あらゆる場所に存在する……話を一人の男が纏め、編纂したことによって……生まれた英霊ですの……

 ワイナミョイネンという人物は実在はしませんのじゃ……──けれども、人々の信仰によって……無数の名もなき伝承が集い、(ボク)という英霊は生まれましたの……この大地では、(ボク)と同じようなカタチの英霊……それが……勇者となりえますの……どうか──勇者を──人々の想いをカタチとした勇者を──」

 

 そして、氷海のアーチャーことワイナミョイネンは完全にその存在を、この世界から消滅させたのであった。私は、ワイナミョイネンの言った存在、つまり勇者となりえる可能性を持つ存在に心当たりがあった。しかし、その人物はこの場所にはおらず、あの砦の中に未だ囚われているのだろう。

 ライダーとキャスターの二人は、私の背後で私と同様にワイナミョイネンの最後を見守っていた。そして、ライダーは彼が消滅してからしばらく経ってから、話始めた。

 

「ワイナミョイネン──フィンランドの神話、カレワラの英雄か。永き間、母の胎内に居たため、生れ落ちる時には老人の姿をしていたという。これはまた随分な大物が召喚されていたようだ。成程、奴ならば魔神柱と、あの怪物を抑えるのも納得というものだ」

 

「私達はあの砦に向かうべきなのでしょうか?」

 

「いいや、それはまだ後だ。今行うべきことは──」

 

 ライダーは、突然吐血したかと思うと、地面に倒れ伏した。

 

「大丈夫ですか! しっかり!」

 

 私は医者としての本能とでも言うべきか、すぐさま彼の元に駆け寄り、彼の様子を観察した。よく見ると、彼の背後、それも首元には吹き矢の針が刺さっており、その針の先端には毒が塗られていた。その毒の種類こそは不明だが、サーヴァントである彼にも通じるともなると、それなりに強力な毒だということが分かった。

 また、彼の傷はそれだけではなく、背中から心臓を狙い撃つかのように、銃創があった。体を貫通した様子は見られないため、体内に弾が埋まり込んでいるということが分かった。

 また、私には一つの疑問が生まれ出た。彼は先ほど見せた戦いから分かるように、強力な力を持つことは間違いない。だというのに、このように吹き矢と銃弾の前にあっさりと倒れたのだ。少なくとも、攻撃が行われたのならば、何かしらの反応を見せそうなものだが、彼は反応することなく攻撃を受けたのだ。また、銃弾に関しても、銃を放ったのならば、銃声が聞こえても可笑しくはない。音が聞こえない程遠くから狙い撃つことも、長い通路の先にある、この部屋では到底不可能である。例え通路の入口から狙い撃とうにも、通路にはカーブがあるため、途中で銃弾が壁にぶつかってしまうのだ。

 かといって、この部屋で銃を使おうとしても、銃声が聞こえないのはおかしいし、例え音がしないような仕掛けをしていても、ライダーが反応できないというのはあり得ないのではないのだろうか。

 

「ぐ……今すぐここから離れろ……貴様らがするべきこととは……」

 

「そう話させはしねえですよ。シンドバッド殿、いえ。巌窟王殿。申し訳ねえですが、アンタはここで死んでもらいまさあ」

 

「──あなたは」

 

 私は驚きのあまり、声を漏らし、目を見開いて見せた。いつの間にか、我々の前に一人の男が立っていた。そして、私はその男の名をよく知っている。君も知っているだろう、ホームズ。彼は漁師が身に着けるような服を着、ひどく筋肉質な腕には、巨大な銛が握られていた。

 

「パトリック・ケアンズ!」

 

 そう、かつてあの恐ろしい完全犯罪者との闘争のきっかけとなった人物、あるいは事件ともいえるだろうか。人間の肉体を銛で貫き、壁に縫い付けることができ、手錠をかけられた状態で、台の男複数人でないと押さえつけることのできない、恐ろしい筋力を持った人間である。

 私がブラック・ピーターと名付け、新聞に投書した事件の犯人である。パトリックはいやらしい笑みを浮かべながら言った。

 

「よう、ジョン・ワトソン先生。元気ですかい? ああ、そうそう。そっちの男。あんたは邪魔だから、退場してもらおうか。先生、頼みましたぜ!」

 

 とパトリックが叫ぶと、氷海のキャスタ-は突如苦しみ出し、うめき声を上げた。

 

「グ、アァァァアアアア、ア、グウギ……これは……私の……存在が否定……消え…………──」

 

 しかし、彼が苦しんでいる様子を見せたのはほんのわずかであり、金色の粒子を見せたかと思えば、先ほどのアーチャーと同じように姿を消滅させた。

 パトリックはそれを見届けると言った。

 

「ハハハハ、流石は先生だ。俺も負けちゃいられねえなあ。そらよ、こいつをくらいな!」

 

 と彼は腕を振りかぶり、銛を投擲した。凄まじい筋力で投げられた銛は、ライダーの肉体を正確に狙い撃ち、彼の体を貫いた。銛が突き刺さった瞬間、体が跳ね上がり、氷の床が銛の先端で削られる音が聞こえた。そして、次に銛が刺さった部分からは、どす黒い血液が大量に流れだした。

 

「それじゃあ、次はコイツだ!」

 

 と彼が声を上げると、爆発音が聞こえた。

 ここまで、一分にも満たない出来事であり、私はただただ茫然と立ち尽くすしかできなかった。パトリックはきびすを返し、洞窟の通路へとその姿を消しながら言った。

 

「よう、先生。今からこの洞窟は崩壊しますぜ。いつまでもそこにいると生き埋めだ。それが嫌なら、さっさとここから出ることだな。ああ、そこの男に刺さっている銛を引っこ抜いて、抱えて一緒に逃げようなんざしないこった。銛には返しが付いているし、それなりに深く刺さったみてえだから、簡単に引っこ抜くことはできねえですぜ。

 それに、仮に引っこ抜けたとしても、大の男一人抱えて逃げるにゃ間に合いませんぜ。ま、先生の筋力じゃ、銛を引っこ抜くことも難しいでしょうが。ああ、俺のことは心配しなくても大丈夫ですぜ。早くしないと、生き埋めになっちまいますぜ! ははははは!」

 

 この空間の天井を見上げると、亀裂が走っており、また砕けた小さな氷が床に落ちていることが見られた。地面も揺れ始め、怪物の唸り声のような凄まじい音が聞こえ始めたことから、確かにこの洞窟は崩壊が始まっているということが分かった。

 私は医者であり、倒れている患者を見逃すことができないのだが──せめてもと床に倒れたライダーの脈を診ると、完全に停止しているため、死亡したことは明らかであった。私はそれが分かると、歯を食いしばりながら洞窟の出口に向かって走り出した。

 

 脱出するのには間に合ったようで、私が洞窟の外にでると、洞窟は完全に崩壊し、その入り口を瓦礫で閉ざしてしまった。

 私は、息を整えながらどうすればいいのか思考を張り巡らせていた。その傍らで、一種の不気味さも覚えていた。この得体のしれない不気味さは、君があの恐ろしい男と戦った時のものと同種であった。一体何が起こっているのか、私にはさっぱり分からなかった。

 何故パトリック・ケアンズが現れたのか。またライダーを攻撃した主は誰なのか、なぜキャスターは消滅したのか……私には総てが分からなかった。こんな時、まさしくこの世の謎全てを解き明かし、全知とも錯覚するほどの頭脳を持つ君が居てくれれば良かったのだが、あいにくとも私が見回せる範囲に人間、あるいは生き物と呼べるようなものは私以外に無かった。

 

 

 

 

 

 







 次回の投稿は不明です。気長にお待ちいただけると幸いです!
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