亜種特異点 架空氷丘幻想 アイスエイジに関する記録 作:天城黒猫
セミ様がかわいいだけのイベントでしたね! 彼女のチョコも中々によかったです。
翌日、藤丸立香は再び氷海のライダーのところへ行こうと、朝食の場で言った。しかし、それに帝都のキャスターが返した。
「いいえ、それはやめておいた方がいいですよ。外はもう見ましたか? 今日はとても吹雪いていますので、とても外に出られるような気候ではありませんよ」
朝食後、砦の窓から外を確認してみると、なるほど昨日までならば、水平線が見える程に果てしない大地が見渡せたが、今は白い雪が激しい速度で空中を移動することによって、白い景色しか見えず、遠くまで見渡すことは不可能であった。さらに言えば、人がまともに移動することができなくなるほどの強風と、気温も昨日よりもはるかに低かったため、外を出歩くというのは危険な行為であるということが分かった。
立香少年も、無謀な性格ではないようで、今日は砦の内部を探索しようと決めたらしい。
前に記述したように、この砦はかなりの長大さを誇っており、それこそ中国にあるという万里の長城よりも長いと私は予想している。それどころか、この広大な北極大陸の端から端まで伸びている可能性がある。そのため、我々が拠点としている部分から、遠い場所にほかのサーヴァントが潜んでいたり、それどころか魔神柱が潜んでいる可能性も無視できなかった。少年は、砦の内部を探索するに当たって、そうしたことをシールダーに伝えると、老人は答えた。
「ふむ……そうでありますな。確かにその可能性はあるでしょう。儂自身も、この砦がどのくらいの長さがあるのかは分かりませぬ。ですが、かなり長いというのは間違いないじゃろう。しかし、これだけは忘れなさるな。外には、魔神柱が放ったであろう、いくつもの魔物が潜み、また人類にあだなすサーヴァントもどこかに潜んでおります。ですが、この砦にいる限りは、安全であることは間違いないじゃろう。……それだけは、約束しよう……
この砦は広い……食料品が行った先にもあるかどうかはわかりませぬ。よって、日没までには帰ってきてほしいでありますな」
「わかった」と少年は老人の忠告に頷き、ランサーをお供にして準備を始めた。
またキャスターも「今日は私も仕事はありませんし、この砦にも興味があります。私自身の目で見てみるのも悪くありませんね」と言って彼らについていくことにした。
しばらく歩いて分かったことだが、この砦の構造は簡単なもので、兵士の部屋、会議室、食堂、武器庫といった生活をするためのスペースが一定の間隔で設置されており、その他の部分は移動用の通路や見張り台の役目を持つ構造のみであった。こうした、単純かつ同じような光景が続き、また外では吹雪く時に発生する激しい音が聞こえてくるので、少しばかり気が滅入るのであった。少年は、ふと「うーん」とつぶやいた。それに、ランサーが首を傾げた。
「どうしましたか? リツカ」
「少し違和感が」
「違和感、ですか? 私は特に何も感じませんが……」
「この砦に何か違和感を覚える」それから、彼は頭を振って「大したことじゃないと思うけど」
「そうですか。ならば、そう気にする必要はないかと。そうした迷いを持っていたら、体の動きや咄嗟の判断を鈍らせます。迷うよりも、行動あるのみが一番でしょう。体を動かす事が大切なのです」
「そうだね」
「ええ、私も同じ意見です」とキャスターは言った。「私は学者に俗する存在なので、机の上で考えることも大切なのですが、やはり行動しなければ物事は得られませんからね」
「きさまがそんなことを言うとはな」と騎士は言った。彼女はどこか刺々しい様子であった。
「おや、おかしいですか? まあ、運動するようには見えませんからねえ。ですが、運動は結構得意なのですよ?」
「それは宣戦布告と受け取っても?」
「物騒ですね」
「きさまは信用ならん。そんな雰囲気が漂っている」
「まあ、確かに私は胡散臭いと自覚していますしね。ですが、目的はあなたたちと同じですよ?」
「どうだか……妙な真似をしてみろ。我が槍の錆びにしてくれよう」
「ランサー、そこまで」と立香は彼女をいさめた。「大丈夫、彼は味方だ」
その言葉に、彼女は身を引いた。
こうしたやり取りが途中あった。確かに私も、この砦に違和感を抱いてはいるのだが、その原因がどのようなものなのかは、いまだにわからない。まるで、頭に靄が掛かったかのように、その違和感の正体を掴むことができないのであった。君がいつも言っていたように、私はあらゆる可能性を考慮して、この違和感も大切な要素だと胸中にしまっておくことにした。
探索を再開してから、しばらくすると、吹雪の音に交じって、何かを叩くような音が聞こえた。その音が聞こえる感覚は定まっておらず、また短かった。ランサーは、そうした変化を警戒し、武器を構えて少年の前を歩き始めた。その音がする方向へと移動すると、鈍い打撃音に交じって叫び声が聞こえた。その声は、「助けてくれ……寒い……開けてくれ……入れてくれ……」といったような、助けを求める声であった。
「急ごう!」と立香は走り出した。ランサーとキャスターも、それに従い声の元へと急いだ。その声の主はこの要塞の中に入るための門の前にいるようであった。また、このような大地にいる人間など、サーヴァント以外には考えられないため、彼らは十分な用心を払っていた。彼らは、門の閂を外し、門を開いた。すると、開いたそばから強風と雪とが建物の中に侵入し、それに押され、転がるようにしてその人物は砦の中に入った。少年たちは急いで門を閉じた。
彼はやはりサーヴァントのようであった。年は若く、飾り羽のついた、つばの広い帽子をかぶっており、十字の刺繍が入ったマントに、動きやすい布の服、腰には細いサーベルと短銃がさしてあった。彼の日焼けした肌は、寒さによって真っ青に変化しており、体を震わせ、歯を打ち鳴らしていた。
「大丈夫ですか!」と立香は彼の体に手を当てて、言った。
「ええ……ええ、大丈夫……とは言い難いですね……何か……羽織れるものをいただけませんか……? 服の一枚でもあれば……十分楽になりますので……」
「これをどうぞ」
と少年はコートを彼に渡した。
「リツカ、用心を。ここは私が手当をしましょう」とランサーは言った。
「大丈夫、オレもやる」
「しかし……」
「弱っている人を見捨てることはできない」
ランサーは、しばらく葛藤する様子を見せると、言った。
「わかりました。ですが、十分注意してください」
「私も協力しましょう。温めるのは得意分野ですよ?」とキャスターは言った。
3人の男女は、この新たなる登場人物の手当を行った。その場でできうるあらゆる方法で、彼の体を温めたのだった。そうした手当を行っていると、彼の調子はすっかり良くなったようで、顔には赤みがでて、丸くなっていた背中は軍人らしく、真っすぐに伸びた。彼は頭を下げ、立香にコートを返した。
「これをお返しします。ありがとうございます。おかげで助かりました」
「よかった」と少年は微笑んだ。「なんであんなところに?」
「それはですね、私は今から数時間前にこの大地に召喚されました。どこそこに行った方が良いというあてもなく、この氷の大地を彷徨っていました。そうしているうちに、あの恐ろしいブリザートが発生して、私の体を冷凍し、体にあたる氷礫によって、少しずつ体力が削り取られていったのです。体中の感覚がなくなり、もうだめだ! と思ったら、この家を見つけて……門を開けようとしたところ、鍵がかかっていたのか開かなかったので、始めはこじ開けようとしました。ですが、長い間ブリザードにさらされ、あの自然の悪魔に生気をすっかり奪われていたので、十分な力を出すことができず、こじ開けることができませんでした。そこで、必死になって建物の中に誰かがいることを祈って、残りの力を振り絞って扉をたたいたり、叫んでいたりしていたのです。
どうやら、僕はそのおかげで助かったようですね! ありがとうございます。恩人です。どうやら、あなたはマスターと呼ばれる存在のようですね。そこの彼らもサーヴァントのようですね。ありがとうございます。助かりました」
「ならば答えろ」とランサーは槍を手元に呼び出し、厳しい調子で言った。「きさまが味方なのか、それとも敵なのかを。善か? 悪か? もし後者ならば、その助けた命ここで散ると思え」
「そうですね。僕は善です。そう答えましょう」とそのサーヴァントはむっとした様子で答えた。「我がクラスはセイバー。真名を伝えれば、僕が善の存在、民衆の味方であるということは分かるでしょう。とくと聞け! 僕の真名は、ダルタニャン! ドレヴィル様に仕える騎士です!」
「ほう、あの三銃士ですか」とキャスターは言った。「ガスコーニュ生まれの勇敢なる青年──3人の仲間と活躍をする物語の主人公ですね」
「その通りです。あなたは?」
「私はキャスター。真名は伝えられません。氷海のキャスターとお呼びください」
「わかりました。氷海のキャスター殿! そして、そこのあなたは?」
「オレは藤丸立香。よろしく」と少年は答えた。
「ああ、こちらこそ! で、そこの──」
と彼は私を指して言った。そこにキャスターが割り入り、彼の耳元で2、3つの言葉をささやくと、ダルタニャンは頷いた。
氷海のランサーは手を指し伸ばしていった。
「私は氷海のランサー、そうお呼びください。先ほどは失礼な真似をして申し訳ありません。騎士として、リツカの身を守らなければならなかったのです」
「かまいません」とダルタニャンは彼女の手を握った。「しかし、いささか女性が騎士とは妙な感覚ですね。僕としては、婦人は戦うべき存在ではないと考えているのですが──」
セイバーは少し顔をしかめた。というのも、ランサーの、彼の手を握る力が強くなって、殆ど握りつぶそうといった様子であったからだ。また、彼女の表情は憤怒に染まっていた。彼女は言った。
「女性だから何です? 私を侮辱なさるな。騎士に、強さには性別など関係ありません。何だったら、ここで切りあいましょうか? あなたの方が、私よりも弱いと証明して差し上げましょう」
「ランサー!」と藤丸立香は叫んだ。
しかし、彼の言葉でも、彼女は止まることは無かった。彼女は言った。
「申し訳ありません。リツカ、私にはどうしれも譲れないことがあります。それは、私が女性だと馬鹿にすることです。私が騎士をやっているということを、あざ笑うような人間には容赦できないのです」
「どうやら、琴線に触れてしまったようですね」とキャスターは言った。「彼女の怒りはそうそう収まりそうにはありませんし……そうですね、戦力を把握するのにもちょうどいい。セイバー、彼女と決闘をしてみてはどうです?」
「わかりました」とセイバーは頷いた。「一つ。僕は侮辱するつもりはありませんでした。ですが、ここで謝罪してもあなたは簡単には引き下がらないでしょう。あなたの怒りは収まらないでしょう。ここは、キャスターの言う通りにしてみてはどうでしょう? すなわち、決闘を行い、納得のいく結果にするのです」
「いいでしょう」と彼女は彼の手を振り払った。「武器を構えなさい、セイバー! ダルタニャン!」
「二人とも──」と藤丸少年は焦った様子で言った。
「止る必要はありませんよ。むしろ無粋でしょう」
とキャスターは言った。それから、彼を安全と思える位置まで移動させると、両者の間に立って言った。二人の騎士は、お互い武器を手にし、数十歩の間隔をあけて構えていた。
「立会人は、この私が勤めましょう。殺しと、宝具の使用は禁じます。どちらかが先に一撃を与えた方の勝利としましょう。それでよろしいですね?」
「いいでしょう」と二人は同時に応えた。
「それでは、お互い正々堂々と戦うように。──では、はじめ!」
彼の合図が終わると同時に、二人の騎士は正面に飛び出した。その様子はまさに電光石火といった具合であり、勢いは烈火のごとくであった。二人は槍とサーベルをぶつけ合った。彼らの様子を観察していると、二人は全く違う戦い方をしているのが分かった。
ランサーは、慎重かつ攻撃的な性格のようで、確実な一撃を与えられるまではけん制や防御を行い、ここだと思うとすかさず、強烈な攻撃へと移っていた。セイバーは、大胆かつ慎重な性格で、彼は相手の周りを素早く移動し、一撃を放ったらすかさず離脱し、再び一撃を与えるという、ヒットアウェイの戦い方をしていた。どちらも、素晴らしい技量の持ち主であり、剣の才能があるということが分かった。
この騎士たちは互角であったが、やがてランサーが、セイバーの剣を振り払うと、一撃を与えた。こうして、決闘はランサーの勝利という結果で終了した。
「いや、なかなかに強い」とセイバーは言った。「そして、申し訳ありません。ランサー。あなたはまさしく騎士です。勇敢なる騎士です。そうでした、僕は忘れていました。女性だからといって、か弱い存在というわけではないということを。あなたは強い!」
「いえ、こちらこそ」とランサーは答えた。「大人気ありませんでした。あなたは騎士です。まことに正直者の騎士です。あなたこそ、なかなかの強さでした」
こうして二人は和解したのだった。藤丸少年は安心したようにため息を吐いていた。それから、彼らはもうすぐ日暮れ時になるので、新たなる友人と共に拠点へと戻った。
「そうだ」と少年は言った。
「ダルタニャン、よろしく!」
「ええ、こちらこそ。僕の力が必要ならば、いつでも命じてください。我が主はトレヴィル様であり、王国ですが、この場ではあなたの指示を聞きましょう」
セイバーには真名を隠すような理由は特にないので、明かします。
次回は来週の土日に投稿します。
次回予告!
【氷礫のバーサーカー】