亜種特異点 架空氷丘幻想 アイスエイジに関する記録 作:天城黒猫
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セイバー・ダルタニャンと藤丸立香少達とが出会ったその後、勇敢なる銃士の体力もいいようで、我々は新たなる仲間と共にこの砦の探索を続けることにした。かなり長い間砦の中を歩いたが、今までと同じように、長い廊下に、一定の間隔で設置されている見張り台や武器庫といった施設が連続するだけであり、これといった変化、変わったところは見られなかった。
「そろそろ戻ろう」
と藤丸少年は言った。確かに、彼の言う通り、これ以上進むと日が暮れるので、日が暮れる前に拠点となっている部分に戻ることにした。行きのときは、少しばかり慎重に進んだため、ゆっくりとした足取りだったが、行きの時に脅威となるようなものは見られなかったから、帰りは大胆に、少し急いで移動したため、なんとか日が完全に暮れる前には拠点にたどり着いた。
氷海のシールダーは彼らが戻ってくると、増えた人物に驚いたものの、セイバーが自己紹介を終えると、夕食の支度を始めた。残った我々は、テーブルを囲んで会話を始めた。その内容は、次のようなものだった。
「結局、砦には何もなかったなあ」と藤丸少年は言った。
「それでよいではありませんか」とキャスターは返答した。
「砦に何もないということが分かったのです。それだけでも、立派な収穫ですよ。つまり、この砦のどこかに敵が潜んでいるというようなことはない、ということが分かったのですから」
「そうですね」とランサーは言った。彼女はセイバーを少しだけ見て、言った。
「そこのキャスターの言う通りです。それに、ダルタニャンという立派な騎士を助け、我々の仲間にすることもできたのです。これを考えると、かなりの成果と言えるでしょう」
こう言う彼女の様子には、一種の尊敬のような感情がほんの僅かばかり見られた。これは本当に僅かなものであり、君と一緒に過ごしたことによって得られた、人を見る目が無ければ見逃してしまうところであった。
「そうですね。改めてお礼を」とダルタニャンは言った。
「あなた方がいなければ、僕はあのまま凍死していたことでしょう。この特異点に呼ばれたからには、何かしらの役割があって当然なのです。ですが、それを遂行できないまま死にゆくというのは、騎士として、また3人の勇敢なる仲間やトレヴィル様の顔に泥を塗ると同然です。我が剣が誰かの助けになることができるというのならば、僕は喜んで力を貸しましょう。リツカ、よろしくお願いします。
そして、ランサーも。あの場ではお互い全力ではなかったとはいえど、僕に勝利するほどに強く、──武器を打ち合えば分かります──とても勇敢で、どのような敵であろうとも物怖じせず突撃し、また己の心に背かない騎士であるということが分かります。
移動する最中に聞いた魔神柱でしたか。それを倒すためならば、僕はこの剣を喜んで振るいましょう」
夕食の用意が整い、テーブルにはいくつかの食事が並べられた。食事はとりとめのない話をしながらすすめられた。氷海のランサーとセイバーとは、同じ騎士として気が合うようで、騎士道などについて、お互い楽し気に会話をしていた。彼らの間に、藤丸少年が入り、時折感心したり、感想をもらしたりして、騎士たちを一層盛り上げていた。キャスターとシールダーもまた気が合うようで、今日の気候のことについて話し合っていた。彼らの会話を聞くに、明日になったら吹雪はすっかり晴れる可能性が高いということだった。
夕食が済むと、解散となり各々解散となった。そのとき、氷海のキャスターが、藤丸少年を引き留めて二人きりで話したいということを言った。そのさい、二人の騎士は彼についていこうと言ったが、少年自身の希望によってそれは引き留められた。二人の男は、氷海のキャスターの工房へと移動した。その際、キャスターが私に目配せをし、「あなたも良ければどうぞ。いえ、是非とも来ていただいた方が、何かとありがたいでしょうから」と少年に聞こえないような声で言ったので、私もついていくことにした。
キャスターの工房は、オートマタを造り出すための器具や材料以外は、いたって普通な部屋であり、必要最低限の家具に、この砦からできる限りかき集めたという、本が机の杖に積み上げられているのみであった。キャスターは、少年を椅子に座らせると、彼もその正面に座ると話し出した。
「その椅子に座ってくれたまえ……さて、君がこの特異点に来てから3日目ですね。一日目は、ランサーを始めに、私たちと出会い、二日目はライダーと出会い、三日目はセイバーと出会い、彼を仲間とした。実に驚くべき戦果です。この広大なる大陸で、各地に散り散りになったサーヴァントたちと出会うというのは、実はかなり難しいものなのですよ。砂漠の中で、一匹のトカゲを探すようなものです。調子よく、少しずつですが、君は確実に前に進んでいます。ですが、はっきり言いましょう。この特異点は攻略する必要はありません。
この特異点の年代は、20世紀より前の時代──正確な年代こそはわかりませんが、人間が北極大陸を発見しておらず、まだ踏み入っていない時代です。そして、この大陸では人間の信仰や思いも存在せず、人々が関わることもありません。故に、この大陸には人の理など存在せず、また同時に人の理を崩すこともできません。当然でしょう? 元から存在しないものを弄ることはできないのですから。魔神柱もまた、それは理解しています。その魔神の名こそはわかりませんでしたが、彼はアーチャーや怪物との戦いから撤退するとき、こう言っていました。
『傷の完全修復に要する時間──10日。これ以上の戦闘、困難。戦闘続行、相打ちの可能性。目的達成不可能。撤退を行う。撤退開始……特異点の完全消滅まで13日。人理有らずの箇所の特異点化の継続非常に困難。しかし、我が願望は必ず達成せねばならない。焦る必要無し……』
魔神柱の話のほかに、私は今までにこの特異点を独自に調査してきました。その結果、この特異点は時間が経てば、自然消滅することが分かりました。どうやら、魔神柱はこの大地を無理やり特異点化しているようです。完全なる零から、
さて、ここまでの話を聞けばわかると思います。あなたが、この特異点で魔神柱を倒す必要はありません。ただ、時を待てばよいのです。魔神柱も、それと同時にこの世界から消滅するでしょう。どうやら、神殿から逃げ出した時点で、かなり弱っていたようですからね。再生しても、完全なる復活は叶わないでしょう。待てばいいのです。ただ、待てばよいのです。戦う必要もありません。どうしますか? 藤丸立香」
こうした氷海のキャスターの言葉に、彼は真っすぐな目で答えた。
「まずは、魔神柱を探そうと思う。何をしようとしているのか、聞きたい」
「そうですか。それならば、私は何も言いません。どうやら、真実を突き止める道を選んだようですね。いいでしょう、ならば私はそのために、できるだけのことはしましょう。……私の話はここまでです。もう夜も遅いですし、ランサーも心配していることでしょう。部屋に戻るといいでしょう」
工房から少年が立ち去ると、キャスターは私の方を振り向いて、言った。
「さて、これからどうなることでしょうかね。あなたは、あの少年についてどう思いますか?」
「そうですね」と私は答えた。
「彼を見ていると、ホームズを思い出します。いえ、彼に似ているというわけではないですよ。彼はホームズのような天才の部類ではなく、どこにでもいる凡人の部類しょう。ですが、私は彼の目に、強い意志がこもっているのが分かります。その光は、ホームズが事件を目の前にしたときに放つ類のものと同じ種類のものです。きっと、彼は今までに必死になって、決して挫けることなく、いくつもの旅を行ってきたのでしょう。きっと、この特異点も同じように乗り越えることでしょう」
「そうですか。では、もう一つ。氷海のランサーについて、どう思いますか?」
この質問は、私にとって想定外のことではあったものの、私は彼女から感じ取ったことを挙げていった。
「彼女はまさしく騎士なのでしょう。藤丸少年との契約を守るために、常に彼の周りを警戒しています。あなた方と一緒にいるときもね。その実力もまた、槍裁きならばホームズよりも上と言えるでしょう。あの槍は、つるされた豚どころか、熊ですらも簡単に貫くでしょう。欠点と言えば、女性、またはそれを指し示すような言葉を聞くと、彼女は怒り出すというぐらいですね。常に強さを求め、約束を守り、正義を持つ、素晴らしい騎士です」
「そうですか。なるほど、ありがとうございます。ワトソンさんも、そろそろ部屋に戻ったらよろしいでしょう。誰しもが完全に寝静まる時間ですからね。今日の疲労を回復なさるとよろしい」
「そうですね。では、失礼させていただきます」
と私は彼の部屋から出て、眠りについた。
朝になり、砦の窓から外を見るとブリザードは完全に収まっていた。しかし、今までにこの砦や氷礫のライダー、そして竜巻以外に何もなく、果てまで広がるこの氷床に大きな変化が発生していた。その変化というのは、砦の前に大きな森が広がっているというものだ。そのことは、すぐに騒ぎが広まり、シールダー、キャスター、ランサー、セイバー、そして藤丸少年たちは、砦の見張り台に上って森を観察した。その森は、どうやら竜巻を取り囲んでいるようで、──竜巻の周りには木々は生えておらず──そこを中心に広がっていた。森の木々は背が高く、かなり密集しているようで、上から森の中がどのようになっているのかを見下ろすことはできなかった。おそらく、森の中に入っても、木の枝や葉に邪魔されて、空を見上げることはできないだろう。
こうした異常事態に、我々は
「あの急に現れた森に立ち入るのは危険なので、近寄らないでおこう」という結論を出した。その話に反対するものは誰一人いなかった。また、氷海のシールダーの、
「この砦は頑丈であります。ゆえに、敵と戦うことはないでありましょう」という言葉がその決定の後押しをした。ダルタニャンが、森の見張りを申し出たので、我々は朝食を取ろうと下に降りようとしたときだった。森から、次のような叫びが聞こえてきた。その声は、人の神経を揺さぶるような、なんともおぞましい、悪魔的な声であり、ここから離れた場所に声の主はいるようで、小さく、はっきりしないものであった。
「ぎゃははハハハハハハ……! 人間は斧でぶっ叩けば死ぬ……! ぎゃはははハハハハハ……! 恐怖しろ……怯えろ……泣きわめけ……どいつもこいつも……死ぬ……病に侵され……獣に噛み千切られ……殺人鬼に殺され……! ぎゃははははハハハハ……!」
こうした声は、もちろん私だけではなく、ほかの人々にもしっかりと聞こえていた。彼らは、しばらくの間森に変化がないかを見張っていた。すると、その森から一人の少女が飛び出てきた。その少女はかなり幼く、白くて丸い帽子をかぶっており、その破れた箇所から黄色い髪が見えていた。また、上着は部屋着とか、パジャマのような簡単なものであり、ズボンはショートパンツであり、黄色い星模様のタイツを履いていた。そして、その手には彼女の伸長を超える程の、巨大な斧を持っており、その斧の刃は肉を簡単に切り裂くようなものであった。彼女は、私たちを見上げると、歌うような声で言った。彼女の目は吊り上がっており、獣のように鋭かった。
「ぎゃはははハハハハ! 斧でぶった叩かれば、皆死ぬ! 何度も、何度も叩けば死ぬ、あいつもこいつも……氷礫のバーサーカーの斧でぶっ叩かれれば死ぬ! 森の中に立ち入れば、獣の牙の餌食になる!」
彼女は言い終わると、森の中に消えていった。我々は、彼女を追うことはせず、ダルタニャンを見張りに残したまま、朝食を取るために砦の中に入った。食事中、シールダーは次のようなことを言った。
「あの少女は氷礫のバーサーカーと名乗っておりましたのう。では、あの森はおそらくやつの宝具でありましょうな。……よろしいですか。あの森に立ち入ってはなりませんぞ。くれぐれものう。この砦は安全ですじゃ。この砦にいれば、身の安全は守られますじゃ。今日はどうされますかのう? ふむ、氷礫のライダーを訪ねるのですな。よろしいであります。儂はこの砦に残りますじゃ」
「私も、工房でやることがあるので砦に残ります。」とキャスターは言った。
ダルタニャンは、森の見張りを行わなければならないため、砦に残るので、必然的に氷礫のライダーの元へと向かうのは、藤丸少年、氷海のランサー、そして私となった。