もし守護輝士の片割れがレギアスの弟子だったら 作:草賀魔裟斗
( ´△`)どうしよ…
ゼノ先輩の助けもありアフィンとアリーシュは大きな怪我もなくアークスシップに無事帰還できた
ただナベリウスを警戒していなかったこともあり、アークスがコフィーちゃんに頼まれた私と嫌な予感を感じナベリウスに来てくれたゼノ先輩だけだったためすべての試験生を守ることはできなかった…そのためかダーカーに襲撃された試験生の70%が命を失ってしまった…
アフィンはアークスになれるか心配していたがその必要はなさそうだ
さっきも言ったように他の試験生はほとんど全滅…生きて帰っただけでも余程の実力か幸運の持ち主だ
キャンプシップ
「…なるほど…じゃ先輩の嫌な予感は的中した訳ですね…」
ベジタブルレーションを食べながら聞いた
野菜の生臭さこそあまりないが全体的に食感は粘土だ
「そういうことになるな…もっとも、上層部からダーカーのいない惑星と呼ばれ終業試験の実戦試験の舞台になっているナベリウスにダーカーが出たとなると…少し騒ぎになるかもな…」
「師匠は…なんて?」
「知らん…がレギアスのおっさんも想定外だったんじゃねぇかな?…何よりも弟子を大切にする人だ、すぐに実戦させるような人ではねぇしな」
先輩の言うとおりだ、私もレスターンも実戦はなかなかさせて貰えなかった…今なら理由は解るけど昔は理不尽だ、って怒ってた記憶がある
そんな師匠だ、いきなり終業試験でダーカーと本格的に戦闘!ということはしないだろ
「そうですね…」
ふとゼノ先輩の武装を見た
ハンター特有の大剣(ソード)
ゼノ先輩のフォトンとまるであっていない
「まだ、ハンターなんですか?」
「まぁな…守れねぇだろ剣でないと」
「ですね…では私はこれで、エコーさんによろしく伝えてください」
レーションも食べ終わりキャンプシップから出ようとした
するとゼノ先輩に引き留められた
洒落や冗談の類いならスルーしようと思ったがゼノ先輩の顔は真剣だった
私は歩を止めてゼノ先輩の方をみた
「どうしたんです?ナンパなら止めておいた方がいいですよ?私の愛は重いから」
「違う…どちらかと言うとお前さんがナンパした方だ…あの白髪の美人…お前さんとフィリアに一任すると上が決めたらしい」
「!?私とフィリアさんにですか!?なぜ…」
こういう場合は上層部でないにしろアークスの組織として保護し、親族がアークスシップ内に居ないか確認するのが普通だ
なのにそれを個人に投げるなんて…
「アークスは…あの子を保護しない…と?」
「ああ…何故かは知らん…けど上層部はその子とは関わらないらしい」
「…そう…ですか…」
「…」
暫く沈黙がキャンプシップを包んだ
上層部はなにかを隠している…
あの子はいったい…?
「…そうだな…気になることはあるが…ともかく意識は無事に回復したらしい…旗船に戻ったら会ってやれ」
「…はい」
アークスシップ
真面目な事ばっか考えていたが…フィリアさんか…
師匠も言ってた通り半年近く健康診断をしていない
学校には通っていないが遅刻した生徒の気持ちがよく解るよ…行きにくい…
それとフィリアさんが苦手な理由はもうひとつあって…
彼女は…私の右眼…冥界の眼に興味津々なの…
前にも話したとは思うけど
私は燃えたアークスシップ産まれだ
そのときに出会った死神に
これより先に生きる(行く)ための通行料として右目を失い顔の右半分を醜い火傷跡が覆った
でもそれだけじゃなかった…
始めに異変を感じたのは師匠がレスターンの世話も見始めた位
沈黙の霧に抜剣が写った
その抜剣はレスターンが練習に使っていた
カタナNTという市販の物だ
私の右目は沈黙の霧しか写さない
所謂、失明というやつだ
ただそこに抜剣が写ったのだ
初めは見間違いだと思ったけどそれは見間違いというにはあまりにも鮮明だった
その抜剣は程なくして折れて使い物でなくなった
今度はとあるアークスが見えるようになった
そのアークスとは接点はなかったけど
遠目でよく会う人だった
程なくしてその人はその近くで起こったダーカーの市街区侵入のさいに不慮の事故で亡くなったと聞いた…
ここまで聞いて解る通り、私の右目は冥界に行くべき物を見ることができる
そしてその右目で捉えられた物は必ず冥界に連れていかれる…
例外なくだ…恐らくこれからもっと沢山の物が右目に写るだろう…
右目に物が写る度に私は…
私を生かしたあの死神を憎むようになった…
こんな運命背負いたくもないとも思ったが…私にはお似合いなのかもしれない
この重い物の死を可視化する呪いは母を殺した私への罰なんだろう
ならば背負おう…私の罪だ
そんなことを考えているとメディカルセンターについた
「ロンドさん!」
「や。やぁフィリアさん…」
気まずい物を想像していたがフィリアさんは私の手を握る…ってあれ?
「ロンドさん!やっと私に目を見せる気になってくれたんですね…!」
「違います!例の子の様子を見に来たんです!」
「そうですよね…はぁ」
ため息…!?この人今、ため息ついたの!?
「あぁ、と…ここからは真面目なお話なんですが…ここに来てから何も喋らないんです…この子…しきりに誰か探してたし…貴方が来てくれて助かりました」
その子は私とフィリアさんの会話をまるではじめて動物をみる子供のように
淀みのない、ただ疑問の眼で見ていた
「…改めて…あー、私は…」
「…ロンド…ロンド・レットフィード…」
え?なんでこの子は…私の名前を…?
「え…名前教えたんですか?…あなたが名字まで?」
「そんなわけないですよ…私が拾ったときは意識も無かったんですよ?それに…」
私の名字は呪われている、母の姓だ…そんなに好き好んで名乗る訳がない
それはフィリアさんも承知しているはず
「頭の中に……聞こえてきた……私はマトイ」
そう大きな目の少女はいった
フィリアさんはすぐにデータと照合しはじめたが首を傾げた
これは照合できなかった反応だ
「マトイ…えーっとね…故あって私、名字名乗ってないの…できればレットフィードは忘れてほしいな…」
「……うん」
マトイはすぐに了承してくれた…
物わかりのいい子で良かった…
「マトイちゃん…あなた、どこから来たのかしら…どうしてあの星にいたの?」
フィリアさんが少し食い気味に聞いた
「…う…」
マトイは私の後ろに隠れる
やめて!私もこの人苦手だから解るけど
だからって壁にするのはやめて!
「あ、あぁ…ごめんなさい…怖がらせちゃったかしら…他意はないのよ」
優しく言い聞かせるようにフィリアさんが伝えるけどマトイはすっかり怯えてしまった
私の後ろから離れそうにもない
「…ロンドさん、この子に心当たりとかは…」
「あればここには来てませんよ」
「ですよね…それがこの子のためでもあるはず…ロンドさんのそういう判断は間違った試しがないですもんね…それに刷り込みかしら…ロンドに妙になついているというか…」
「…そうかもですね…放って置くわけにもいきませんし…私はアークスの活動をしないといずれ首が飛ぶんで…その…フィリアさんにマトイを任せてもいいですか?」
「心配はいりません…元よりそのつもりですよ…なにかあれば逐次報告します」
「ありがとうございます…私はナベリウスのほうへもう一度行ってみます…何か解るかもしれませんし…」
「そうですね…お願いします」
私がナベリウスに行こうとゲートに向かおうとするとマトイが呼び止めた
今日はやけに呼び止められる日だ…
「なんか…怖い気がする…気を付けて」
ナベリウス
「…アフィンくん…君まで着いてくること無かったのに…」
私がキャンプシップに乗るとアフィンくんがやって来た
俺もつれていけと聞かなかったのでやむを得ず連れて行くことにした
「先輩の技をみようと思って…どんな風に戦うのか…なんで相棒があんなに貴方に固執するのか…色々気になって」
「…」
全く最近のやつらは…真面目なのか馬鹿なのか…
「着いてくるのは一向に構わないわ、制止しても着いてくるでしょう…でもダーカーが出た以上、私は貴方の命の面倒までは見れないわ、自分の身は自分で守りなさい…それに私がへま踏んでも庇おうとするのもなしよ…それで死んだら…ただの阿保よ…」
アフィンは首を傾げた
まぁ、そりゃそうだ、変な事言った
「まぁ…なんだ…私だって先輩の端くれよ、自分の身は自分で守れるってこと!じゃないと他人なんて守れないでしょ?」
そう言いアフィンくんの了承の頷きを見てワープホールへと飛び込んだ
杞憂だったかもしれない
アフィンくんにもしものことがあったら
アリーシュが傷つくと思って忠告したけど
あんなイレギュラーにも対応できて
ダーカーとの戦闘も難なくこなせたアフィンくんにとってはここはまだ温すぎたかな…
「…?」
これは…
ナベリウスには沢山の花がある
その花が不自然に結ばれていた
これは花冠というやつだ
ふとみるとあの仮面がいた
「…」
仮面のせいで顔は見えないが
一心不乱に花冠をつくっている
「…花冠たぁ…またメルヘンだねぇ…やっぱ女の子か」
少し意地悪げに言ってみた
仮面は…仮面の中は知らないが表情を全く変えずこちらを向いた
「…お前を殺す…!」
恥じらいからではなく冗談の類いでもない
本気の殺意…
「ロンドさん…これは…人間…?」
「違うわ…多分ね」
ニレンアギトを構えた
酸化した鉄の粉が振り撒かれる
「来るなら来なさい…またニレンアギトに錆が増えそうだ」
「そんなボロの刀で何ができる」
「あんたを錆にできるわね」
しばしにらみ合う…と暫くするとまた、壁が現れる
「気まぐれに任務に来てみるものだな…また、会ったな、仮面野郎」
まーたこいつらだよ、仮面も私もこいつらに邪魔されるなぁ…
「また…邪魔か…貴様にはいずれ世話になる…貴様でなければ切り捨てているが…ゲッテムハルト…貴様の名に免じてここは退くとする…レットフィード」
こいつも私の名を…しかも名字…
これはマトイと同じ頭に響く現象か…
そんな事を考えていると目の前に一輪の花が飛んで来た
「彼女が好きな花だ…渡してみるといい…少しの間だ…噛み締めろ」
仮面は言い終わると闇となり消えた
壁が叫んで制止したけど仮面は止まらなかった
「おい!お前!」
「なんだよ!」
「お前じゃねぇよ!」
壁とアフィンくんが言い争いに近いことをしている…
いやいやアフィンくん…さっきのは私に向けてだよ…どう考えても
「何?あいつの正体なら前にも言った筈よ…私には解らないの」
「しらばっくれても良いことはねぇぞ?…お前はいくらなんでも知りすぎだ 」
「…確かにね…ただ本当に何も知らないわ…私は約束は破るけど嘘はつかないわよ…ゲッテムハルトさん」
少し殺意を含んで言った
これで諦めないのなら少々の実力行使も視野にいれなければ…
「…この様子だと本当に知らねぇみてぇだな…」
ゲッテムハルトは品定めするように私を見た
気持ち悪い目線だ…冷たくもない熱くもない…カメラにも似た機械的に私の実力を図る目線…
「…雰囲気はイイ感じだが…あめぇ…砂糖クセぇ…てめえは…まだ絶望をしらねぇ…いや絶望を知って塞ぎ混んだか?どちらにしても面白くねぇ」
「そりゃどうも…私は甘党なのよ…」
「チッ途端に面白くなくなった…おい!帰るぞシーナ!とろとろすんな!」
セリフから察するにこいつは亭主関白タイプか?
うっわ!面倒くさ!変にプライド高いよ?絶対!
「…解りました…ではロンド様、アフィンさん…失礼します」
女の方も女の方で面倒くせぇーな
独断と偏見だけど絶対依存するタイプだよ~様付けなんてしちゃってさ~
まぁ類は友を呼ぶとも言うしな…いいんじゃないかな?お似合いだよ
「なんなんだよ…あいつら」
「わからないわ…ただいい奴らじゃない事は確かよ…アフィンくん、君も巻き込んでしまってごめんね…今日は私は、あと少ししたら帰還するから、アフィンくんは先に帰還してて…アリーシュによろしくー」
アフィンくんは頷いてからアークスシップにかえって行った
とりあえず、アフィンくんに帰還を勧めて私は少し花とナベリウスの空気の香りを吸い込んだ
「砂糖臭い…か…あながち間違ってないわね…」
小さい頃なのに未だに残る母にニレンアギトを突き立てた感触
少し固く柔軟性のある皮膚を抜けると柔らかな臓器がなんの抵抗もなくまるで歓迎するかのように刃を迎える
それと同時にズブリと言う音、血液の滴る湿った音
血の生臭い匂い…僅かに香る吐き気をもようす死臭と思われる臭い
ニレンアギトを伝い手に付く赤いお湯
半ば充血した目…乾いた唇が動く
「許さない」
私は思考を振り払うように頭を振った
手が震える…足が馬鹿になって立っていられなくなる
過呼吸になって浅い息を貪るように繰り返す…私はなんで…母を…殺したんだ?
考えれば考えるほど怖かった…死ぬほど怖かった…意味もなく殺したかもしれないんだ、幼き頃だ何を考えていたかも解らない…解らないからこそ恐怖がそこに産まれた
やっと過呼吸も戻り思考の堂々巡りも止めることができた
おもいっきり深呼吸をした
鼻腔に花と植物の香りが入ってきた
…生きなくてはいけない…私は私が殺した母の分も
火傷と右目に誓った誓いを思いだし覚悟を決める
私はこれからも何があろうと生き続ける
死すべき者を右目で見て
その運命も変えることはできない…無力な私だが生きていることが罰なんだ
受け止めないと…死ねない
この回ではマトイの登場とロンドの覚悟と…
いろいろ書きましたねぇ…
ともかく一度ここでナベリウスでの話は終了かな…?