春のうららかな陽気に包まれ、今日も博麗神社には多くの妖怪で賑わっていた。
「今年も桜が綺麗だぜ。はーっ、眠くなるなぁ…」
大きなあくびをしながら、盃の酒を飲み干したのは白黒の魔女である、霧雨魔理沙だった。
「まったくよね、ほんと。ポカポカして眠くなっちゃうわー。」
桜の木にもたれかかり、目をこするのは紅白の巫女である博麗霊夢だった。
「しっかし、ここ数ヶ月、こうも異変がないとなんだか逆に怖くなってくるぜ。暇すぎて死にそうだ。何か起こらないかなあ。」
空になった盃に酒を継ぎ足し、一気に飲み干した魔理沙が言った。
「異変が起こったらあたいに任せて!!」
「もうっ、チルノちゃんってば!そんなの危ないよ。」
ふふふっと笑いながら、ほろ酔いの妖精もいる。
「なに言ってんの。その後始末をするの誰だと思ってんの。異変なんて無いに越したことないのよ。あんたら、飲みすぎよ。ちゃんと後片付けして帰りなさいよね。」
ため息をつきながら、境内の方に向かった霊夢の先には……
「あら、霊夢。飲んでる?」
妖怪の大賢者であり、この幻想郷の結界を管理している八雲 紫がひっそりと呑んでいた。
「なんだあんたいたのね。」
「いたのねなんてひどいっ!宴会だもの。こない理由は無いじゃない?」
そうね、と霊夢は微笑んだ。
「それにしても、ほんと異変起こらないわねえ…」
満開に咲き乱れている桜にうっとりしながら紫が言った。
すると霊夢が顔色をかえた。
「白々しいわよ、紫。」
にこにこ笑う紫に、霊夢は真剣な眼差しを向けた。
「そんな怖い顔しちゃってもう。可愛い顔が台無しよ?」
おどけたように笑う紫に霊夢は苛立ちさえ覚えた。
「ふざけるのはやめて。ここ最近、幻想郷の結界がおかしいんでしょ。」
確信しているかのように、霊夢は言った。
「あらあら、私が仕事サボってるって言いたいの?ちゃんと結界の管理くらいしてるわよ。特にこれと言った異常は無いわよ?毎日、結界と付き合ってる私が言うんだから大丈夫よ。」
「もう、こんな真面目な話してると冷めちゃうじゃない。」
「あたしは博麗の巫女よ?幻想郷の結界の事情がわからないほどポンコツじゃないわ。結界がおかしいのは明らかよ。」
ムッとして霊夢が言った。
「おかしいって、どうおかしいの?」
今まで、おちゃらけてた紫ではなく、真っ直ぐに霊夢を見つめていた。
「おかしいというか……。結界の力が弱まって来ている気がするの。もしそうだとしたら、外の世界から幻想郷に来るモノが増えるわ。良いモノでも悪いモノでもね。人里に影響が出る前になんとかしようと思っているのだけど…」
霊夢は視線が少し下にさがり、次の言葉まで少し間があった。
「いないのよ。どこにも。外からのモノが。」