幻想郷に雨が降り始めて、2週間が経った。
こうも雨ばかりの日々がこう続くと、川の水は日に日にかさを増し、氾濫のおそれも充分にあった。
「こうも雨ばっかりだと、気が滅入りそうだわ。」
博麗神社で、魔理沙が持ってきたアリスの焼いたクッキーを食べながら霊夢が言った。
「ほんとだぜ。久しくお天道様と顔を合わせてないからなあ。」
雨のやまない空を見上げながら魔理沙が言った。
「洗濯物も乾かないし、ほんと困るわね。」
「そうそう、山のきのこさん達にもよくないからはやく晴れてほしいぜ。」
二人のクッキーに伸びる手は止まることを知らなかった。
その頃、優憐の家は生活の危機に見舞われていた。
「うわあ、どうしよ。」
天井からぼたぼたと雨漏りが止まらない部屋に優憐はすっかりまいっていた。
「こんな状態じゃ、いつもの生活なんか絶対できないよお。」
バケツを置いても、どれだけ床を拭いても収まらない雨漏りに困りきった優憐は頭を抱えた。
「うううん。屋根を治してもらわないといけないよね。でも、今から人里に行くのには雨が…。」
上半身を窓から乗り出し、空を見上げた。
「仕方ない、カッパ着ていったら大丈夫かな。」
壁にかけてあるカッパに手を伸ばし、優憐は家を出た。
「ひどい雨だなあ。」
空はどす黒く、一向に止みそうにない雨の中を優憐は飛んでいた。
大粒の雨がざあざあと降っている中で飛ぶのは酷なことだった。
「こんなに降って、妖怪の山とか大丈夫なのかな。川も氾濫するだろうし、人里の影響も気になるな。」
異常気象とも言える今の状況に優憐は不安を抱いていた。
しばらく飛んでいると、後から優憐を呼ぶ声がした。
「あややややっ!優憐さん、優憐さんじゃないですか!!」
後から優憐を呼んでいたのは文々。新聞の射命丸 文だった。
「射命丸さん! こんな雨の中どうされたんですか?」
「それはこっちのセリフですよ! 私は今から人里に避難を呼びかけにいってきます。」
「避難?なにかあったんですか?」
射命丸は今来た方向を見ながら、険しい顔をした。
「この大雨のせいで、幻想郷全体に被害が出そうなんですよね。川の氾濫はもちろん、土砂崩れだって有り得ます。そうなったら、きっと人里にもひどい被害が出ます。そうなる前に避難を呼びかけるよう神奈子さんに言われまして。」
困ったように空を見上げながら射命丸は言った。
「紅魔の吸血鬼さんの能力によると、このままだと人里に死者すら出かねるということなので。」
「そんなひどいことになってたなんて。これはなにかの異変ですか?」
優憐の質問に、射命丸は少し口苦そうに言った。
「守矢神社の神奈子さんの能力はご存知ですよね?」
「はい、多少の風雨くらいならどうとでもなると聞いてたのですが…。」
いっそう激しくなる雨に打ち付けられながら優憐が言った。
「そうなんですが、これはまた話が違うそうなんです。神奈子さんは、なにか強い魔力によって引き起こされた異常気象じゃないかと言ってまして。」
射命丸の言葉に優憐は心は大きく揺れた。