「ーーと、いうことなのよ。」
春の宴会で紫と話したこと、結界のことはずっと気になっていたこと、全てを魔理沙に話した。
「なるほどな。でも、あのスキマ妖怪はなんとも言わないんだろ。」
「ええ、そうね。」
少しの間、視線を下げていた魔理沙はゆっくりと顔を上げた。
「あいつ嘘ついてるんじゃないか?」
思いもよらなかった魔理沙の言葉に霊夢は戸惑った。
「紫が?」
「そうだ。幻想郷の、ましてや結界の異変なんて博麗の巫女に伝えないわけないだろ。」
「そ、そうね……。でも、なんで?」
「私が思うに、何か隠してるんじゃないか? 私や慧音でも気づくんだ。絶対なにかある。」
うんうん、と縦に首を振る魔理沙を見て、霊夢は確信した。
ー魔理沙の言う通りね。春の時だって、明らかに逃げたような感じだったし…。でも、隠しているのなら一体なにを隠してるの……。ー
「嘘つき呼ばわりなんて、ひどいわよ。」
スキマが開き、紫達の姿が現れた。
「「紫っ!」」
霊夢と魔理沙が同時に立ち上がった。
「えらく名推理じゃない。白黒の魔法使いさんっ。」
紫は魔理沙に近づき、ぽんと頭をたたいた。
すぐに魔理沙は手をはたき、紫と向き合う。
「貴様っ!紫様にっ!」
藍が魔理沙に突っかかろうとしたのを、紫と橙が止めた。
「名推理ってことは、魔理沙の言う通りってことなの?紫。」
真っ直ぐに紫を見つめる霊夢の瞳は、疑念は無く、確信したようだった。
「……。そうね、もう隠し通すのは無理そうだわ。正解。貴方達の思っているままよ。」
観念したように、紫は腕をすくめた。
「やっぱり!!そうと決まれば異変解決だ!真犯人はどこにいるんだ?教えてくれ!」
魔理沙が嬉しそうに手をあげ、箒を取り出した。
「もう、なにも嘘つくこと無いじゃない。詳しく話してちょうだい。」
魔理沙をなだめながら、霊夢はその場に座った。
「貴方達が気づいている通り、幻想郷の結界の力は日に日に弱まってきているの。それにより、外からのモノが幻想郷に流れてきているわ。そして、人里にも影響している。ここまではいいわね。」
「実は、幻想郷と外の世界の間の空間に、幻想郷の"守り人"がいたのよ。」
「「"守り人"……?」」
聞いたことのない単語をゆっくり噛み砕くように霊夢と魔理沙は言った。
「ええ、私もあの空間には"冬から行っていない"から、どうなっているかはわからないけど、結界が弱まってきて、外からのモノが次々と流れ込んできているということはその"守り人"の力が弱まっている、もしくは強大な力によって、機能していない可能性が高いわ。"彼女ひとり"で、この幻想郷を守りきれていないということなの。」
話し終えた紫は、そっとその場に腰を下ろした。
「ねえ、紫……。さっきの言った"彼女ひとりで"ってどういうこと?」
霊夢の質問に、紫ははっとした。つい、喋らなくていいことまで話してしまったのだ。
「…口が滑っちゃったわね。」
「説明しなさい。紫。」
なんとも形容しがたい、霊夢の圧力に逆らうことはできず紫は重々しく口を開いた。
「……。その子は、桃山優憐というの。とても美しい子よ。幻想郷と外の世界の間の空間、つまり"無"の空間で、外から流れてくる悪いモノをひとりで退治してるのよ。ずっと前から。」
「能力を持たず、魔法を使うわけでもない、ただの人間よ。守矢の巫女とも、また話が違うと本人は言っていたわね。」
彼女のことを一通り話した紫の前には、怒りを宿らせた瞳の霊夢と魔理沙がいた。
「なんで!今まで言ってくれなかったんだぜ! ひとりで戦ってるなんて…。今すぐそいつの場所まで案内してくれ、紫。」
「魔理沙の言う通りよ。その子ひとりに任せるわけにはいかないわ。はやく連れて行きなさい!」
霊夢と魔理沙からの怒号にも、紫は表情ひとつ変えず冷静に一言告げた。
「それはだめです。」