「貴方たちを彼女のもとに連れて行くことはできません。」
ぴしゃりと言い放った紫の言葉に、一瞬空気が凍ったように感じたのはきっと氷の妖精の仕業ではないのだろう。
「どうしてだ!! その子のためにもはやく私達を連れていってくれ!!」
「その子のためにも、です。」
立ち上がり、霊夢を見るとお祓い棒を取り出していた。
「紫。もし、貴方が異変解決を邪魔するのなら、容赦しないわよ。」
霊夢の構えに、魔理沙も便乗し八卦炉を取り出した。
「…。藍。」
「はっ。」
紫が呼ぶと、藍が霊夢と魔理沙の前に立ちはだかった。
「どきなさい。あなたも邪魔をするのなら容赦ないわよ。」
霊夢はお札を取り出し、少しずつ藍に近寄っていった。
「よく考えなさい。私と魔理沙が相手、分が悪いのはそっちでしょう。」
じりじりと藍に詰め寄って行く霊夢。
「本気でいかせてもらうぜ!」
魔理沙の声を合図に、一斉に二人が藍に飛びかかった。
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「申し訳ございません。紫様…。」
10分足らずで霊夢と魔理沙は藍を倒し、紫に詰め寄った。
「さあ、はやく私達を連れて行きなさい。」
もう何を言っても変わらないであろう、強い意志をもつ二人を見た紫は観念したようにスキマを作った。
「橙。藍の手当てをお願いね。」
そう言い残し、三人はスキマへと消えていった。
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三人の行き着いた先は、なにもない、誰もいない"無"の空間だった。
しばらくすると、空を舞い、あやしげな敵と戦っている少女が目に止まった。
優憐であった。
霊夢と魔理沙は優憐を見つけ駆け寄っていった。
しかし、すでに負傷し、ぼろぼろになっていた優憐は急降下していき、地面に倒れ込んでしまった。
目がさめると、優憐の目には三人が映った。
「あ、目が覚めたか?大丈夫か?」
魔理沙は優しく、声をかけた。
いつも見ない、二人に優憐は驚きを隠せずにいた。
「あ、あいつはっ!」
痛めた身体を必死に起こし、さっきまで戦い、やりそびれた敵を探しに行こうとした。
「大丈夫よ。私と魔理沙で片付けておいたわ。」
霊夢に、横になるようにと注意され、優憐は素直に従った。
「優憐…っていうのよね。あなたのことは紫から色々聞いたわ。」
霊夢から紫に目線を外すと、申し訳なさそうに頭を下げている紫がいた。
ここで、やっと優憐は今の事態が理解できた。
「霊夢さんと、魔理沙さん…ですよね。こんなところに何の用ですか?」
霊夢と魔理沙の顔を交互に見つめながら優憐は言った。
「何の用って、お前いつもあんなのとひとりで戦ってるのか? だとしたら、かなり危険だぞ。」
「そうね。ただの人間と聞いたし、あなたひとりで手に負えることではないわ。どうして、もっと早くに私達に頼らなかったの?」
寝ていた身体を起こし、もう一度霊夢と魔理沙を見つめ直した。
「お気遣いありがとうございます。でも、私が望んで、ひとりで戦いたいと言ったんです。だから、誰にもこのことは知られたくなかったんですよ。それに、もし、私の存在を知れば、あなた達のように私を助けようと一緒に戦ってくれる方が出てきます。そうなれば、今度はあなた達が危険に晒されます。」
優憐が話し終わると、今まで黙っていた紫が口を開いた。
「あなたの気持ちも分かるわ。だからこそ、今まで黙っていたのもある。でも、あなたひとりで全ての敵から守るにはあまりに無茶すぎるんじゃないかしら。これを機に、もう少し、幻想郷の者を頼っていただけないかしら?」
バツが悪そうにそう話す紫を、かわいそうに思ったのか優憐はふっと息を吐くと、かすかに微笑んだ。
「ありがとうございます。そうですね。少しお手伝いをお願いしてもいいですか?」
「当たり前だ! 妖怪退治の専門家、霧雨魔理沙にお任せを!」
申し訳なさそうに話す優憐に、自信満々の魔理沙が言った。
「任せなさい。とりあえず、あなたは少し休みなさい。」
霊夢は優憐のそばにあったタオルの水を絞り、もう一度優憐の頭に乗せた。
「ありがとうございます。」
ちょっとした安心感からなのか、優憐は目をつぶり、また眠ってしまった。