霊夢と魔理沙があの"無"の空間に行ってから、二人は頻繁に出入りするようになり、優憐とともに敵を倒していった。
「ありがとうございます。二人のおかげで敵もだいぶ少なくなりましたよ。」
「なに、どうってことないさ。もっとはやくに頼ってくれればよかったのに。」
得意気に話す魔理沙の言葉に、優憐は少し寂しそうに笑った。
「そうね。幻想郷にもとくに悪いことは起きてないし。いいことづくしじゃない。もっと頼りなさい。」
霊夢や、魔理沙に頼ってくれと言われるたびに、優憐は少しずつ寂しさを感じていた。
「そうだ、お前、幻想郷に来ないか? こんなところでひとりだと寂しいだろ?」
思いがけない魔理沙の提案に、優憐は少し戸惑った。
「…幻想郷に住む必要は無いと思うけど、少しくらい遊びに来るのくらいいいんじゃない。」
霊夢もその案に乗っているようだ。
「それは……」
優憐は困った。
幻想郷に行くと、もっとたくさんの人や妖怪に会える。
ずっとひとりでここにいる必要もなくなる。
しかし、それは同時に幻想郷の危機を表すようなものだ。
自分の都合で勝手にここを離れるわけにはいかないのだ。
少し、間を空けて優憐は口を開いた。
「すごく嬉しいんですが、やめておきます。私は、ここで生きていくと決めたんです。」
はっきりと断った優憐に、これ以上は言えないと判断したのか霊夢も魔理沙もなにも言わなかった。
「霊夢さん、魔理沙さん。お二人が私のためにと、一緒に戦ってくれていることはとても助かっているし、心強いことです。でも、あまり、この空間に干渉するのはやめておいてください。」
いつも言わないような、冷たい口調で優憐は続けた。
「お二人に危害が加わることは目に見えています。大事な大事なお二人だからこそ、なにかあってほしくないんです。」
二人から視線を外し、優憐は腰を下ろした。
しばらく沈黙が続いた。
「優憐。私だってなにも怖くないわけじゃないんだ。」
唐突に魔理沙が口を開いた。
「私や霊夢にとっても、お前は大事な大事な友達だ。そんな友達を失いたくない、守りたいと思うのはおかしいことなのか?」
切ない顔で、見つめてくる魔理沙に優憐は言葉を失った。
「魔理沙の言う通り。あんたの忠告は余計なお世話ってやつよ。」
霊夢がそっと優憐の隣に座った。
二人の言葉に優憐は涙が出そうになった。
ー『友達』って言ってくれた。
今までそんな存在作っちゃだめだと思ってた。
自分のためにも、相手のためにも。
もう少し、二人に頼ってもいいかな……。ー
溢れそうになった涙を隠すように優憐は、二人に背中を向けた。