霊夢と魔理沙のおかげもあって、幻想郷に外からのモノが流れることもなく、平穏な日々は過ぎていった。
しかし、
その日の優憐はいつものように、霊夢と魔理沙を見送り、少し休憩を取ろうと近くに腰かけた。
疲れもあったのか、うとうとしているうちに寝てしまった。
そして、聞いたこともない不気味な音で目を覚ました。
ーなに…。この音。地面が鳴いてるような低く恐ろしい音っ。ー
周りを見渡してもなんの変わりも無かった。
地面が唸っているかのような、それでいて空から聞こえる謎の音に優憐は恐怖を覚え、その場に立ち尽くした。
ふと、空を見上げると、小さな黒い穴のようなものが見えた。
本当に小さく、見間違いかと思ってしまうような穴から優憐は目が離せなくなった。
その穴に引き寄せられるように優憐が、穴のほうに飛んでいくと眩しい光が辺りを覆った。
ー眩しいっ。ー
光を遮る暇もないまま、その光は消え、辺り一帯は真っ暗でなにも見えなくなっていた。
そして、光が消えたと同時に優憐の意識も飛び、その場に倒れ込んだ。
ーーーーー
目を開けるとそこはどこかの家の中だった。
ーここ、どこだろう。見たことない…。ー
「優憐!起きてるのか!」
頭上から優憐を覗き込んでいたのは魔理沙だった。
「起きたのね。ここは博麗神社よ。」
博麗神社、ということはつまり今、自分は幻想郷にいるということだ。
「なんで…私がここに?」
必死に記憶を辿ると、あの空間でのおぞましい音が頭の中で響いた。
「お前、倒れてたんだよ。輝夜んとこの竹林で。」
あの空間で倒れたはずなのに、なぜ今自分が幻想郷にいるのかわからなかった。
辺りを見渡すと、永琳や輝夜、鈴仙などもいた。
「この方達は?」
「ああ、永遠亭のとこの医者に看てもらったんだ。具合はどうだ?」
軽く身体を動かしても、痛みや違和感はなかった。
「大丈夫です。 永琳さん、ありがとうございます。」
「どうってことないのよ。それにあなたを見つけたのは私じゃないわ。」
永琳が鈴仙の方を見た。
「わ、私じゃないですよ。妹紅が見つけて、永遠亭まで運んできてくれたんです。」
慌てて鈴仙が言った。
「そうでしたか。妹紅さんによろしくお伝え頂けますか?」
頭を縦に何度も振り、鈴仙は黙った。
「ところで、なぜあなたは永琳の名前を知ってるの? 永琳、この方とは見知った仲なのかしら?」
輝夜の問いに、永琳はいいえ、とだけ答えた。
すると、輝夜の鋭い目線の先は永琳から優憐にうつった。
「そういえば、私と霊夢のことも知ってたみたいだったな。なんか、優憐とは"昔からの知り合いの感じ"がして、特になにも感じなかったけど、確かに、なんで私たちのこと知ってるんだ?」
魔理沙も輝夜に便乗した。
「そんな大したことないですよ。たまに幻想郷の様子が見えたりするんです。私の仕事的にも。」
あはは、と困ったように笑う優憐に、みんなは納得したようだった。
「そういうことね。とりあえず、紫から大まかに聞いたところ、あなたは敵ではないようね。」
輝夜が立ち上がり、それにつられ、永琳と鈴仙も立ち上がった。
「なにかあったら、また永遠亭に訪ねなさい。」
そうとだけ、言って三人は博麗神社を出た。
「そういえば、あの空間はどうなってるんでしょうか。」
部屋にいるのが4人になり、静まり返っていた空気の中、優憐が唐突に口を開いた。
「あ……。」
魔理沙の表情が曇っていく。
その様子を見て、優憐は首をかしげた。
黙っていた紫が急に立ち上がり、スキマをつくった。
「紫さん?……。」
その様子を霊夢と魔理沙は黙って見ていた。
「繋がらないのよ。"無"の空間に。」