開いたスキマに、紫が手を伸ばしても、まるで壁でもあるかのようにその手は弾かれた。
「うそ……。なんで…。」
優憐が立ち上がり、紫のスキマへ駆け寄った。
「優憐!まだ動いちゃダメだぜ!」
魔理沙の制止を無視し、紫のスキマへ入ろうとすると、明らかになにかが優憐の体を弾いた。
「そんな……。」
ふっと力が抜け、優憐はその場に座り込んでしまった。
「なにか、心当たりはあるの?」
霊夢が優憐を見つめた。
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優憐は三人に、あの時のことを話した。
地響きのような音が聞こえたかと思うと、空が光り、真っ暗になり、そこで意識を無くした、と。
「なるほどね。向こうで何が起こってるのは間違いないわね。」
優憐が話し終わると、間髪いれずに霊夢が口を開いた。
優憐は何も言わなかった。
-向こうでなにか良くないことが起こってる……。-
なにか根拠があるわけではないが、優憐はそれを確信していた。
分かっているのに、向こうに行けない自分に腹立たしさを感じていた。
「とりあえず、しばらく優憐は幻想郷で暮らさないとな。」
強ばった表情の優憐に魔理沙が言った。
「え、でも……。」
「そうね、向こうに帰れない以上、そうするしかないわ。」
霊夢の言葉に紫も納得しているようだった。
「しばらく、ここでお世話になったらどうかしら?」
紫の問に霊夢は立ち上がった。
「はぁ!? 無理よ、食費が増えるじゃない。魔理沙の家でいいじゃない。」
「私の家は、キノコさんがいるから無理なんだぜ。」
霊夢と魔理沙の喧嘩が始まった。
「仕方ないわね。私があなたの住むあてを聞いてみるわ。」
そう言うと、紫は立ち上がり、スキマの中に消えていった。
「私、きっとあの空間で良くないことが起こってると思うんです。」
さっきからいがみ合っている二人の間で優憐がぼそっと言った。
「良くないことってなに?」
手を止め、優憐を見つめる霊夢。
「あんなの、初めてなんです。私があそこで幻想郷を守り始めてから……。」
言いようのない漠然とした不安感に襲われた優憐は俯いたまま続けた。
「あの空間にいないと、幻想郷がどうなるか分かりません。外からのモノがこっちにダダ漏れのような状態ですから。」
今の自分ではどうすることも出来ない無力さに、優憐は固く拳を握りしめた。
「紫さんに結界の強化をお願いしないと……。」
ふらふらになりながら、立ち上がる優憐に背を向けたままの霊夢が言った。
「優憐、あんたが思うほど私たち幻想郷に住んでいるヤツらは弱くないわ。あんたがそこまで心配しなくちゃならないほど、無力なやつばかりじゃないわよ。」
「そうだぜ。幻想郷にナニか来るようなことがあったら迎え撃てばいいだけだぜ。とりあえず今は、身体を休めるんだ。」
魔理沙に引かれ、優憐はもう1度布団に入った。
「ありがとうございます…。本当に…ありがとうございます。」
二人にバレないように、涙を拭い、優憐は目を閉じた。
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「優憐、いるかしら?」
1時間足らずで紫が博麗神社へ戻ってきた。
「さっき、もう1度眠ったみたいだぜ。それより、見つかったのか?」
魔理沙が紫の方に振り返ると、慧音がいた。
「魔理沙じゃないか。話は聞いたぞ。人里にあてがないか聞いてみる。安心してくれ。」
慧音は魔理沙から優憐に視線を移して言った。
「この子が幻想郷に入ってきたことは、もう守り人は機能しなくなったということだ。」
「そうね。」
短く、そして軽く霊夢は返事した。
「言われなくてもわかってるわよ。結界の強化、そして幻想郷の管理も今より厳しくしないとね。」
机にあった、冷茶を一口飲みまた、机に置いた。
「とりあえず、こいつが来たことをある程度は知られてる方がいいわ。天狗に新聞でも書かそうかしら。」
ふざけたような口調で言う霊夢の顔は、重々しかった。