我輩は○○である   作:far

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どれが歩いたのかは、読者の人のロマンしだい。


我輩は感激である。

 我輩は感激である。足掛け半年になる計画が、見事成就したのだ。

 最近は中にネコカフェもできた、サイレントヒル県にある日本一高い山サファリパーク。

 今、我輩の目の前で。

 その中の専門区画を、ゆったりと恐竜が歩いている。

 

 唐突に何をやっているんだ、と思われただろう。正直、ボスにも黒いひとにもそう言われた。

 

 恐竜復活である。

 

 うむ。確かに原作には何らかかわりのない事であるな。

 まあ、さすがにきっかけはあった。というか、きっかけもなしに恐竜復活計画など立てて実行するヤカラがいたら怖い。

 

 きっかけは、まずは個性である。

 

 以前、個性婚のはなしをしたのを覚えているだろうか。あの個性とこの個性を混ぜたら最強ではないだろうか、という『ぼくのかんがえたさいきょうのこども』を作るあれである。

 だが他人の個性をもらったり奪ったりする、我輩や先生ならば子供に託さずとも、個性の組み合わせが出来てしまう。

 そしてよくわからないことに、時に組み合わせ前提としか思えない個性が存在するのだ。

 

 個性を譲渡する個性とか。

 

 個性は普通は一人一つ。これだけを持っていても何も出来ない。

 他人に個性をあげることが出来る。しかしあげる個性は持っていないという、悲しい状態である。

 

 先生の弟がこの個性を持っていて、先生が気まぐれか何かで、力をストックする個性を渡したところ、なぜか個性同士が混ざってしまって、鍛えた身体能力が受け継がれる個性に。

 そして代々受け継がれた個性の持ち主は、初代の弟さんを含めて全員ヒーローとして先生に立ち向かって来た。これには先生もニッコリ。

 

「われわれの業界では、ご褒美です」

 

 魔王には、立ち向かってくる勇者が必要なのだ。先生はそういうロマンのわかる男である。

 お約束を守らずに、全力で勇者を返り討ちにする、空気を読まない、情け容赦のない魔王でもあるが。

 

 

 閑話休題。

 

 

 今週受け取った個性に、個性を精密操作する個性と、卵を作る個性があった。

 

 そして我輩は気付いた。この二つは組み合わせることで、様々な卵が作り出せる。

 卵かけご飯に最適な卵とか、ビタミン豊富な卵とか。イクラだって作り放題だ。ダチョウの卵なみに大きいウズラの卵やら、黄身だけの卵。

 

 そして、絶滅してしまった生物の卵も作れた。

 

 さすがに有精卵は作れなかったので、復活させるには化石などからDNAを取り出して受精させるという、気の遠くなる作業が必要になる。だが逆に言えば、そこさえ克服できるならば、絶滅した生物が、この世によみがえる。

 

 プロジェ○ト・エーッ○ス エー○クス エoックス

 

 我輩は基本、ヒマである。そして取り組む価値のあるだろう、ロマンを見つけてしまった。ならばやるしかなかった。やらない選択肢など、ハナッからありはしなかった。

 まずは協力者を集めた。これは先生に頼むだけで終わった。なにせ一人で資金と人脈と両方が必要十分条件を満たせてしまうのだ。

 

 そして計画は始まった。

 

 DNA抽出職人の朝は早い。化石化してしまった細胞は、ほぼ分解されていたり、わずかに残っていても壊れている場合が多い。そこからかろうじて無事な部分を拾い出して、組み立てるのだ。

 しかも見つかったものも、目当ての生物のDNAとは限らないのが曲者だ。単に近くにいただけの細菌のDNAである場合も多々あるらしい。

 職人は語る。「そもそも正解のサンプルがありませんから、一つ一つが職人の勘だよりの手作業ですよ。機械には、できない」そう語る職人には、確かな誇りを感じた。

 しかし作業は困難を極めた。およそ7000万年前の細胞など、残っている方がおかしい。「本当にできるのか?」職人たちの間に、暗い空気がただよい始めた時。

 「そういえば、琥珀はどうなっている?」誰かが、つぶやいた。

 映画のネタであるが、樹液の化石である琥珀の中に、もしも恐竜の血を吸った蚊が閉じ込められていたならば――

 白亜紀の琥珀は元々数が少なく、しかも保存状態は良くない。だがもし見つかったなら。

 希望はある。そちらを探しているスタッフもいた。そして――――

 

 

 

 「見つかったぞ!」

 

 

 

 奇跡は、起きた。希望は、あった。

 

 そして復元されたDNAが、それに合わせた卵に注入され、そして――――生まれた。

 

 その成果が今、目の前で歩いているのだ。我輩は感激である。

 

 ただ一つだけ、言いたいことがある。

 なぜそこで記者たちの取材に答えているのが、変身した先生なのかと。

 確かに、先生の協力なしでは職人たちを集めることも、研究施設も大量の化石も用意できなかったのであるが。そこは発案者の我輩でも良かったのではなかろうかと。

 

 先生は、ロマンがわかる男である。そして空気を読まない、大人気ない魔王でもあった。

 

 




●「われわれの業界では、ご褒美です」
なんの業界かは、永遠の謎にしておく方が良いと思われる。
深夜番組、タモリ倶楽部で使われてメジャーになった、らしい。
おそらく元はネットスラング。
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