我輩は不調である。まあ、そんな時もある。
別段、風邪をひいたなどして、体調が悪いわけでもないし、特に理由もなく虫の居所が悪いわけでもない。
ただ、亡くなった方々に十連続でお断りされただけである。
「ガチャァ! 十連ガチャァ! いっぱいいっぱい回すのぉ! 溶けるぅ! 溶けちゃうぅ!」
やたらと大きいのに死んだ目の、二頭身の女の子が我輩の中で叫んだ。確かに似ている気はするが、ガチャと言わないで欲しい。
さて。我輩の個性である火車は、死体と対面することで発動する。そこで我輩だけがそう感じるのだが、その人と目が合う。
死体の目が開くわけでもないし、何か光ったりするわけでもない。ただただ、我輩がそう感じるだけである。
そして目があったあと。その人の体に残っておる意識なのか、精神なのか。はたまた魂と魄にわかれるという、そのいずれか。ともあれ、ナニかとしか言いようのない、何か。
そいつが我輩と波長が合うなり、気が合うなり。何かを見出すなりしてくれると、その体に宿っていた個性をいただけるのだ。お断りされた場合は、単にふいっと目をそらされる。
何の個性を持っているかは人それぞれで、渡してもらえるのかも、まあ運次第であるのでガチャと言えなくもないが。でもガチャって言うな。
では特定の個性狙いでもらいに行った時は、ピックアップガチャとでも言うつもりかね。
そして今の連続で目をそらされた状態は、爆死であるか。
意外とうまく表現できてしまったのが、なにかくやしい。おのれ。
「回転数が全てだ」
だからガチャじゃねーのである。なにやら今回、脳内で再現される声が業が深い気がするのだが、気のせいだろうか。
だが、まあ、うん。数打てば当たるという点では、正しくはある。ガチャではないが。ガチャではないが。
大事なことなので二回言った。
さて。個性の数と質は、収入に直結するのであるからして。残業と行こう。
この超人世界、治安は悪い。市に一人はヒーローがいてパトロールをしていても、月に何度か事件が起きる。
そんな中、殉職するヒーローも、当然出てくる。なにせ、ほら。
“ぼくのかんがえた理想の社会”を実現するため! 職業でヒーローをしている人や、ヴィランを粛清していきます! 手作業でひとりひとり丁寧に!
そんな危険人物がいる事であるし。先生みたいな人もいるし。
殉職する人は、そこそこ多い。
中堅どころや駆け出しのヒーローを急に見なくなって、引退したのかと思ったら、実は――
しかしヒーローに憧れる子供たちへの影響を考えて、表向きは報道しない。そんな場合もあるらしい。
それはどうかと思う。火事の恐ろしさを教えずに、消防士にするようなものである。
しかし我輩はそんな方々が亡くなった場合に、あわよくば個性をもらおうと現れるハイエナのようなものであり。そんな我輩が、何かを言える立場なのかといわれると、少し、困る。
だから、個性を受け取ったかどうかは関係なしに、手を合わせて祈る。それくらいしかできないのであるから、そうする。
亡くなった方々からのもらい物を売って生きている、今の自分に思うところがないわけではないのだ。
だから、ガチャって言うな。我輩は火車である。
●「ガチャァ! 十連ガチャァ! いっぱいいっぱい回すのぉ! 溶けるぅ! 溶けちゃうぅ!」
マンガで分かる!FGOより。女主人公が、自分の味方を呼ぶ時の方式を、ガチャのようなものね、と説明された時の反応。AA化されている。なお溶けるのは、彼女の貯金である。ガチャ=課金=お金が溶けるように消える という公式。
●「回転数が全てだ」
FGO、フェイトグランドオーダーのツイッターなどより。ガチャは出るまで回せ。無心で回せ。回転数が全てだ。回せば回しただけ出る。目当てのキャラに近付く。という信仰(笑) 人によっては笑い事ではないが、課金はほどほどに。