我輩は○○である   作:far

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平成のワトソンによる受難の記録を読みふけってました。
大勢のキャラを動かし、話を進めるrikkaさんのSSをなぜか前書きで推薦してみる。


我輩は新婚である。

 我輩は新婚である。三日前のはなしだ。そして今日、離婚した。バツイチである。

 

 そしてそれを今、知った。

 

「わけがわからないよ」

 

 大丈夫。我輩もわからない。理解不能である。今日先生に呼び出され、いきなりそんな驚天動地の。不意打ちの。真に恐るべき事実を告げられたのだが。

 

 正直。どう反応を返してよいものかもわからぬ。全くもってわからぬ。

 

「理由も分からずに押しつけられたものをおとなしく受け取って、理由も分からずに生きていくのが、我々生き物のさだめだ」

 

 これを思い起こすのは二度目であるな。うむ。少し落ち着いた。

 さあ、覚悟は出来た。さ、先生。説明をば。

 

 ふむ。ふむふむ。つまり、まとめると。

 

 海外から受け入れたい女性がいたので、手っ取り早く婚姻という手段をとったと。

 相手を探すのがめんどうだったので、我輩の不法に作った、偽造ではない戸籍を利用したと。

 離婚して相手との関係はもう切れたので、安心しろ、と。

 

 なるほど。確かに問題はない。

 

 何らかの実害があったわけではない。痛くもかゆくもないだろうと、言われてしまえばその通りであるとしか言えぬ。

 どうせ今の戸籍など仮のもの。

 

 ボブ・ネコガスキーという、ロシア系日本人の戸籍を一生使うつもりなど、さらさら無いのである。

 

 うむ。ネコガスキーだ。ネコガスキーである。命名は先生だ。

 どうせ偽名であるし、と遊びでボブと名乗った。すると、先生も遊んだ。因果というには軽いが、痛い。もとい、イタイ。

 

 そういうわけで、ボブの経歴がバツイチになろうが逮捕歴がつこうが、知ったことではない。むしろ、新しい戸籍と名前に変える好機と考える。

 ゆえにそういった意味での問題はない。

 

 そういった意味では。

 問題は別のところにある。

 

 今回、完全に事後承諾であった。そこに我輩の意思はなかった。前もって告げるくらい、できぬはずはない。

 つまり、これはわざとである。

 我輩が今、戸籍やら財産やらの。一切合財の、社会的なあれやこれやを先生に握られている。

 そのことをわかっているのか。わかっていないなら、これでわかれ。という授業である。遠回りとはいえ、指摘してくれるだけ先生は優しい。

 

 実際、我輩は先生に利用されているが、先生に生かされてもいるのだ。

 

 手に入れた個性のほとんどを取り上げられてしまうが、そもそも入手方法からして先生のツテが多い。

 個性で稼ごうにも、まず身元の証明やらがいる。それも先生にもらったものだ。

 

 江戸時代の小作人などは、こんな気分であったのだろうか。

 小作人などとは比べられぬほど金はもらっているが。先生ならば、いつでも取り上げられるだろう。

 

 やだ。気付いたら、我輩の人生、詰みすぎ……?

 

「諦めんなよ! 諦めんなよ、お前!! どうしてそこでやめるんだ、そこで!! もう少し頑張ってみろよ!

 ダメダメダメ! 諦めたら! 周りのこと思えよ、 応援してる人たちのこと思ってみろって! あともうちょっとのところなんだから!」

 

 応援してくれる人の存在が思い当たらず、落ち込んだ。

 しかしおかげで落ち着いた。

 そういえば先生は、いずれNo.1ヒーローに倒される予定だった。うむ。思い出した。

 ならば我輩が今後やっておくことは、とりあえず財産を隠し持つこと。先生以外の人脈を作ること。

 

「人間の社会はカネとコネだと、賢いエルフの私は学んだ」

 

 実際、その通りなのである。

 

 

 




●「わけがわからないよ」
魔法少女まどか☆マギカより。感情が理解できないフリで、理屈の通っていないことや、フェアではないことをトボけるきゅうべえことインキュベーターの言葉。法律では、双方が内容を知らない契約は無効である。というか、説明せずに何千年も営業してきたコイツはヒドい。

●「理由も分からずに押しつけられたものをおとなしく受け取って、理由も分からずに生きていくのが、我々生き物のさだめだ」
この間までは、なぜ自分は虎にと思っていたが、気付けばなぜ以前は人間だったかと考えていた。いつしか人は慣れて受け入れる。虎=賊 人間=役人 と考えると、次に出会った時は、君を引き裂き食ろうて、何の痛痒も覚えないだろう。という発言が重い。

●「諦めんなよ!(以下略)
炎の妖精こと、松岡シューゾー氏の言葉。彼が冬に日本を離れると、寒波が来る。割とマジで。

●「人間の社会はカネとコネだと、賢いエルフの私は学んだ」
ソードワールドリプレイ バブリーズ編より。旧版の方のリプレイである。当初は世間知らず風であったのに、あっという間に、あまりにも俗に染まりすぎてしまったエルフのスイフリーの言葉。だってあの耳は付け耳だから。だってあの肌は白粉だから。
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