我輩は複雑である。後味が悪い。奇妙な罪悪感を抱いている。やらねば良かったと悔いている。それでいて、やって良かったとも思える。
微妙で、複雑である。
このところの黒い人の心労が、目に見えるほどであったので、なにかねぎらってやろう。始まりは、そんな軽い気持ちであった。
とはいえ、我輩がなにかしてやるだけでは面白くない。ここは是非ボスも巻き込まねば。そう思いついた。やはり軽い気持ちであった。
しかしボスにそのまま提案したところで、素直ではない上に反抗期。まず、話しにのってはこない。
そこで一計を案じた。やはり軽い気持ちで、である。悪気は無かったのだ。いたずら心は多分にあったが。
母の日にカーネーションを贈らせた。
予想外なまでに、感激された。
黒い人へ、日々の感謝の贈り物をしよう。そうボスに提案したところ、何でそんな事をと即座に却下されたので、この計画を提示したところ。
少し笑った後。お前も悪い奴だな。そう言って、かなりやる気になってしまったのだ。
具体的には、カーネーションの花束が豪華になって、プレゼントとカードが添えられた。
どうやらボスにも、黒い人への感謝や好意はあったらしい。ただ思春期の少年心が、それを表に出させないのであろう。
今回ほとんど偶然ながら、素直でない少年に素直ではない方法を示した結果、たまたまいい結果に結びついたのだと思われる。
そして黒い人へと、それらが渡された結果。
泣かれた。
涙ながらに礼を言う黒い人に、いや、そんなつもりではなかったのである。許してくれ。と、内心で謝った。謝罪した。意味不明なまでの罪悪感があった。
同じく動揺しきりであったボスと、目と目で会話をしておったが。
お前、これどうにかしろよ。いや、そちらこそ。
などと、お互いに押し付けあうばかりで、なんの解決にもならなかった。
「判断とは知能の産物ではなく、器量の産物である」
三次元チェスの苦手な提督がそう言っていたらしいが、だとすると我輩もボスも、まだ大きな器ではないらしい。
結局黒い人が自分で落ち着いて、逆に我輩たちを落ち着かせようと飲み物をすすめてくるまで何もできなかったあたり、そう思う。
この世界、オリンピックや各種スポーツのように、個性が現れたせいで廃れてしまったものも多い。
しかし母の日のように、変わらず受け継がれているものも数多くあるのだ。超人と言えどもヒトである。きっと変わらず大事なものがある。
今回の企画をやって良かった。そう思う。
だがもう少しやりようがあったかも知れない。
なお、先生に今回のことが知られてしまい、父の日のプレゼントをさりげなくリクエストされたのであるが、どうしたものであろうか。
あの上司は、スキあらば、楽しそうにパワハラをしてくるから困ったものだ。
若干うらやましそうな感情も見て取れたので、今回は本当に欲しいのかもしれない。
さて、どうやってボスをのせたら良いのだろうか。誰か、教えてくれ。
●「判断とは知能の産物ではなく、器量の産物である」
銀河英雄伝説の、確か外伝二巻より。であったと思う。ユリアンの回想で出ていたような。という私の記憶より。