我輩はノラネコである。名前はサムになった。
力をストックする個性を見つけてくるまで帰ってくるな。
それがしばし考え込んだ先生の出した答えであった。
大概のことは、それが損害を出すことであれ無邪気な様子で、楽しそうであった先生が。
「個性を譲渡する個性を手に入れた」
我輩がそう告げた時、動きを止めた。
左右に手を広げるなど、大げさな動作を好む先生が、体を小さくして固まっていた。
その姿から、複数の感情がひしめいていたように感じたのは、きっと、我輩の気のせいではない。
そして、我輩はNo.1ヴィラン、オールフォーワンと初めて出会った。
動き出した彼は、激しく怒りながら喜んでいた。憎悪しながら歓喜していた。素晴らしい! と何度も叫んでおった。
キミも、ボクのテキになってくれるのかい?
声に出してはいないが、表情が、目が、その存在がそう言っておった。実にうれしそうで、楽しそうだった。
そして課題だと、上記の条件を我輩に言いつけ。我輩から何もかもを取り上げようとした。
戸籍、職場、身元に口座。黒い人にも連絡を入れ、ボスにも言い含めておけとツテも断ち切――――
待ったをかけた。少し、待ってくれと、願った。
我輩の発言は、調子良く動いていた彼の機嫌を軽く損ねてしまったらしい。しかし、それでも言っておかねばならなかった。取り返しがつかなくなる前に。どうしても言わねばならなかった。
なぜならば。
もう、持っているのである。
力をストックする個性が、ここにあるじゃろ?
また先生の動きが止まった。
先ほどとは違い、何の感情も感じない。完全に止まっている。いつの間にか、
え、持ってるの? はい。 特に何かあったりしない? いえ、全く。
…………………………………………………………………………
再び動き出した先生は、新しい戸籍をすぐさま手配してくれた。
うん、まあ、少し休暇をあげるよ。旅行とかどうかな? 二つの個性が一つに出来るような、そんな修行もしてみるといい。
そんなふうにさとされ、外へと送り出された。早口だったが、その態度はいつになく優しかった。
我輩の目も、きっと優しかったのだと思う。
さて。
三割くらいは死ぬかもしれぬと覚悟しておったのだが、このオチは読めなかった。
さしあたっては、口座の凍結も解かれたし、先生のおすすめに従って旅に出ようか。
しばらくは自由の身である。
まずはどこのうまい物を食べに行こうか。九州からか北海道からか。それとも近場の関東からか。
まあ、気の向くままである。