我輩は反省中である。
酔って帰ったら、ウワバミさんにしこたま怒られたのだ。当たり前のハナシであるが。
家出したネコが、泥だらけになって機嫌よく帰ってきたみたいなものかもしれぬ。
とりあえず風呂場にぶちこみ、手荒く洗ってから叱りつけるあたりも、似ている。
「だがボクは謝らない」(キリッ)
などと酔った勢いでやったら、さらに怒られた。酒のせいである。けして我輩の素、というわけではない。
スキャンダルで仕事を干された、芸能界の先達たちのはなしなどを聞き流していたら、うとうとと眠気がおそってきた。
本物のネコのように、こしこしと顔を洗う。
ああ、もういいから今日のところは寝ちゃいなさい。とお許しが出たので、寝床へ。おやすみなさい。
あけて翌日。今日もストレス解消といこうと思う。具体的には、この間の渋谷のラーメンのこってり味を味わいに行こう。
そう心にかたく思い極めた。ウワバミさんもオフらしく、車を出してくれるらしい。
とはいえまだ朝である。ラーメンはお昼に食べるとして、朝はどうしようか。
え、行きつけのカフェがある? じゃあそこで。
そうしてお出かけしたわけであったが。この世界、思ったよりも治安が悪い。つまりは、また野良ヴィランである。
野良と言うのは、どこか組織や先生と関係していない、という意味での野良である。別に野生動物のごとく、そこらに生息しているわけではない。
ひょっとしたら、似たようなものかも知れぬが。
今回の事件は、開いたばかりの金融機関から、朝一で資金を引き出した業者狙いのかっぱらい。まさに目の前での出来事で、あまりの大胆さに少し驚いた。
ナンバーも隠していない、原付バイクでの犯行。しかもマスクは一応していたが、爬虫類系の異形がどう見ても身元を隠しきれていない。
「スケスケだぜっ!」
恐ろしいほどバレバレだった。たぶん放っておいても、すぐ捕まる。
もしかすると、札束を数えて「へへ、やってやったぜ」とか言っている時に、警察に踏み込まれるくらい。それぐらいすぐ捕まるような気さえする。
でも目の前で犯罪が行われた以上、黙って見逃すのは、ヒーロー的にありえない。
我輩に一言だけ「ごめん、追いかけるわ」と短くことわって。ウワバミさんは愛車のアクセルを踏み込んだ。
そして捕まったヴィランが、こちらにあります。
そんな三分クッキングで出される、調味料を漬けて一晩寝かしておいた食材のようにお手軽に、犯人たちは捕まった。
一応は同じヴィランとして思う。もう少し頑張れよ。
そうして捕まえた犯人たちであるが。ヒーローは逮捕まではできるが、そのあとは警察のお仕事。最寄の警官が受け取りにくるまで、待機である。
警察は法の番人ゆえに、個性使用禁止の法律を守らざるを得ない。そのせいでヴィランと戦えずに、こうして終わった後にやってくるために、ヴィラン受け取り係などと世間で呼ばれているそうな。かわいそうに。
捕まったあとは、ヴィランも普通の犯罪者と同じだ。拘置所に入って裁判を受けて、それから刑務所なり無罪なりの判決を受けて、刑に服する。
基本、ヴィランは刑務所で大人しく受刑者生活をおくってくれないし、危険な個性を持っていることが多いので、特別な刑務所に送られるが。先生なんかは、身動きも取れないほど拘束されて、24時間体制で監視、モニターされていた。
正直、そこまでするなら、いっそ殺した方が良くないか、と原作を読んだとき思ったことを覚えている。
おや、もう警察が来た―――!? !!!????
違うとはわかっていた。だが、こう言わざるを得なかった。勝手に口が動いていた。自然とそうしていた。
「お。お父さん?」
警察の装備品の無線付きベストにワイシャツ。ネクタイ代わりに鈴のついた首輪をつけた、二足歩行のネコが、そこにいた。
玉川三茶。猫のお巡りさんである。我輩との血縁関係はない。と思う。
この体の両親の顔は、もはやあまり覚えておらぬが、普通の人のそれであったのは確かだ。だから、彼は父親ではない。
ただ、妙に顔の系統が似ているのだ。模様とか。つまり。
うん、その場のノリだけで思わず言っちゃったネタで、大混乱である。
信じちゃったウワバミさんが、説教を始めている。玉川さんはひたすら困惑している。まだ毒で身動きが取れないながらも、爬虫類系のヴィランがこのスキに逃げられないかと、頑張っている。
…………………………
…………………………え、これ我輩がなんとかしなきゃダメであるか?
●「スケスケだぜっ!」
テニヌ、もといテニスの王子様より。いくら死角を消そうとも、関節や骨格が対応出来ない絶対死角が出来てしまう。そこを狙うことで相手は反応することすら出来ない。これが跡部の世界 ――― 跡部王国
正直よくわからないので、そのまま引用したが、ご理解いただけるだろうか。
ムリヤリ強引に解釈すると、あ、今ここに打ったら反応できないな、というポイントを、相手の状態を見極めて見つけて打ち込む技。そのポイントの見え方を表現したのが、このセリフだと思われる。跡部景吾のセリフ。